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発達障害の方が取得できる障害者手帳とは?申請や更新の方法も解説

更新日:2024/06/20

発達障害のある方の中には、「発達障害は障害者手帳の対象となるのか」「障害者手帳の取得にはどのようなメリットやデメリットがあるのか」などが分からず、障害者手帳の取得を迷っている方もいるかもしれません。

そこでこの記事では、障害者手帳の種類や、発達障害のある方が障害者手帳を取得するメリットとデメリット、障害者手帳の申請や更新の方法、障害者手帳がなくても利用できる可能性のある支援サービスなどについて解説します。

障害者手帳とは?

障害者手帳とは、心身に一定の障害のある方が交付を受けることのできる手帳の総称です。障害者手帳の交付を受けるには、申請が必要です。 

 

障害者手帳を取得すると、障害者雇用での求人に応募ができるようになります。また、一部の公共料金や交通機関の運賃などの割引、税金の控除などが受けられるほか、さまざまな福祉サービスの対象となります。

 

障害者手帳には3つの種類があり、これらを総称して「障害者手帳」と呼びます。発達障害のある方に特化した手帳はありませんが、発達障害のある方が取得できる障害者手帳もあります。

障害者手帳の種類

障害者手帳には以下の3種類があります。

 

身体障害者手帳

「身体障害者福祉法」にもとづき、「身体の機能に一定以上の障害がある」と認められた方に交付される障害者手帳です。

 

精神障害者保健福祉手帳

「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」にもとづき、一定程度の精神疾患のある方に交付される障害者手帳です。

 

療育手帳

児童相談所、または知的障害者更生相談所において「知的障害(知的発達症)がある」と判定された方に交付される障害者手帳です。「療育手帳制度」は、各自治体において、判定基準などの運用方法を定めて実施されています。

 

それぞれの手帳に関する詳細は、この後ご説明します。

 

発達障害のある方が交付対象となる可能性があるのは、精神障害者保健福祉手帳です。また、発達障害と知的障害(知的発達症)が併存している場合は、精神障害者保健福祉手帳に加え、療育手帳の交付も受けることができる可能性があります。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患があるために、長期にわたり日常生活や社会生活において制約がある方を交付対象とする障害者手帳です。

 

対象となる疾患はすべての精神疾患で、例えば以下が挙げられます。

  • 発達障害
  • 統合失調症
  • うつ病
  • てんかん
  • 高次脳機能障害
  • その他の精神疾患(ストレス関連障害等)など

発達障害も精神障害者保健福祉手帳の対象疾患であり、ASD(自閉スペクトラム症)(※)1、ADHD(注意欠如多動症)(※)2、LD・SLD(限局性学習症)(※)3などが含まれます。 しかし、例えばADHD(注意欠如多動症)という診断名であっても、特性は人によりさまざまに異なるため、日常生活での困りごとや必要な支援も人によって異なります。

 

このため、精神障害者保健福祉手帳には障害の程度に応じて1級から3級までの障害等級があり、等級により受けられるサービスの内容が異なります。障害等級は、「精神疾患の状態」と「能力障害の状態」の両方の面を総合的に判断して決められます。各等級の障害の状態は、以下のように定められています。

 

(※)1 以前は「自閉障害」という診断名が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)において自閉的特徴を持つ疾患が統合され、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。この記事では以下、ASD(自閉スペクトラム症)と記載しています。

 

(※)2 以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事では以下、ADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

 

(※)3 学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっていますが、最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。

 

1級 日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの 2級 日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加える ことを必要とする程度のもの 3級 日常生活若しくは社会生活が制限を受けるか、又は日常生活若しくは社 会生活に制限を加えることを必要とする程度のもの

 

出典:厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳実施要領について」

 

精神障害者保健福祉手帳の申請は、市区町村の担当窓口でおこないます。申請後、各都道府県・政令指定都市の精神保健福祉センターにおいて審査がおこなわれ、申請が認められた場合は手帳が交付されます。

 

精神障害者保健福祉手帳には有効期限があり、「交付日から2年が経過する日の属する月の末日」が期限となっています。更新は任意で、希望する場合は診断書または年金証書などの写しを添えて、更新の手続きをおこないます。

療育手帳

療育手帳は、児童相談所、または知的障害者更生相談所において、「知的障害(知的発達症)がある」と判定された方に交付される手帳です。18歳以上の方の場合は、知的障害者更生相談所で判定がおこなわれます。

 

療育手帳制度は、各自治体がそれぞれ運用方法を定めて実施しています。このため、手帳の名称や等級の内訳などが自治体により異なる場合があります。

 

例えば東京都では「愛の手帳」との名称で呼ばれており、障害の程度により1度(最重度)、2度(重度)、3度(中度)、4度(軽度)の4等級に分かれています。

 

