職業訓練とは、働くうえで役に立つスキルや知識を習得できる公的な制度のことです。職業訓練の対象は「働こうとする方・働くすべての方」です。
コースの種類は事務系やIT(情報技術)系、サービス業や建築、介護、デザインなど、幅広いため、興味のある分野から選ぶことができます。
また、無料で活用できることや、就職サポートを受けられることも嬉しいポイントです。
今回は職業訓練の制度の詳細や、利用するための手順についてご紹介します。
職業訓練とは、働くうえで役に立つスキルや知識を習得できる公的な制度のことです。職業訓練の対象は「働こうとする方・働くすべての方」です。
コースの種類は事務系やIT(情報技術)系、サービス業や建築、介護、デザインなど、幅広いため、興味のある分野から選ぶことができます。
また、無料で活用できることや、就職サポートを受けられることも嬉しいポイントです。
今回は職業訓練の制度の詳細や、利用するための手順についてご紹介します。
目次
まずは、職業訓練の制度と活用する利点についてご紹介します。
職業訓練は、正しくは「公的職業訓練(ハロートレーニング)」と言います。
職業訓練は、失業保険(雇用保険)の手当を受給している方が対象の「公共職業訓練」と、失業保険手当の受給ができない方向けの「求職者支援訓練」の二つにわかれます。
職業訓練の一般的な期間は3ヶ月~6ヶ月ですが、1~2年かけてスキルを身に着ける長期コースもあります。
「興味のある仕事はあるけどスキル面で不安」「基礎的な知識を学んでから働きたい」という方へおすすめの制度と言えるでしょう。
すでに何かしらの仕事に就いている方が利用することも可能ですが、その場合は有料です。
職業訓練を活用する利点は、大きく3つあります。
ひとつずつ、具体的に解説していきます。
本来、専門スキルや知識を身に付けるためには、受講料を支払い、学校に通うパターンがほとんどです。
しかし、職業訓練制度はテキスト代などの一部を除いて無料で利用できます。
また、公共職業訓練の受講者は日額500円(最大40日分)の受講手当を受け取れる制度も整っているため、テキスト代の一部、もしくはほとんどをカバーできるでしょう。
さらに、職業訓練校へ通うための交通費は、1ヶ月あたり最大42,500円まで支給されます。
そのため、バスや電車を使って通所しなくてはいけない場合も、お金の心配をすることなく、スキルの取得に集中することが可能です。
求職者支援訓練の場合も一定の条件を満たすことで「職業訓練受講給付金」を受け取ることができます。
職業訓練受講給付金の条件などのついては、後の項目で詳しくご紹介します。
職業訓練に参加し、さまざまなスキルを身に着けることで、応募できる求人の幅を広げることができます。
また、職業訓練校がハローワークと連携をとり、就職先を紹介してくれるケースがあります。
そのため、失業期間中に何もせずに過ごすよりは、職業訓練校に通っている方が比較的スムーズに再就職ができると言えるでしょう。
人によっては失業期間中、家に引きこもりがちになる方もいらっしゃいます。
しかし、職業訓練校に通うことで、生活のリズムが改善されることで、健康面においても夜型生活を防ぐなどのメリットがあります。
職業訓練には、「公共職業訓練」と「求職者支援訓練」の2種類があります。
どちらの対象に当てはまるのかは、失業保険(雇用保険)の有無で変わります。
会社を辞めた後に雇用保険を受給できる方は「公共職業訓練」の対象です。
もともとフリーランスや自営業だった場合など、雇用保険を受給できない方は「求職者支援訓練」を活用可能です。
それぞれ、訓練期間や受け取れる給付金などが異なります。
公共職業訓練は、基本手当(雇用保険)を受給しながら実践的なスキルを学べるだけでなく、受講手当や通所手当、寄宿手当が必要に応じて支給されます。
また、訓練日が残っているのに、基本手当(雇用保険)の受給期間が過ぎた場合は、受給日数を増やせるケースがあります。
※寄宿手当とは、公共職業訓練を受けるため、家族と別居して生活している期間について支給される手当です。
求職者支援制度は、雇用保険を受給できない方々を対象として、2011年10月からスタートしました。
訓練内容は基礎コースと実践コースに分かれています。
基礎コースでは、就職に必要な基本的な知識を学びます。
実践コースでは、就職を希望する職種において、実践的なスキルを学びます。
また、求職者支援訓練でも、公共職業訓練と同様に就職支援を受けることが可能です。
ハローワークや訓練実施機関が、訓練受講前、受講中、受講後にサポートを行っているため、就職に関して不安要素がある場合も、相談できる体制が整っています。
職業訓練(ハロートレーニング)を行う場所のことを職業訓練校と呼びます。
