病気や障害により仕事から離れていた人が、再就職について検討し始めたとき、安定して長く働くことができるのか不安な方もいるのではないでしょうか?
そのようなときに活用できるサービスの一つに、ジョブコーチ支援(職場適応援助者)があります。ジョブコーチ支援とは安定して働くことができるよう、サポートをおこなうサービスです。
この記事では、ジョブコーチ支援について、種類や申し込み方法、費用、就労定着支援との違いなどをご紹介します。
病気や障害により仕事から離れていた人が、再就職について検討し始めたとき、安定して長く働くことができるのか不安な方もいるのではないでしょうか?
そのようなときに活用できるサービスの一つに、ジョブコーチ支援(職場適応援助者)があります。ジョブコーチ支援とは安定して働くことができるよう、サポートをおこなうサービスです。
この記事では、ジョブコーチ支援について、種類や申し込み方法、費用、就労定着支援との違いなどをご紹介します。
目次
ジョブコーチ支援とは、障害のある方がスムーズに職場で働くためのサポートをおこなうことを指します。一般的には、職場にジョブコーチが出向き、障害のある方の特性にあった仕事の仕方や職場の人とのコミュニケーションの取り方などを助言・提案します。
具体的には、障害のある方に対して、以下のようなサポートをおこないます。
さらに、ご家族に対して障害のある方の職業生活を支えるうえで、必要な助言をおこなうことがあります。
ジョブコーチは職場に対しても
をおこなうことで、障害のある方と職場、双方の橋渡し的な役割を担います。
ジョブコーチの支援方針は、段階に応じて変化していきます。支援開始のときは集中してサポートをおこない、慣れてくると少しずつ頻度を減らし、支援の主体をジョブコーチから職場の担当者に移行させていきます。そうすることで、時間をかけて少しずつ職場や職場担当者に慣れることができます。
支援期間は、1〜8ヶ月の間で、個別の状況に応じて設定されます。職場適応に関する課題が解決し、障害のある方と事業主側で適切なコミュニケーションが図れるようになった際にサポート終了となります。
ジョブコーチ支援の対象者は、ジョブコーチによる職場での支援が必要な障害のある方(求職者、または在職者)となります。障害者手帳の有無は問われません。しかし、障害のある方と職場双方の合意が必要になります。また、障害のある方の勤務時間が、ジョブコーチ支援終了時点で「週20時間以上」となることを目標とすることが条件とされています。
ジョブコーチには、ジョブコーチの所属先によって3つの種類に分かれています。
地域障害者職業センター(※)に所属するジョブコーチが職場に出向いて、サポートをおこないます。
(※)地域障害者職業センターとは、障害のある方に対して専門的な職業リハビリテーションをおこなっている場所です。
就労支援をおこなう社会福祉法人などに所属するジョブコーチが職場に出向いてサポートをおこないます。
職場(自社)の従業員がジョブコーチ養成研修を受けて自社で雇用する障害のある方のサポートをおこないます。
ジョブコーチ支援は、基本的に無料で利用できます。
ジョブコーチを利用するには、職場(障害のある方の就職先)がある地域の障害者職業センターかハローワークに申し込みをします。
申込者は「職場の方」もしくは「障害のある方」になりますが、双方がジョブコーチ支援の利用に合意していることが条件となります。申し込みから開始まで約2週間ほどです。
ジョブコーチの支援と似たものに「就労定着支援事業(障害福祉サービスの一つ)」があります。
就労定着支援事業は、就労移行支援や就労継続支援などの障害福祉サービスを利用して就職した方が対象となります。自治体から支給決定を受ける必要があり、世帯の所得によっては利用負担が生じる可能性もあります。
就労定着支援事業は、ジョブコーチよりも利用可能期間が長く、3年間(就職後6ヶ月経過後から3年6ヶ月まで)利用可能です。
このように利用料や利用期間などはジョブコーチと異なりますが、就労定着支援も支援者が職場に出向いて障害のある方の職場定着を図るサービスの一つです。
以下に、ジョブコーチ支援と就労定着支援の違いをまとめています。
【ジョブコーチ支援】
期間:1~8ヶ月
利用料:無料で利用できる
対象者:ジョブコーチによる職場での支援が必要な障害のある方(求職者または在職者)
【就労定着支援】
期間:3年間(就職後6ヶ月経過後から3年6ヶ月まで利用可能、1年ごとに支給決定期間を更新)
利用料:世帯収入によっては利用料がかかる可能性がある
対象者:障害福祉サービスを使って就職した方
障害のある方が就職や仕事上で利用できるジョブコーチ支援以外の制度について、紹介します。
地域障害者職業センターによる就職サポートは、ジョブコーチ支援だけではなく、障害のある方の就職に関する専門的なサポートもおこなっています。具体的には、現在の職業能力などを把握するための職業評価や、就職において必要となるスキルを身につけるための職業準備支援などがあります。