参考リンク:東京都福祉局「愛の手帳」

 

療育手帳の更新についても、自治体により規定が異なります。年齢により更新期限が定められている場合もあれば、更新の必要がない場合もあります。

 

詳しくは、お住まいの市区町村の担当窓口にお問い合わせください。

発達障害のある方が障害者手帳を取得できない場合

発達障害のある方は、前述のように精神障害者保健福祉手帳を申請することができます。

 

しかし発達障害と診断されていても、基準を満たさないために、精神障害者保健福祉手帳の交付対象外となる場合もあります。

障害者手帳の基準を満たしていない場合

精神障害者保健福祉手帳は、精神疾患の初診日から6か月を経過した日以後に申請が可能であると定められています。このため、初診日から6か月が経過するまでの期間は申請をおこなうことができません。

 

また、申請後におこなわれる審査において「1級~3級のいずれの状態にも当てはまらない」と判断された場合には手帳が交付されません。

発達障害の「グレーゾーン」の場合

発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の傾向がみられるものの、診断基準を満たさないために正式に診断されていない状態のことです。そのため、精神障害者保健福祉手帳の申請の対象外となります。

 

ただし、発達障害のある方を対象とする福祉サービスの中には、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けていなくても利用できる可能性のあるサービスもあります。

 

これらのサービスについては、この記事の後半の「障害者手帳がなくても利用できる可能性のある支援サービス」の章で詳しくお伝えします。

発達障害のある方が障害者手帳を取得するメリットとデメリット

障害者手帳の取得は任意ですが、障害者手帳があることで受けられる支援もあるなど、さまざまなメリットがあります。

障害者手帳を取得するメリット

障害者手帳を取得している人を対象とする、さまざまなサービスが受けられます。これらのサービスを利用して生活にかかる負担を軽減できることが、障害者手帳を取得することのメリットであるといえます。

 

主に、以下のようなサービスがあります。

  • 税金の控除
  • 公共料金の割引
  • 障害者雇用求人への応募 など

 

税金の控除

所得税や相続税などについて「障害者控除」が受けられます。また障害者である親族を扶養している方も、所得税の障害者控除を受けられます。

 

さらに、住民税や自動車税、軽自動車税や個人事業税などについても、自治体ごとに控除額が設定されています。

 

公共料金の割引

以下のような割引が受けられる場合があります。

 

  • NHK放送受信料の減免
  • 電車、バス、タクシーなどの運賃の割引
  • 水道料金・下水道使用料の減免
  • 携帯電話料金の割引
  • 公営住宅への入居優遇 など 

 

自治体によりサービスの有無や対象となる等級などが異なるため、詳しくはお住まいの自治体の情報を確認してください。

 

障害者雇用求人への応募

障害者雇用とは、障害のある方を対象とする雇用のことです。障害があることが分かったうえで雇用されるため、障害への配慮のある環境で働ける場合が多くなります。

障害者雇用の求人への応募は、障害者手帳を取得していることが条件となります。

障害者手帳を取得するデメリットもある?

障害者手帳は、取得したことを自分から伝えない限り、持っていることが他人に知られることはありません。このため、障害者手帳の取得自体には特にデメリットはないといえるでしょう。

 

ただし障害者雇用の求人に応募して就職した場合は、障害者手帳を取得していることが周囲の人に分かることになります。障害があることをオープンにして働くことで、合理的配慮について相談できるなどのメリットもありますが、オープンにするかどうかは、事前によく検討しておくとよいでしょう。

 

また、精神障害者保健福祉手帳は2年ごとに更新が必要なこと、その際に診断書取得などの費用がかかることにも注意しましょう。

障害者手帳の申請方法は?

ここでは、障害者手帳の申請手順について説明します。

精神障害者保健福祉手帳の申請方法

精神障害者保健福祉手帳の申請に必要なものは、主に下記の3つです。

ただし自治体により異なる場合があるため、お住まいの自治体の情報を確認してください。

  • 申請書
  • 医師の診断書、または精神疾患による障害年金を受給している場合はその証書などの写し
  • 顔写真

申請から交付までに要する期間も自治体により異なり、1か月半から3か月程度かかる場合もあります。

療育手帳の申請方法

療育手帳の申請の流れは自治体により異なるため、お住まいの自治体の情報を確認してください。多くの場合、申請を自治体の担当窓口へおこないます。担当窓口は自治体により異なりますが、市区町村の障害福祉担当課や福祉保健センターなどが窓口となっています。

 

申請書は担当窓口から判定機関へ送られ、判定機関から申請者へ連絡があり、面接にて知的障害(知的発達症)の有無や等級についての判定がおこなわれます。18歳以上の方が新規で申請する場合は、知的障害者更生相談所にて判定がおこなわれます。

