仕事や日常生活を送っている中で、突然耳が聞こえにくくなったり、めまいに襲われたりして困っているという方もいるのではないでしょうか?こういった症状が繰り返し起きる場合には、「メニエール病」の可能性があります。
今回は、「メニエール病について聞いたことはあるけれど、よく分からない」という方のために、メニエール病に見られる症状や治療法、また無理なく仕事を続けるための対処法などをご紹介します。
仕事や日常生活を送っている中で、突然耳が聞こえにくくなったり、めまいに襲われたりして困っているという方もいるのではないでしょうか?こういった症状が繰り返し起きる場合には、「メニエール病」の可能性があります。
今回は、「メニエール病について聞いたことはあるけれど、よく分からない」という方のために、メニエール病に見られる症状や治療法、また無理なく仕事を続けるための対処法などをご紹介します。
目次
メニエール病とは、回転性めまい発作に難聴、耳鳴りなどの症状が重なって、それらが繰り返し起きる内耳の病気です。30〜40代で発症する場合が多く、過労やストレス、不規則な生活との因果関係が疑われています。
メニエール病は通常、片方の耳に起こりますが、症状が進行すると両方の耳に生じる場合もあります。両耳罹患率は、メニエール病患者の10〜40%といわれていて、罹病期間が長くなればなるほどその率は上昇します。
その結果、神経症やうつ病との合併率も高まる傾向にあるため、できる限り早期に適切な治療を受けることが大切です。
メニエール病の原因は、内耳にある内リンパ液が増えすぎることで起こる「内リンパ水腫」の状態だといわれています。
内耳には前庭(ぜんてい)・三半規管(さんはんきかん)・蝸牛(かぎゅう)という部分があり、これらの中には内リンパ液が満たされています。それぞれの役割は以下の通りです。
内耳に内リンパ液が過剰に溜まりすぎると内耳の細胞に影響がおよび、めまいや難聴、耳鳴りの症状が起こります。
メニエール病の原因は過労やストレス、睡眠不足など不規則な生活だといわれていますが、詳しいメカニズムは不明のままです。
メニエール病の症状について解説します。
突発的に、自身、もしくは周囲の景色がぐるぐる回っているような、立つこともできないほどの激しい回転性めまいが起こります。20分程度で収まることもあれば、数時間続くこともあり、間隔・頻度も一定ではなく、何度も繰り返し起こるのがメニエール病の特徴です。逆に、数十秒程度で収まるめまいは、メニエール病ではなく、良性発作性頭位めまい症の可能性があります。
耳鳴り、難聴や耳が詰まったような感覚(耳閉感といいます)は、回転性のめまいとともに出現し、めまいの消失とともに改善します。メニエール病による難聴は、低音が聞こえにくくなることが多く、多くは耳閉感として感じます。
メニエール病は通常片方の耳に起こりますが、治療が遅れて症状が進行すると、両方の耳に生じる場合もあります。
ほかにも、めまいと同時に吐き気や冷や汗、激しい動悸などの自律神経症の症状を伴うこともあります。めまいの症状が収まると、吐き気や冷や汗も徐々に治まっていきます。
回転性のめまいがある時には、その場でしゃがんだり寝そべったりして、急な動作は極力避けましょう。めまいも耳鳴りなどの症状も、周囲からは分かりにくいため、突然起こった時のために、「ヘルプカード」を持っておく方法もあります。
メニエール病が疑われる場合には、以下のような検査をおこないます。
メニエール病では低音が聞き取りにくくなる特徴があるため、難聴の程度をチェックします。
造影MRI撮影にて、内リンパ水腫の評価をおこないます。メニエール病の場合は内耳がむくんでいる可能性があるため、左右の耳を比較して差を確認します。
メニエール病の国際的な診断基準には、「バラニー基準」「AAO-HNS 1995 基準」「前庭機能異常研究班基準 2008 基準」の3つがあります。
ここでは、2015年1月にJVR(耳鼻咽喉科の国際医学誌)に掲載された新しい基準である「バラニー基準」についてご紹介します。
ここにある基準に該当するなど、メニエール病が疑われる場合には、まず「耳鼻咽喉科」を受診してみましょう。また、総合病院の場合は「めまい・難聴外来」という、めまいや難聴に特化した専門医がいる場合もあるため、相談してみるとよいでしょう。
メニエール病は、早期に治療を開始した場合、薬物治療や規則正しい生活指導によって80~90%の人は症状が改善されるといわれています。
薬物療法では、「発作急性期」と「発作間欠期」に分けられます。
初期である急性期には、主にめまい発作の軽減と、それに伴う吐き気や嘔吐などの自律神経症状の軽減を目的としています。
これらの治療を発作当日のみ〜数日間おこなった後、間欠期治療へと移行していきます。
間欠期には、主に聴覚の回復とメニエール病の再発・進行の予防を目的としています。
このほかに、最近では「水分大量摂取治療」「有酸素運動治療」「心理・精神治療」などの治療法も取り入れられることがあります。
一方、これら治療をおこなったにもかかわらず、めまい発作が治まらず、難聴が進行してしまう場合もありますが、その場合は「中耳加圧治療」、「外科治療」として手術がおこなわれることもあります。
メニエール病は、過労やストレス、不規則な生活が関係していると考えられているため、その原因がどこから来ているのかをまず認識することが大切です。
ストレスの原因になっているものを一時的に取り除いたり、しっかりと睡眠・休養期間を取るだけでも、症状が落ち着くことがあります。
ある程度状態が落ち着いてきたら、無理のない運動習慣を適度に取り入れることも効果的です。特に、有酸素運動はメニエール病の治療にも用いられており、定期的に数ヶ月実施することで、ストレス発散にもつながります。
頻度や運動の種類は、主治医の先生と相談しながら、無理のない範囲で実施しましょう。
メニエール病に対処しながら仕事をするポイントについて解説します。
もしメニエール病と診断された場合には、すぐに職場の上司に相談しましょう。
