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広汎性発達障害(PDD)とは?症状や原因・診断基準について解説

更新日:2024/06/29

広汎性発達障害は、行動や物事に強いこだわりがある、対人関係をうまく築くのが難しいなどの特徴がみられ、日常生活や仕事に影響を及ぼす障害です。

 

以前は対人関係の困難、パターン化した行動や強いこだわりの症状がみられる障害の総称として「広汎性発達障害」が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉的特徴を持つ疾患は包括され、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。

 

現在は「広汎性発達障害」の名称で診断されることはなくなりましたが、以前の診断名で情報を探す人もいるため、この記事では「広汎性発達障害」の名称も使いながら説明します。

 

広汎性発達障害は生まれつきの障害であるため、大人になってから発症するものではありません。

 

しかし、幼少期に気が付かず、社会に出てから診断を受けて判明するケースもあります。

 

今回は、広汎性発達障害の症状や診断基準、仕事を続けるうえで意識したいポイントについて解説します。

広汎性発達障害とは

以前の診断名である広汎性発達障害は、PDD(Pervasive Developmental Disorders)とも呼ばれます。以下の5項目が広汎性発達障害として分類されていました。

  • 自閉症障害
  • レット障害(レット症候群)
  • 小児期崩壊性障害
  • アスペルガー障害
  • 特定不能の広汎性発達障害

2013年に改訂された『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、広汎性発達障害の分類がなくなり、上記のうちレット障害(レット症候群)以外の4つは「ASD(自閉スペクトラム症)」という診断名に統合されました。

「広汎性発達障害」という名称が使われている場合

厚生労働省などの機関は「DSM-5」ではなく、同じく国際的な診断基準である「ICD-10」を参照しています。

 

「ICD-10」においては「広汎性発達障害」という名称が使われています。

 

そのため、行政や市町村のWebサイトでは「広汎性発達障害」と記載されていることがあります。

 

また過去に診断された場合にはDSM4-TRに基づき「広汎性発達障害」という診断になっていることもあります。

広汎性発達障害の原因

以前の診断名で「広汎性発達障害」に分類されていたもののうち、レット障害(レット症候群)は、遺伝的な原因で引き起こされる神経発達障害です。社会的技能とコミュニケーションの面での問題がみられるためASD(自閉スペクトラム症)と似ていますが、これらは別のものとして分類されています。

 

それ以外の4つが統合されたASD(自閉スペクトラム症)の原因は、まだ明確になっていませんが、最近では「遺伝的な要素と環境要因が複雑に絡み合って発現するのではないか」と考えられています。

 

かつて言われていた、保護者の育て方や愛情不足が原因という説は現在医学的に否定されています。

広汎性発達障害のある方が仕事を続けるうえで大切なこと

以前の診断名で広汎性発達障害とされていたもののうち、レット障害(レット症候群)については現在は別のものとして分類されているため、この記事では現在のASD(自閉スペクトラム症)に該当するものを「広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)」と表記します。

 

そのうえで、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)と付き合いながら仕事をするうえで、意識したい点について解説します。

 

大切なポイントは一人で抱え込まず、医師や家族、支援機関や職場の人たちなど、周囲の人に協力をしてもらうことです。

 

自分一人でどうすればいいのか分からないときは、まわりの人の力を借りたり、かかりつけの医師や支援機関などで相談してみましょう。

周囲の理解や協力を得る

できる範囲で自身の症状について、上司や同僚などに伝え、理解してもらうことは、心身への負担を減らすことにつながります。

 

仕事において、症状により困難が生じる場面についてあらかじめ伝えておくことで、その状況になることを防いだり、助けを求めることができるような環境作りをおこなうことが大切です。

仕事の指示は具体的にしてもらう

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)があると「曖昧な指示の理解が困難に感じる」ことが考えられます。

 

曖昧な言葉をそのままにしておくと、作業の認識にズレが生じ、ミスにつながる可能性があります。

 

そのため、数字で表してもらったり、見本を見せてもらったりして、具体的な指示を受けるようにしましょう。

ひとつのことに集中しすぎないように工夫する

もしも、ひとつの仕事に集中しすぎて、まわりが見えなくなる状態にお困りの場合は、アラーム機能を活用するとよいでしょう。

 

あらかじめ、作業ごとに時間配分を決めておいて、次の仕事に移るタイミングでアラームを鳴らすことで、行動をコントロールしていきましょう。

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方が就職や職場復帰で利用できる支援は?

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方が就職や職場復帰を検討する場合は、専門機関の支援を利用することを検討してみるとよいでしょう。

リワーク

リワークとは、うつ病など精神の不調によって休職した方がスムーズに職場復帰できるようにするためのプログラムのことです。医療機関や公的機関、その他民間の事業所などで受けられます。

 

生活リズムや模擬業務、ストレスコントロールなどのプログラムを通してスムーズな職場復帰を目指します。リワーク支援、職場復帰プログラム、復職支援プログラムなどの名称で呼ばれることもあります。

ハローワーク

ハローワークは、職業紹介や就労の相談を受付している機関です。

 

正式名称は、公共職業安定所です。

 

ハローワークは、障害のある方へ向けた専門の窓口を設置しています。

 

仕事をするにあたって不安なことを話したり、障害の症状を把握したうえで仕事の紹介をしてくれたりします。

 

障害者手帳を持っていない場合も利用できますが、正しく症状を伝えるために、診断書があれば持参することをおすすめします。

 

障害者就業・生活支援センター

障害のある方の仕事面、生活の面での相談やほかの関係機関との連絡調整などのサポートをおこなっている機関です。生活面では健康管理、金銭管理、生活設計などの相談をおこなっており、仕事面では就職に向けての訓練や職場定着のサポートもしています。

 

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害のある方の就労を支援している機関です。

 

就労移行支援事業所では働くための能力を身に着けたり、面接対策や書類作成などの就職準備などを支援してもらうことができます。

 

どのような支援をおこなっているのかは、事業所によってさまざまです。

 

LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万人以上の方の就職をサポートしてきました。

障害のある方が自分らしく働くために、ストレスコントロール・パソコン訓練・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

「働くことに悩んでいる」「体調が不安定で働けるか分からない」「一人で就職活動がうまくいかない」などお悩みのある方は、まずは就職支援のプロに相談してみませんか?

 

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まとめ

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)は、生まれつきの障害です。

 

特性の現れ方や程度は人によって異なるため、生活の中で起こる困りごともさまざまです。

 

もしも、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の特性による困りごとでお悩みの場合は、医療機関や専門機関に相談し、早めにサポートを受けるようにしましょう。

更新日:2024/06/29 公開日:2022/04/07
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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