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お役立ち仕事コラム

感音性難聴とは?原因や症状・治療方法や無理なく仕事を続けるためのポイントを解説

更新日:2024/06/24

感音性難聴は、明らかな原因やきっかけがなく、難聴(耳が聞こえにくい、あるいは聞こえない)が発症する疾患です。感音性難聴は治療が難しいといわれているため、補聴器や人工内耳を装用することで、聴覚を活用することが大切です。

 

治療が難しく、聞こえにくいままだとコミュニケーション面で不安になってしまうかもしれません。しかし、自分の聞こえにくさを少しでも改善できるように補聴器や人工内耳を装用したり、コミュニケーションの工夫をおこなったりすることでご自身の不安や困りごとを軽減できる可能性もあります。

 

この記事では、感音性難聴の症状や診断、治療・原因などをはじめ、仕事への影響や配慮例、対処法・支援制度などをご紹介します。

感音性難聴とは?

感音性難聴(※)とは内耳(蝸牛/かぎゅう)や聴神経に損傷がある場合などに生じる疾患で、原因不明なことが多く、治療が難しいといわれています。

 

(※)感音性難聴の正式名称は「感音難聴」になりますが、この記事では「感音性難聴」として取り上げます。

 

感音性難聴の特徴は以下の通りです。

  • 音が聞こえにくくなる  
  • 騒がしい環境で聞きたい音だけ聞き分けることが難しい
  • 相手に聞き返すことが増える
  • 耳鳴りを伴うことがある   など

感音性難聴は、相手の声や周りの音が聞こえづらく、コミュニケーションにおいて困ることが多くなります。しかし、早期に補聴器や人工内耳を装用することで、ある程度聴力を補い、コミュニケーションが取りやすくなる可能性もあります。

伝音性難聴とは?感音性難聴との違い

伝音性難聴と感音性難聴の違いは、耳の中で異常が起きている場所によるものです。

 

聴覚障害とは?耳の構造のイメージ画像

 

伝音性難聴

伝音性難聴とは、音を伝える役割のある外耳と中耳に何らかの問題が起き、難聴が発症することです。一般的に伝音性難聴は、難聴となるような原因を特定した上、適切な治療をおこなうことで、聴力の回復が期待できることがあります。

 

感音性難聴

感音性難聴とは、音を感じとる役割のある内耳・聴神経・脳に何らかの問題が起き、難聴が発症することです。一般的に伝音難聴と比べ、解剖学的な特徴により、治療も難しいといわれています。

 

また伝音性難聴と感音性難聴が併存する「混合性難聴」もあります。

感音性難聴の原因

感音性難聴の原因として考えられるものは大きく分けて2つあります。

しかし、診断で原因を特定することは難しいといわれています。

先天性難聴

生まれつき難聴であることを先天性難聴(せんてんせいなんちょう)といいます。

主に遺伝的要因や、母胎内で感染したウイルスなどが原因といわれています。

 

後天性難聴

出生後、難聴になったことを後天性難聴(こうてんせいなんちょう)といいます。

主に出生後の傷病などが原因といわれています。具体的には、以下のようなものが挙げられます。

  • 老化現象による加齢化難聴(加齢により、内耳や聴神経の機能が低下する)
  • 騒音性難聴(騒音下で長時間いることが原因)
  • 頭部外傷
  • メニエール病
  • 聴神経腫瘍
  • 薬による副作用 など

感音性難聴の症状や聞こえ方

感音性難聴の症状や聞こえ方は、人によって異なります。一般的には「全体的に音がちいさく聞こえ、音に歪みが生じ、不明瞭のように聞こえる」ことが多いといわれています。そのため、音としては聞こえているが、何を話しているかが聞き取れないことが多いようです。

感音性難聴の程度(等級)について

感音性難聴の聞こえの大きさを表したものを程度(等級)といいます。程度(等級)は「軽度」「中等度」「高度」「重度」があり、聴力レベルをあらわす「dB(デシベル/音の強さ(音圧)を表す単位)」が大きければ大きいほど、難聴の程度が大きくなります。

 

聞こえの程度の分類はさまざまな分類方法がありますが、ここでは「日本聴覚医学会の分類」をご紹介します。

 

【感音性難聴】【感音性難聴】難聴(聴覚障害)の程度分類について

日本聴覚医学会「難聴対策委員会報告 ‐難聴(聴覚障害)の程度分類について‐」を基に作成

感音性難聴の治療方法

耳が聞こえにくいなどと感じたときは、早めに「耳鼻咽喉科」を受診するようにしましょう。総合病院の場合は「難聴外来」で受診することも可能です。

 

