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お役立ち仕事コラム

うつ病の人がとる行動とは?これはうつ病のサイン?家族にできることは?

更新日:2023/08/03

うつ病では症状が影響して、身だしなみや行動などに変化があらわれる場合があります。家族や身近な人にそのような変化があり「うつ病のサインかもしれない」と思う場合があるかもしれません。

うつ病になると、抑うつ気分になったり、今まで興味をもっていたものに興味をもてなくなったりするといわれています。しかし、本人は「ちょっと疲れているだけ」と思って自覚がない場合や、本人は気づいていたとしても迷惑をかけたくないという思いから、周囲の人へ相談ができない場合もあります。

うつ病は早期発見・早期治療を行うことで、より回復がしやすくなるといわれています。身近な人の変化に気づいたら、受診をうながすなど適切な対応をとることが大切です。

そこでこの記事では、うつ病の人にみられるサイン、うつ病の症状や治療法について解説するほか、「うつ病かも」と思ったときの疑問についてもQ&A形式でお答えしています。ぜひ参考にしてください。

うつ病の人にみられるサインとは?

うつ病の症状は多種多様ですが、ここでは「精神的な症状」と「身体的な症状」に分けて説明します。うつ病の症状が影響して、以前の様子から変化がみられることがあります。

 

ここでは、家庭と仕事の場面でみられることの多い、うつ病の人の精神面や身体面にあらわれる変化(サイン)について、家庭と仕事それぞれの場面にわけて紹介します。

うつ病の人にみられるサイン(家庭)

精神的な症状

  • 抑うつ気分(気分が落ち込んでいる、悲観的になる、憂うつである、など)
  • 興味または喜びの喪失(今まで興味が持っていたものに興味を持てなくなる、など)
  • 焦りや不安感がある(落ち着きがなく、イライラしている、など)
  • 意欲の低下(家事など身の回りのことがめんどうになる、新聞やニュースサイトを読まなくなる、テレビを観なくなる、など) 

身体的な症状

  • 疲労がとれない
  • 睡眠障害(早朝覚醒、中途覚醒、入眠障害、過眠など)
  • 食欲・体重の有意な変化(食欲がない、または食欲が急に増す。体重が減る、または増える)

日常生活において、気分が落ち込んだり、物事がおっくうになったりすることは誰しもあるでしょう。しかし通常は、数日程度で気持ちが回復することが多いものです。一方、これらの症状が2週間以上続く場合は、うつ病が疑われるとされています。

うつ病の人にみられるサイン(仕事)

うつ病の症状は仕事面において、以下のようなサインとしてあらわれることがあります。

  • ぼーっとして仕事に集中するのが難しくなる
  • 思考力の低下により、考えをまとめたり計算したりするのが難しくなる
  • 急な用件が入ると混乱し、頭の中が真っ白になる
  • ケアレスミスが増える
  • 人とのコミュニケーションを避けがちになる
  • 新しい仕事の習得が難しくなる
  • 遅刻や早退、欠勤など仕事を休みがちになる など

うつ病の症状である「抑うつ気分」や「意欲の低下」などが、仕事上のさまざまな場面にこのような形で影響を及ぼす可能性があります。これらの症状は、本人も「何となくやる気が出ないな」「疲れが溜まっているのかな」などと考えて見過ごしがちです。しかし、家族や周囲の人たちは本人の普段の様子を知っているため、いつもとの違いに本人よりも気づきやすいかもしれません。

 

いつもと違う様子があれば、重症化する前になるべく早く病院への受診を勧めることが大切です。

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うつ病とは?

うつ病とはそもそも、どのような状態を指すのでしょうか?ここでは、うつ病の定義や治療法について説明します。

うつ病

うつ病は、精神の活動が低下し、抑うつ気分、興味や関心の欠如、不安や焦り、食欲の低下や不眠などが生じて、日常生活に著しい苦痛や支障が起こる精神疾患です。

うつ病の原因ははっきりとはわかっていませんが、複数の要因が関係しているとされています。環境要因や性格の傾向、強いストレスなどの要因により、脳内の神経伝達物質である「セロトニン」や「ノルアドレナリン」の機能が低下します。その結果、情報伝達がうまくいかなくなることでうつ病が起こると考えられています。

