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お役立ち仕事コラム

双極性障害の方が仕事を続けるポイントや適職の見つけ方を解説

更新日:2023/10/14

自分でもコントロールできないほどの気分の波によって、仕事の成果にムラが出てしまったり、人間関係がうまくいかないことが多かったりする場合、その背景に双極性障害の影響があるかもしれません。

 

双極性障害は、気分が高揚する「躁(そう)状態」と、反対に気分が落ち込む「うつ状態」を繰り返す精神疾患で、以前は躁うつ病と呼ばれていました。

 

双極性障害の症状が仕事に影響することもあるため、「仕事が続かない」「働けないのでは」と悩む方もいます。

 

しかし、自身の症状を把握した上で、無理なく働くための工夫をしたり向いている仕事を見つけたりすることで、安定して働き続けている方も多くいます。

 

この記事では、双極性障害の方が仕事でよくある悩みや向いている仕事を探すポイントなどを紹介します。

双極性障害(躁うつ病)とは

双極性障害の症状「躁状態」と「うつ状態」

双極性障害は「躁状態」と「うつ状態」を繰り返す精神疾患です。

 

「躁状態」では、気分の高揚が一定期間続きます。その結果として「睡眠時間が短くても活発に活動できる」「いつもより気分が高揚した状態が続く」「散財する」など社会生活に影響が出ることもあります。また、本人は調子がいいと感じており、実際に次々と仕事をこなせるため、躁状態だと気づくのが遅くなる場合もあります。

 

一方で「うつ状態」では、気分の落ち込みが強く「これまでこなしてきた活動ができなくなる」「好きだったことも楽しめない」「自分に価値がないと感じる」などの症状が表れることがあります。

 

また、双極性障害には、大きく分けてⅠ型とⅡ型があります。

 

双極性障害(躁うつ病)にはⅠ型とⅡ型がある

 

双極性障害Ⅰ型では、仕事や身の回りの環境においても大きな支障がでるほどの躁状態を引き起こします。例えば、職場で大声でしゃべり、それを遮られると怒り出すといったことがあるといわれています。

 

一方、双極性障害Ⅱ型では、双極性障害Ⅰ型のほど激しい躁状態はみられず、普段より多く話すようになったり睡眠時間が短くなったりと、少し快活・興奮気味程度の軽躁状態があらわれます。

 

ただし、双極性障害Ⅱ型の方が困りごとが少ないということではなく、双極性障害Ⅰ型でも双極性障害Ⅱ型でも、本人はつらい思いを抱えていることが多くあります。

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双極性障害の方の仕事の悩みや困りごととは?

双極性障害の躁状態は、気分が高揚し、活動的な状態が一定期間続きます。

 

そのため、仕事に影響が出やすいものとして、以下のようなことが考えられます。

  • 頭の回転が早くなった気がする
  • 次々とアイデアが湧いてくる
  • 人の意見に耳を貸さなくなる
  • 計画を立てずに仕事を進めてしまう
  • 仕事中に感情的になることがある
  • 休憩を取らず仕事に没頭する
  • 根拠がなく自信過剰になる など

双極性障害の躁状態では、本人は「調子がいい」と感じているため、自身の症状を認識しづらい傾向があります。

 

一方、双極性障害のうつ状態になると、躁状態のときとは対照的に気分が落ちこむことにより、つらい気持ちが出てくることがあります。

 

仕事では以下のような困りごとが考えられます。

  • 心身共に苦しい状態が一日中かつ何日も続く
  • 仕事に集中できなくなる
  • 普段しないようなミスが多くなる
  • 人と関わることを避けがちになる
  • 常に疲労感を抱えている
  • 仕事を休みがちになる など

また、うつ状態のときに「躁状態のときの自分の言動」を思い出し、「職場や同僚に迷惑をかけたのでは」などとますます落ち込む場合もあります。

 

双極性障害では、躁状態とうつ状態の症状により人が変わったかのように話し方や行動に変化が表れることもあるため、職場で同僚や上司、取引先の人などに誤解をされ、人間関係に苦しさを感じてしまうこともあります。

双極性障害の方が仕事を続けるための4つのポイント

双極性障害の症状が安定せずに、仕事に行けなくなったり転職を繰り返したりと、仕事が続かないことに悩んでいる方も少なくありません。

 

この章では、仕事を続けるために双極性障害の方ができる自己対処の一部を紹介します。「双極性障害と付き合いながら、働くことはできないのでは……」などの悩みがある方はぜひ参考にしてください。

