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特別支援学校とは?入学条件や授業内容、卒業後の進路などを解説

更新日:2023/10/10

障害のある子どもの入学や進学を考えると「授業についていけるかな」「友だちをつくれるかな」「集団生活についていけるかな」など、さまざまな不安を感じるかもしれません。

 

障害のある子どもには「特別支援学校」という進路選択があります。特別支援学校では、心身に障害のある子どもが専門性をもった先生から、一人ひとりの障害や年齢に合わせた教育を受けることができます。

 

この記事では、特別支援学校の教育環境や入学条件(対象者)、特別支援学級との違いや、特別支援学校を卒業した後の進路などについて解説していきます。

特別支援学校とは?

特別支援学校とは、心身に障害のある子どもが通う学校のことです。

 

特別支援学校では、子どもの自立や社会参加に向けて、自分自身で考えて行動を選択できるようにしたり、生活や学習で困る場面を解決できるよう、指導と支援をおこないます。

 

また、特別支援学校は「幼稚園」「小学校」「中学校」「高校」の学習過程に合わせて「幼稚部」「小学部」「中学部」「高等部」が設けられています。

特別支援学校と養護学校との違いとは?

2007年まで「ろう学校」「盲学校」「養護学校」と区分されていた各学校がありました。しかし、学校教育法の一部改正によって、これらの学校は「特別支援学校」に統一されて呼ばれるようになりました。

 

学校の名称は「特別支援学校」に統一されましたが、通学する児童生徒の対象となる障害は「視覚障害」「聴覚障害」「知的障害」「肢体不自由」「病弱(身体虚弱を含む)」の5つの区分に分けられています。法改正前の名残もあり、旧名称のままの学校もあります。しかし、制度上は「特別支援学校」となり、複数の障害種別を教育の対象としています。

特別支援学校と特別支援学級の違いとは?

特別支援学級とは、障害のある児童生徒を対象とする、少人数制の学級のことです。特別支援学校と異なり、小中学校に設置されています。

 

特別支援学級は、特別支援学校と同じように、障害種別ごとにクラスが編制され、生活や学習での困難さの改善のために、一人ひとりのニーズに合わせた教育的支援が受けられます。また特別支援学級では、同じクラスにちがう学年の児童生徒が在籍することがあります。

 

特別支援学級の区分は、特別支援学校の枠組みよりも詳細に分けられています。具体的には「弱視」「難聴」「知的障害」「肢体不自由」「病弱・身体虚弱」「言語障害」「自閉症・情緒障害」に分けられます。

 

特別支援学級では通常の学級とは違い、子どもの実態に応じて、時間割や授業内容を立てることができます。

 

例えば、学習に遅れがある子どもには、下の学年で学習する教科や目標に置き換えることや、特別支援学校で使う教材を授業に取り入れることなどができます。また「自律活動」という時間割を設け、感情のコントロールやコミュニケーション、良好な人間関係づくりなど、一人ひとりの子どもに目標を立てたソーシャルスキル(※)を学ぶ授業をおこなうことができます。

 

(※)社会で対人関係を築くためのスキルのこと

特別支援学校の授業内容や環境について

特別支援学校は障害のある子どもたちが学習しやすい教育環境になっています。ここでくわしく説明します。

特別支援学校の授業環境について

特別支援学校では、子どもたちが学習しやすくなるよう、少人数の学級編制を設けています。特別支援学校の小学部と中学部では1学級あたり6人、高等部では8人の生徒を標準としています。また、2つ以上の障害がある子どもで編成する場合は、3人の少人数教育をおこなうことで、適切な指導や支援ができる体制となっています。

特別支援学校のカリキュラムについて

特別支援学校では、卒業後の視点を大切にし、自立と社会参加に向けたカリキュラムが設けられています。例えば、以下のようなものがあります。

 

日常生活に必要な国語の特徴や使い方

話を聞くこと、相手がわかるように伝えること、正しく読むこと、文字を書くことといった、日常生活での表現する能力を養います。

(例)絵本の読み聞かせなどで話のあらすじを理解する

 

数学を学習や生活でいかす

日常的に使う数や図形の理解ができるように学習を進めます。

(例)時計を見て時間の理解ができる

 

身近な生活に関する制度

住まいや暮らしに関わる理解ができるように学びます。

(例)集団生活の決まりごとを守りながら行動する

 

働くことの意義

働くことに興味関心を持ち、作業や実習などを通して理解を深めます。

(例)道具や機械の正しい扱い方を理解し、安全や衛生を保つ

 

通常の学級との交流

小中学校と特別支援学校では、心のバリアフリーのための交流及び共同学習の内容が設けられています。

(例)学校行事やクラブ活動などを合同でおこなう

特別支援学校の入学条件(対象者)とは?

