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高額療養費制度とは?いくら戻る?対象や手続き・計算方法を解説

更新日:2024/06/20

入院や通院などでひと月にかかる医療費の自己負担額が大きくなったときに、利用したい制度のひとつが「高額療養費制度」です。

 

高額療養費制度が適用されると、1ヶ月の自己負担額がその方の上限額を超えた場合に、自己負担額と上限額の差額が支給されます。

 

非常に心強い制度である一方「どんな仕組みなの?」や「自分の上限額はいくら?」など、疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。

 

そこで、今回は高額療養費制度が対象となる範囲や、計算方法、手続きの流れについて解説します。

高額療養費制度とは?

高額療養費制度とは「医療費の負担が重くなりすぎないよう、年齢や年収に応じて1ヶ月間の医療費の支払いの上限額を設定している制度」のことです。

「国民皆保険制度」も医療費の負担を軽減する制度

まず、医療費の負担を軽減する制度としてよく知られているのは「国民皆保険制度」です。

 

「国民皆保険制度」は、皆で公的医療保険に加入し、保険料を支払い、お互いの医療費負担を軽減する制度です。

 

下記の表の通り、年齢や所得に応じて窓口での負担額が決まっています。

 

高額療養費制度とは?負担金額のイメージ画像

 

出典:厚生労働省「国民皆保険制度の意義」

 

基本的に6歳(義務教育就学後)~70歳未満の方は3割負担に設定されています。

 

この制度のおかげで、風邪をひいたり、虫歯になったりして病院や歯医者へ行ったとしても、窓口で負担する医療費は本来の3割(1割・2割)だけで済んでいます。

 

しかし、3割(1割・2割)のみの負担であっても、入院などで医療費そのものが高額になる場合、家計が苦しくなってしまう可能性があります。

 

上記のような状況で、さらに負担を軽くしてくれるのが「高額療養費制度」です。

高額療養費制度の仕組み

高額療養費制度は、病院などの窓口で支払う自己負担額が1ヶ月間の「上限額」を超えた場合、自己負担額と上限額の差額が支給される仕組みです。

 

この「上限額」は、70歳以上の場合と69歳以下の方とで基準が異なっています。

 

また、年収ごとに区分が分かれており、収入が少ない方ほど負担が軽減されます。

 

さらに、過去12ヶ月間に、3回より多く上限額に達した場合、4回目以降はさらに負担額が軽減される仕組みです。

 

後ほど、モデルケースを挙げて「実際にいくら戻るのか」計算していきます。

高額療養費制度の対象は?

この項目では、高額療養費制度が適用される対象範囲と、対象外のものをご紹介します。

高額療養費制度の対象範囲

高額療養費制度は、医療費の負担額すべてに適用されるわけではありません。

 

ひと月の間に支払った医療費の自己負担額のうち「上限額を超えている分」が対象です。

 

具体的には、下記の条件をもとに上限額を超えているか否か、超えている場合は支給額がいくらになるのか計算していきます。

  • 同一の医療機関で受けた治療費の自己負担額が合計21,000円以上の場合のみ算出(70歳以上の場合は、21,000円未満でも合算可能)
  • 同一の医療機関で受けた治療の場合も、入院治療と外来治療は分けて計算する
  • 同一の医療機関で受けた治療の場合も、医科と歯科は分けて計算する
  • 病院で交付された処方箋を使い、院外の薬局で薬を受け取った場合、処方箋を出した病院の自己負担額分に合算

例えば、30歳の方がひと月に、A病院とB病院とC病院を利用したとしましょう。

 

それぞれの自己負担額は下記の通りと仮定します。

  • A病院(入院):100,000円
  • B病院(歯科):5,000円
  • C病院(眼科):25,000円

この場合、B病院(歯科)は対象となりません。(21,000円を超えていないため)

 

A病院とC病院の自己負担額を足した125,000円をもとに計算することになります。

 

また、同じ世帯の方(かつ同じ医療保険に加入している)の自己負担額を1ヶ月単位で合算できる仕組みもあります。

 

世帯合算についての詳細は、厚生労働省の公式サイトをご覧ください。

高額療養費制度の対象外となるもの

高額療養費制度の対象外となるものとしては、下記が挙げられます。

  • 先進医療費
  • 差額ベッド代
  • 入院時の食事代
  • 自由診療
  • 入院中の生活費 など

入院した場合の差額ベッド代(大部屋ではなく個室を選択した場合)や食事代、入院中の生活費などは、高額療養費制度の対象外となるためご注意ください。

 

また、先進医療費(高度な医療技術を用いた療養の費用)や自由診療費も対象になりません。

高額療養費はいくら戻る?計算方法は?