うつ病の治療について

うつ病の治療は、「休養」「薬物療法」「精神療法」の3つが大きな柱となります。

休養

うつ病では、心身のエネルギーが枯渇している状態になっています。そのため、仕事や家事などから離れる時間を作り、休養することが必要です。休養の仕方は、本人の状況に応じて「業務量を減らす」「残業を減らす」「休職する」など、さまざまあります。

薬物療法

抗うつ薬の投与が中心となります。効果があらわれるまでには2週間程度を要するため、医師の指導のもとで一定期間、服用を継続する必要があります。また、症状に応じて抗不安薬や睡眠薬などが使われることもあります。

精神療法

精神療法とは、心理的なアプローチで本人の心身に働きかける療法のことです。

 

精神療法には、代表的なものとして、うつ病に効果があらわれやすいといわれている認知行動療法があります。これは、悲観的に考えてしまうパターンに目を向けて、考え方のバランスを整えることで、ストレスを緩和させるものです。ほかに、対人関係療法(重要な他者との現在の関係に焦点を当てて、コミュニケーションのパターンなどに注目することで対人関係全般が改善することを目的としたもの)などさまざまな治療法があります。

 

一般的には、うつ病の症状が強く出ている急性期には薬物療法を行い、症状が落ち着いてきた時期以降に、再発予防の観点から精神療法が併用されることが多いようです。

うつ病かもと思ったときのQ&A

家族や身近な人、もしくは自分が「うつ病かもしれない」と感じる場合、さまざまなことを不安に思うかもしれません。ここでは、「うつ病かも」と思ったときの疑問にお答えします。

Q.うつ病かもしれないと思った時、どのように接したらいいのでしょうか

うつ病では、早期に治療をはじめた方が回復が早くなるとされています。しかしうつ病になると「自分のがんばりが足らないせいだ」などと自分を責めるような考えになっていたり、うつ病によって判断力が低下していたりすることで、本人が医療機関を受診しようとしないかもしれません。そのため、身近な人が「うつ病かもしれない」と思った場合は、周囲の人たちが受診をうながす必要があるでしょう。

 

受診のうながし方の例

「うつ病かもしれないから、病院に行ったら?」などとストレートな言い方をするのではなく、「心配している」などの気持ちを伝えるといいかもしれません。「よく眠れていないの?いつもつらそうだから心配しているよ。一度、病院で診てもらったら?」などと、具体的な症状を心配している旨を伝えるのも一つの方法です。

 

すぐに聞き入れてもらえないかもしれませんが、タイミングを見て本人の調子が良さそうな時に声を掛けてみましょう。それでも、精神科や心療内科に行くことに抵抗がある場合は、まずかかりつけ医や後段で紹介する相談機関に相談しましょう。

Q.うつ病かもしれないと思った時、本人はどのようにしたらいいのでしょうか

「自分がうつ病かもしれない」と思った場合は、早期回復のためにもなるべく早く医療機関を受診することが大切です。うつ病を疑う場合は、精神科や心療内科を受診するとよいでしょう。

うつ病は、回復までに長期間を要する場合もあります。うつ病と診断された場合はこのことを念頭に置き、医師の指示に従って、焦らずにしっかりと治療を受けることが大切です。働いている人は、職場の人に自分の状態を伝えることが大切です。必要に応じて休みをもらったり、業務量の調整を相談したりしてみましょう。場合によっては、休職の相談なども必要になることもあります。

Q.休職や退職となった場合、生活が心配です。どのような支援制度がありますか?

うつ病で休職や退職をすることになった場合、経済的な面が心配になるかもしれません。しかし、うつ病の人が活用できる以下のような支援制度があります。ただし、受給には一定の条件があります。

傷病手当金

仕事以外のことがきっかけで病気やけがなどによって会社を休み、会社からの給与が支給されないときに、加入している健康保険から支給される手当のことです。仕事がきっかけでうつ病になった場合、傷病手当金ではなく、労災保険の対象となる可能性があります。傷病手当金に関するお問い合わせ窓口は、社会保険事務を扱っている人事部署や加入している健康保険組合になります。

雇用保険の基本手当(通称:失業手当、失業給付)

雇用保険の被保険者が、失業中の生活を心配せずに新しい仕事を探し、早く再就職できるように支給される手当のことです。お問い合わせ窓口は、最寄りのハローワークになります。

自立支援医療制度(精神通院医療)