特別支援学校の入学条件(対象者)は、就学時の面接や知能検査などによって、就学基準を判定します。

特別支援学校への就学相談とは

特別支援学校の進路を考えるためには「就学相談」を受けることが必要です。教育委員会の相談窓口で、特別支援学校や子どもの障害、発達について相談をしたり、情報提供を受けながら特別支援学校への就学を検討することができます。就学前の早期教育相談として、特別支援学校が電話相談窓口を設けている地域もあります。

特別支援学校の就学基準とは

特別支援学校の就学基準には、面接や知能検査があります。面接では、子どもの日頃の様子を話したり、就学先について話し合いをおこないます。子どもが学校生活を送るうえで、不安に感じていることを聞いてみるのもよいでしょう。

 

また、必要に応じて、臨床心理士などが保育園や幼稚園での様子を見学したり、医師の診察を受けたりする場合もあります。これらの結果を踏まえて、就学支援委員会や特別支援学校と話し合いをおこないます。

特別支援学校に就学するまでのスケジュール

特別支援学校の入学までのスケジュール

 

特別支援学校就学を希望する場合には、就学予定1年前の4月ごろから「就学相談」を教育委員会へ申し込みます。そのときに特別支援学校の入学や入学後の学校生活について話し合いをおこないます。特別支援学校での生活のイメージを持てるように、特別支援学校の体験入学などを取り入れる場合もあります。

 

最終的に子どもと保護者の意見を尊重したうえで、10月ごろまでに特別支援学校の就学先を決定することになります。特別支援学校の就学先が決定すると、教育委員会から特別支援学校の就学先を決定した通知書を翌年の1月ごろに受け取ることとなり、翌年の4月の入学を迎えることになります。

特別支援学校は発達障害のある子どもは入学できる?

特別支援学校の入学対象となる子どもは、前述した「視覚障害」「聴覚障害」「知的障害」「肢体不自由」「病弱・身体虚弱」の障害とされており、学校教育法には「発達障害」といった文言は含まれていません。

 

特別支援学校での就学を検討する場合には、就学相談を受ける必要がありますが、就学相談の結果によっては特別支援学校へ入学できる場合もあります。保育園や幼稚園、日頃のご家庭で過ごす様子から、今後の学校生活に不安を感じることがあれば、相談しておくとよいでしょう。

特別支援学校を卒業した後の進路

特別支援学校の中学部に通う生徒の高等部進学率は、障害の種別を問わず高くなっています。

2018年3月に特別支援学校中学部の卒業を迎えた生徒は10,491人、そのうち10,322人の生徒が特別支援学校の高等部などへ進学し、全体の98%を超えています。(参考:文部科学省「卒業者の進路状況(平成30年3月卒業者)」)

 

特別支援学校の高等部を卒業すると、学歴は「高卒」とは異なり「特別支援学校高等部卒」となります。特別支援学校を卒業した後に「大学や専門学校へ進学する」か、それとも「就職を目指すか」など、進路先について気になる方もいらっしゃるかもしれません。どのような選択肢があるのか、ここで見ておきましょう。

特別支援学校を卒業した後、大学へ進学する場合

特別支援学校の高等部を卒業してから、大学へ進学することもできます。しかし、大学進学率は一般的に比べ低く、2%程となっています。「就職」は31%、「社会福祉施設などの利用」が61%という進路になっています。

 

特別支援学校の高等部では、知的発達、身体発育、運動発達、生活行動、社会性、職業能力、情緒面の状態を考慮しながら、学年ではなく段階別に授業の内容を構成しています。子どもの知的能力や適応能力に合わせて、将来の生活を見据えながら、基本的な生活習慣や社会性を身につける授業目標を立てることがあります。

