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PTSD(心的外傷後ストレス症)とは?症状や診断基準、治療方法などを解説します

更新日:2024/04/18

過去にあったつらい体験を思い返して、体調が悪くなったり、パニックを起こしてしまったりすることはありませんか?

その体験から時間が経っているにもかかわらず、日常生活や仕事に支障が出てしまうような症状がある場合、もしかしたら「PTSD(心的外傷後ストレス症)」かもしれません。

 

この記事では、PTSD(心的外傷後ストレス症)の具体的な症状や診断、治療方法や相談先についてご紹介していきます。「PTSD(心的外傷後ストレス症)の症状に当てはまるかも?」という方は、ぜひ参考にしてください。

 

※本記事の内容によってはつらい体験を意図せず思い出してしまうなどの可能性があります。そのため、体調が優れない場合やトラウマによる心理的な影響をお持ちの場合は、無理をせず、読むのをお控えください。

PTSD(心的外傷後ストレス症)とは?

PSTDとは「心的外傷後ストレス障害(Post Traumatic Stress Disorder)」といい、死の危険を感じるほどの体験をした方が、時間がたった後も自分の意志とは関係なく急に体験が思い出されたり、悪夢が続いたりなどの症状が表れる疾患です。

 

そういった恐怖体験は「トラウマ」といい、急に思い返されることは「フラッシュバック」と呼ばれています。

 

つらい体験をすると、誰しも恐怖や不安を感じるものですが、多くの場合は一過性であり、時間が経過すると段々落ち着きます。しかし、PTSD(心的外傷後ストレス症)の場合、きっかけとなる出来事から時間が経っても楽にならず、日常生活に支障をきたす状態のことを指します。

PTSD(心的外傷後ストレス症)の原因は?

生死に関わる体験をしても、すべての人がPTSD(心的外傷後ストレス症)になるわけではありません。しかし、PTSD(心的外傷後ストレス症)になる可能性が高い出来事として、戦闘体験、性的暴行、自然災害、人災などがよくみられます。特に戦闘体験、性的暴行はPTSD(心的外傷後ストレス症)の発症率が高いと言われています。

 

強いショックを受けた場合、その体験を落ち着いて処理することができなくなるため、「よく覚えている記憶」と「覚えていない記憶」が混合し、時間的な順序や事実と感情の区別がつかなくなります。その結果、ふとしたことでフラッシュバックを引き起こし、何もかもが怖くなったりします。

PTSD(心的外傷後ストレス症)の症状は?

PTSD(心的外傷後ストレス症)の代表的な症状としては、以下の4つです。

侵入症状(再体験症状)

自分の意志とは関係なく、トラウマとなった出来事に関する苦痛な記憶を思い出したり、繰り返す悪夢のような形で何度も表れる症状です。出来事を思い出すだけでなく、実際に目の前で同じ恐怖が起こっているようにリアルにフラッシュバックしてしまう人もいます。

回避・麻痺症状

トラウマを思い出させる物事(人、出来事、場所など)を避けたり、重要な部分を思い出せなくなる症状です。

 

例えば、暴力を振るわれた人物と同世代の人と関わることを避けたり、トラウマのある駅や建物に近づくことが難しくなることがあります。意識的に避けることもあれば、無意識に避けることもあり、行動の幅が制限されて、日常生活が送れなくなってしまうことも少なくありません。

 

麻痺症状は、本来感じるはずのつらさを感じなくなったり、意欲が低下して、人としての生き生きとした感情を感じられなくなります。これは、つらい記憶に苦しむことを避けて、心を守るために起こる反応の一つです。

認知と気分の陰性変化

物事の捉え方が歪んでしまい、過剰に他者や自分を責めたり、「なんで自分のような人間が生き残ってしまったんだ」などの深い罪悪感を持つこともあります。そのような症状が出ると、否定的な感情しか持つことができず、幸せな気持ちや人を愛することができなくなる場合があります。

過覚醒症状

精神的にいつも緊張していて、張り詰めた状態になり、眠ったり集中したりすることが難しくなる症状です。ちょっとしたことでイライラしたり、物音や動きに対して非常に敏感になります。また、周りに対する警戒心も強くなり、不眠や動悸、めまいなどの身体症状が表れることもあります。

PTSD(心的外傷後ストレス症)の診断とは?

PTSD(心的外傷後ストレス症)の症状が疑われる場合には、まず精神科、もしくは心療内科を受診しましょう。

PTSD(心的外傷後ストレス症)の診断

PTSD(心的外傷後ストレス症)は問診によって診察をおこない、トラウマ体験の内容や症状の有無、その重症度などを確認していきます。稀に、身体的な病気が原因ではないことを確認するために、血液検査や画像検査などを実施する場合もあります。PTSD(心的外傷後ストレス症)の診断過程では、表れている症状がほかの精神疾患や服用中の薬の影響によるものではないかを慎重に確認していきます。

PTSD(心的外傷後ストレス症)の合併症

PTSD(心的外傷後ストレス症)の患者には、何らかの精神疾患が併発していることもあります。例としては、うつ病、パニック障害(パニック症)、解離性同一性障害(解離性同一症)、摂食障害、パーソナリティ障害(パーソナリティー症)、依存症(アルコールや薬物など)などです。

 

受診先に迷ったり、病院へ行くことに抵抗がある場合には、医療機関以外の相談先もあります。後の章で紹介しているので、参考にしてみてください。

PTSD(心的外傷後ストレス症)の治療方法は?

