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お役立ち仕事コラム

障害者手帳とは?等級や種類、申請条件や取得する利点、障害者雇用も解説

更新日:2022/06/08

障害者手帳は種類や申請の手続きが複雑で、持つことでどのような制度やサービスが利用できるのかわかりづらいと感じている方もいるのではないでしょうか?


この記事では障害者手帳の種類や申請方法、メリット・デメリットについて整理して解説します。

障害者手帳とは?

障害者手帳とは障害のある方を対象に交付される手帳の事です。 障害者手帳を持つことでさまざまな福祉サービスを利用することができ、企業に就職する場合には「障害者求人」での応募が可能となるなどメリットを受けることができます。

 

障害の種類によって手帳も種類が分かれています。

障害者手帳の等級と種類

ここでは障害者手帳の種類や等級について解説します。

障害者手帳の種類

障害者手帳には「精神障害者保健福祉手帳」「身体障害者手帳」「療育手帳(※)」の3種類があります。 発達障害のある方は基本的に「精神障害者保健福祉手帳」の対象となります。知的障害を伴う発達障害の場合は「療育手帳」の取得も可能です。
(※)自治体により名称が異なります。詳細は後ほど紹介します。


いずれの手帳の場合でも障害者総合支援法という障害がある方の支援を定めた法律の対象となっています。
それぞれの手帳の制度ができた経緯や法律などが異なっているため、手帳ごとに等級の区分や申請手続きなどが異なります。


これからそれぞれの障害者手帳の内容についてご説明します。

精神障害者福祉保健手帳の等級

精神障害者保健福祉手帳は、精神保健福祉法に基づき、何らかの精神疾患があるために長期にわたり日常生活または社会生活への制約がある方に対して、都道府県や政令指定都市が交付する手帳です。


障害等級は、日常生活における支障の程度や症状の種類によって1級から3級に区分されています。

  • 1級:常に誰かの援助がなければ日常生活が送れないと判断された状態。
  • 2級:1級より軽いが日常生活に困難が生じている状態。簡単な労働に従事している方も含む。
  • 3級:2級より軽いが日常生活に制限がある状態。一般企業に就職している方もいる。

 

また、すべての精神疾患が対象ではありますが、手帳を受けるためにはその精神疾患で初めて診察を受けてから6ヶ月以上が経っていることが要件となっています。


代表的な精神疾患は以下を指します。

  • 統合失調症
  • うつ病、躁うつ病などの気分障害
  • てんかん
  • 薬物やアルコールによる急性中毒またはその依存症
  • 高次脳機能障害
  • 発達障害(自閉症、学習障害、注意欠如・多動性障害など)
  • その他の精神疾患(ストレス関連障害など)

身体障害者手帳の等級

身体障害者手帳は、身体障害者福祉法に基づき、身体障害のある方に対して都道府県や政令指定都市、中核市が交付する手帳です。日常生活における支障の程度や症状の種類により、7つの障害等級に区分されており、6級以上の障害に対して交付されます。


7級にあたる障害は単独では身体障害者手帳の交付対象とはならず、7級の障害が2つ以上ある場合などに交付対象となります。
また、いずれも一定以上で永続すること(その障害が将来にわたり回復する可能性が極めて低い状態)が要件となっており、対象となる障害は以下の9つを指します。

 

  • 視覚障害
  • 聴覚又は平衡機能の障害音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
  • 肢体不自由
  • 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害
  • ぼうこう又は直腸の機能の障害
  • 小腸の機能の障害
  • ヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能の障害
  • 肝臓の機能の障害

療育手帳の等級

療育手帳は、児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される手帳です。
根拠となる法律はなく、療育手帳制度について「昭和48年9月27日厚生省発児第156号厚生事務次官通知)」というガイドラインに沿って、各自治体で判定基準や運用方法を定めて実施されています。


他の手帳と違い、等級は「重度」と「それ以外」に区別されています。ただし、自治体によってはさらに細分化しているところもあります。
手帳の名称も自治体によって異なっており、例えば東京都では「愛の手帳」という名称で呼ばれています。
他にも例として以下に一部を載せます。

  • 愛の手帳:東京都、横浜市など
  • 愛護手帳:青森県、名古屋市など
  • みどりの手帳:所沢市、狭山市など

障害者手帳を持つメリットとは?

