障害年金とは、病気やけがで生活や仕事などが制限される方を対象に支給される公的な年金制度です。
障害年金は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、それぞれに受給要件や金額などが異なります。
障害年金という名称は聞いたことがあるけれど「具体的にどういう制度?」「自分は受給できる?」「もらえる条件がよく分からない」など、疑問がある方も多いかもしれません。
この記事では、障害年金の種類や受給金額、申請方法、受給要件などを分かりやすく解説します。
障害年金とは、病気やけがで生活や仕事などが制限される方を対象に支給される公的な年金制度です。
障害年金は「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、それぞれに受給要件や金額などが異なります。
障害年金という名称は聞いたことがあるけれど「具体的にどういう制度?」「自分は受給できる?」「もらえる条件がよく分からない」など、疑問がある方も多いかもしれません。
この記事では、障害年金の種類や受給金額、申請方法、受給要件などを分かりやすく解説します。
目次
公的な年金制度には「老齢年金」「遺族年金」「障害年金」があり、それぞれ受給金額や対象者などが異なります。本記事では「障害年金」について詳しく解説します。
障害年金とは、病気やけがで仕事や生活などが制限される方が受給できる公的な年金制度です。精神障害や発達障害、身体障害など障害のある方が対象となります。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2つの種類があります。
障害年金の対象となる障害は以下のようなものがあります。
障害年金の対象には精神障害や発達障害も含まれています。
※現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。この2つは「初診日」に加入していた年金によって分けられています。
初診日とは、障害年金を申請する障害の原因となった病気やけがで、初めて医師または歯科医師の診察を受けた日のことです。
大まかに分けると、その初診日に国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」の受給対象となります。
ほかに、保険料の納付状況などの受給要件もありますので、後ほど紹介します。
等級については、障害基礎年金は1~2級で、障害厚生年金は1~3級があります。障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残った場合は障害手当金(一時金)もあります。
障害年金をもらうには「受給要件」を満たすことが必要です。
障害基礎年金と障害厚生年金の受給要件における共通点と共通点ではないところがあります。まず、共通点ではないところから説明します。
障害基礎年金の受給要件はまず初診日が以下のいずれかの状態にあることです。
そのうえで、
という受給要件を満たす必要があります。
障害認定日や保険料納付要件については、以下の「障害認定要件」にて詳しく説明します。
障害厚生年金の受給要件は、まず初診日に障害厚生年金に加入していることが必要です。
そのうえで、
という受給要件を満たす必要があります。
障害基礎年金と障害厚生年金に共通する受給要件として、「初診日」「保険料納付要件」「障害認定要件」について詳しく解説します。これらの要件を満たすと障害年金を申請できます。
障害年金における「初診日」とはその障害の原因となった病気やけがで初めて病院で診察を受けた日のことです。この後、紹介する「保険料納付要件」と「障害認定要件」の基準日になりますので、最初に確認しましょう。
初診日は診察を受けた病院の証明が必要になります。現在通院している病院と初めて受診した病院が違う場合は、初めて診察を受けた病院に確認が必要です。
ただし、初めて受診した病院が廃院となっている、または当時のカルテが残っていない、などの場合も考えられます。そのような時は第3者証明書類や本人が持っている参考資料(診察券やお薬手帳、障害者手帳の診断書など)を添付して、初診日の申し立てをします。
これらの書類などが残っておらず初診日の証明が難しい場合は、日本年金機構の窓口や社会保険労務士などに相談しましょう。
初診日が特定できた後は、保険料納付要件を満たしているか確認しましょう。
保険料納付要件は初診日の前日において、
となっています。
ただし、初診日が令和8年3月末日までの場合は、「特例要件」が適用されます。(※)
特例要件は、以下の通りです。
※初診日が平成3年5月1日前の場合は納付要件が異なりますので、お近くの年金事務所にご確認ください。
初診日より以前にさかのぼって保険料を納付していることが必要になります。けがや病気などが生じてから納めても保険料納付要件を満たせないため、日頃から保険料の納付を意識することが大事です。
最後に障害認定要件について説明します。
初診日から1年6ヶ月を経過した日、または1年6ヶ月以内に治った日(症状が固定し治療効果がない状態)を障害認定日といいます。障害認定日に一定以上の障害の等級になっていることが障害年金受給の要件となります。
そのため、障害があってもすぐ障害年金を申請できるわけではなく、1年6ヶ月経過するか症状が固定してから申請する必要があります。
※障害認定日に障害状態に該当しなかった場合でも、その後症状が悪化し、一定以上の障害の等級に該当した場合は事後重症という形で申請ができます。(65歳になる前々日までに請求する必要があります)
