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双極性障害(躁うつ病/双極症)とADHD(注意欠如多動症)の違いを解説|それぞれの原因とは?

更新日:2024/08/01

双極性障害(双極症)(※1)とADHD(注意欠如多動症)(※2)は、症状や特性による困りごとで似ている点がありますが、診断としては別のもののため、対処法も異なります。

 

今回は双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)の症状や特性について、似ている点や原因、困りごとに対処して仕事を続けるためのポイントなどについて解説します。

 

(※1)双極性障害は現在、「双極症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「双極性障害」といわれることが多くあるため、ここでは「双極性障害(双極症)」と表記します。
(※2)以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事では以下、ADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)はどこが違う?

まず、双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)のそれぞれの症状や特徴について解説します。

双極性障害(双極症)とは?

双極性障害(双極症)は、躁(気分が激しく高揚している)の状態と、うつ(気持ちが激しく落ち込んでいる状態)の状態を繰り返す症状が現れます。

 

過去には「躁うつ病」とも呼ばれていました。

 

しかし、双極性障害(双極症)はうつ病とは違い、治療方法も異なっています。

 

具体的な症状を、躁(そう)の状態とうつの状態に分けてご紹介します。

 

躁の状態のときに現れる症状

  • 偉くなったような気がする
  • 人の意見を聞き入れない
  • 眠らなくても平気に感じる
  • アイデアが次々と浮かぶ
  • よく話すようになる
  • まわりの人が皆友だちに思えてくる
  • 怒りっぽくなる
  • お金を使いすぎる
  • じっとしていられない
  • すぐに気が散ってしまう
  • なんでもできるような気がする など

うつの状態のときに現れる症状

  • 気持ちがひどく落ち込む
  • 疲れやすくなる
  • 生きる気力がなくなる
  • 食欲がなくなる
  • なにもしたくない気分になる
  • ずっと寝てばかりいる
  • 何に対しても楽しめない
  • 考え方がネガティブになる など

上記の躁とうつの症状が交互に起こる場合、双極性障害(双極症)の可能性があります。

 

また、双極性障害(双極症)は「双極Ⅰ型」と「双極Ⅱ型」のふたつのタイプに分かれています。

 

「双極Ⅰ型」は、自分ではコントロールができないほどの躁状態が見られる点が特徴で、治療のために入院が必要になることもあります。

 

「双極Ⅱ型」は軽躁と呼ばれる状態とうつ状態を繰り返しくため、「双極Ⅰ型」に比べて本人も周囲も状態を把握しづらく、気が付いたら躁状態が悪化していたり、うつ症状がつらくなっていたということがあります。

 

そのため「双極Ⅱ型」と「双極Ⅰ型」はどちらの方が軽いと比べられるものではなく、それぞれに困りごとが起こります。

 

上記の症状が当てはまり、日常生活で困難や辛さを感じている方は、できる限り早めに医療機関へ相談することをおすすめします。

ADHD(注意欠如多動症)とは?

ADHD(注意欠如多動症)は、不注意、多動性、衝動性などの特性があり、日常生活に困難を生じる発達障害のひとつです。特性のあらわれ方によって多動・衝動性の傾向が強いタイプ、不注意の傾向が強いタイプ、多動・衝動性と不注意が混在しているタイプなど主に3つに分けられ、これらの症状が12歳になる前に出現します。特性の多くは幼い子どもにみられる特徴と重なり、それらと区別することが難しいため、幼児期にADHDであると診断することは難しく、就学期以降に診断されることが多いといわれています。また、個人差はありますが、年齢と共に多動性が弱まるなど、特性のあらわれ方が成長に伴って変化することもあります。

 

それぞれの特性と、それによる困りごとをご紹介します。

 

多動・衝動性の傾向が強いタイプに見られる特性と困りごと

  • 相手の気持ちを考えて発言することが困難に感じる
  • 衝動的に買い物をしてしまう
  • 場に合わない言動をしてしまう
  • 他人のものを勝手に借りる
  • つい話をしすぎてしまう
  • ルールが守れない
  • 並んで待つ行為が苦手
  • 会話に集中することができない
  • じっと座っていることが苦痛
  • 人の話を最後まで聞けない など

不注意の傾向が強いタイプに見られる特性と困りごと

  • ものをすぐに失くしてしまう
  • 簡単なミスを繰り返す
  • 話しかけられたことに気づかない
  • 遅刻をする
  • ものごとをやり遂げられない
  • 期限を守って作業をすることができない
  • すぐに気が散って集中できない
  • 忘れ物が多い
  • 机や部屋の片づけができない など

多動・衝動性と不注意が混在しているタイプに見られる特性と困りごと

混合型は、不注意優勢型と多動性・衝動性優勢型の特性がどちらも見られるタイプです。

 

人によって、特性の現れ方はさまざまで、不注意優勢型の特性が目立つケースもあれば、多動性・衝動性優勢型の特性が強く出ることもあります。

双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)で似ている点

ここまで挙げてきたように、双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)はまったく違うものですが、双極性障害(双極症)の躁状態や軽躁状態での行動と、ADHD(注意欠如多動症)の行動で似ている点が見られるため混同されることがあります。

 

似ている点としては

  • 多弁、多活動
  • 衝動的な行動
  • 落ち着きのなさ
  • 不注意

などが挙げられます。

双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)の診断に不安がある場合

双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)は似ている点もありますが、全く異なるものであり、対処法も異なります。ご自身の症状やこれまでの経過から、現在の診断や治療法に不安を感じる場合には、自己判断せずまず主治医に相談しましょう。

 

双極性障害(双極症)やADHD(注意欠如多動症)は精神科やメンタルクリニックで受けることができます。

双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)|それぞれの原因は?