直接上司と話すのが難しい場合には、社員の健康管理やストレスチェックの役割を担う相談窓口(産業医など)に相談をするといいでしょう。
「発作を起こして迷惑をかけるかもしれない」と不安になること自体、精神的な負担につながり、症状を悪化させてしまう可能性もあります。
人により症状の程度も違うため、どのくらいの頻度でめまい発作が起こる可能性があるのか、発作が起きた時にはどのような対処が必要なのか、事前に伝えておくことで周囲にも安心してもらえるでしょう。
メニエール病の症状には波があるため、一時的に落ち着いていて働ける状態でも、業務過多や残業が続くとストレスになり、症状の悪化につながりかねません。また、出勤前の通勤中などに、突如めまい発作が起こる可能性も考えられます。
そのため、症状が落ち着くまでは、業務量や残業を調整したり、変則的な出勤時間の調整・リスクの少ない在宅勤務など、負担の少ない働き方ができないか相談してみましょう。
強いめまいや耳鳴りが頻発して起こる場合には、仕事を一時的に休むことも必要です。「いつ発作が起こるか分からない」という不安を抱えたまま働き続けると、精神的なストレスも増えてしまいます。
しばらく休養・治療に専念して、メニエール病の症状が落ち着いてから徐々に復帰を目指すことで、自身も周囲も安心して働くことができるかもしれません。
休職したい場合の流れは以下の通りです。
会社に休職制度がない場合や、自身が休職制度に該当しない場合でも、有給休暇を使用して療養をおこなうという方法もありますので、まずは周囲に相談をしてみましょう。
メニエール病のある方が利用できる支援制度について解説します。
メニエール病は2015年より、国の指定難病から外れているため、国からの医療費の助成はありません。しかし、自治体によっては助成金や補助を受けられる場合があります。
自治体がおこなっている医療費助成制度で、指定されている疾患を発症している場合、ひと月あたりの定額として手当を受け取ることができます。基本的には指定難病が主となりますが、指定難病以外の疾患を認定している自治体もあります。
登録されている疾患は自治体によって異なりますが、もしメニエール病が「県独自の指定難病」として指定されていた場合には、治療にかかる1ヶ月分の医療費から、自己負担上限額を超過した分が支給されるシステムとなっています。
申請書・医師による診断書を提出することで申請ができますので、詳しくは各自治体にお問い合わせください。
メニエール病と診断されただけでは、障害者手帳の対象とはなりません。
しかし、耳鳴りや難聴、めまいやふらつきの症状が高度な場合には、「身体障害者手帳」の対象となることがあります。(※)
障害者手帳の申請をする場合には、まず指定医に交付基準に該当するか診断してもらいましょう。
障害者手帳については、各自治体の障害福祉課などの窓口にご相談ください。
※身体障害者手帳の対象となる障害のうち「聴覚又は平衡機能の障害」であると認められる場合に障害者手帳の対象となります。
メニエール病は、ストレスや疲労が蓄積されて発症することが多いため、早期に休養・治療をすることで治る場合がほとんどです。しかし症状が続き日常生活に支障をきたす場合には、「障害年金」の対象となることがあります。
会話が聞き取れないなど、難聴により認定を受けることが多いですが、めまいなどの平衡感覚の異常で認定を受ける場合もあります。
メニエール病の症状は波があり、その波は周囲からは分からないため、理解されにくい辛さがある方も多いかもしれません。
メニエール病であるにもかかわらず、ストレスがかかっている状態で無理して頑張ってしまうと、メニエール病の症状が悪化し、その分治療が長引いてしまうこともあります。一方で、発症後早期に適切な治療を受けることで、めまいや難聴などの症状を最低限に抑え、悪化を防ぐことにもつながります。
そのため、少しでも症状があると感じる場合には、一人で我慢せず早めに周囲に相談するようにしましょう。
LITALICOワークスでは障害のある方の「自分らしく働く」をサポートしています。障害者手帳の有無にかかわらず、医師や自治体の判断などにより、就職に困難が認められる方も利用できる場合もあります。働くことで困りごとがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。
監修
日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会/富山大学 学術研究医学系 耳鼻咽喉科頭頸部外科学講座 教授
將積 日出夫
専門領域:耳鼻咽喉科学(特に神経耳科学)
学会では日本専門医機構・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会(専門医、指導医)、日本めまい平衡医学会(理事長、専門会員)など幅広く活動している。
令和4年日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科教育・育成功労賞。
関連ページ
難病とは?指定難病との違い、医療費助成・申請方法など解説
難病とは、国が治療や研究を進めている希少な難治性の疾患です。 難病が発症したとき、経済的なものも含め、生活や仕事の不安を感じられる方も多くいるかもしれません。しかし、実際は、医療 … [続きを読む]
難病のある方の仕事探しや求人探しのポイントとは?転職する際に利用できる就労支援も解説
「働きたい気持ちはあるけれど、難病を患っていて、働くことが難しいかもしれない」とお考えの方もいるのではないでしょうか。仕事探しで重要なポイントを押さえることで、難病のある方も就職先や転職先を見 … [続きを読む]
突発性難聴とは?初期症状や原因、治し方、仕事や体験談などご紹介
突発性難聴は、突然耳が聞こえにくくなる疾患です。多くの場合は、片耳に発症するといわれています。 突然発症する疾患なのであれば、1日で治る場合もあるのでしょうか?「ストレスが発症の … [続きを読む]