障害者手帳を持つことで、受けることができるメリットはさまざまあります。例えば「障害者求人」への応募が可能になったり、各種福祉サービスを受けることができるなどです。

 

詳しくは交付時に配布されるガイドブックや、お住まいの市区町村のホームページ、市区町村の障害福祉窓口などで確認するといいでしょう。
以下に4つの障害者手帳に共通する主なメリットを紹介します。

障害者雇用への応募が可能になる

障害者雇用とは、障害者雇用促進法に基づき障害のある方を対象とした「障害者求人」に応募して働くことです。
障害者求人で働くことで、障害の特性に合わせた配慮など、働きやすくなるメリットがあります。

障害福祉サービス

公共料金の割引や、助成金制度、税金の軽減などを受けることができるというメリットもあります。

 

ただし障害者手帳の種類や等級、所得状況、お住まいの自治体などにより受けることができるサービスは異なりますので、詳細はお住まいの自治体のホームページや障害福祉窓口などでご確認ください。
主な料金の割引や助成の一部を以下に紹介します。

 

  • 医療費の助成
  • 博物館などの公共施設の割引
  • JRやバス・航空運賃などの公共機関の割引
  • 携帯電話基本料金の割引
  • 公営住宅の優先入居
  • NHK受信料の免除
  • 身体障害者手帳の場合、車椅子や補聴器など補装具の費用や、住宅リフォーム費用の助成など

所得税や住民税の「障害者控除」

所得税や住民税の障害者控除とは納税者本人・配偶者・扶養親族に障害がある場合の所得控除の制度です。

 

中でも障害によって困難が多い場合には「特別障害者」として通常の障害者控除よりも高い控除を受けることが可能です。障害者控除の額は以下のように区分されています。

 

  • 障害者:所得税27万/住民税26万
  • 特別障害者:所得税40万/住民税30万
  • 同居特別障害者:所得税75万/住民税53万


障害者控除を受けるには、会社員の方は年末調整で「扶養控除等の申告書」を提出することが要件となります。個人事業主や年末調整対象外の方は確定申告の際に申告する必要がありますので、詳細はお住まいの税務署にご確認ください。

自動車税・軽自動車税及び自動車取得税の控除

こちらの控除では、障害者手帳の本人、もしくは本人と生計をともにする方が所有する車で以下に該当する場合に控除を受けられる場合があります。

 

  • 障害のある本人が運転する場合
  • 本人と生計をともにする方が、障害のある方の通院や通学・通勤などのために運転をする場合


こちらは各都道府県や市区町村によって異なりますので、詳しくはお住まいの自治体に相談してみてください。

障害者手帳を申請することでデメリットはあるのか?

障害者手帳のメリットを紹介してきましたが、申請することでデメリットもあるのでしょうか?
申請や更新などの手続きがかかることがデメリットと言えるかもしれません。申請や更新の際に書類や写真などを準備する必要があり、交付されるまでに1~2ヶ月かかることが多いといわれています。

また障害者手帳を持つことで、周りの方に障害があることが伝わることを不安に思う方もいますが、自分から言い出さなければ伝わることはありません。


障害者手帳を取得することは任意ですので、申請をしていないのに障害者手帳が送られてくるということもありません。また返納することもできます。

その方によって、メリット・デメリットの受け取り方は変わってきます。この記事でメリット・デメリットととして挙げたものも人によっては見方は違います。

記事で挙げた項目を参考に、自身にとってのメリット・デメリットと考えて申請を行うといいでしょう。

障害者手帳の申請方法

精神障害者保健福祉手帳

何らかの精神疾患があるために、長期にわたり日常生活または社会生活への制約があることが申請の条件となります。具体的には、対象となる精神疾患で初めて診察を受けてから6ヶ月以上経過している必要があります。

 

身体障害者手帳

身体障害の等級が6級以上、または7級の障害が2つ以上あることが申請の条件になります。またそれらがいずれも一定以上で永続(その障害が将来にわたり回復する可能性が極めて低い状態)することも条件となっています。

 

療育手帳

児童相談所又は知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定されることが申請の条件です。

 

条件は上記に挙げたもの以外にもさまざまありますので、障害者手帳の申請を検討する際は、まずはかかりつけの病院のソーシャルワーカーなどに相談するといいでしょう。

 

申請を決めた後は申請書や写真、医師の診断書など必要な書類を揃えて、各自治体へ申請します。
障害者手帳の種類や申請先の自治体によって違う部分はありますが、大まかな流れは以下のようになっています。

