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お役立ち仕事コラム

失語症とは?種類や原因、症状、リハビリ、コミュニケーションの工夫を解説

更新日:2024/08/12

「失語症」ときくと「話すことができない」疾患だと思われがちですが、「話す」ことだけでなく、「聴く」「読む」「書く」ことにも障害が生じる、言語障害のひとつです。そして、失語症にはさまざまなタイプがあり、特徴や症状の程度は人によって異なります。

失語症がきっかけで、今まで当たり前にできていたコミュニケーションに障害が生じることで、身近な日常生活や社会生活が思うように送れず戸惑いや不安を感じることがあるかもしれません。しかし、失語症を理解したうえでコミュニケーションにおける工夫をすることで、より日常生活や社会生活が送れるようになるといわれています。

 

ここでは「そもそも失語症って何?」「失語症は回復する?」「失語症があっても仕事はできる?」「誰に失語症を相談すればいいの?」といった疑問について解説します。

失語症とは?

失語症とは言語障害のひとつで、「話す」「聴く」「読む」「書く」といった言葉の働きに何らかの障害が生じる症状です。

失語症の具体的な症状としては

  • 頭では分かっていてもうまく言葉が出てこない
  • 言い間違えてしまう
  • 相手の話す内容について理解が難しい
  • メモを読んでも理解が難しい
  • 声に出して読むとたどたどしくなってしまう
  • 読み間違えてしまう
  • 文字を書くことが難しい

などが挙げられます。

 

失語症は言葉を理解する、言葉で伝えるといった言語機能をつかさどる、大脳にある言語中枢の損傷によって起こるといわれています。

失語症の方がコミュニケーションで困る場面

コミュニケーションで困る場面について、生活面と仕事面に分けて紹介します。

【日常生活】

  • 言葉が出にくいことがコンプレックスとなり、人の集まるところを避けがちになる
  • 周りの人は理解できるスピードでも、聴きとれないことがある
  • 自分が話し始めるまで、または話し終わるまで、時間がかかることがある など

【仕事】

  • 口頭での指示を理解することが難しい
  • 質問や相談がスムーズにできないことがある
  • マニュアルを読み、理解することが難しい
  • メモを手書きでとることが難しい など

このように日常生活や仕事の中で、失語症によりコミュニケーションがうまく取れず、ストレスがたまる方も少なくありません。

失語症の原因は?

失語症は、大脳(多くの方が左脳)にある言語中枢が損傷されることによって起こり、「相手に伝えたい言葉が出てこない」(話す)、「相手の言葉が理解できない」(聴く)、「何が書いてあるのか理解できない」(読む)、「字を書くことが難しい」(書く)という症状が出てきます。

言語中枢の損傷の原因には、以下のようなものが挙げられます。

  • 脳卒中(脳出血、脳梗塞、クモ膜下出血)
  • 事故やケガなどによる頭部外傷
  • 脳の感染症(脳炎)
  • 脳腫瘍
  • アルツハイマー病など脳組織が損傷する変性疾患 など

ストレスは失語症の原因?

ストレスは失語症の直接的な原因ではないと考えられています。一方、失語症と似ている症状といわれている(心因性)失声症は、ストレスが原因の可能性があると考えられています。

 

「失語症」と「(心因性)失声症」の大きな違いは、失語症は「聴く、読む、書く」も困難があることが多く、心因性失声症は声を出すこと以外の「聴く、読む、書く」は可能だという点です。

失語症の種類(分類)と症状

失語症にはさまざまな種類(分類)があります。ここでは比較的多い種類(分類)を取り上げて説明します。

 

【失語症の種類】

  • ブローカ失語(運動性失語)
  • ウェルニッケ失語(感覚性失語)
  • 伝導失語
  • 全失語
  • 失名詞失語(健忘失語)

※実際は一人ひとりの症状が異なります。ここでは、症状を理解しやすくするために次の5つに分け、代表的な症状について説明します。

ブローカ失語(運動性失語)

すらすらと滑らかに話せないのが特徴で、喋ろうとするとなかなか言葉が出てきません。相手の話すことは理解できることが多いといわれています。

 

また、以下のような症状もみられます。

  • 正常な発話のリズムや強弱が失われる
  • 相手が言った同じフレーズを繰り返すことが困難になる
  • 漢字より仮名を書きづらくなり、書き誤ることも多い
  • 意味を汲み取りやすい漢字は理解できるが、仮名文字だけの提示では理解が難しい

