家族やパートナー、友人、同僚など身近な人がうつ病と診断されて「どう接したらいいのだろう」「かけてはいけない言葉はあるのだろうか?」といった疑問を持つ方もいるかもしれません。
うつ病という診断名は同じでも、人によって症状のあらわれ方は異なり、性格も異なります。そのため、必ず「これが正解」という接し方はありません。
といっても、うつ病のことを知ること、何よりその方自身に寄り添った言葉をかけるなど、接し方のポイントはあります。
この記事では、うつ病の人との接し方において大切なことを中心に紹介します。
家族やパートナー、友人、同僚など身近な人がうつ病と診断されて「どう接したらいいのだろう」「かけてはいけない言葉はあるのだろうか?」といった疑問を持つ方もいるかもしれません。
うつ病という診断名は同じでも、人によって症状のあらわれ方は異なり、性格も異なります。そのため、必ず「これが正解」という接し方はありません。
といっても、うつ病のことを知ること、何よりその方自身に寄り添った言葉をかけるなど、接し方のポイントはあります。
この記事では、うつ病の人との接し方において大切なことを中心に紹介します。

身近にうつ病の人がいて「どういう態度で接したらいいのだろう?」「言ってはいけない言葉はあるのかな?」など、悩んでいる方がいるかもしれません。
うつ病の人といっても、一人ひとり性格も症状のあらわれ方も異なります。また同じ対応でもタイミングによってとらえ方も異なってきます。「うつ病だからこうする」と決めるのではなく、うつ病に関する知識を知ったうえで、その人に寄り添った対応をすることが大切です。
それでは、うつ病の概要から紹介していきます。
うつ病とは「気分が落ち込む」「考えがまとまらない」といった精神症状と、「身体がだるい」「眠れない」などの身体症状があらわれ、日常生活や仕事に影響が出る精神疾患のことです。
誰にでもかかる可能性があり、日本では100人に6人が生涯のうちにうつ病を経験するといわれています。
原因は今のところはっきりとはしていませんが、脳の機能の不調が影響していると考えられています。うつ病は脳の機能の不調のため、気持ちの問題ではなく、ほかの病気と同様に、回復のためには医療機関を受診して適切な治療を受けることが回復のために重要です。
うつ病の治療は「休養」「薬物療法」「精神療法」といった方法で進めていきます。うつ病の治療期間はそれぞれ「急性期」「回復期」「再発予防期」と分かれています。
大まかな目安として、
といわれています。
もちろん、症状のあらわれ方や治療の開始時期などによってこれらの期間は個人差がありますが、本人や周りの方が回復を焦らないためにも、治療期間の目安を知っておくことは大事です。
うつ病は精神面と身体面に症状があらわれることがあります。症状も人により異なりますが、ここではその一例を紹介します。
うつ病の精神面での症状例
うつ病の身体面の症状例
こういった症状は多くの方が経験したことがあると思いますが、2週間以上続く場合はうつ病の可能性があるといわれています。
うつ病の人との接し方は、本人のペースを大事にして焦らずゆっくりと接し、共感的に理解する態度で、安心できる環境をつくることが大切です。
うつ病の人と接するうえで、上記の通り紹介したうつ病の知識を持つほかに、接し方において意識したいポイントを5つ紹介します。
前提として、うつ病という診断の有無の前に、その人個人の価値観や感じ方を尊重するということが大切です。そのうえで、以下のポイントを参考にしてみてください。
身近なうつ病の人が、悩んだり落ち込んだりしている様子に気がついた場合、その人の話を聴くという姿勢でいることが大事です。悲観的な話をされても、まずはその人が言いたいことを言える状況をつくるといいでしょう。
「明日会社を辞めさせられる」など悲観的な考えが客観的に現実的でないとしても、本人はつらい状況にあります。
話を聴いた側も「そんなことないよ」「気のせいだよ」といった否定はせずに、話に耳を傾けてその人が何を言いたいのか把握するようにしましょう。
話を聴くことは大事ですが、本人が話したがらない場合は無理に聴き出そうとはしないことも大切です。
本人も考えがまとまっていなかったり、話すのをためらっていることがあるため、周りも「話したくなったら話して」といった形で聴く用意があることを伝えて見守っていくことも大事です。
また、話だけでなく仕事や行動でも同じことがいえます。一度仕事を休んで療養しているときに、本人がなかなか活動ができず、周りから見ていて「もっとこうしたら」と思うことがあったり、一見元気に見える時期には「早く復帰してほしい」といった気持ちになるかもしれません。
しかし、うつ病は体調の波があり、良くなったりまた症状があらわれたりを繰り返しながら回復していきます。そのため、アドバイスしたくなるときがあるかもしれませんが、本人のペースを尊重して接していくことが大事です。
もちろん、治療の見通しなどの確認が必要な場面もあると思います。そういったときは、「今○○について話しても大丈夫?」と確認してから話すことや、うつ病の方だけに負担がかからないように「一緒に考えていこう」と声掛けをしていくようにしましょう。
決断を迫らないようにするということも、意識したい点の一つです。うつ病の症状によっては考えがまとまらなかったり、悲観的にとらえてしまうことがあるため、何か決断をするということは、大きな負担となる場合があります。
そういった状態のときに、例えば仕事に復帰をするか辞めるか、といった大きな決断を迫らずに、本人が自分で決断できるまで見守っていくようにしましょう。
ただ、どうしても決めなくてはいけないことがある場合は本人に寄り添いながら「心配だから一緒に考えていこう」といった声かけをして、本人の負担を減らしていく対応も大切です。
うつ病の治療では療養や服薬が大切です。ご家族やパートナーなど生活を一緒にしている場合は、無理のない範囲で家事で負担となっているものを代わることや、生活リズム、服薬管理などのサポートができるといいでしょう。
本人が希望すれば通院に付き添うこともサポートの一つとなります。また、傷病手当金などの申請すべき書類作成を負担と感じていることは多いものです。書類などの作成に際して、一緒に確認することは、本人にとって大きなサポートになることでしょう。
身近にうつ病の人がいる場合に、周りの人が抱え込まないようにすることも大事なポイントの一つです。
うつ病の人の家族や周りの人が相談できる窓口がいくつもあります。電話やインターネットで相談できる場合もありますので、どう接していいのか迷う場合は早めに相談してみましょう。