感音性難聴の場合、薬物療法が難しく、補聴器や人工内耳を使用して聴力を補うことが多いです。

補聴器

普通の大きさの声で話される会話が聞き取りにくくなったときに、音を大きくするための医療機器のことです。

 

また、個人の聴力や聞こえに合わせた補聴器にするために、言語聴覚士や認定補聴器技能者による聴覚リハビリテーションや補聴器の「調整」を行っていきます。補聴器の「調整」というのは、補聴器をつける方の状態(難聴の種類・聴力の程度など)に合わせて、音や声が聞こえやすいように補聴器を調整していく作業のことを言います。聞こえ方は人によって異なります。

 

補聴器には聞こえの程度によって、いろいろな形や種類があります。そのため、病院の医師の検査や診断のもと、選択することが大切です。それと似たものに「集音器」というものがありますが、集音器は医療機器ではないため、個人の聴力や聞こえに合わせるための調整ができないことが特徴になります。

人工内耳

人工内耳は、現在世界で最も普及している人工臓器の一つで、感音性難聴の方で補聴器で効果を感じられない方や高度・中度難聴のある方などを対象とした聴覚獲得法です。人工内耳は、外から得た音を電気信号に変え、蝸牛(かぎゅう)の中に入れた刺激装置(電極)で直接聴神経を刺激し、脳に音を伝えるためのものです。

 

人工内耳の場合は、全身麻酔を用いた手術と術後の聴覚・言語発達のリハビリテーションが必要となります。術後のリハビリテーションを継続することで、次第に言葉が理解できるようになることが期待できるといわれています。

 

※人工内耳手術の適応基準が定められているため、病院の検査や診断のもと、感音性難聴の程度などの基準を満たした場合のみ、手術をすることが可能です。

感音性難聴のある方が感じやすい仕事上の困りごと

感音性難聴のある方が仕事をする上で、特に困ることといえば、「コミュニケーション」です。聞こえ方は人によってさまざまです。そのため、困りごとも異なりますが、ここではよくある困りごとについて一部ご紹介します。

複数人での会話の中で、聞きたい人の声を聞き分けることが難しい

感音性難聴としての代表的な困りごとの一つです。複数人での会話や騒がしい場所の中で、聞きたい人の声を聞き分けることが難しいといわれています。そのため、会議など多くの人が一斉に話すことがある場所では、会話について行けない場合が多いです。

マスク越しでの会話が聞きとりにくい

話し手がマスクをしていると、口の動きが読み取れず視覚情報が限られること、またマスクでこもった声がより歪んで聞こえてしまうことがあるため、聞き取りにくいことが多いといわれています。

話の内容を理解するのに時間がかかる

感音性難聴は、音が聞こえていても言葉が聞き取りにくいことが多いといわれています。例えば「この仕事は今週までにお願いします」の言葉を「この仕事は・・に・ます」のように聞こえてしまうことがあります。相手の話の内容を一度全て聞き取り、理解することは難しいため、話の内容を理解するまで時間がかかります。

感音性難聴のある方が無理なく仕事を続けるためのポイント

コミュニケーションに大変さを感じる、感音性難聴のある方が無理なく仕事を続けるためのポイントや対処法について一部ご紹介します。

なるべく周囲の人の理解を得る

入社・転職・異動などのタイミングで周囲の人の理解を得ることでよりコミュニケーションが取りやすくなります。なるべく言葉だけで伝えるのではなく、書面で伝えるなど一緒に働く人たちに理解を得る工夫をするといいでしょう。

 

伝える内容としては、以下のようなものが挙げられます。

 

自分が取りやすいコミュニケーション手段を伝える

(例)音は聞こえるが、相手の口元が見えると、よりコミュニケーションがとりやすい。

 

(例)補聴器を装用しているが、声や音が聞こえづらい。そのため、筆談であればコミュニケーションがとりやすい。

 

どういった場面でどのような配慮があるといいかを伝える

(例)業務内容の指示は、なるべく筆談で知らせてもらう。そうすることで、認識のずれがなくなり、業務をスムーズに進めることができる。

 

(例)複数人がいる会議では、会話について行けなくなるため、会議の内容を議事録で取ってもらえると理解できる など

職場環境を調整する

周囲の人に自分の感音性難聴について説明をした後は、働きやすい職場環境となるように合理的配慮を得るといいでしょう。

 

合理的配慮とは「お互いが平等・公正に支えあい、共に活躍するための調整をする」という考え方をもとに、障害のある方が働きやすくなるために事業主(企業)が必要なサポートや配慮を検討・実施することです。

 

