就労継続支援A型とは、障害のある方が自身の障害や体調にあわせて、雇用契約を結んだ上で働く機会を支援する福祉サービスのひとつです。
この記事では、「就労継続支援A型」について、以下のポイントについて解説していきます。
- 就労継続支援A型とは、どのような福祉サービスなのか?
- どのような仕事内容で、どの程度給料がもらえるのか?
- どんな人が、どうすれば利用できるのか?
- 事業所の選び方のポイントは?
就労継続支援A型とは、障害のある方が自身の障害や体調にあわせて、雇用契約を結んだ上で働く機会を支援する福祉サービスのひとつです。
この記事では、「就労継続支援A型」について、以下のポイントについて解説していきます。
目次
就労継続支援A型とは、障害者総合支援法で定められた就労支援サービスの一つです。
就労継続支援A型は、障害のある方へ上記の内容を提供することを目的としています。
就労継続支援A型の場合、事業所(支援を受けられる場所)と直接雇用契約を結んだうえで、自分にあった仕事に従事することができます。
もちろん、その労働の対価として給料(賃金)をもらうことができ、最低賃金も保証され、勤務する日数・時間数によって社会保険・雇用保険への加入義務もあります。
比較的、一般企業で働く(以下:一般就労)のと近い形で働くことができます。そのため、将来的に一般企業への就職を目指すための準備を整えることも可能です。
就労継続支援A型の事業所で働く場合、仕事内容や給料はどうなっているのか、などについて解説します。
就労継続支援A型事業所での仕事内容は事業所によって異なりますが、よくみられる仕事内容には以下のようなものがあります。
勤務中は、ご自身の状態を見極めながら、個性や得意分野を伸ばせるようなサポートを受けながら、仕事を進めていくことになります。
仕事内容は、事業所によって異なります。
事業所の選び方のポイントについては、記事の後半で詳しくお伝えしています。
勤務時間や日数は、事業所や仕事内容によって異なります。
その事業所の考え方や仕事内容にもよりますが、体調等の状況や希望する収入などを踏まえて、勤務時間を調整してくれるところもあります。
就労継続支援A型では、希望にあわせて働き方を選ぶことができます。
就労継続支援A型事業所と雇用契約を結ぶと、法律で定められた最低賃金が保障されています。
参考までに、令和3年度の地域別最低賃金は、東京:1,041円、大阪:992円、福岡:870円となっています。
就労継続支援A型は、雇用契約を結ぶことになるので、一般企業と同様に社会保険・雇用保険が適用されます。
そのため、就労継続支援A型の手取りは、給料から(適用されている方は)雇用保険料、健康保険や厚生年金が天引きされて受け取ることになります。
就労継続支援A型は働く場であるとともに、福祉サービスでもあるため利用料が発生することがあります。利用料に関しては、後半で詳しく解説しますが、全員が支払わなければいけないという訳ではありません。
利用料は所得に応じて自己負担の上限額が決められており、0円、9,300円、37,200円のいずれかが該当しますが、自己負担額無料で利用されている方が多いようです。
就労継続支援A型の利用者の方は、A型事業所からの給料と、生活保護や障害年金を組み合わせながら生活している方もいらっしゃいます。
ご家族のサポートを受けながら同居している方もいれば、おひとりで生活されている方もいます。
就労継続支援A型でのご自身の給料に加えて、様々な制度を利用し、各方面からのサポートを活用しながら生活している方が多いようです。
就労継続支援A型の対象となるのは、原則18歳以上65歳未満の方で、身体障害・知的障害・精神障害のある方、または難病のある方です。
具体的に確認していきましょう。
就労継続支援A型の対象者は下記の通りです。
自治体によって、対象者の条件が若干異なるケースもあります。
詳しい情報については、各自、市区長村の窓口に相談してみましょう。
就労移行支援は原則2年の期限が設けられていますが、就労継続支援については、特に利用期間・利用期限などは定められていません。
また、就労移行支援・就労継続支援A型ともに、年齢制限(原則18歳~65歳未満)が定められているので注意が必要です。