PTSD(心的外傷後ストレス症)の治療方法は、大まかに以下の2つの方法があります。

薬物療法

薬物療法は、不安な気持ちや苦痛な症状を軽減させるためにおこないます。例えば、夜なかなか寝つけないような不眠症状には睡眠薬を服用したり、やる気の低下や気分の強い落ち込みに対しては抗うつ薬を処方するなどです。

 

適切な服薬で感情の波を上手くコントロールしながら、安定した生活を取り戻せるように調整をしていきます。

心理療法

心理療法とは、解決したい問題や標的となる症状に対して、認知・行動・身体感覚に変化を起こし、改善や解決することを目指す治療法です。

 

その中でも、PTSD(心的外傷後ストレス症)の治療で最も効果が高いと言われているのが「認知行動療法」です。代表的なものには「持続エクスポージャー療法(PE)」「眼球運動脱感作療法(EMDR)」などがあります。

 

持続エクスポージャー療法(PE)

患者にあえてトラウマである過去の恐怖体験を思い出させて、トラウマの恐怖に慣れさせます。一時的に不快感が強まることがありますが、徐々に「トラウマを思い出しても大丈夫」ということを学習していきます。

 

眼球運動脱感作療法(EMDR)

治療者の指の動きを追いながら、トラウマ体験を想像し、ネガティブなイメージしかなかった記憶に慣れ、ポジティブな部分も合わせて過去の記憶として再処理をしていきます。単純な動作ですが、眼球運動に注意を向けることで、過去のトラウマを「そのまま」にしておくことができたり、意識を「今」につなぎとめる働きもあります。

 

しかし上記のような治療を受けることができなくても、医師や臨床心理士などの専門家によく話を聞いて理解してもらえたと感じるだけでも、抱えている症状が軽くなることは多いものです。信頼できる医師や臨床心理士などの専門家に出会うことも非常に大切です。

PTSD(心的外傷後ストレス症)に関する相談先

「PTSD(心的外傷後ストレス症)かもしれない」と思った時の相談先について解説していきます。

精神科・心療内科

PTSD(心的外傷後ストレス症)に当てはまる症状が出ている場合には、悪化する前にまずは精神科や心療内科を受診してみましょう。PTSD(心的外傷後ストレス症)やトラウマ治療の専門医がいる場合もあるので、はじめていく場合には調べたり、家族など身近な人に相談してみてください。

保健所、保健センター、精神保健福祉センター

まずどこにPTSD(心的外傷後ストレス症)を相談したらいいか分からない場合には、各市区町村にある行政窓口に相談するのがいいでしょう。保健師、医師、精神保健福祉士などの専門職が対応してくれて、具体的な相談先や活用できる制度について教えてくれます。

 

ほかにも、PTSD(心的外傷後ストレス症)に併発している精神疾患がある場合には「精神障害者保健福祉手帳」を取得できたり、「障害年金」を受給できる可能性もあります。また、PTSD(心的外傷後ストレス症)の症状の程度によっては、「障害福祉サービス」を利用しながら、生活面や就職活動の支援を受けられる場合もあります。さまざまなサービスがあるので、市区町村の障害福祉窓口に相談してみましょう。

犯罪被害者専門の窓口

もし過去のトラウマ体験が犯罪被害の場合は、警察に「被害相談窓口」があります。また、各都道府県にある犯罪被害支援センターなどを活用してみるのもいいでしょう。

当事者会、自助グループ

家族がPTSD(心的外傷後ストレス症)の症状で悩んでいる場合などには、同じ病気を経験した仲間たちが運営する当事者会、自助グループなどもあります。PTSD(心的外傷後ストレス症)の症状の乗り越え方や、家族としての関わり方の工夫などを知ることができます。

PTSD(心的外傷後ストレス症)についてまとめ

PTSD(心的外傷後ストレス症)を発症すると、フラッシュバックに苦しんだり、感情のコントロールが難しくなったりと、日常生活や仕事に大きな支障をきたします。本人の意志とは関係なく症状が表れるため、本人が苦しいのはもちろんのこと、周囲の人も理解ができずに悩む場合が多いです。

 

PTSD(心的外傷後ストレス症)の原因になりやすい性的暴力や虐待などは、周囲の人に相談しにくく一人で我慢してしまいがちです。しかし、PTSD(心的外傷後ストレス症)の症状を放置することで精神的にも肉体的にも疲労が蓄積し、悪化を招くことにもなりかねません。PTSD(心的外傷後ストレス症)のつらい症状が続く場合は、自己判断をせず病院を受診したり、専門の窓口に相談をしてみましょう。

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更新日:2024/04/18 公開日:2023/01/19
  • 監修者

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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