職場環境を整えることで、よりスムーズにコミュニケーションがとれるようになり、安心して働くことにつながります。

 

 

【合理的配慮の一例】

  • 電話が難しいため、電話対応を避ける
  • 会議は静かな環境(例:会議室など)でおこなう
  • 筆談や文字情報による情報保障をおこなう 
  • 会議など複数人で会話をする場合は、なるべく一人ずつ話す
  • 認識のずれがないかどうかを確認する時間をとる など

※合理的配慮は人によって異なります。そのため、自分がコミュニケーションを取りやすくするためにどうしたらいいかを言語化するといいでしょう。

感音性難聴のある方が利用できる支援制度

ここでは、感音性難聴のある方が利用できる支援や相談できる場所を幅広くご紹介します。

※感音性難聴の程度や症状によって、利用できない場合もあります。対象になるかどうかは、各支援・相談先へお問い合わせください。

補聴器の本体購入代の補助

補聴器の本体購入代の費用の一部を市区町村が負担する制度があります。感音性難聴の程度や症状、負担額などはお住まいの自治体によって異なります。詳しくはお住まいの自治体のホームページや障害福祉窓口などでご確認ください。

人工内耳にかかる費用の補助

人工内耳は、保険適応の対象になります。自立支援医療(育成医療、更生医療)もしくは重度障害者医療証、あるいは高額医療費助成により、人工内耳にかかる費用の負担が軽減されます。詳しくはお住まいの自治体のホームページや障害福祉窓口などでご確認ください。

障害者手帳

障害者手帳が発行されると、公共料金の割引・助成金制度、税金の軽減などを受けることができます。また、一般求人とは別で、障害のある方のための求人へ応募することができるようになります詳細は、お住まいの自治体のホームページや障害福祉窓口などでご確認ください。

障害年金

感音性難聴の程度によりますが、障害の認定基準を満たした場合、障害年金がもらえる場合があります。詳細は、日本年金機構などでご確認ください。

聴覚障害者情報センター

感音性難聴によって生じる、日常生活やコミュニケーションの困りごとについて、相談ができる場所です。(※お住まいによって、名称が異なります。)中には、コミュニケーション講座などを実施しているところもあります。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは各地に設置しており、就業面と生活面の一体的な相談・支援をおこなっている場所です。働いていて困っていることなどがあれば、相談することもできます。

ハローワーク

求人紹介やセミナーなど就労全般をサポートするところです。ハローワークは「一般窓口」だけではなく、障害のある方のための「障害者相談窓口」もあります。感音性難聴が発症し、働くことに困難がある場合、まずはそこで相談してみてもいいでしょう。

就労移行支援事業所

一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)を対象に、就職するために必要なスキル・対処法を身につけるためのプログラム実施、企業インターン、就職活動から就職のサポート、就職後の職場への定着支援をおこなう場所です。

 

LITALICOワークスでは「就労移行支援事業所」のサービスを提供しています。スタッフと一緒に職場で求めたい合理的配慮、職場で必要な環境調整、自分でできる対処法といった合理的配慮や自己対処の相談をすることが可能です。

 

配慮内容や自己対処について悩まれていて、なかなか職場関係の方とコミュニケーションがとりづらいという方は、一度LITALICOワークスの無料相談を利用してみるといいでしょう。

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感音性難聴のまとめ

感音性難聴は原因が不明で治療回復が難しいといわれています。

 

しかし、補聴器や人工内耳など装用することで聴力を補うことができる可能性もあります。

また「コミュニケーションにおける対処法や工夫を整理する」「支援機関へ相談してみる」「自分の感音性難聴を伝えるための整理」「コミュニケーションがしやすい環境を整えていく」などといったように、できることからはじめることで、よりコミュニケーションにおける困りごとが軽減されやすくなります。

 

もし、感音性難聴の疑いが見られたり、聞こえづらいことで現在のコミュニケーションや仕事などで困っていることがあれば、ぜひお近くの病院や支援機関などへ相談してみてください。

 

LITALICOワークスでは障害のある方の「自分らしく働く」をサポートしています。働くことで困りごとがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

更新日:2024/06/24 公開日:2022/11/30
  • 監修者

    日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会/東海大学 医学部 耳鼻咽喉科・頭頸部外科 准教授

    和佐野 浩一郎

    主に聴覚、耳科手術、顔面神経、臨床遺伝学を専門とする。医学博士。
    2003年に慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室へ入局。慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科助教、静岡赤十字病院耳鼻咽喉科部長を経て2016年から2018年まで米国ノースウェスタン大学へ留学。帰国後は国立病院機構東京医療センターの聴覚障害研究室長を経て、2022年4月より現職。

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