ここでは、うつ病の人に寄り添う言葉の例を紹介します。かける言葉も、前提としてうつ病だからと決めるのではなく、その人の価値観や考え方、タイミングなどを考えることが重要です。
誰でも「がんばって」と言われてやる気が出るときもあれば、プレッシャーを感じるときもあります。それと同様、診断名の前にその人の価値観や感じ方に寄り添った言葉を意識していくことが大切です。
うつ病の人にかける前に意識したい言葉の例をいくつか紹介します。
うつ病の症状で悲観的になっていたり、考えがまとまらないことがあります。無理に聴き出そうとするのではなく、「話を聴くよ」「一緒に考えていこう」といった声かけをして、本人が話したくなるのを待つことも大切です。
うつ病の症状は波があり、回復に時間がかかることも多く、本人も焦っている場合もあります。そのため「あなたのペースでいいよ」といった、その人のペースを尊重する言葉を意識するといいでしょう。
うつ病の症状でうまく活動ができず、本人も甘えなのではないかと悩むこともあります。そのため「大変だったね」などこれまでのことをねぎらう言葉や接し方を意識していくことも大事です。
こういった言葉はそのまま使うのではなく、相手の状況や関係性などを考慮して言葉を選んでいくといいでしょう。
ここでは、うつ病の人にかけたときに、負担になる可能性のある言葉の例をいくつか紹介します。こちらも一律にかけてはいけない言葉があるわけではありません。
励ましの言葉であっても、声をかける側の価値観で決めるような言葉をかけそうになっているときに、一度立ち止まって考えてみることが大事です。
できる範囲で本人にどのような言葉がプレッシャーになるかをあらかじめ聴いておくなど、日ごろからコミュニケーションを取っておくといいでしょう。
うつ病は数ヶ月以上の時間をかけて治療をおこなっていきます。また、体調にも波があり、本人にも体調のコントロールが難しい場合もあります。
早く良くなってほしいという思いから「いつ良くなるの?」などの言葉をかけてしまうこともあるかもしれませんが、本人にとってはいつ良くなるか分からないため、負担に感じてしまいやすいことがあります。
うつ病の原因はまだはっきりと解明されていません。ストレスが原因となることがあっても一つに特定することも困難です。
「なぜ?」と言われても、本人も分からないことや、ストレスとなった出来事を思い出す場合もあり、負担に感じてしまうかもしれません。
うつ病の症状として「やる気が出ない」「物事に興味が持てない」ということがあります。
そういった症状があらわれているときに、「がんばって」などの励ましの言葉がプレッシャーになることもあります。
ただ、もともと「がんばって」という言葉が苦手な方もいますし、うつ病の症状があらわれていても「がんばって」と言ってもらえると元気が出るという方もいます。
傾向として控えた方がいい言葉はありますが、その人の背景を考慮した声掛けをしていくことが何より大切です。

家族や友人など身近な人がうつ病で悩んでいるときに、接し方やかける言葉が分からないということもあると思います。
うつ病と診断があっても、一人ひとり性格もあらわれる症状も異なります。一律に正しい対応・間違った対応があるわけではありません。
ただ、うつ病の症状や治療期間の傾向はあるため、うつ病の知識を知ったうえで、その人のことを尊重した接し方や言葉をかけていくことが大事です。
うつ病など障害のある方の就職支援として「就労移行支援事業所」があります。就労移行支援事業所では、体調管理やストレスコントロール、パソコンや作業スキル、就職活動サポートなどを通して、障害のある方が安定して働いていくための支援を提供しています。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、利用者本人だけでなくご家族とも連携して長く働くためのサポートをおこなっています。
相談はご家族の方のみでも可能です。うつ病の人の就職について悩んでいる方はぜひ一度ご相談ください。
監修者
医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント
染村 宏法
大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。
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