強迫性障害(強迫症)とは、意に反して沸く思考やイメージ(強迫観念)によって過剰な不安を抱く精神疾患です。
強迫観念から逃れるためにおこなう行為(強迫行為)は、仕事や生活、人間関係に影響を及ぼします。
しかし、治療に取り組み、適切な対策や工夫に取り組めば、職場復帰したり、仕事を続けたりすることは十分可能です。
この記事では、強迫性障害(強迫症)とうまく付き合いながら仕事を続けるための工夫や解決策をご紹介します。
強迫性障害(強迫症)とは、意に反して沸く思考やイメージ(強迫観念)によって過剰な不安を抱く精神疾患です。
強迫観念から逃れるためにおこなう行為(強迫行為)は、仕事や生活、人間関係に影響を及ぼします。
しかし、治療に取り組み、適切な対策や工夫に取り組めば、職場復帰したり、仕事を続けたりすることは十分可能です。
この記事では、強迫性障害(強迫症)とうまく付き合いながら仕事を続けるための工夫や解決策をご紹介します。
目次
強迫性障害(強迫症)には大きく分けて「強迫観念」と「強迫行為」の2つの症状が挙げられます。
※強迫性障害は現在、「強迫症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「強迫性障害」といわれることが多くあるため、ここでは「強迫性障害(強迫症)」と表記します。
どちらにおいても仕事に影響が出るといわれています。
強迫性障害(強迫症)の強迫観念は、きわめて強い不安・恐怖を差し、それは不快な感情や精神的な苦痛を伴います。
自分の意に反して何度も不安や恐怖のイメージが繰り返し思い浮かびます。
強迫観念の内容はさまざまです。例を挙げると「ガスの元栓や戸締りが不十分な気がする」「自分で決めたルール通りに運ばないと悪いことが起きる」「汚れている気がする」など。
このような考えや想像が浮かぶと、仕事中や取り込み中であっても、気にしないようにしたり抑え込んだりするのが難しく、強迫観念を打ち消したい衝動に駆られます。
強迫性障害(強迫症)の強迫行為は強迫観念を打ち消したい衝動で起きる行動です。
具体的には以下のようなものがあります。
強迫行為をおこなうことで一時的に安心しますが、次に同じような状況になったとき、また強迫行為をせずにはいられなくなります。
不合理な行動をしている自覚は本人にもありますが、強迫行為をやめることは難しいといわれています。
強迫行為が続き、人間関係や業務に支障が出ると、それによる苦痛や悩みを持つ方もいます。
また、その苦痛がもたらす二次障害として抑うつ状態や、さらなる精神疾患を併発する可能性もあります。
強迫性障害(強迫症)のある方は、繰り返す強迫行為に苦痛を感じる一方で、心配性や潔癖気味といった個人の性格の問題と捉えて不便や苦痛を我慢してしまう人も少なくありません。
しかし、診断や適切な治療をすれば軽減、改善する可能性の高い疾患ともいわれています。
仕事をしながら治療を受けたり、適切な支援を受けてさまざまな形で働き続ける工夫が必要です。
強迫性障害(強迫症)の疑いがあったり、不便さを感じているならまずは精神科や心療内科を受診しましょう。
そして、
と感じても通院や服薬をおろそかにしないことです。
自己判断での服薬中止は症状の揺り戻しなど、心身が非常に不安定な状態になる可能性もあります。
回復には時間がかかりますが、治療法は確立している疾患なので、減薬や治療の終了判断は医師に従いましょう。
強迫性障害(強迫症)のある方は仕事で悩みや困りごとを抱えることが多いです。
しかし、いくつかのポイントをおさえていけば、強迫性障害(強迫症)とうまく付き合いながら安心して長く働き続けることができます。実際そのようにできている方も数多くいます。
そのためには、以下のポイントを満たすことが大切です。
食事や睡眠などの生活リズムが乱れると心身の調子も乱れ、不安や恐怖に対する心の抵抗力も低下します。
十分な睡眠と健康的な食事、適度な運動などが、不安や恐怖への抵抗力をつけることにもつながります。
特に十分な睡眠は脳の状態がリフレッシュされるので、寝る前には悩みや不安を感じていたのに起きたら気持ちが楽になる効果があります。
業務全体を把握するために、タスクや進行状況を書き出して「見える化」することで、思考や記憶が整理され、やるべきことが明確になり、集中力や安心感が生まれます。
タスクを書き出せば、目の前の作業に集中することができ、会議の意見をボードに書き出せば、議論に集中することができます。
日記に今日の出来事を書き留めることで、落ち着いて1日を振り返ることができ、明日に備えることができます。
書き出すことはストレスを減らす魔法であるといっても過言ではありません。
ぜひ、スケジュールやタスクを積極的に書き出してみましょう。
心身の調子が優れない時は、休むようにしましょう。