職業訓練とは、キャリアアップや希望する就職を実現するために必要な職業知識やスキルを習得する、公共の就職支援制度です。
正式には「公共職業訓練」といいますが、「ハロートレーニング(ハロトレ)」という名称でも知られています。受講費は原則無料(テキスト代自己負担)、一定の要件を満たす方には訓練中の生活費として金銭的な支援を受けられる、などのメリットがあります。
主な分野としては、地域によって異なりますが、情報システム、介護、電気設備、自動車整備などがあります。各地域の詳細は各都道府県労働局のWebサイトをご確認ください。また、職業訓練は求職者登録をしたハローワークで申し込むことができます。
障害者トライアル雇用とは、障害のある方の継続雇用を目指す制度です。具体的には、3〜6ヶ月といった一定の期間を実際に働いてみることで、企業との間で相互理解を深め、就労継続における不安を解消していきます。
働く障害のある方と企業共に就労継続における不安を解消するため、その後の継続雇用においても、安定して長くつとめることができるというメリットがあります。
障害者トライアル雇用の対象者は、障害があり、以下の「1~4」のいずれかに該当している方が対象となります。障害者手帳を所持していなくても対象に含まれる場合がありますので、ご自身が対象者に当てはまるかどうかは、ハローワーク窓口でご確認ください。
また障害者トライアル雇用とは別で「障害者短時間トライアル制度」もあります。これは精神障害や発達障害のある方で、週20時間以上の勤務が難しい方が対象となります。具体的には、トライアル雇用期間中に週10〜20時間から初めて最大12ヶ月間かけて週20時間勤務を目指していきます。
就労移行支援とは、障害福祉サービスの一つです。
一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)を対象に、就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートをおこないます。学校のように定期的に通う場があり、体調を整えながら就職に必要なトレーニングを受けることができます。(トレーニング内容は、事業所ごとに異なります。)
また、就職活動をはじめる前に企業内で実習できる事業所も多くあり、実体験を通じて自分に合う仕事を見つけることができます。就職が決まった後も安定して働き続けるために、前述で説明した「就労定着支援事業」もおこないます。
就労移行支援を利用してみたいと思ったら、まずは就労移行支援事業所やお住まいの自治体の障害福祉窓口へお問い合わせください。
将来的にジョブコーチ支援を受けたいけど今はまだ早いと考えられている方、一般企業に就職したいけど、いきなり応募するのには怖さがある方は就労移行支援の利用もぜひ検討してみてください。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援を運営しています。これまで1万人以上の方の就職をサポートしてきました。各地で利用前の相談・見学会や体験会を開催しています。気になる方はぜひお気軽にご相談ください。
就労継続支援A型も就労継続支援B型も、障害福祉サービスの一つです。
【就労継続支援A型】
就労継続支援A型の特徴としては、基本的に事業所(支援を受けられる場所)と雇用契約を結んだうえで、仕事に従事できるという点があります。最低賃金も保障され、勤務時間や日数によっては、社会保険や雇用保険への加入義務も生じます。一般企業で働くのと近い状態で仕事をすることができます。
【就労継続支援B型】
就労継続支援B型は雇用契約を結びません。賃金ではなく、工賃という形で作業に対する成果報酬を受け取ることができます。就労継続支援B型は、就労継続支援A型や一般企業での就労が困難な方を対象とした障害福祉サービスです。
ジョブコーチ支援とは、障害のある方がスムーズに職場で働くためのサポートのことです。
実際にその職場にジョブコーチが出向き、障害のある方や事業主に対して障害特性や体調に応じた仕事の進め方やコミュニケーションの方法などについて、助言や提案をします。職場でのお悩みなどがある場合に、選択肢のひとつとして取り入れてもいいでしょう。
またジョブコーチ支援に興味はあるが、まだいきなり就職するには不安があるという方に対しては、障害者トライアル雇用や、障害福祉サービスの一つである就労移行支援など、就労面でのサポートがあります。
「これから働くのに不安がある」「就職活動がうまくいかない」「自分に合う職場が分からない」などのお悩みがあれば、ぜひLITALICOワークスへご相談ください。
監修者
帝京科学大学 医療科学部 医療福祉学科 准教授
中里 哲也
EBP(Evidence Based Practice)に基づいたソーシャルワーク支援展開を目指し活動中。
専門は「医療福祉」「教育福祉」「地域福祉」「人材育成」など多岐に渡る。
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