この項目では、職業訓練校で受講可能なコースや職業訓練を受ける際のスケジュールについて解説します。
職業訓練校で受けられるコースは幅広く、事務系、サービス系、医療系などさまざまです。
どのコースも、スキルや知識を習得して、就職へ繋げることを目的としています。
IT(情報技術)系など、今の時代が求める技術を学べるコースの他、簿記検定やワープロ検定などの資格取得を目指すコースもあります。
ただし、常にすべてのコースが揃っているわけではなく、それぞれのコースごとに募集時期が決まっています。
そのため、職業訓練(ハロートレーニング)に興味を抱いたら、お住まいの地域で応募可能なコースを確認しましょう。
また、人気が高いコースの場合は、倍率が高く希望コースで学べないこともあります。
どのようなコースに人気が集まっているのか「東京都TOKYOはたらくネット」にて公開されている「委託訓練応募状況」のデータをもとにしてご紹介します。
職業訓練対象講座のなかから、応募倍率が3倍を超えているコースをいくつかピックアップしました。
ちなみに、応募倍率3倍とは「定員に対して3倍の人数が集まっている」ということです。
例えば、10人の定員に対して30人の応募がある場合や、30人の定員に対して90人の応募がある場合、応募倍率が3倍と表現します。
つまり、応募倍率3倍の場合、希望通りのコースで訓練できるのは3人に1人の割合です。
※職業訓練の月別応募状況は「東京都TOKYOはたらくネット」で確認することができます。
数ヶ月分の応募状況をもとに考えると、特に人気が高いのはWeb関係のコースです。
名称からも、デザイン、プログラミング、動画などのコースを希望する方が多いことがわかります。
また、不動産業界について学ぶコースや、オフィスソフトなどのパソコン基礎知識を取得するコースの一部も3倍以上の倍率でした。
とはいえ、仮に「Webデザイン」という同じジャンルであっても、コースは複数あります。
そのため、競争率の高いコースを避けることで、希望分野の訓練を受講できる可能性がアップします。
同じ施設が開催する同じコースであっても、タイミングによって倍率は異なります。
例として「クリーク・アンド・リバー社PEC両国校」が実施している「Webサイト制作科」の数字をご紹介します。
2019年6月入校生応募状況では、定員28人に対して応募者数が76人、倍率は2.71でした。
しかし、2020年6月入校生応募状況では、定員28人に対して応募者数が152人、倍率は5.43です。
2019年に比べて、希望者が大幅に増えていることが読み取れます。
他のコースも同じように、募集タイミングによって倍率が変動すると考えておきましょう。
職業訓練校に通う場合のスケジュール(時間割)は、施設やコースによって異なります。
よくあるパターンは1日に6コマ、1回の訓練時間は50分です。
9:00頃から1限目が始まり、お昼休憩を挟み、15:00~15:30に6限目が終了です。
また、基本的に土日祝日を除く、月曜日~金曜日が訓練日として設定されています。
ポリテクセンター兵庫の公式サイトに掲載されている標準の訓練時間は下記の通りです。
日によっては7時限(15:30~16:20)が開催されることもあります。
訓練を希望する施設やコースがどのような時間割なのか、あらかじめ確認しておきましょう。
職業訓練給付金制度は、求職者支援訓練を受ける方へ向けた制度です。
制度の内容と適用されるための条件について解説していきます。
職業訓練給付金は、雇用保険の受給資格がない方向けの「求職者支援訓練」を受講する方を対象とした給付金です。
「職業訓練受講手当」と「通所手当」「寄宿手当」の3つによって成り立っています。
職業訓練受講手当は、訓練を受けている期間に1ヶ月毎のペースで支給されます。
例えば、2ヶ月間の訓練期間だった場合、支給額は10万円×2ヶ月=20万円です。
ただし、求職者支援訓練を受けるすべての方が受け取れるわけではなく、いくつかの条件を満たす必要があります。
職業訓練給付金を受け取るためには、下記の条件すべてを満たす必要があります。
職業訓練給付金を申請するための書類提出先はハローワークです。
不明な点などがあれば、管轄エリアのハローワークにて相談することができます。
また、訓練を受けながらアルバイトとして働くことも可能です。
ただし、下記の条件は守らなくてはいけません。
条件外にならないように、あらかじめハローワークに相談しておくことをおすすめします。
教育訓練給付金制度は、厚生労働大臣が定めている講座を受講した場合に、受講料の一部が支給される仕組みです。
雇用の安定・就職の促進を目的としており、給付対象者は現在勤務をしている方、もしくは退職して被保険者でなくなった日から1年以上経っていない方です。
大きく3つの種類にわかれています。