この項目では、双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)の原因について解説します。

双極性障害(双極症)の原因

双極性障害(双極症)は、100人に1人の割合で発症すると報告されており、遺伝的な要因が関係するともいわれていますが、原因は明確には分かっていません。

 

また、ストレス双極性障害(双極症)を発症するきっかけになっているのではないかとも考えられています。甲状腺機能亢進症など、特定の病気に伴って、双極性障害の躁症状が現れることもあります。

ADHD(注意欠如多動症)の原因

ADHD(注意欠如多動症)のある方の割合は、学童期の子どもの3〜7%、成人で2.5%といわれています。

 

脳の器質的な偏りによるものではないかと考えられている一方で、遺伝的な要因や環境要因など、さまざまなものが複合的に関係すると考えられています。

ADHD(注意欠如多動症)は生まれつきのものではありますが、どの特性が強く表れるかは、環境にも左右されます。

双極性障害(双極症)・ADHD(注意欠如多動症)と付き合いながら仕事を続けるコツ

双極性障害(双極症)やADHD(注意欠如多動症)と上手く付き合いながら仕事を続けるポイントをご紹介します。

双極性障害(双極症)と付き合いながら仕事を続けるコツ

双極性障害(双極症)の症状がある方の場合は、下記の3つを意識しましょう。

 

生活リズムを整える

双極性障害(双極症)と付き合いながら仕事を続けるためには、起床、食事、睡眠の時間をなるべく決めた時間に行うことが大切です。

 

双極性障害(双極症)があると、気持ちが高ぶる躁状態と、うつ状態が交代でやってくるため、身体のリズムを調整している体内時計が乱れやすいといわれています。

 

そして、体内時計が乱れると、夜に眠れなくなったり、疲労感をおぼえたりすることがあり、仕事に影響が出る可能性が考えられます。

 

とくに、睡眠時間が少なくなると躁の状態が起こりやすくなるため注意が必要です。

 

できるだけ心身に負担がかからないような仕事・作業にする

双極性障害(双極症)がある方は、できる範囲で心身に負担がかからない仕事や作業を選ぶといいでしょう。

 

例えば、下記のような仕事や作業が挙げられます。

  • 忙しい時期と余裕がある時期の差があまりない
  • 残業が少ない
  • ストレスがかかりすぎない
  • シフトが不規則でない
  • 自分のペースで進められる など

反対に人の出入りが多かったり、その場に合わせた対応が求められたりする職場は、負担になる可能性があります。

 

薬の服用を勝手にやめない

双極性障害(双極症)の症状がある場合、気分安定薬や抗精神病薬などの薬を処方されることがあります。

 

しかし、躁状態になると、気分が高揚することで薬を飲まなくなるケースが見られます。

医師に相談せずに服用を止めると、症状が悪化して仕事を続けることが困難になる恐れがあるため、自己判断をしないよう注意が必要です。また服薬継続ができるような環境やサポート体制を整えておくことも大切です。

ADHD(注意欠如多動症)と付き合いながら仕事を続けるポイント

ADHD(注意欠如多動症)の症状と付き合いながら仕事を続けるために意識したいポイントは下記の通りです。

 

症状の傾向を把握して対策をする

まずは、自身のADHD(注意欠如多動症)の症状を把握して、特性に合わせた対策を行いましょう。

 

例えば、忘れっぽい特性が目立つのであれば「メモをとること」や「しなくてはいけないことをリストにするクセをつける」などが挙げられます。

 

また、集中力がすぐに途切れてしまう場合は「自分のデスクに仕切りをつける」「物音や人の出入りが少ない席に変えてもらう」など、業務に意識を向けやすい環境作りを試みましょう。

 

強みを活かせる仕事を選ぶ

ADHD(注意欠如多動症)の症状がある方は、自身の強みを活かせる職業を選ぶことも大切です。

 

例えば、発想力や創造性に優れている方は、デザイナーやイラストレーターのようなクリエイティブな業界で活躍している方もいらっしゃいます。

 

また、興味のある分野において高い集中力を発揮できる方であれば、プログラマーやエンジニア、研究者などの職業に就いている方もいらっしゃいます。

 

反対に、スケジュール管理を求められる仕事や、細かい作業が多い事務作業などは、上手くできないと感じる可能性があります。

就職や職場復帰は専門機関の支援の利用・サポートを検討する

双極性障害(双極症)やADHD(注意欠如多動症)などがあり、働くことに困難や苦痛を感じる場合は、無理せず休職や退職を検討することも視野に入れましょう。

 

退職後に再就職できるか不安、という方は、就労移行支援を活用するといいでしょう。

 

就労移行支援は、一般の企業へ就職を目指す障害がある方をサポートするものです。例えば、就職に必要となるスキル向上の取り組みだけでなく、就労後に継続して働くためのフォローを行っています。

 

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双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)の違いについてまとめ

双極性障害(双極症)とADHD(注意欠如多動症)は異なる疾患ではあるものの、似た点があるため、自身で見分けることは困難です。

 

もしも「双極性障害(双極症)かADHD(注意欠如多動症)かもしれない」と思ったら、症状を悪化させないために、早めに医療機関を受診して診断をつけることが大切です。

 

また、双極性障害(双極症)やADHD(注意欠如多動症)と付き合いながら仕事を続けるときは、決して無理をしないように心がけることが大切です。

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更新日:2024/08/01 公開日:2022/03/08
  • 監修

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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