1.主治医と相談する

双極性障害の治療では、薬物療法を中心に行われます。双極性障害の方が安定して仕事を続けるには、自身の工夫や周囲の配慮とともに症状の起伏を少なくするための薬物療法も有効であるといわれています。

 

うつ状態では服薬していても、躁状態になった際に「服薬はもう必要ないのではないか」「薬の量を減らしてもいいのではないか」と思ったとしても、自分だけで判断することはせずに必ず主治医に相談しましょう。また、飲んでいる薬の副作用や量などについて気になることがある場合も、そのことを主治医に相談し、納得したうえで治療を続けていくことが大切です。

 

なお、双極性障害は、症状を落ち着かせるだけでなく再発を防止するためにも、長期的に服薬を続けることが望ましいとされています。双極性障害では、躁状態で気分が高揚すると服薬をやめてしまう方もいます。しかし、自己判断で服薬を中断してしまうと次のうつが来たときにつらくなったり、再発を繰り返すと症状が重くなったりするといわれています。

2.生活リズムを整える

双極性障害の方は、躁状態とうつ状態が不定期に訪れるため、体内時計が乱れやすいといわれています。体内時計が乱れると、入眠困難や中途覚醒などの睡眠障害を引き起こしたり、双極性障害の症状を悪化させたりする可能性が高まります。体内時計を安定させるには、生活リズムを整え快適な睡眠を取ることが大切です。

 

そのためにできることとしては、以下のようなものがあります。

  • 毎日同じ時刻に起床する
  • 起きたら太陽の光を浴びる
  • 定期的に軽い運動をする
  • 寝る前にカフェインやアルコールを摂らない
  • ぬるめのお湯で入浴する
  • 音楽を聴くなど、リラックスする時間を作る
  • 自然に眠くなったらベッドに入る など

日常生活の中で、自分ができそうなことを少しずつ取り入れていくといいでしょう。

3.体調変化のサインを把握する

体調変化のサインを把握することも大切なポイントです。双極性障害の躁状態・うつ状態になるときのサインが分かると「残業を減らす」「予定をセーブする」などの自己対処ができるようになります。

 

しかし、躁状態の場合、自分では気づかないことも多くあります。そのため、あらかじめ周りの人に躁状態・うつ状態のサインが見られたときは声をかけてもらうなどと伝えるといいでしょう。

4.職場で困ったときは相談する

自己対処だけでは難しいものについては、上司や人事担当者などに合理的配慮(※)について相談してみましょう。

 

(※)合理的配慮…障害のある方が仕事をする上での困難さを、周りからのサポートや環境の調整によって軽減するための配慮のことをいいます。合理的配慮は、事業主が過重な負担とならない範囲で提供する義務があると障害者雇用促進法で定められています。

体調に関する相談がしたいときは、産業医や社内のメンタルヘルス窓口などに相談するといいでしょう。また、社内で相談しづらい場合は、社外の相談窓口を使う方法もあります。

 

厚生労働省の「こころの耳相談」では、電話やメール、SNSなどで悩みの相談ができます。ほかにも、障害のある方の就労支援機関でも相談ができる場合がありますので、後の章で詳しく紹介します。

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双極性障害の方の適職探しの3つのポイント

前提として、双極性障害と診断された方すべてに合う仕事というものはありません。適職は、興味関心やスキル、希望する働き方、価値観などによって一人ひとり異なります。

 

そのため「双極性障害の症状による困りごとを少なくしたい」「やりがいを感じられる職場で働きたい」「これまでのスキルを活かしたい」など、自分が仕事に対して大切にしたいことを明確にすることが大切です。

 

この章では、その中で双極性障害の症状があっても困りごとが生じにくい職場を探すためのポイントを3つ紹介します。

1.自己分析する

自己分析で大切なポイントは、以下の通りです。

  • 自分の症状を知る
  • 自己対処を考える
  • 合理的配慮の内容を検討する

双極性障害の症状と上手く付き合っていくためには、自分の体調変化のサインを把握することが大切です。

 

その日の「気分」「体調」「睡眠時間」「活動内容」「活動量」などを記録してみましょう。記録することで、体調変化のサインが掴みやすくなり、事前の対処法についても考えられるようになります。

 

例えば、うつ状態になる前の記録を読み返してみて、「仕事の量や時間が増えている」「休日の活動量が増えている」「睡眠時間が短くなる」など自身のサインが分かると仕事の量や時間が増えたときは、意識して休憩を取ることや業務量を上司と相談することなどの対策を考えやすくなります。