高額療養費制度が適用されると、どのくらいの金額が戻るのか、実際に計算しながら解説していきます。

高額療養費はいくらから?医療費の自己負担限度額は?

高額療養費制度でいくら戻るのか計算するためには、自分の「ひと月の上限額」を知る必要があります。

 

例として、69歳以下の方の上限額が記された表を見てみましょう。

 

高額療養費制度とは?適用区分のイメージ画像

 

出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ 」

 

上記の表を見ても分かる通り、年収の金額によっても上限額の基準は異なっています。

 

そして、区分が「エ」と「オ」以外の場合は、まず上限額の計算をする必要があります。

  • ※ひと月の上限額を計算するときの「医療費」項目には、3割(1割・2割)負担の額ではなく、全額負担の場合の数字をあてはめます。
  • 例:医療費のトータル額が50万円の場合、実際に負担する3割の15万円ではなく、50万円をあてはめて計算します。

それでは、モデルケースを出して、高額療養費制度でいくら戻るのか計算してみましょう。

区分「エ」のAさん(69歳以下)の場合

区分「エ」にあてはまるAさんの場合、上限額を計算して出す工程はありません。

 

表の通り、57,600円がひと月の上限額です。

 

つまり、ひと月にかかった医療費(自己負担額)が57,600円以上だった場合は、超えた分の金額が高額療養費制度によって負担される計算です。

 

かりにかかった医療費が50万円(自己負担額:15万円)だったとしましょう。

  • 150,000円(自己負担額)₋57,600円(上限額)=92,400円

上記のように、92,400円が高額療養費として戻ってきます。

区分「ウ」のBさん(69歳以下)の場合

区分「ウ」にあてはまるBさんは、まず上限額がいくらなのか、計算する必要があります。

 

上限額を出す計算式は表の通り「80,100円+(医療費-267,000円)×1%」です。

 

かりに、かかった医療費が100万円(自己負担額:30万円)だったとしましょう。

  • 80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=87,430円

上限額が87,430円であることが分かります。

 

次に、病院や薬局の窓口で支払った自己負担額から、上限額を引きます。

  • 300,000円(自己負担額)₋87,430円(上限額)=212,570円

つまり、高額療養費として戻ってくる額は212,570円です。

高額療養費制度の手続きはどうやるの?

高額療養費制度の手続きの方法は大きく分けて2つあります。

 

自己負担する金額を支払った後に申請する場合と、支払い前に手続きをする場合です。

 

それぞれの申請の流れについて解説します。

自己負担額の支払い後に申請する場合

自己負担額を支払った後に申請するときは、自分が加入している健康保険(健康保険協会や国民健康保険など)に支給申請書を提出、もしくは郵送します。

 

健康保険協会(協会けんぽ)の場合、「健康保険高額療養費支給申請書」を協会けんぽ支部に提出します。

 

申請に必要な書類は、健康保険協会の公式サイトからダウンロードできます。

 

国民健康保険に加入している方の場合は、地方自治体によって申請の流れが異なることがありますので、詳しくは、お住まいの市区町村の国民健康保険の窓口にて問い合わせてみるとよいでしょう。

 

例えば、東京都北区の場合は、診療月から3ヶ月ほど後に通知が届き、その後に窓口もしくは郵送で申請する流れとなります。

 

高額療養費を後から申請する場合の注意点は下記の3つです。

  • 診療から支給までには3ヶ月以上かかる
  • 医療機関の領収書は残しておく
  • 申請には期限がある(基本的に診療を受けた月の翌月1日から2年以内)

不明点がある場合は、加入している健康保険の窓口に問い合わせましょう。

自己負担額の支払い前に手続きをする場合

人によっては、一時的な医療費の支払いが、大きな負担となるケースもあるはずです。

 

