「朝になると、ひどい疲労感を感じて、起き上がることができない」
「少しの動作ですぐ疲れてしまう」
そのような症状が長期間続くと、慢性疲労症候群の可能性があるかもしれません。
慢性疲労症候群は、日常生活に支障を来すほどの疲労があり、集中力の低下、不眠、関節痛など、体のさまざまな箇所に異常が出てくると言われています。
この記事では慢性疲労症候群について、症状や診断基準など、気になることをまとめました。さらに「何科を受診すればいいの?」といった疑問にも、わかりやすく解説します。
「朝になると、ひどい疲労感を感じて、起き上がることができない」
「少しの動作ですぐ疲れてしまう」
そのような症状が長期間続くと、慢性疲労症候群の可能性があるかもしれません。
慢性疲労症候群は、日常生活に支障を来すほどの疲労があり、集中力の低下、不眠、関節痛など、体のさまざまな箇所に異常が出てくると言われています。
この記事では慢性疲労症候群について、症状や診断基準など、気になることをまとめました。さらに「何科を受診すればいいの?」といった疑問にも、わかりやすく解説します。
慢性疲労症候群とは、健全な日常生活を送れないほどの疲労感を感じること、と言われています。
具体的な症状として、「朝、急に起きることができなくなった」「少しの動作ですぐ疲れてしまう」などが挙げられます。
また日常生活に支障を来すような疲労が、6ヶ月以上続いたり繰り返したりすると、慢性疲労症候群が疑われます。
慢性疲労症候群は「筋痛性脳脊髄炎(きんつうせいのうせきずいえん)」とも言われ、全身倦怠感のほかに、頭痛や関節痛といった痛みを伴うことも特徴的です。
世界保健機関(WHO)の国際疾病分類(ICD-10)によって、神経難病の指定を受けています。しかし、日本の指定難病には認定されていません。
慢性疲労症候群については、多くの研究がされています。しかし慢性疲労症候群の原因は、特定されていないのが現状です。
そのような中で、大きく3つの原因に分けられるとの見解があります。
それでは、一つずつ解説していきます。
慢性疲労症候群は、風邪症状のような発熱や喉の痛みから、突然発症することが多いとも言われています。よって、ウイルスや細菌による感染症疾患が原因と考えられています。
慢性疲労症候群の症状の一つとして、のどの痛み、頭痛、腹痛、関節痛、筋肉痛などの「全身の強い痛み」を伴う場合があります。これらの症状が免疫学的異常として、慢性疲労症候群を引き起こす原因とも捉えられますが、はっきりと示されてはいません。
慢性疲労症候群が「家族性の病気」と考えられている情報もあります。しかし、現在は可能性の段階なので、はっきりとしたことはわかっていません。
多くの慢性疲労症候群が、強いストレスの後に発症していると言われています。反面、発症前は健常な生活をしており、前ぶれなく症状が出る人もいます。よって、環境が原因とも断定できないのが現状です。
慢性疲労症候群は、突然、原因不明の全身倦怠感が出現し、強い疲労感や痛みなどが続くと言われています。
下記のような症状が見られ、6ヶ月以上続いたり繰り返したりすることで、日常生活に支障を来す場合は、慢性疲労症候群かもしれません。
慢性疲労症候群の診断について、確定診断となりうる臨床検査はありません。よって慢性疲労症候群によく似た症状を、否定しながら診断することが一般的です。
慢性疲労症候群と診断する際、鑑別すべき疾患としては下記の通りです。
加えて、1991年に厚生労働省が作成した「厚労省CFS診断基準」が用いられています。
厚労省CFS診断基準とは、大クライテリア(大基準)と小クライテリア(小基準)をそれぞれ満たすことで、慢性疲労症候群の診断につなげるものです。
小クライテリアは「症状クライテリア」と「身体所見クライテリア」があり、規定された項目数を満たすことが必要です。詳細は以下のリンクよりご参照ください。
慢性疲労症候群の根治する治療方法は定まっていません。また、医療保険で認められた薬や治療法も見当たらないのが現状です。
慢性疲労症候群に有効と考えられる治療は、3つ挙げられます。
それぞれ解説していきます。
認知行動療法とは、認知(ものの受け取り方や考え方)に働きかけ、気持ちを楽にする療法のことです。
慢性疲労症候群における認知行動療法は、回復にむけた将来のイメージを持ち、後ろ向きの思考を変えていくよう取り組みます。
休養を長く取りすぎると、逆に慢性疲労症候群を悪化させる恐れがあります。無理のない程度に運動することが、慢性疲労症候群には効果的との見方もあります。
慢性疲労症候群に対する運動は、段階的におこなうことが望ましいです。さらに、医療従事者による指導のもと、負荷をかけすぎず実施することが求められます。
例えば、ウォーキング、水泳、サイクリング、ジョギングなどの有酸素運動が、身体機能を高めることにつながると言われています。
慢性疲労症候群は、強い疲労のほかに、痛みや抑うつなどの症状が出ると言われています。
それらの症状へ薬剤治療をすることはあります。しかし、慢性疲労症候群を根治するような薬剤は、まだ開発されていないのが現状です。
近年では、国立精神・神経医療研究センターによる研究で、新たな免疫異常を発見したとの報告がありました。このような研究から、慢性疲労症候群の確定診断や治療薬の開発につながることが期待されています。