 

申請に必要なものは、主に以下のものです。こちらも自治体により異なるため、詳しくはお住まいの自治体の担当窓口へ確認してください。

  • 申請書
  • 調査票
  • 顔写真
  • 本人確認書類
  • 印鑑 など

 

申請から交付までに要する期間も自治体により異なり、2か月~2か月半程度を要する場合もあるようです。

障害者手帳の更新について

精神障害者保健福祉手帳は前述のように、「交付日から2年が経過する日の属する月の末日」が有効期限となっています。

 

療育手帳の更新については自治体により規定が異なり、年齢により更新期限が定められている場合や更新の必要がない場合などがあります。多くの場合、更新期日の少し前に自治体から通知が届きます。ただし、自治体によっては更新の通知がない場合もあります。

 

更新の通知の有無や更新手続きの詳細については、お住まいの自治体の情報を確認してください。

障害者手帳がなくても利用できる可能性のある施設や支援サービス

障害のある方を対象とする施設や支援サービスの中には、障害者手帳の交付を受けていなくても利用できる可能性のある施設や支援サービスもあります。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害のある方への支援を総合的におこなうことを目的とする専門機関です。

 

発達障害のある方やその家族などからの相談を受け付けており、指導や助言をおこなうほか、必要に応じて地域の関係機関を紹介しています。

 

センターによっては、診断がない方も利用できる場合があります。詳しくは、お住まいの地域の発達障害者支援センターにお問い合わせください。

 

全国の発達障害者支援センターの所在地は、以下のWebサイトで確認することができます。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の就業面と生活面についての一体的な支援をおこなう機関です。

 

特性や能力に合った職業の選定、職業準備訓練、職場実習のあっせんなどの就業面の支援や、生活習慣の形成や健康・金銭の管理などに関する助言といった生活面での支援をおこなうほか、関係機関とも連携して支援をおこないます。

 

センターによっては、障害者手帳がなくても利用できる場合があります。お住まいの地域の障害者就業・生活支援センターの情報をWebサイトや電話で確認してください。

就労移行支援事業所

就労移行支援は、障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスの一つです。

 

就労移行支援事業所は、一般企業への就職を目指す障害のある方に対し、就職の準備から就職活動のサポート、就職後の職場への定着までの過程を一貫してサポートする支援機関です。

 

障害者手帳を取得していなくても、自治体の判断により利用できる場合もあります。利用を希望する場合は、自治体の担当窓口や就労移行支援事業所にお問い合わせください。

まとめ

障害者手帳には「身体障害者手帳」「精神障害者保健福祉手帳」「療育手帳」の3つの種類があります。発達障害のある方は、「精神障害者保健福祉手帳」を取得できる可能性があります。

 

取得は任意ですが、取得するとさまざまな支援サービスを受けることができ、生活にかかる負担を軽減することができます。障害者手帳の取得を考えている方は、自分にとってのメリットを検討して選択してください。

発達障害のある方の就職をサポートする「LITALICOワークス」

LITALICOワークスは、各地で就労移行支援事業所を運営しています。これまで13,000名以上の方がLITALICOワークスを利用しています。また就職後の職場への定着支援にも力を入れており、88.8%という高い職場定着率の実績があります。

 

一人ひとりに合う働き方を見つけていけるように、自己分析や障害理解、ストレスマネジメントやビジネスマナー、ビジネス文書の作成、コスト・在庫の管理業や軽作業など、多種多様なプログラムが豊富に用意されています。

 

また全国に4,500拠点以上(2019年4月時点)の企業インターン(企業での職場体験実習)先があり、豊富な選択肢の中から職種を選んで実際に企業で働いてみることで、自分に合う仕事や自分らしい働き方を考えることができます。

 

支援内容は、一人ひとりの特性や目指す職種などにより異なります。

 

例えばADHDのあるNさん(20代男性)は、コミュニケーションやストレスマネジメントなどのプログラムを通じて、人との程よい距離を保つ方法やストレス・気分の落ち込みへの対処法などを学びました。

 

企業インターンでは「マルチタスクは苦手」「事務はつらい」「マニュアルがあり、動きのある仕事がいい」などの自己分析をおこなうことができ、鉄鋼を扱う商社に就職しました。Nさんは現在、いきいきと輝きながら鉄材の加工・運搬の仕事をしています。

 

参考リンク:ADHD・広汎性発達障害(発達障害)の仕事・就職事例 -鉄材加工・運搬-

 

LITALICOワークスは、 障害者手帳がなくても利用できる場合があります。働くことについて不安があったり、障害者手帳の取得について悩んでいる場合は、お気軽にLITALICOワークスにご相談ください。

更新日:2024/06/20 公開日:2021/12/10
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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