精神疾患や障害、病気などについて調べたときに「ICD-10」や「ICD-11」などの用語が目に留まり、気になった方も多いのではないでしょうか。
「ICDってなに?」「ICDはどのようにして用いるの?」や「DSM-5との違いは?」といった疑問をお持ちの方へ向けて、今回はICD-10の概要や、これから適用されるICD-11について解説していきます。
また、「DSM-5」と異なる点や、ICDの原文を見る方法も合わせてご紹介します。
精神疾患や障害、病気などについて調べたときに「ICD-10」や「ICD-11」などの用語が目に留まり、気になった方も多いのではないでしょうか。
「ICDってなに?」「ICDはどのようにして用いるの?」や「DSM-5との違いは?」といった疑問をお持ちの方へ向けて、今回はICD-10の概要や、これから適用されるICD-11について解説していきます。
また、「DSM-5」と異なる点や、ICDの原文を見る方法も合わせてご紹介します。
まず、ICDとはInternational Statistical Classification of Diseases and Related Health Problemsの略で、日本語では「国際疾病分類」と呼ばれることもあります。
ICDの目的は、病因や死因を分類して、統計データを体系的に記録し、分析することです。
ICDは、国際的に使用されており、作成しているのは世界保健機関(WHO)です。
2022年4月現在、日本で使われているICD-10は、1990年に適用されました。
その後、数年ごとに一部の改訂がおこなわれています。
また、約30年ぶりに全面的に改訂された「ICD-11」の適用に向けて、すでに国内でも準備が進められているところです。
2019年5月に「ICD-11」が世界保健機関(WHO)により承認されました。
ICD-11には、最新の医学的知見が反映されており、新たに追加された病気もあります。
例えば、ゲームを止めたいと思っていても、自分の意志で止められない「ゲーム症/ゲーム障害」は、ICD-11から登場した名称です。
また、これまで、自身の性別に対して違和感を覚える症状は「性同一性障害」として「精神および行動の障害」に分類されていましたが、ICD-11では「性別不合」という名称で、精神疾患ではなく「性の健康に関連する状態」の分類に記載されることになりました。
上記以外にも、変更・追加された箇所は多数あり、分類項目数は約14,000(ICD-10)から約18,000にまで増えています。
ICD-11がいつから日本に導入されるのか、正式な発表はまだありません。
ICD-11がWHOにより公表されてから、今までの流れは下記の通りです。
適用に向けた準備とは、ICD-11の和訳や分類項目の確認のことです。
具体的には「ICD-11で新たに追加された病気の日本語名称を決める」といったことがあります。
ほかにもさまざまなことを、厚生労働省や学会で話し合いながら決めていきます。
そのため、導入までには時間がかかってしまうのです。
ICD-11に関する情報は、厚生労働省の公式サイトで確認できます。
ICDについて検索すると、DSMという名称を目にすることがあるかもしれません。
DSMは「Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders」の略です。
日本語では「精神疾患の診断・統計マニュアル」と呼ばれており、その名の通り、DSMには精神疾患に関する診断名や診断基準が書かれています。もともとはアメリカでつくられたものですが、現在は国際的に利用されていて、日本でも精神疾患の診断に用いられています。
『DSM-5』の「5」は、第5版という意味です。アメリカ精神医学会は1952年にDSMの第1版を出版し、その後、改訂を重ねて、2013年(日本語版は2014年)に第5版『DSM-5』を出版しました。
現在は、その第5版の内容をアップデートし、2022年(日本語版は2023年)に出版した『DSM-5-TR』が最新版として使われています。
ICDとDSMの大きな違いは、対象となる疾患です。
ICDは疾患全般が対象であるのに対して、DSMは精神疾患のみが対象です。DSMとICDの精神疾患の分類は、共通しているところもみられますが、分類の仕方や分類名、診断名が異なるものもあります。
ICDとDSMの違いを表にまとめると下記の通りです。
ICD-10には、各グループごとに分類された病名が記載されています。
この項目では「ICDコードとはどのようなものか」と「具体的な分類」をご紹介します。
ICDコードとは、分類されている病名につけられているコードのことです。
同じ病気であっても、国によって言語が異なるため、名称はさまざまです。
例えば、日本語での「百日咳」は、英語では「Whooping cough」です。
ほかの国も含めると呼び方は複数ありますが、百日咳のICDコードは世界共通で「A37」なので、違う国のデータを参照したいときは、このコードをもとに調べられます。
ただし、ICDコードは常に一定ではなく、ICDの改訂により変更する可能性があります。
ICD-10は、下記のようにアルファベットAからUを使って大分類を設けています。
発達障害の場合、ICD-10の「F00-F99:精神および行動の障害」に含まれます。
そして、各障害ごとに、大分類の中でさらに細かく分類が分けられています。
ICD-10の原文は、世界保健機関(WHO)の公式サイトで見ることができます。
日本語版のICDの分類名は、標準病名マスター作業班によるWebサイトで確認できます。
トップページにある「オンライン病名検索」の欄に、ICDコードを入力すると、日本語での病名を調べることが可能です。
世界保健機関(WHO)が作成しているICD-10は、医療機関での診断時や国の統計調査で用いられています。
内容は定期的に改訂されており、日本国内においても、将来的にICD-10に代わりICD-11が適用される予定です。
また、ICD-10の原文は世界保健機関(WHO)の公式サイトで確認できますが、当然、医師ではない方が参照して病気を自己判断することはできません。
もしも、身体に関して気になることがある場合、必ず専門の医療機関を受診するようにしましょう。
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監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。
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