上記の場合は、自己負担額を支払う前に手続きをして「限度額適用認定証」を取得しましょう。

 

「限度額適用認定証」を保険証とともに窓口へ見せると、支払い時の金額を、上限額までに抑えることができます。

 

健康保険協会(協会けんぽ)の場合、加入している協会けんぽ支部に「健康保険限度額適用認定申請書」を送付して手続きをします。

 

書類は健康保険協会の公式サイトから入手できます。

 

国民健康保険の場合、お住まいの市区町村の窓口(市役所など)で手続きができます。

 

また、郵送で受付している自治体もあるため、事前に市区町村の公式サイトで確認しましょう。

高額療養費は申請しなくても戻ってくる?

高額療養費制度についてネット上で調べていると「上限額を超えた分は申請しなくても戻ってくる」という文言を目にすることがあるかもしれません。

 

たしかに、加入している医療保険によっては、申請をしなくても高額療養費を口座へ振り込んでくれるパターンがあります。

 

しかし、すべての医療保険で対応しているわけではありません。

 

「申請をしていなかったために、高額療養費を受け取れなかった」という状況を防ぐためにも、基本的には、自分で申請をする必要があると覚えておきましょう。

障害のある方が利用できる医療費助成制度

障害のある方が利用できる医療費助成制度をご紹介します。

自立支援医療制度

自立支援医療制度とは、心身の障害を治療するための医療にかかった自己負担額を軽減するための公費負担医療制度です。

 

主に下記の3つに分かれます。

  • 精神通院医療(精神疾患の治療)
  • 更生医療(18歳以上の方の身体障害の治療など)
  • 育成医療(18歳未満の方の身体障害の治療など)

精神通院医療は都道府県や指定都市、更生医療と育成医療は市町村が実施しています。

 

どの制度においても、患者の所得に応じてひと月あたりの自己負担上限額が定められています。

 

具体的な所得区分や負担上限額、対象者については、厚生労働省の公式サイトをご覧ください。

重度心身障害者医療費助成制度

重度心身障害者医療費助成制度は、心身に重度の障害がある方の医療費負担を軽減するための制度です。

 

都道府県や市町村が実施しているため、対象となる障害の程度や制度の内容も自治体によってさまざまです。

 

市町村によっては、精神障害者保健福祉手帳1級所持者が対象に入っているところもあります。

 

詳細を知るためには、お住まいの市町村の障害福祉課へ問い合わせてみましょう。

高額療養費制度と併用はできる?

自立支援医療制度や重度心身障害者医療費助成制度は、高額療養費制度と併用できますが、適用されるにあたってはルールがあります。

 

まず、原則として国が実施している医療費の助成制度(高額療養費制度)が適用されます。

 

そのうえで、残った自己負担額が、都道府県や指定都市、市町村が実施している制度(自立支援医療制度や重度心身障害者医療費助成制度)の対象になります。

うつ病などで仕事にお悩みのある方へ

うつ病などの精神疾患や障害がある方のなかには、就労に関するお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

上記のような方々の不安を取り除くための機関が「就労移行支援事業所」です。

 

就労移行支援事業所では、精神疾患や障害がある方の就職を「面接対策」「ビジネスマナーの研修」「就職に役立つセミナーの実施」など、さまざまな角度からサポートしています。

 

「LITALICOワークス」も、全国各地で障害がある方の就職の支援をおこなっています。

 

「働くことが不安」や「どんな仕事が合っているのか分からない」などの相談にものっているため、気になる方はお気軽にお問い合わせください。

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高額療養費制度のまとめ

高額療養費制度は、通院や入院中の方の医療費負担を軽減してくれる心強い制度です。

 

しかし、適用するためには申請が必要であることを覚えておきましょう。

 

また、心身の障害がある方の場合、併用して都道府県や市町村が実施している「自立支援医療制度」などが利用できる場合があります。

 

もしも、障害のある方が利用できる制度に関して、分からないことがある場合は、お住まいの市町村の窓口(障害福祉課など)へ問い合わせてみましょう。

更新日:2024/06/20 公開日:2022/04/27

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