就労継続支援A型について解説を進めてきましたが、他にも就労支援サービスはあります。
それが「就労継続支援B型」と「就労移行支援」です。
それぞれのサービスの主な違いは以下の通りです。
それぞれ確認してみましょう。
就労継続支援A型の特徴を、先程の4つのポイントにあわせて確認してみます。
就労継続支援B型は、一般企業やA型事業所での就労が困難な方障害のある方や難病のある方を中心に、年齢や体力的に一般企業で働くことが困難な方を対象にした福祉サービスです。
A型と大きく違う点は、事業所と雇用形態を結ばないことです。
賃金という形ではなく、軽作業に対する成果報酬が工賃として支払われます。
雇用契約がないため、工賃は国の最低賃金を下回るケースも多いですが、週に数回、1日数時間など、自分の体調にあわせて、無理のないペースで働くことができます。
就労移行支援は、就労継続支援とは目的が少し異なります。
就労移行支援では、一般企業への就労をめざし、仕事に必要な知識や能力を習得するための職業訓練、職場探しや面接対策、志望理由書添削などの就職活動のサポート、職場定着支援などを受けることになります。
就労継続支援A型・B型を利用した後に、一般企業への就職を目指すことも可能ですが、サービス利用終了者に占める一般就労への移行率を比較してみると(令和元年)
それぞれの事業所ごとに目的がことなるため自身に合った事業所を選ぶことが大事です。
就労移行支援は、一般企業で働くことを目指して、訓練やサポートを受けることを目的にしているため、原則、工賃や賃金が支払われることはありません。
ただし、例外もあり、事業所によっては「労働の対価として収入を得ることの達成感・充実感」を経験したり、「金銭管理を学ぶ」ことも訓練の一部と考え、工賃を支払っている場合もあります。
ここでは、就労継続支援A型の利用方法と利用料について解説していきます。
就労継続支援A型を利用する際の流れを紹介します。
前提として、まずは主治医としっかり相談することが大切です。
必ず主治医の許可が出てから事業所が出している求人を探し、応募しましょう。
求人の探し方や面接などの選考については、ここでは省略させて頂きますが、基本的には一般的なアルバイト等の応募の流れ(履歴書や面接など)と変わりはありません。
求人はネットで調べたり、ハローワークや市区町村の障害福祉窓口などで紹介してもらうことができます。
応募前に見学や体験をさせてもらうこともできるところも多いので、無理せず通えそうな事業所を探してみましょう。
応募した事業所から採用の内定をもらえた場合は手続きに入ります。この手続きが、アルバイト等とは大きく異なるので注意が必要です。
まずは、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で「就労継続支援A型」の福祉サービスを利用したい旨を伝え、サービス利用の申込みをおこないます。
利用申請を行うと、担当者から現状の確認や聞き取りなどがあります。
どのような支援が適切・必要なのかを調査し、サービス内容を検討することになります。
障害福祉サービスを利用するためには、障害の程度なども踏まえた上で「サービス等利用計画書」を作成し、提出する必要があります。
サービス等利用計画書とは、障害福祉サービスを利用するにあたって、どのような援助を希望するのか?解決すべき課題は何か?そのために必要な援助方針や支援計画はどうするか?などをまとめた計画書です。
この計画書は、家族・自分で作成することもできますが、難しい場合は、特定相談支援事業者に作成を依頼する事もできます。
必要書類を全て提出し、市区町村より無事支給が決定すると「障害福祉サービス等利用者受給者証」が交付されます。
この受給者証は、就労継続支援A型に限らず、様々な障害福祉サービスを利用する際に必要な証明書となっています。
受給者証が交付されると、内定をもらっていた事業所と雇用契約を結び、働くことができるようになります。
手続きを始めてから働き始めるまで、およそ1ヶ月程度はみておくのが無難です。
就労継続支援(A型・B型とも)制度の利用料は、厚生労働省によって定められています。
利用料は、事業所や利用日数によって変わりますが、全額負担ではなく、市区町村の補助金で9割負担してくれるので、利用者は1割負担で利用できる仕組みになっています。