2.障害者雇用で働くことを検討する

一般雇用のほか、障害者雇用で働くという選択肢もあります。

 

障害者雇用で働くことのメリットは、職場に障害のことを伝えた上で働くことができるため、症状や特性に合わせた働き方がしやすく、合理的配慮も受けやすいという点です。

 

ある調査では、精神障害の方が障害者雇用求人で働いた場合の定着率が高いというデータも出ています。

 

 

そのデータによると、障害者雇用求人で働いた方の1年後の定着率が64.2%、一般雇用で精神障害を開示して働いた場合は45.1%、精神障害を非開示して働いた場合は27.7%という結果が出ています。

 

もちろん、自分の症状や希望する働き方などを踏まえて、どのような働き方が最適かは変わってきます。上記はあくまでも働き方を検討する際の参考データとしてみてください。

 

なお、障害者雇用で働くには、障害者手帳を取得する必要があります。双極性障害の方は「精神障害者保健福祉手帳」が対象となります。精神障害者保健福祉手帳の申請を検討されている場合は、主治医やお住まいの自治体(障害福祉窓口など)に相談しましょう。

3.就労支援機関を活用する

双極性障害の方が適職を探すために、就労支援機関を活用する方法もあります。

 

就労支援機関には「障害者就業・生活支援センター」「就労移行支援事業所」などがあります。就労支援機関では、就職相談をはじめ、自己分析などのプログラムや、働くために必要なスキルや体調管理方法などの習得といったようなサポートが受けられます。

 

就労支援機関ごとにサポート内容や特徴が異なりますので、詳細は次の章で紹介します。

 

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双極性障害の方が適職探しに活用できる就労支援機関

「就職活動がうまくいかない」「向いている仕事の探し方がわからない」「どのような職場なら長く続けられるかを知りたい」といった悩みがある方は、適職探しをサポートする就労支援機関を活用してみましょう。

 

ここでは、双極性障害の方の仕事探しに活用できる支援機関を4つ紹介します。

ハローワーク

ハローワークには、双極性障害など障害のある方の就職をサポートする窓口(専門援助部門など)があります。

 

就職に関する相談をはじめ、特性や希望などを踏まえたうえでの求人紹介、応募書類添削や模擬面接、就職に関するセミナーや合同面接会の案内などが受けられます。

 

障害者手帳がなくても相談することはできますが、障害者雇用求人(障害のある方のための求人)に応募するには障害者手帳が必要です。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の仕事と生活の両側面から相談に乗り、支援をしてくれる機関です。通称「なかぽつ」「就ぽつ」などとも呼ばれています。これから仕事を探す方はもちろん、在職中の方も利用できます。

 

障害者手帳がなくても相談できる場合がありますので、仕事面や生活面など複数の悩みごとを抱えている場合は、まずは最寄りの障害者就業・生活支援センターに相談してみるといいでしょう。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある方に対して働くための専門的な職業リハビリテーションを提供している機関です。地域障害者職業センターは障害者手帳がなくても相談できます。

 

職業相談・職業評価をもとに働くためのスキル習得のプログラム提供や、適職を探すためのサポートなどをしています。また、働いた後もジョブコーチと呼ばれる専門家が職場に出向き、本人や職場の上司、同僚に対して障害特性を踏まえたサポートを行っています。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業などへの就職を目指す障害や疾患のある方に向けて、就職に必要なスキル習得や就職活動への支援など一連のサポートをする福祉機関です。

 

就労移行支援には、以下のようなサポートがあります。

  • 自己分析(適職探しのための希望条件整理など)
  • 働くために必要なスキル習得
  • 応募書類の添削や面接練習
  • 体調管理やストレスコントロールなどのスキル習得 など

また、就労移行支援事業所では就職後も働く上で困ったときに面談を行ったり、本人と職場との間に入って解決法を一緒に考えたりする「就労定着支援(働き続けるためのサポート)(※)」が受けられます。

 

(※)就労移行支援を含む福祉サービスを利用していた事業所で就職後6ヶ月まで継続してサポートします。就職後7ヶ月~3年6ヶ月の期間についてはご本人の利用意思があれば、就労定着支援を受けることができます。(詳しくは就労定着支援に関するページをご確認ください)

 

【無料】就労移行支援・就労定着支援のサポートについて詳しく聞きたい

双極性障害の方の就職支援「LITALICOワークス」

 