精神障害者保健福祉手帳・身体障害者手帳の申請方法

精神障害者保健福祉手帳と身体障害者手帳は以下のように申請を進めていきます

  • 1.各自治体の障害福祉窓口などへ相談し、申請書類や必要な手続きを確認
  • 2.指定医から診断書を取得
  • 3.申請書類や写真、身分証明書、診断書を窓口へ提出


申請から交付まで1~2ヶ月程度かかります。
障害者手帳という名称ですが、一部自治体ではカードタイプのものを発行しています。
また、本人による申請が困難な場合は代理として家族や医療機関の職員による申請も可能となる場合があります。


交付の基準は自治体によって異なることがございますので、詳細はお住まいの自治体の障害福祉窓口などでご相談いただくとスムーズに進めることができます。

療育手帳の申請方法

療育手帳の申請手続きは以下のように進めていきます

  • 1.各自治体の障害福祉窓口などへ相談し、申請書類や必要な手続きを確認
  • 2.児童相談所や知的障害者更生相談所で判定を受ける指定医から診断書を取得
  • 3.申請書類や写真、身分証明書、診断書を窓口へ提出

判定は申請者が18歳未満の場合児童相談所にて、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所で行います。

障害者雇用について

障害者手帳を持つ方は、一般の求人に加えて障害者雇用求人に応募できるため就職の選択肢が拡がります。

 

障害者雇用とは?

障害者雇用とは企業や自治体などが、障害のある人を対象として障害者求人で障害のある人を雇うことです。

 

障害者雇用で働く場合は合理的配慮など、障害特性に合わせた働きやすくなる支援を受けやすくなるメリットがあります。反面一般就労に比べて求人が比較的少ないなどデメリットもあります。

障害者手帳を取得したからといって、障害者雇用求人しか応募できないということはなく、一般求人と障害者雇用求人両方に応募が可能です。

自分に合った働き方を選ぶことが大切になってきますが、どのように判断したらいいでしょうか?

障害者手帳を取得した事例

LITALICOワークスは就労移行支援事業所といって、障害のある働きたい方へ就職をサポートする事業所です。
障害者手帳がなくても利用が可能で、通いながら障害者手帳を取得する方もいらっしゃいます。LITALICOワークスを利用する中で障害者求人で働くことを選択した方の事例を紹介します。

精神障害のあるFさんの事例

大学時代に診断を受け、その後引きこもりを続けていたFさん。体調が安定してきて就職を意識しだしましたが、障害者求人か一般求人かで悩んでいるときに障害者手帳がなくても就労移行支援事業所を利用できると知りLITALICOワークスへ通いだしました。

 

当初は障害者雇用で働くことへ抵抗もありましたが、自身の障害理解を深め、企業インターンで実際の職場で働く体験をしていくうちに、「自分には配慮を得て働くことが合っている」と気づき、障害者手帳を取得して障害者求人での就職を果たしました。


Fさんとは違い、障害者手帳を持っていても一般雇用で働いる方もいます。障害者手帳を持っているからといって障害者求人にしか応募できないというわけではありません。選択肢を広げるためにも手帳の取得を検討してみるといいでしょう。


LITALICOワークスではそのひとりにあった働き方を一緒に探していくサポートをしております。

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障害者手帳のまとめ

障害者手帳は取得することで、日常生活や働く上で様々なサービスを受けることができるなどメリットがあります。
ただし、人によってはメリットだけでなくデメリットと感じることもあるかもしれません。

障害の種類によって手帳の種類もわかれていることや、申請から交付まで時間がかかるなど一見わかりづらいところもありますが、自身にとってのメリット・デメリットを検討したうえで活用することで大きな助けになると思います。

 

障害のある方の就職をサポートする就労移行支援

就労移行支援は一般企業に就職を希望する方々へ、働くための様々なサポートを行う福祉サービスです。

 

LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万人以上の方の就職をサポートしてきました。

障害のある方が自分らしく働くために、ストレスコントロール・PC訓練・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。

「障害者手帳取得について悩んでいる」「働くことが不安」などお悩みのある方は、まずは就職支援のプロに相談してみませんか?

【無料】障害者支援のプロに障害者手帳や働くことを相談する

参考文献・URL

更新日:2022/06/08 公開日:2020/11/30
  • 監修

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦 先生

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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