ウェルニッケ失語(感覚性失語)

すらすらと滑らかに話すものの、話している内容については言い間違いが多く支離滅裂(しりめつれつ)で、きちんとした会話が成立しにくいのが特徴です。聞いて理解することも難しくなります。ジェスチャーなどを加えゆっくりと話すと理解しやすい場合もあります。また、書く場合も同様で誤字が多く、理解するのが難しい内容であることが特徴です。

伝導失語

相手の話を聞いて理解し会話もできます。しかし、自分が発した言葉の誤りに気づき、それを何度も言い直して、徐々に正しい言葉に近づけようとします。このように何度も言い直し・読み直しがあるため、吃音のような話し方になります。また、同じ言葉を繰り返す「復唱」がうまくできなくなることが特徴です。

全失語

「話す」「聴く」「読む」「書く」すべての言語機能に障害がある、重度の失語症です。相手の話はほとんど理解できず、意味のある言葉をいうこともほとんどできません。全く話すことができない場合もあり、話すことができても、「ダメ」「タン」など、特定の言葉や音のみを発する場合が多いといわれています。 また、読み書きも同様にほとんどできない場合が多いため、コミュニケーションをとるのが困難です。しかし、その場の雰囲気を感じたり、何となくこんな話をしているなという大まかな理解はできたりする場合もあります。例えば、笑顔で声をかけると笑顔で返したり挨拶をすると挨拶で返したりすることがあります。

失名詞失語(健忘失語)

相手の話を聞いて理解し、会話も滑らかにできますが、物や人の名前など言葉がさっと出てこないという症状があります。出てこない言葉を伝えるために回りくどい話し方になってしまうことが特徴です。

喚語困難

失語症のそれぞれのタイプに共通してみられる症状「喚語困難(かんごこんなん)」というものがあります。「喚語困難」とは「何か言おうとしたときに頭で分かっていても言葉が出ない」状態があります。しかし、失語症のタイプによって「話す」「聴く」「読む」「書く」それぞれの能力における症状は異なり、リハビリ内容や対処方法も変わります

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失語症の症状と似ているほかの障害

言語障害には、失語症のほかにも、さまざまな種類の障害があります。ここでは、失語症と似ている、ほかの障害について、特徴や違いについて説明します。

構音障害

「構音障害」とは、話す際に口や舌などの必要な器官をうまく動かせないことにより「呂律がまわらない」「声がかすれる」「抑揚がなくなる」「話すリズムが乱れる」など、うまく発音ができず、コミュニケーションに支障をきたす障害です。

構音障害の場合、相手の話を聞いて理解する能力や読み書きをする能力に症状はなく、「話す」という能力に症状が現れます。これが失語症との大きな違いとなります。

失声症

失声症とは、文字通り、声が出なくなる症状です。喉や器官、声帯の病気により起こることが多いとされています。また、喉や器官、声帯には特に異常がみられず、心理的なストレスが原因で起こる場合は「心因性失声」と呼ばれています。

失声症は「話せなくなる」という点においては失語症と共通しており、同じ症状として誤解されやすいといわれています。しかし、失語症とは「脳の損傷」により起こる症状であり、話す以外にも「読む」「書く」「聴く」という機能にも症状がみられます。そのため「喉や器官、声帯」「心理的なストレス」により起こる失声症とは、全く異なるものです。

 

まとめると、以下の図表になります。

 

失語症のリハビリとは?どのようにして治る?

失語症のリハビリは「話す」「聴く」「読む」「書く」という言語機能に関する障害に対して専門的に支援をする言語聴覚士(ST)が担当します。 

 

言語聴覚士は「標準失語症検査(※)」という検査をおこない、その結果をもとに失語症のリハビリ内容を決定します。

 

※失語症の詳細な把握と、リハビリテーション計画案の指針とることを目的としています。「聴く」「話す」「読む」「書く」「計算」の5側面、計26項目の検査で構成されています。 

 

失語症のリハビリは、言語機能の回復訓練を中心におこなうことが多いですが、失語症の程度や症状は一人ひとり違います。また、年齢や職業など社会的な背景、もともとの言語能力などによって進め方が変わってくるため、その人に見合った内容、ペースでおこないます。

失語症のリハビリ方法

言語機能の回復訓練では、失語症の症状の特徴や程度に合わせて、さまざまなリハビリがおこなわれます。リハビリを通して、コミュニケーションが取りやすくなることで、より自分らしい人生が送れるようにしていきます。