無理をしてしまい、状態が悪化するほど、回復にも時間がかかってしまいます。
安心して長く働き続けていくためにも、調子が悪い時は勇気をもって休むようにしましょう。
いざという時の欠勤や休暇をスムーズに取得するためには、疾患や特性について上司や周囲に事前に伝えておくとよいでしょう。
強迫性障害(強迫症)の影響で心身が疲れきっている場合は、療養が最優先です。
短期の療養でも、長期にわたる療養が必要な場合も、まず医師に相談しましょう。
服薬や体調管理に気をつけていても、何かの拍子に体調をコントロールできなくなることもあるでしょう。そうなった際に備えて、日頃からその日の体調をメモで残しておくといいでしょう。
医師は、本人からよく話を聞いたうえで、症状や就労状況、職場や生活の環境などを総合的に踏まえ、休職すべきかどうか判断します。
その内容を上司に伝え、医師が設定した療養期間について相談するといいでしょう。
精神疾患の治療のために通院中の人や、治療により症状が安定し再発の予防目的で通院中の人の医療費の自己負担額を軽減する制度です。
疾患の種類や所得に応じて、1ヶ月当たりの負担の限度額が設定されます。
強迫性障害(強迫症)のある方は、精神障害者保健福祉手帳を取得することができる場合もあります。申請には各種条件があるため、まずは主治医へご相談ください。
障害者手帳を取得すると、疾患の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスや税金の控除、公共交通機関の運賃や公共施設利用料の割引などを受けることができます。
また、障害者雇用という枠で、症状に対する理解や支援を得られやすい職場で働く選択肢も選ぶことができます。
障害や疾患のために、生活や仕事に支障が出たときに支給される年金です。
働いていた場合でも、症状により仕事が制限されていると判断された場合は、生活の一部を支援する額が支給されます。
怪我や疾患などにより働くことが難しく、収入が不十分で生活に困った場合に、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための費用が給付される制度です。
受給には各種条件がありますので、まずはお住まいの市区町村にてご相談ください。
疾患や怪我で仕事を長期間休むときに無収入になってしまうことを避け、生活を保障する目的で支給される手当金です。
ただし、労災保険の給付対象とはならない、業務外の理由による休職に限られます。
保険組合の加入期間によって、その人の平均収入額の3分の2の額、または月額28~30万円のいずれかが、最長1年6ヶ月まで支給されます。
LITALICOワークスでは障害のある方の休職・退職からの復帰を多数支援しています。
強迫性障害(強迫症)のある方で復帰された方も数多くいらっしゃいます。
実際に休職・退職からの復帰を目指す場合は、ぜひ専門機関の支援の利用を検討してみてください。
強迫性障害(強迫症)をきっかけに療養が必要となり、休職・退職に至った場合は、医師から復職の許可が出たのちに就職先を探すことになります。
前職で自分に適していなかった要素を分析し、それらの要素を含まない仕事を選ぶとよいでしょう。その際には、疾患や障害のある人の就職活動を支援する機関を利用することをおすすめします。
障害福祉や就労について、幅広い知識と経験を持つスタッフのサポートを受けながら仕事探しをおこなう方法もあります。
ハローワークには、障害や疾患のある人の就労を支援する窓口「専門援助部門」があります。
また、就職に関する相談やカウンセリングの実施のほか、障害や疾患のある人を対象にした求人の紹介などをおこなっています。
就労移行支援は一般企業に就職を希望する方々へ、働くためのなサポートをおこなう福祉サービスです。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万人以上の方の就職をサポートしてきました。
障害のある方が自分らしく働くために、ストレスコントロール・PC訓練・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。
「働くことに悩んでいる」「体調が不安定で働けるか分からない」「一人で就職活動がうまくいかない」などお悩みのある方は、まずは就職支援のプロに相談してみませんか?
強迫観念と強迫行為は繰り返すほど症状が重くなります。
しかし、治療に取り組み、支援機関の支援を得たうえで向いている仕事に就けば、安心して長く働き続けることは十分可能です。
もし、退職後に療養を経て復帰を目指す場合は、ぜひ専門の支援機関をご利用ください。
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