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お役立ち仕事コラム

解離性障害のある方が仕事を続けるには何が大切?どういう工夫が必要なの?

更新日:2023/11/18

解離性障害は、大きなストレスやトラウマが引き起こすと言われる神経障害の一種です。

ストレスやトラウマの苦痛から避難するために、精神が記憶や意識などの機能を停止させた状態に陥ることが特徴です。

 

仕事における強いストレスによっても生じることや、症状が強くなることがあり、それによって様々な困りごとが生じます。

 

この記事では、解離性障害の症状、解離性障害のある方の就職・転職、発症後も仕事を続けるために大切なことをお伝えします。

解離性障害の種類と症状

解離性障害とは、「自分が自分としてまとまっている感覚(自己同一性)」が弱くなったり、失われたりしてしまう障害のことです。

 

私たちの意識や記憶、思考、感情、知覚、アイデンティティ(自分はこういう存在であるという感覚)などは1つに統合されています。

しかし、何らかの原因で統合する機能が損なわれて、意識が飛んだり記憶が抜け落ちたり、自分が自分でないような感覚に陥ったりして自己統制ができなくなる場合があります。

 

このように精神が記憶や意識などの機能を停止させ、自己同一性が弱くなったり失われたりした状態を「解離」といいます。

解離性障害の年齢的な傾向として、20代後半から30代の方が8割強を占めると言われています。

解離性障害は大きく4つに分けられており、解離の間に起きる症状が少しずつ異なります。

解離性同一性障害(解離性同一症)

解離の間に自己同一性が完全に失われ、別の人格(交代人格)が出現するものです。「多重人格障害」とも呼ばれています。

交代人格は2~10人前後が多いのですが、100人以上も存在するという症例もあります。多重人格障害は解離性障害全体の約3割を占めています。

多くの患者は、交代人格が出ている間の記憶を失っています。

交代人格は、年齢や性別、言葉づかいの他、洋服などの好み、利き腕や癖まで異なることがあります。

自分の思い通りにいかない場面では粗暴な人格にスイッチングしてトラブルを起こすケースもあります。

多重人格障害は、周囲の人からは「演技」「嘘つき」「関わりづらい」などと思われることもあり、社会生活や仕事に影響が出ることがあります。

離人症性障害(離人感・現実感消失障害)

解離の間、離人感(自分が自分の身体から抜け出ているような感覚、現実感がなくなって世界との間に透明な膜が張っているような感覚など)を中心とした症状が出るものです。

離人症性障害は解離性障害全体の約1割を占めています。

自分の体が自分のものでないように感じられる、まるで自分を外から眺めているような気がするなど、現実感や実感が喪失する状態です。

本人は会話をしているつもりなのに、話しているのは頭の中だけで実際は声に出ていないということもあります。

喜怒哀楽の感情も乏しくなり、何をやっても自分がやっているように感じることができなくなると言われています。

解離性健忘

解離性健忘は、強いストレスや心因ダメージのあった出来事の記憶が、空白または喪失状態になるものです。記憶の空白または喪失状態は、数日から長期に及ぶこともあります。

解離性障害全体の約5%を占めています。

いわゆる記憶喪失の状態で、記憶の失い方によって以下のタイプに分けられますが、いくつかの症状が重なって表れることもあります。

限局性健忘

解離性健忘の中で最も多く見られるタイプです。

限られた期間の出来事を思い出せなくなるという症状が表れます。

犯罪被害などに遭った人は、恐怖心や身体感覚を忘れるだけでなく、当時のことがそっくり記憶から抜け落ちることがあります。

選択性健忘

ある限られた期間の出来事の一部は記憶にあるものの、全部は思い出せない状態を言います。

犯罪被害にあった記憶はないが、その場所だけは覚えていてなぜか近づけないといったことが起こります。

系統的健忘

母親のことを覚えていないなど、その人にとって特別な存在の人に関する記憶を失うものです。

全般性健忘

自分がだれなのか、今どこにいて何をしているのかがわからず、さらに過去の経験も忘れてしまうものです。

記憶が一切ないまま遁走(とんそう)して、見知らぬ土地で別人として生活する人もいます。

持続性健忘

解離性健忘を発症した後、新たに起きた出来事を記憶できないものです。

特定不能の解離性障害

上記のどの障害としても特定できない、様々な解離症状を示すものです。実はこれが最も割合が大きく、解離性障害全体の半分強を占めます。

解離性障害は何が原因で起こるの?

解離性障害とは刺激(ストレス)が強すぎて処理しきれないときに、ストレスを遮断しようとして自動的に生じる防衛反応とも言われます。

一時的なものであれば正常な範囲内の解離現象で、だれでも経験し得ることです。

 

しかし、自分の限界を超えた重いストレスにさらされると、意識や思考、記憶などを切り離して苦痛から逃れようとします。

例えば、大切な人が突然亡くなったときなど、ショックのあまり意識を失うことがありますが、これも解離の一種です。

 

この状態が繰り返し長期間続くと解離現象(防衛反応)が習慣化します。

そうなると解離現象は日常生活に支障をきたす障害となってしまいます。

解離性障害で就職したり仕事を続けることは可能?