また、残りの1割負担についても、全員に支払い義務がある訳でありません。
自己負担額は、前年度の所得(世帯収入)に応じて、4つのパターンに分けられ、1ヶ月の負担上限月額が定められています。
利用サービスの内容にかかわらず、上限を超える利用料を支払うことはありません。
最後に、就労継続支援A型事業所の選び方についてご紹介します。
出来る限り自分にあった事業所を選ぶために、チェックすべきポイントを5つお伝えします。
まずは、仕事内容です。
事業所によって、仕事内容は変わります。
また、例えば「接客」「販売」「データ入力」といっても、実際に行う作業内容は、業種や店舗の形態により異なることがあります。
事前にネットなどで調べることも大切ですが、応募前に事業所の見学、できれば数日間体験させてもらい、ご自身で実務を経験したうえで、自分に合った仕事内容か確認することがポイントです。
仕事内容と合わせて大切なのが、事業所の雰囲気です。
雰囲気が良い・悪いというよりは「事業所の雰囲気が自分にあっているか?」が重要です。
他にはどのような方々が利用されているのか、働いているスタッフの様子、事業所内の環境や雰囲気など、あなたがストレス少なく、働き続けられそうか、こちらも見学や体験を通じてチェックする事をおすすめします。
将来的に一般企業への就職を考えているのであれば、その事業所の一般就労への移行率も確認しておきましょう。
就労継続支援A型事業所の場合、一般就労への移行が最優先事項というよりも、働く方がその事業所で安定して、収入を得ていくことに重きを置いていることも少なくありません。
一概に、移行率が高いから良いということではありませんが、その事業所の方針・サポート体制も含めて、移行率は確認しておくとよいでしょう。
お金の話は、確認しづらいかもしれませんが、契約前に必ず確認しておきましょう。
サポートを受けながらとは言え、労働に対しての対価は、適切でなければいけません。
また、自分が働いて手にした給料は、今後のやる気にも繋がる大切な要素です。
自分の働きに応じて適切な金額が支払われる仕組み・契約になっているのか、必ず確認しましょう。
就労継続支援A型の場合、事業所と雇用契約を結ぶため、基本的には国が定める最低賃金が保障されます。
ただ、例外として、事業所と利用者本人が、同意した場合に限り※、最低賃金以下の給料で、雇用する事が認められる場合があります。
※別途、都道府県の労働局長の許可が必要
万が一、最低賃金額よりも低い場合はきちんと納得できるかが大切です。
事前に必ず確認するようにしましょう。
事業所までのアクセスも重要なポイントです。
週に複数回通うことになりますので、あまり遠すぎる事業所の場合、長く通い続けていると負担に感じ始める方も多くいます。
また、体力的、時間的な問題ももちろんですが、金銭面、交通費についても確認が必要です。
いくらかかるのかはもちろんですが、その事業所に交通費の支給があるのか?支給があったとしたら上限はないか?必ず事前に確認しておきましょう。
就労継続支援A型をはじめ、障害のある方の就労を支援するサービスにはそれぞれ特徴があります。
就労継続支援A型だけでなく、B型や就労移行支援についても、それぞれの違いや特徴、目的をしっかり理解したうえで、自分に一番あったサービスは何なのか、しっかりと考えておくことが大切です。
目的は、利用者によって様々だと思いますが、A型事業所を利用する事で、ご本人に合った働き方を実現できている方は、全国にいらっしゃいます。
これからの将来を考える上で、働き出すことを視野に入れられている方は、市区町村の窓口に相談してみたり、気になる事業所に直接問い合わせてみてはいかがでしょうか。
監修者
社会保険労務士 行政書士
高橋 悠
行政書士事務所にて約8年間、介護・障害福祉サービス事業所の立ち上げ・運営支援に携わった後、2016年10月に独立開業。顧問先のうち7割以上は介護・障害福祉サービス事業所介護・障害福祉サービス事業所であり、別会社「合同会社サニープレイス」にて小規模保育所B型及び企業主導型保育所を経営している。
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