対象の教育訓練は約14,000講座あります。
学べる資格の例としては、看護や保育系、簿記や英語などさまざまです。
業種や資格によって、給付金の名称と給付額が異なっています。
支給されるための細かい条件や、対象講座については、厚生労働省の公式サイトをご覧ください。
職業訓練を受けるための条件や手順について解説します。
各工程ごとに、もう少し詳しく説明していきます。
まずは、働きたい業種や業界を明確にして、どのようなスキルが必要なのか把握しましょう。
また「家からスムーズに行ける場所に希望する講座の職業訓練校があるか」「次の募集はいつか?」なども確認が必要です。
公式サイトやパンフレットの情報をもとに、自分で判断することも可能ですが、ハローワークの職業相談窓口でもアドバイスを受けられます。
気になることや、不明点がある場合は積極的にハローワークを利用しましょう。
職業訓練校は、定期的に職業訓練の説明会を開催しています。
説明を聞くだけでなく、実際の訓練風景を見学できるところもあります。
参加したいコースが決まったら、管轄のハローワークで申し込み手続きを行います。
申込書の他、4×3㎝の写真や雇用保険受給資格者証が必要です。
雇用保険受給資格者証とは、職業訓練を受ける資格があることを証明する書類のことです。
ハローワークで求職申し込みをし、説明会に参加すると受け取ることが可能です。
職業訓練の申し込みをしただけでは、職業訓練に参加することができません。
各コースや訓練校が用意している選考試験に合格する必要があります。
選考内容は書類審査や筆記試験、適性検査、面接など、コースによってさまざまです。
ちなみに、面接では「志望動機」「今後のキャリアプランについて」「就職への心意気」などを聞かれることが多くあります。
Web系などの人気が高いコースの場合、倍率が高く、合格できないケースもあります。
選考結果は、訓練実施機関から自宅へ郵送で届きます。
選考試験に合格したら、訓練校へ通う手続きを行います。
自宅に届いた選考結果通知書を持参して、管轄のハローワークにて手続きを進めます。
手続きを忘れてしまうと、合格が取り消される可能性があるため注意が必要です。
ハローワークでは「就職支援計画書」の交付を受けます。
「就職支援計画書」は、就職支援のための大切な書類です。
具体的には、氏名や受講するコースの他、就職に向けた活動などが記載されています。
また、受講期間中、そして受講後にハローワークへ行かなくてはいけない日も書かれています。
失くしてしまわないように、大切に保管しておきましょう。
職業訓練の制度は、ADHDなどの発達障害や統合失調症、適応障害や双極性障害、不安障害のある方も活用することが可能です。
知識やスキルをあらかじめ取得して働くことは、安心感にも繋がります。
さらに職業訓練を通して、人との関わりや集団での振舞い方も学ぶことができます。
「実際にどのような講座を受けられるのか?」「訓練校に通うまでの流れ」などは、管轄内のハローワークへ質問してみましょう。
また、障害のある方の場合、職業訓練の他にも「就労移行支援」と呼ばれる制度を利用できます。
就労移行支援は一般企業に就職を希望する方々へ、働くための様々なサポートを行う福祉サービスです。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万人以上の方の就職をサポートしてきました。
障害のある方が自分らしく働くために、ストレスコントロール・PC訓練・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。
「働くことに悩んでいる」「体調が不安定で働けるかわからない」「一人で就職活動がうまくいかない」などお悩みのある方は、まずは就職支援のプロに相談してみませんか?
職業訓練(ハロートレーニング)は、業界で役立つスキルや知識を無料(テキスト代などを除く)で学べる制度のことです。失業保険受給者が対象の「公共職業訓練」と、失業保険が受け取れない方向けの「求職者支援訓練」の二つに分かれています。
それぞれ内容が異なるため、自身がどちらに当てはまるのかを明確にしておく必要があります。
また、職業訓練で受けられるコースはIT(情報技術)やパソコン、サービスや技術系などさまざまです。
少しでも興味がある方は、まずは説明会に参加してみましょう。
監修者
東京福祉大学・大学院 社会福祉学部 講師
中里 哲也
EBP(Evidence Based Practice)に基づいたソーシャルワーク支援展開を目指し活動中。
専門は「医療福祉」「教育福祉」「地域福祉」「人材育成」など多岐に渡る。
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