慢性疲労症候群の診断は、前にも述べたとおり、類似する病気を否定していくことが必要です。そのため、血液検査や画像検査などをおこなう必要があります。
よって、内科を最初に受診することが多いようです。しかし、症状によっては、複数の医療機関を受診する必要が予想されます。
慢性疲労症候群に対する医療機関として、下記の診療科が挙げられます。
それぞれ解説します。
日本の診療科でもっとも多いのが内科です。2006年に厚生労働省が調査した「診療科名(主たる)別にみた医師数」では、内科医が26.7%で最多でした。
内科では、内臓、神経、血液などの病気について診断し、薬物治療や食事療法などをおこないます。よって、外科手術をせずに治療することが特徴的です。
総合診療科とは、「特定の病気や症状を診察するのではなく、幅広い領域について総合的に診察する科」と言われています。
特に高齢者は「複数の合併症」を有している場合があり、どの診療科を受診したらいいのかわからないときがあります。
原因や診断基準が明確でない「慢性疲労症候群」においても、総合診療科で担当することが多いようです。
慢性疲労症候群は、疲労や痛みだけでなく、抑うつ症状を併発する場合があります。そのようなとき、心療内科が挙げられます。
心療内科では、主にストレスやうつ病など、こころの病気を専門に診る医療機関です。専門医による診察だけでなく、心理士によるカウンセリングなどもあり、気持ちが安定するよう治療します。
慢性疲労症候群は周囲からの誤解や偏見を受けることがあります。そこで我慢して仕事を続けていくと、ますます症状悪化が予測されます。
「ちゃんと職場に行かないと」「なんで疲れが取れないんだ」など思い詰めてしまうことは、うつ症状を高める精神状態です。
慢性疲労症候群のような症状を感じた場合は、無理をせず、早めの受診や相談をされることをおすすめします。
慢性疲労症候群は、症状に個別性があります。例えば、「起き上がれないほどの重度の疲労」や「疲労感は1日中感じているが、なんとか仕事はできている」などです。
症状によっては「まずは相談をしたい」という方に向けて、慢性疲労症候群に関する相談先を紹介します。
市町村によっては、慢性疾患や難病などに相談対応できる窓口があります。症状に応じて、医療機関や制度などの情報提供も受けられます。
難病に関する相談や情報提供のほか、研修や講演会などの啓発活動もおこなっている機関です。都道府県および指定都市に設置されています。
うつ病などの精神疾患に対して、相談や社会資源を紹介します。また、社会復帰の支援も含まれており、保健師や精神保健福祉士などの専門職で構成されています。
慢性疲労症候群と診断された場合、さまざまな不安が出てくると予想されます。
上記のような不安に対して、利用が考えられる社会資源(制度やサービス)を紹介します。
障害年金は、病気などで社会生活に制限を受けた場合、現役世代も含めて受け取ることができる年金です。
年金を受給するには、診断書の提出や審査を受ける必要があります。慢性疲労症候群における受給事例は、寝たきりなどの重度者に多いようです。
慢性疲労症候群では、身体障害者手帳と精神障害者保健福祉手帳を取得する場合が多いです。障害者手帳によって、医療費の助成や各種税金の軽減措置を受けられます。
申請手続きは、最寄りの市町村(障害福祉課など)でおこなうことができます。
働けない期間が長くなると、医療費や生活費を支払うことが難しくなります。つまり、生存権を脅かされる可能性が高くなります。
その場合、セーフティネットの役割を果たすのが生活保護です。生活保護を受けるには、現在地の市区町村で申請します。
慢性疲労症候群は、原因も診断基準も、まだ確立されていません。そのことから、周囲による偏見や差別に悩まされる人も多いのが現状です。
また、専門医の不足や社会資源が少ないことで症状が悪化し、社会復帰が遠のく場合も見られます。
しかし近年の研究で、新たな免疫異常を発見したり、国会では指定難病へ認定するような議論があったりと、少しずつ慢性疲労症候群への支援が広がりつつあります。
慢性疲労症候群の症状が見られた場合、我慢をせず、早めに受診または相談することが大事です。
症状の悪化を防ぎ、社会復帰に向けた治療や療養に取り組めるとよいでしょう。
LITALICOワークスでは、就労移行支援事業所を運営しています。
就労移行支援事業所とは、障害のある方の就職をサポートする、障害福祉サービスになります。障害者手帳は必ずしも必要でなく、医師や自治体の判断などにより、就職に困難が認められる方も利用できる可能性があります。
障害名にとらわれず、一人ひとりに合ったプログラムが特徴的です。また自分らしく働けるためにも、企業実習(インターン)をおこなっています。
LITALICOワークスは、「働きたい」という希望をサポートします。もし働くことにお悩みがある場合、是非お気軽にご相談ください。
監修者
医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント
染村 宏法
大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。
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