 

例えば、以下のようなことをおこないます。

 

【失語症のリハビリ例】

  • 聴く:短い文章やテレビのニュースなどを聞き、その内容について答える
  • 話す:絵を見せて名前をいう、言葉を復唱する、まんがの内容を説明する
  • 読む:簡単な文や文章を読み、その内容について質問する
  • 書く:一日のリハビリの予定をメモしたり、短くても日記を毎日書く

日常生活の中でジェスチャーや絵、文字などを見てもらい、何らかの反応(うなずく、首を横に振るなど)を引き出すような形でコミュニケーションを進めたり、本人からコミュニケーションが開始できるようにジェスチャーや筆談などしたりして、よりよい効率的なコミュニケーション方法を見つけていきます。

失語症の方が無理なく仕事を続けるためには?

ここでは、失語症の方が無理なく仕事を続けられるポイントや環境調整について解説します。

コミュニケーション方法を職場と相談する

失語症の発症により「これまで取れていた職場でのコミュニケーションがどうなってしまうのか?」と、不安に感じているかもしれません。 

 

失語症における特徴は「コミュニケーションをとる」ことの難しさにあります。例えば、相手が言っている言葉を正しく理解したり、自分の伝えたいことをスムーズに伝えたりといったようなことが難しくなります。ただし、考える能力や作業を遂行する能力が低下するわけではありません。

 

「失語症によってどのようなコミュニケーションが難しくなり、どう接してほしいか」といったように、症状の特徴を理解した上、対処法を考えていくとよいでしょう。

 

【失語症におけるコミュニケーションの困難の一例】

  • 口頭だけの指示や連絡は理解しづらい
  • 伝えたいことや考えを言葉にして話すのが難しい
  • マニュアルや長文のメールを読んで理解するのが難しい
  • 紙に議事録や連絡事項を書き起こすのが難しい

それらを職場の方に伝えたうえでの理解・サポートを得ることは、失語症の方が長く仕事を続けるうえで大切なポイントになります。また、ご自身で伝えることが難しい場合、主治医や言語聴覚士、専門機関などにサポート方法などを相談し、職場の理解をはかっていくとよいでしょう。

 

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合理的配慮を得る

失語症の方は「合理的配慮」を求めることも可能です。 

 

合理的配慮とは障害のある方が働きやすくなるように、障害のある方・事業主(企業)双方が相談しながら、事業主(企業)が負担が重くなりすぎない範囲で配慮を提供・実施することをいいます。

 

では、失語症の方は、仕事をするうえでどのような困りごとが起きやすいのか、その対処法について一例をご紹介します。

 

口頭での指示や連絡は理解しづらい

  • メールやチャットなど、文字でコミュニケーションする
  • できるだけゆっくりと短い言葉や文章で連絡する
  • 会話を文字化してくれるスマートフォンのアプリなどを導入し活用する など

伝えたいことや考えを言葉にして話すのが難しい

  • 伝えたいことがあらかじめ記載してあるカードを準備する
  • 共通のサインやマークなどを決める など

マニュアルや長文のメールを理解するのが難しい

  • 図や写真、ジェスチャーなど文字以外の情報を増やす 
  • 文章を短く簡潔にまとめてもらう など

紙に議事録や連絡事項を書き起こすのが難しい

  • 書字や書き起こす必要がない業務内容に調整する
  • PCを活用する など

また、コミュニケーションスキルを要する職種(営業職など)の場合、失語症の方は困難さを感じる場面が多くなるかもしれません。 

 

そのようなときは、メールのテンプレートなどパターン化されたコミュニケーションで進められるようにする、などといったように、失語症の方が働きやすい環境を整えるとよいでしょう。 

 

それだけではなく、人事配置や役割、業務内容などの調整を相談することも1つの手段です。例えば、コミュニケーション方法の配慮が得やすい部門(例:事務職など)や職種への配置転換を相談するのもよいでしょう。

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コミュニケーションに悩むときは

失語症といっても、症状や程度はさまざまです。周囲の理解を得るのが難しかったり、コミュニケーションがうまくいかなかったりと、思うように仕事ができないことで悩むことがあるかもしれません。 

 

そして、失語症への理解やサポートがあったとしても、コミュニケーションに悩むことがあるかもしれません。

 