障害年金の受給金額は、加入している年金の種類や障害等級によって異なります。また配偶者や子どもがいる場合はそれぞれ一定の額が加算されます。
障害年金の等級は障害の程度によって基準が定められています。
障害基礎年金の等級は1級と2級、障害厚生年金は1級から3級まであります。等級は1級が重く、以下2級3級となります。受給金額も同様に1級が高く、以下2級3級となります。
また、障害年金の等級は独自に定められています。障害者手帳の等級と障害年金の等級は別のものになるため、障害者手帳を持っている方でも、障害者手帳の等級と障害年金の等級が同じになるわけではありません。例えば精神障害のある方で、精神障害者保健福祉手帳の等級が3級となっていても、障害年金の等級は2級となる可能性があります。
また、障害者手帳の有無にかかわらず、受給要件を満たせば障害年金の申請ができます。
障害基礎年金は等級によって受給金額が決まっています。また、受給金額は年度によっても変更があるため、ここでは令和5年度の受給金額を紹介します。
障害基礎年金の1級は「年額993,750円」、2級は「年額795,000円」です。また、子どもがいる場合には、2人目までは1人につき「年額228,700円」、3人目からは「年額76,200円」がそれぞれ加算されます。なお、障害年金の加算対象となるのは18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級の1級、2級の状態にある子です。
障害厚生年金の額は固定ではなく、報酬比例の年金額になります。なお、1級に該当する方は、2級の1.25倍の年金額になります。
報酬比例の年金額は、厚生年金の標準報酬月額や標準賞与月額、加入期間の月数、決められた倍率などを元にした計算式によって導き出されます。また加入期間によって計算式も異なります。そのため、同じ1級でも一人ひとりの受給金額が異なります。
上記に加え、1級・2級に該当する方はそれぞれの等級に該当する「障害基礎年金(子がいる場合は子の加算も含む)」と、65歳未満の配偶者がいる場合「配偶者の加給年金」が加算されます。配偶者の加給年金は、年額228,700円が加算されます。
3級に該当する方は、加入期間が短いなどの理由で受給金額が低くならないように最低保障額として年額596,300円が保障されています。
障害厚生年金には「障害手当金」という制度もあります。初診日から5年以内に病気やけがが治り、かつ障害厚生年金の等級3級に該当しない程度の障害が残った場合に障害手当金(一時金)として支給されます。
支給額は報酬比例の年金額の2倍か、最低保障額の1,192,600円が1回で支払われます。
なお、障害厚生年金と同じく保険料納付要件などの要件を満たしていることが申請するうえで必要となります。
障害年金は一度受給した後で、いつまでもらえるのかという疑問がよく聞かれます。
障害年金は一度支給決定したらずっと支給が続く「永久認定」と、一定期間ごとに更新手続きが必要な「有期認定」があります。
永久認定となるのは障害の程度が変わらないと認められた場合で、原則として障害等級も固定となり更新申請の必要はありません。
有期認定となるのは障害の程度に変化があると認められた場合です。更新時期が来たら更新するための申請をおこない、新たに審査を受ける必要があります。
更新申請の審査で障害等級に該当した場合、引き続き障害年金を受給できます。
もし審査の結果で障害等級に該当しない場合は支給が停止されます。あくまで支給停止のため、受給権そのものはなくなりません。その後、再度申請をおこない、障害等級に該当していると認定された場合は障害年金の受給が再開される場合があります。
障害年金で有期判定とされた場合は更新手続きをする必要があります。
更新手続きについては日本年金機構から誕生月の3ヶ月前に「障害状態確認届」が届きます。「障害状態確認届」の診断書欄を主治医に記載してもらい、誕生月の末日までに提出します。
障害年金の申請をするタイミングは「障害認定日による請求」と「事後重症による請求」があります。
障害認定日による請求は、障害認定日に一定以上の障害等級に該当する場合に申請をします
事後重症による請求は、障害認定日以後にけがや病気が悪化して一定以上の障害等級に該当した場合に申請をします。
それぞれ申請可能な状態になった後に、必要な書類をそろえたうえで障害年金を申請します。
障害年金の申請に必要な書類は以下の通りです。
また、加算対象者がいる場合は、さらに子の在学証明書や配偶者の所得証明書なども必要となります。そのほかにも書類が必要になることがありますので、事前に年金事務所などで確認しましょう。
お近くの年金事務所などの窓口に障害年金の申請について相談し、申請に必要な書類について確認します。
申請に必要な書類をそろえた後は年金事務所などで申請します。障害基礎年金の申請は自治体の窓口でおこなうこともできます。
申請後は審査がおこなわれ、障害年金の受給が認められた場合に「年金証書」が自宅に送られてきます。
障害年金の申請から審査結果が出るまで約3ヶ月程度かかるといわれています。
そして、自宅に年金証書が送られてから1~2ヶ月ほどで初回の振り込みがおこなわれます。申請から時間がかかることをあらかじめ考慮しておくといいでしょう。
障害年金の支払いは2ヶ月に1回、偶数月に2ヶ月分が振り込まれます。支給日は毎月ではなく隔月であり、また年額が一度に振り込まれるわけではないので、注意が必要です。
障害年金は複雑な制度なので、「分からないことが多い」と感じている方もいるでしょう。ここでは、障害年金にまつわるよくある質問に回答します。