解離性障害の種類は様々であり、症状の程度にも違いがあるため、「就職や仕事が可能か?」という問いには一概に答えることはできません。

 

しかし、解離性障害は適切な治療できちんとよくなる病気です。

また、単に年齢と人生経験を重ねていくうちに自然と解離の世界から脱出していき、治っていく人もいると言われています。

 

まずは、医師や専門家との信頼関係をしっかりつくることが重要ですが、実際に就職して仕事をする場合は、以下の点に気をつけることが大切です。

ノルマのない仕事を選ぶ

解離性障害の症状はストレスに対する防衛反応なので、なるべく時間・仕事量・成果などのノルマがない仕事がオススメです。

また、在宅勤務によって自分のペースで仕事を進められる環境を作るのも良いでしょう。

ただし、在宅勤務の仕事は、周囲のサポートを得にくいというデメリットもあるため、自分に合った働き方であるかどうか、事前によく注意してください。

メモによって症状による影響を防ぐ

解離の間や前後の記憶を失うタイプの場合は、作業リストや作業手順を紙に書き出すことも大切です。

症状が重い場合はこういった対策で補いきれない場合もありますが、解離性障害の症状が軽微であれば、作業リストや作業手順の書き出しによって補える部分もあります。

 

会社と環境調整を相談する

解離性障害はストレスが原因であり、それが症状にも影響するため、症状がつらい場合はストレス源から遠ざかるよう環境調整することも大切です。

自分の状態を会社や上司に伝え、協力を得ながら働きやすい環境を作っていきましょう。

飲酒を控える

飲酒は解離性障害の症状を悪化させることがあると言われているので、控えることが望ましいです。

規則正しい食事と睡眠によって心身を健康な状態に保つことが大切です。

解離性障害で休職・退職しても大丈夫?

解離性障害の症状によっては、仕事を休んだ方が良い場合があります。

単純に仕事の継続が難しいという問題もありますが、心身が疲れきっている場合は療養が最優先です。

短期の療養でも、長期にわたる療養が必要な場合も、まず医師に相談しましょう。

 

医師は、本人からよく話を聞いた上で、症状や就労状況、職場や生活の環境などを総合的に踏まえ、休職すべきかどうか判断します。

その内容を上司に伝え、医師が設定した療養期間について相談するといいでしょう。

解離性障害で休職・退職時にも利用できる経済的な支援制度

自立支援医療制度(精神通院医療制度)

解離性障害の治療のために通院中の人や、治療により症状が安定し再発の予防目的で通院中の人の医療費の自己負担額を軽減する制度です。

疾患の種類や所得に応じて、1ヶ月当たりの負担の限度額が設定されます。

障害者手帳

解離性障害のある方は、精神障害者保健福祉手帳を取得することができる場合もあります。申請には各種条件があるため、まずは主治医へご相談ください。

障害者手帳を取得すると、疾患の種類や程度に応じて様々な福祉サービスや税金の控除、公共交通機関の運賃や公共施設利用料の割引などを受けることができます。

また、障害者雇用という枠で、症状に対する理解や支援を得られやすい職場で働く選択肢も選ぶことができます。

障害年金

障害や疾患のために、生活や仕事に支障が出たときに支給される年金です。

働いていた場合でも、症状により仕事が制限されていると判断された場合は、生活の一部を支援する額が支給されます。

生活保護

怪我や疾患などにより働くことが難しく、収入が不十分で生活に困った場合に、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための費用が給付される制度です。

受給には各種条件がありますので、まずはお住まいの市区町村にてご相談ください。

傷病手当金

疾患や怪我で仕事を長期間休むときに無収入になってしまうことを避け、生活を保障する目的で支給される手当金です。

ただし、労災保険の給付対象とはならない、業務外の理由による休職に限られます。

保険組合の加入期間によって、その人の平均収入額の3分の2の額、または月額28~30万円のいずれかが、最長1年6ヶ月まで支給されます。

解離性障害で休職・退職から復帰できるの?

LITALICOワークスでは障害のある方の休職・退職からの復帰を多数支援しています。

精神障害のある方で復帰された方もたくさんいらっしゃいます。

実際に休職・退職からの復帰を目指す場合は、ぜひ専門機関の支援の利用を検討してみてください。

解離性障害の就職や職場復帰は専門機関の支援を利用する

解離性障害をきっかけに療養が必要となり、休職・退職に至った場合は、医師から復職の許可が出たのちに就職先を探すことになります。

 

前職で自分に適していなかった要素を分析し、それらの要素を含まない仕事を選ぶと良いでしょう。その際には、疾患や障害のある人の就職活動を支援する機関を利用することをおすすめします。

 

障害福祉や就労について、幅広い知識と経験を持つスタッフのサポートを受けながら仕事探しをおこなう方法もあります。

ハローワーク

ハローワークには、障害や疾患のある人の就労を支援する窓口「専門援助部門」があります。

また、就職に関する相談やカウンセリングの実施のほか、障害や疾患のある人を対象にした求人の紹介などをおこなっています。

解離性障害のある方の就職サポート

解離性障害などで働くことにお悩みのある方への支援として、「就労移行支援」があります。

就労移行支援とは障害のある方の就職をサポートする福祉機関のひとつです。LITALICOワークスでは各地で就労移行支援事業所を展開し、障害のある方が自分らしく働くためのサポートをおこなっています。

LITALICOワークスでは解離性障害のある方の就職実績も豊富にあります。働く上での工夫の仕方や会社との環境調整の方法などを理解し、自分に合った仕事を一緒に見つけましょう。
働くことでのお悩みがありましたら、ぜひ一度LITALICOワークスにご相談ください。

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解離性障害のまとめ

解離性障害は、種類によって症状も大きく異なります。また症状が表れたことを本人が覚えていないこともあり、周囲の理解や適切な対応が大切になります。

しかし、症状が改善すれば、就職や仕事を続けることは十分可能です。

もし、退職後に療養を経て復帰を目指す場合は、ぜひ専門の支援機関をご利用ください。

LITALICOワークスでは「就労移行支援」「就労定着支援」「相談支援」の3つのサービスを提供しています。

ぜひいつでもお気軽にご相談ください。

更新日:2023/11/18 公開日:2020/07/29
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