そのようなストレスで体調に影響を及ぼす前に不安や悩みを解消できればよいのですが、もし体調を崩してしまった場合は、休暇を取得するなどして、無理をせず身体を休めることを優先しましょう。休んでも体調が回復しない、回復したけれど体調への不安が大きい場合はひとりで抱え込まず、定期的な面談を設定するなど、相談の機会を設けてもらうとよいかもしれません。また、悩んでいる内容に応じて上司や人事担当者、産業医などと相談しながら困りごとを解消していきましょう。  

 

社内の方に相談することが難しい場合、失語症の方をサポートする専門機関などを頼ってみるのもひとつです。専門機関については後の章で詳しくご説明します。

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失語症による困りごとを相談できる専門機関

生活面など日々の生活全般で失語症からくる困りごとがあったときに、専門機関に相談してみましょう。

高次脳機能障害相談窓口

失語症の方が相談できる窓口の一つとして「高次脳機能障害相談窓口」というものがあり、各都道府県に設置されています(地域によって名称が異なります)。高次機能障害とは、ケガや病気により、脳に損傷を負うことによって生じる障害で、失語症もその中のひとつに含まれます。

 

失語症の方やそのご家族などが、生活面・就労面などのお悩みについて相談ができ、また地域によっては、関係機関と連携するためのサポートをおこなうこともあります。

保健センター(市区町村)

保健センターによっては、専門相談員や専門医などの専門職が多方面から状況を評価をし、現在の回復状態を把握したうえで、障害の程度や困りごとへの対策など、ご本人、ご家族、支援者の方々へアドバイスをおこなう場所もあります。また、外出時の同行支援など、失語症に関する独自の支援をおこなっている地域もあります。設置の有無やサービス内容は地域によって異なりますので、インターネットで調べたり、お住まいの市区町村の障害福祉窓口などで相談してみたりするとよいでしょう。

失語症の方が就職・転職時に活用できる支援制度(サービス)

上記のような生活面でのサポートだけではなく、失語症の方が就労するうえでのサポートもあります。 

 

周囲の理解やサポートによって、失語症の方は、より仕事しやすい環境を得ることができます。一方で、コミュニケーションに障害や不安がある中での社会復帰、職場復帰には不安や戸惑いを感じるかもしれません。 そのような時は1人で抱え込まずに、就労に関してサポートを得られる専門機関をうまく活用してみましょう。 

 

ここでは失語症の方が活用できる専門機関の一例をご紹介します。

ジョブコーチによる支援

職場定着のために必要なサポートを専門的におこなっているサービスです。ジョブコーチとは、障害のある方がスムーズに職場で働くためのサポートをおこなう人のことです。

 

 一定期間(標準的には2〜4ヶ月)、失語症の方の仕事の習得をサポートしたり、ご本人・職場の双方がコミュニケーションを円滑にとれるようサポートをおこなったりします。また職場に対して障害理解の啓発活動をおこなうこともあります。

 

ジョブコーチには、地域障害者職業センターに配置する「配置型」、就労支援をおこなう社会福祉法などに雇用される「訪問型」、障害者を雇用する企業に雇用される「企業在籍型」の3種類があります。

 

ジョブコーチを利用するには、ご本人・企業の双方の合意を得るなどの条件があります。詳しくは、地域の障害者職業センターなどへご確認ください。

トライアル雇用

就職活動をしようと思ったときに、自分に合う仕事が見つかるかといったような不安があるかもしれません。そのようなときはトライアル雇用を使ってみるのもよいでしょう。 

 

トライアル雇用とは、原則3ヶ月間の試用雇用期間の中で、労働者と企業双方が継続雇用するかどうかを見極めたり、雇用に対する不安や懸念を解消し、無期雇用に移行することを支援する制度です。実際に働いてみて自分に合った仕事、職場かどうかを試すことができるという点でメリットがあるでしょう。詳しくはハローワークでご確認ください。

就労移行支援

就労移行支援とは、65歳未満の障害のある方を対象に、一般企業への就職をサポートしている福祉サービスのひとつです。就職をするうえで必要なスキル・知識を身につけるためのプログラムを実施したり、インターンを通して仕事の適性や症状の特徴を確認したり、職場で必要な配慮を一緒に考えたり、就職活動のサポートをおこなっています。利用できる期間は、原則2年間です。 

 

例えば、失語症によりできなくなったこと、できることを整理するための助言が受けられたり、面接など就職活動におけるコミュニケーションのサポートが受けられたりします。また、就職した後も職場に定着できるようにサポートもおこなっています。職場の方にはいえない悩みを相談したり、就職前には想定していなかった困りごとが生じた際に相談するなどのサポートが受けられます。