通院による精神医療にかかる医療費の自己負担額を軽減する制度のことです。お問い合わせ窓口はお住まいの自治体の窓口(障害福祉窓口など)になります。

障害年金

病気やけがによって生活や仕事などに制限がでた場合に支給される年金のことです。お問い合わせ窓口はお近くの障害年金事務所などになります。

精神障害者保健福祉手帳

うつ病の方は精神障害者保健福祉手帳を取得できる可能性があります。取得すると、公共料金などの割引や所得税、住民税の控除などのサービスが受けられます。また障害者雇用の求人への応募もできるようになります。お問い合わせ窓口はお住まいの自治体の窓口(障害福祉窓口など)になります。

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Q.うつ病について相談できる場所はありますか?

「うつ病かもしれない」と思っている人やその家族が専門家に相談したいときは、以下の機関に相談することができます。

保健所・保健センター

保健所と保健センターの役割には地域により若干の違いがある場合もありますが、どちらの機関でも地域住民からの健康に関する相談を受けつけています。

精神保健福祉センター・こころの健康センター

心の健康について相談できる機関で、各都道府県、政令指定都市に設置されています。センターの規模によって異なりますが、医師や看護師、保健師や精神保健福祉士、公認心理士などの専門家が在籍し、相談に乗ってくれます。

こころの健康相談統一ダイヤル

都道府県・政令指定都市が実施している、こころの健康に関する電話相談です。対応する曜日や時間は地域により異なるため、以下のWebサイトでご自分の地域の状況を確認してください。

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Q.うつ病の方の仕事をサポートする場所はありますか?

うつ病のために休職や退職をした人が十分に回復し、また働きたい場合は、以下のようなサポートを受けることができます。

精神科デイケア

精神科デイケアとは、精神障害のある方が日常生活や仕事を送ることができるようにするためにリハビリテーションを行う場所のようなものです。精神科デイケアでは生活リズムを整える、人と交流する、身体を動かすなどさまざまな活動を行います。

 

デイケアによってはリワーク(復職)や就職に向けた目的とするプログラムがあるところや、働きながら利用できるところなどもあります。ご自身の状況にあわせて活用していけるといいでしょう。

リワーク支援

リワーク支援とは、精神の不調により休職した方を対象とする、職場復職に向けたサポートのことです。医療機関や公的機関、福祉施設などで行われており、ストレスコントロールなどのプログラム、グループディスカッション、パソコンなどの軽作業を通して、復職後に無理なく働いていくためのスキルを習得することを目的としています。

就労移行支援

就労移行支援とは、一般企業などへの就職を目指す障害のある方を対象として、就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートを行う障害福祉サービスです。

就労移行支援事業所に通いながら、就職に必要なスキルの習得、就職の準備、就職活動から就職後の職場への定着までの一連の過程を、一貫したサポートのもとに行うことができます。

 

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その他の支援機関や支援制度は、以下の記事の中で紹介していますので参考にしてください。

「体調優先で働きたい」就労移行支援事業所で相談する

就労移行支援事業所「LITALICOワークス」

「大人の発達障害」の就職サポート事例

 

LITALICOワークスは、全国で就労移行支援事業所を運営しています。これまでうつ病の方の就職・定着を多数サポートしてきました。休職中の方は一定条件を満たせば利用ができる可能性があります。「うつ病になり、どのように働けるのか悩んでいる」「体調がまだ不安定で、働けるかわからない」「一人で就職活動がうまくいかない」などの悩みがある方は、ご家族の方だけでも相談はできますので、お気軽にご相談ください。

 

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まとめ

うつ病の初期にある人は、気分の落ち込みや意欲の低下などの精神症状や、睡眠障害や食欲の有意な変化などの身体症状などが影響して、いつもとは異なる行動がみられることがあります。

 

うつ病では、早期の治療開始が重要です。周囲の人がうつ病の兆候に気づいて、「心配しているから一緒に病院にいこう」など気持ちを伝えた上で、本人が受診しやすいようにすることが大切です。自分や身近な人が「うつ病かもしれない」と思った場合や、うつ病と診断された場合には、相談できる機関や利用できる支援制度があります。悩みを一人で抱え込まず、ぜひこの記事を参考に、ご自身が利用しやすい相談機関や支援制度を活用してください。

更新日:2023/08/03 公開日:2022/12/23
  • 監修者

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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