LITALICOワークスでは全国に「就労移行支援事業所」を展開し、累計14,000名以上の障害のある方の就職をサポートしてきました。一人ひとりの症状や困りごと、希望する働き方などに合わせてサポートを提供しています。

 

双極性障害の方に対して、主に以下のようなサポートを行っています。

  • 自分の体調の波と悪化のサインを把握するための自己分析プログラム
  • 向いている仕事内容や職場環境を把握するための企業インターン(一定の期間、職場で働く体験をする) 
  • 双極性障害に対して理解のある職場の開拓 
  • 職場への双極性障害の理解を促進するための働きかけ など

LITALICOワークスは120ヶ所以上の事業所があります。その事業所によるネットワークを活かし、多数の企業とも連携しているため、企業インターンの機会なども多くあります。

「自分に向いている仕事を探したい」「障害や症状への理解がある職場で働きたい」「体調優先で働きたい」などのお悩みがある方はぜひLITALICOワークスに相談ください。

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次の章では、双極性障害の方がLITALICOワークスを利用して就職した事例について紹介します。

Aさん(双極性障害)が就職するまでの事例

Aさんは、大学生のころ双極性障害を発症し、療養して症状が落ち着いた後にスポーツイベントのスタッフとして仕事を始めました。

 

イベントスタッフの仕事では夜中に会場設営をしてほとんど眠らずに朝からまた仕事をするなど、勤務時間が不規則でした。無理なスケジュールで働くことも多くあり、双極性障害の症状が悪化したことがきっかけで退職しました。

 

今後の働き方に悩んだAさんは、どういった仕事が自分に向いているのかを知るために就労移行支援事業所「LITALICOワークス」を利用しました。

 

利用中は、双極性障害の症状による「体調の波」を把握するために、スタッフとともにセルフモニタリングを実施。天気・体調・睡眠時間・その日の取り組んだことなどを毎日記録しました。

 

そこから天気に体調が左右されることや体調がいい日に行動し過ぎて後日疲れが出ていることなど、Aさんの体調の傾向を可視化できました。

 

また、ほかの利用者とのグループワークや企業インターンにも参加して、仕事をする上で大事なポイントがいくつか見えてきました。

  • 人と関わることは好きだけど、長時間になると疲れてしまう
  • パソコンを使ったデスクワークが好きで、作業系よりも負担感が少ない。ただ、慣れないうちは過活動になる傾向がある
  • 疲れると症状が表れて体調の波が激しくなりがちである
  • 仕事において、相談できる人が固定で決まっていると安心する など

これらの特性を踏まえて、自分でできる対処法と、双極性障害のAさんへの合理的配慮として企業にお願いしたい配慮を整理しました。

 

自分でできる対処法

  • その日の体調の記録を続け、体調変化のサインを感じたら「休日や平日の夜は予定をいれない」など調整する

合理的配慮

  • 活動し過ぎを防止するため、時短勤務からスタートし、様子を見ながら勤務時間を伸ばす
  • 仕事について相談できる人を固定する
  • 体調の波や傾向を事前に共有し、体調に影響が出そうなときは業務量を調整する

その結果、アミューズメント施設の事務職に就職することができました。

 

最初は時短勤務(5時間)から開始し、最終的にフルタイム勤務となり、安定して働き続けています。

 

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双極性障害と仕事のまとめ

双極性障害は、躁状態とうつ状態を繰り返す精神疾患です。その症状によって、仕事に支障をきたす場合もありますが、自己分析をして自分に合った対処法や環境を見つけることで、仕事を続けながら上手く付き合っていくこともできます。

 

今の仕事でも、自己対処を考えて取り入れてみたり、人事や上司・同僚などに働きやすくなるためにどのような合理的配慮が得られそうかを相談してみたりするなど、できることから始めてみましょう。

 

それでも難しい場合には、就労支援機関へ相談するというのも選択肢のひとつです。双極性障害の方一人ひとりに合った職場環境の調整や、仕事探しについて第三者のアドバイスなどを取り入れることで自己理解が進み、仕事がしやすくなることがあります。もし、働きたいけれど不安な気持ちがある場合は、就労支援機関を活用してみてください。

 

LITALICOワークスでは、これまで双極性障害の方の就職を数多くサポートしてきました。「気分の波をつかみたい」「適職を探したい」などがありましたら、ぜひお気軽にLITALICOワークスへご相談ください。

更新日:2023/10/14 公開日:2020/07/21
  • 監修者

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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