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失語症の方の仕事探しをサポート「LITALICOワークス」

LITALICOワークスは就労移行支援のサポートを提供しています。就職や職場定着に向け、一人ひとりに合わせたサポートを大切におこなっています。

 

幅広い困りごとに対応できるサービスとノウハウを活かし、丁寧なヒアリングに加え、LITALICOワークスオリジナルの就労支援システムを導入しています。過去のサポート実績や類似した困りごとを探し、その人に合った最適なサポート方法をみつけます。

 

LITALICOワークスは多くの企業と提携しているので、企業インターン(職場体験実習)の機会もあり、自分に合った仕事や職場環境をみつけるサポートを受けられます。

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実際に就労移行支援を利用した事例を紹介します。

失語症のあるAさんが就労移行支援を利用して就職するまでの事例

 

Q.就労移行支援事業所を利用したきっかけは?

脳出血により、ブローカ失語や片麻痺となったAさんはリハビリを経てそろそろ働きたいという気持ちがあり、就労移行支援事業所を利用することにしました。

 

当時は、「相手の言っていることは分かるが、自分が喋ろうとするとうまく言葉が出ない」状態だったため、就職活動(特に面接)に不安がありました。また、片麻痺もあったため、どのような仕事ができるかも分かりませんでした。

 

Q.就労移行支援事業所で取り組んだことは?

スタッフとのコミュニケーションにおいては、意思疎通をはかるためのノートを活用したり、表情を使って伝えたりしていきました。また、Aさんの場合、片麻痺もあり、パソコンを使っての作業は難しかったので、作業を中心におこないました。例えば、書類を整えるときはクリアファイルにいれて角をそろえたり、ビーズの袋詰めは肝を使って袋を開けたり、工夫しながら、自分ができることを探しました。また面接対策では、事前に質疑応答集を作成し、スタッフと何度も練習しました。

 

Q.面接から就職するまでに取り組んだことは?

発語がスムーズでないため、事前に企業へ合理的配慮として

  • 質問されたら質疑応答集を見せる
  • 発語するまで時間がかかるため、回答を待ってもらう
  • どうしても発語が難しい場合は、就労移行支援スタッフのフォローを入れてもらう

などを伝えたうえで、複数の会社の面接を受けたところ、そのうちの1社で一次面接を通過できました。

 

正式採用前に、職場の人・Aさんの双方にとって相互理解を深めながら働き続けられるかどうかを確認するため、企業インターン(就職前実習)を実施しました。その結果、作業スピードを過剰に求められることがなく自分のペースで作業を進めやすいことが分かりました。また職場の人はAさんが困っていることは意思表示ができる、丁寧に作業を進められる、などの点でAさんとなら安心して働き続けられると感じたそうです。

 

このように双方がお互い理解できたため、就職することができました。

 

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失語症のまとめ

突然の病気や事故などにより失語症となることで、これまでできていたコミュニケーションがうまくいかなくなり、戸惑いや悩みを抱える方も多いでしょう。 

 

また、失語症は見えない障害といわれています。家族や友人など周囲の理解をどのように得られたらよいのか、悩んでしまうこともあるかもしれません。

 

そのようなときは専門機関をうまく活用し、専門家の失語症によるリハビリ訓練を受けたり、相談をしたりしてみるとよいでしょう。失語症の方・職場の方々双方の理解を深めたり、不安や疑問を解消したりすることで、よりよいコミュニケーション方法がみつけやすくなります。そうすることで、安心して日常生活が送れたり、仕事がしやすくなるでしょう。 

 

また、仕事探しをするときには就労支援をおこなっている支援機関に相談してみることも選択肢のひとつです。 

 

もし「これからの働き方に悩んでいる」「自分に合う仕事が分からない」などのお悩みがあれば、ぜひLITALICOワークスまでお気軽にご相談ください。

更新日:2024/08/12 公開日:2022/11/14
  • 監修

    言語聴覚士。日本言語聴覚士協会認定言語聴覚士(摂食・嚥下障害領域)

    芳木 宏恵

    関西のケアミックス病院に勤務し、主に成人の失語症・高次脳機能障害・嚥下障害・構音障害のリハビリに長く携わっている。また、退院後の訪問リハビリによる自宅での失語症の支援経験も豊富。

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