障害年金は働きながらでも受給できるのか、働けるようになったら停止されるのでは、と考える方も多くいます。
障害年金の受給要件には働いているかどうかは含まれておらず、働いていても障害年金が支給停止になるわけではありません。実際に働きながら障害年金を受給している方もいます。ただし、障害によっては働くことで障害等級に影響が出ることも考えられます。
働いていても障害等級に該当していることを証明するために「周囲や職場の配慮があって働けていることを具体的に示す」「働き方(障害者雇用、時短勤務など)や業務内容などを伝える」などしていく必要があると考えられます。
働きながら障害年金を受給できるかどうかはさまざまな要因により決まりますので、気になる方は年金事務所や社会保険労務士などにご相談ください。
障害年金の手続きは複雑なため、以下のようなことをデメリットと感じる方もいるでしょう。
また障害年金を受給することで、ほかの人に知られたり就職に不利になったりしないかという心配もあるかもしれません。しかし、障害年金を受給していても、自分から伝えない限りほかの人に知らされることはありません。
上記のようなデメリットを感じ申請を躊躇されている方は、自治体の窓口や年金事務所、街中の年金相談センターなどに相談してみましょう。また対面以外にも、電話などで相談が可能な場合もあります。
その他にも「社会保険労務士(社労士)」に相談する手段もあります。社会保険労務士とは法律(年金)の専門家で、障害年金に必要な書類の準備から申請手続きなど、多くのサポートを受けられます。相談の段階で多くは無料で相談できますが、実際にサポートを依頼する場合は有料となることがあります。事前に確認しましょう。
申請をしたが、障害年金が受給できなかった、あるいは更新の際に不支給になったという場合の対応が気になる方もいると思います。
年金の決定に関して納得がいかない場合には、審査請求をすることができます。
審査請求は不支給などの決定を知った日から3ヶ月以内におこないます。その決定に対して納得がいかない場合には、決定を知った日から2ヶ月以内であればさらに再審査請求をおこなうことも可能です。
審査請求をすることで決定が覆ることもありますので、納得がいかないという場合には検討してみるといいでしょう。
障害認定日のときに障害年金の受給要件を満たしていたが、申請をされていなかった場合にはさかのぼって請求できるのか分からないという方も多いかもしれません。
「認定日請求」は障害認定日から相当程度経過している場合であっても、請求することができます。ただし、時効があるためさかのぼって受給することができるのは5年分までとなっているため、注意が必要です。
障害年金は受給要件を満たすことが必要です。また障害基礎年金と障害厚生年金では受給要件が異なりますので注意が必要です。
例えば、障害基礎年金では初診日の時点で65歳以上の方は受給要件を満たさないため、受給することはできません。また、障害基礎年金では国民年金に加入していない20歳未満の方でも受給できる可能性がありますが、障害厚生年金では初診日に厚生年金に加入していることが受給要件となっています。
障害年金の制度が複雑なため自分が該当しているか確認したい方は、年金事務所などで確認しましょう。
傷病手当金とは、企業などに勤めている方がけがや病気などで働くことができなくなった際に受給できる健康保険の手当金のことです。
障害基礎年金と傷病手当金は同時に受給できますが、障害厚生年金の場合、基本的に傷病手当金と同時に受給できません。ただし、障害厚生年金の日額が傷病手当金の日額に満たない場合はその差額分が支給される場合があります。
また、障害手当金(一時金)を受給するときは、傷病手当金の合計が障害手当金の総額に達するまでの期間の間は傷病手当金が受給されません。
障害があって働くことに困難を感じている方に向けて、働くことをサポートする支援機関に「就労移行支援事業所」があります。
LITALICOワークスでは全国に100を超える事業所を展開し、就職支援をおこなっています。一人ひとりの状況や働き方の希望をうかがったうえで自分らしく働くためのサポートをおこなっています。
LITALICOワークスでは自己理解、体調安定、ストレスコントロールなどプログラムの提供、企業インターン(一定期間企業で試しに働く機会)など、その人に合ったサポートを提供しています。
ほかにも、自分に合った職場探しから面接練習などの就職活動のサポートや就職した後も働き続けるためのサポートなど、一貫した支援をおこなっています。
「体調優先で働きたい」「自分に合う仕事を見つけたい」「居心地のいい職場で働きたい」などご希望がある方はぜひLITALICOワークスまでご相談ください。一緒に自分に合う働き方を見つけていきましょう。
障害年金は、病気やけがで仕事や生活などに制限があり困ったときに助けとなる制度です。
障害年金を受給するには受給要件を満たす必要があります。申請の手続きを経て、障害年金の受給ができると日常生活への負担を軽くすることができます。
障害年金の制度が複雑で申請に不安がある方は、お住まいの自治体の窓口や年金事務所、民間の社会保険労務士などに相談しながら進めていくといいでしょう。
「再就職したいけど、体調や人間関係に不安がある」「今の職場に復職し、働き続けられるか不安」など仕事のお悩みがあれば、お気軽にLITALICOワークスまでお問い合わせください。
監修者
社会保険労務士
川島 嘉子
社会保険労務士事務所に約7年間勤務。主に労務業務を行っていたが、5年前より障害年金の申請サポートを中心に行っている。
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