Aさんは、その場に合わせた表情や発言が苦手なことで大人になっても人間関係がうまくいかないことが多く、自分に自信が持てませんでした。しかしAさんは「精神的に安定し、働き続けたい」という気持ちがありました。
そこで、障害のある方の就職・定着をサポートする通所型の福祉サービス「就労移行支援事業所」を利用することにしました。就労移行支援事業所では、自己分析プログラムや職場実習などへ参加することで、ご自身の特性について理解を深めていきました。
Aさんの特性をまとめると、次の通りです。
【得意なこと】
・PCスキルが高い
・自分の決めた目標に取り組むことができる
・ルーティンワークが得意である
【苦手なこと】
・コミュニケーションや雑談が苦手
・手先が不器用、手書きが苦手
・柔軟に対応することは難しい
Aさんの特性を活かした職場環境とはどういうところなのか、どういったサポートが必要なのか、就労支援スタッフとの面談などを通じて以下の通り整理をしていきました。
【職場での環境調整・サポート】
● Aさんの得意に特化した業務(事務職の業務切り出し)
・手書きやコミュニケーションが必要な業務を避ける
(例:電話対応をなくす など)
・ご本人の強みや得意を活かすPCでの入力業務やデータ書き起こしなどのルーティンワークを中心とした業務をピックアップする など
● コミュニケーションの工夫
・必要以上のコミュニケーションがとらなくてもいい環境
(例:休憩は一人で過ごす、飲み会への参加は任意にする など)
・突発的な仕事がある場合、事前に相談する時間をとる
・気になる点は日報にまとめ、提出する など
Aさんは、働く上で特に必要になるコミュニケーションスキルを身につけていきながら、PCスキルを高め、就職活動の準備をしていきました。就労支援スタッフは事前にAさんの特性や職場環境を企業側へ伝えた上、面談・入社前の職場実習を実施し、Aさんにとって働きやすい環境であるかどうかを確認していきました。その結果、Aさんも企業側も安心して働けることがわかり、そのまま入社しました。
現在は、Aさんの得意を発揮することで上司からの評価も上がり、後輩へのレクチャーなど、少しずつできることが増えました。また就労移行支援事業所の卒業生として「就職者講演会」のプログラムを提供し、少しずつ自分に自信を持てるようになりました。Aさんの自己肯定感があがったことで、精神的に安定して、充実した生活を送られています。
※プライバシー保護のため、事実を変更・再構成しています。