 

そのため、特別支援学校の就学相談をする段階から、大学進学に合わせた授業内容を編成してもらえるか、より深い理解や学習へと発展することができそうか、あらかじめ特別支援学校側と話し合いをしておく必要があります。

 

大学へ進学する際にはオープンキャンパスなどに参加し、学生課や障害学生支援室などに、大学生活や学習環境への配慮を受けられるか事前に確認がとれると安心できるでしょう。

特別支援学校を卒業した後、就職する場合

特別支援学校から就職をする選択肢(大学卒業後の選択肢も含む)には、「企業の障害者雇用枠での就職」「就労移行支援事業所などの利用」「社会福祉施設などでの福祉的就労」などの選択肢があります。それぞれくわしく解説します。

 

企業の障害者雇用での就職

企業で働くときには「一般雇用」のほか「障害者雇用」という選択肢があります。「障害者雇用」とは、障害のある方が安心して働き、活躍できる職場環境をつくるために、企業が合理的な配慮事項を設け、職場内で障害特性を理解し合いながら働くことです。企業の中には特例子会社を設立しているところもあります。就職活動の一環として、特別支援学校によっては「企業での実習(職場体験)」を取り入れているところがあります。

就労移行支援事業所などの利用

就労移行支援事業所は、障害者総合支援法に基づく就労支援サービスのひとつです。就労移行支援事業所では、一般企業での就労に向けて、さまざまなプログラムを通して就労の準備性を高めることができます。また、さまざまな年齢や障害のある方が利用している環境のため、社会人生活に向けたグループワークやコミュニケーションの練習をする場にもなります。

 

就労移行支援事業所とは別枠で、就労支援サービスのひとつである「就労定着支援事業」と組み合わせると、最長で就職してから3年半の支援を受けることが可能になります。就労移行支援事業所によって、実施しているプログラムや環境などの特色がさまざまです。特別支援学校の在学中に見学や体験ができる事業所もありますので、一度相談してみるとよいでしょう。

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福祉的就労などの利用

福祉的就労では、「就労継続支援A型」・「就労継続支援B型」の2種類があります。どちらも工賃(給料)が発生し、それぞれの働き方が異なります。

 

就労継続支援A型では雇用契約を結び週5日の勤務が基本となり、就労継続支援B型では雇用契約を結ばずに体調や体力に合わせた就労をすることができる働き方です。どちらも、生活支援や職業指導をおこなう支援員が配置され、障害や特性に理解のある職員からの支援を受けつつ就労ができる環境です。

特別支援学校に関する相談先

日頃から子どもの様子を見て、今後の学校生活を想像すると「興味やこだわりが強いが、集団生活に馴染めるだろうか」「かんしゃくを起こしたり、イライラすることが多くて、友だちができるだろうか」など、心配になることがあるかもしれません。そのような場合に相談できる「就学相談」のほか「教育相談」もあります。ここでは「教育相談」についてご紹介します。

教育相談とは

すでに公立の学校に進学をしている子どもの保護者に対して、発達や特別な教育的支援の相談を受けることができます。子どもの障害や特性について学校や地域の支援機関とどのように連携をすれば良いか、支援の方針やサポート内容はどんなことが受けられるのかといった相談をすることができます。

特別支援学校についてまとめ

子どもが学校に通い始めることは、親の手を離れて過ごす社会参加の第一歩です。障害の有無に関わらず、子どもが1人で学校に通うことは、親にとっては期待よりも不安が大きいかもしれません。

 

就学の選択肢として「特別支援学校」があります。特別支援学校では、子どもの自立や、将来の社会参加に向けて、障害のある子ども一人ひとりの教育的ニーズに合わせて教育を受けることができます。学習や集団生活、身体の機能や健康面で不安を感じている方は、特別支援学校を検討してみるといいでしょう。特別支援学校の進路選択に不安や不明点がある場合には、地域の行政窓口や教育委員会へ相談することも可能です。

 

LITALICOワークスでは、就労移行支援事業所を運営しています。特別支援学校在中時から体験することができ、利用を経て、一般企業への就職に結びついた事例もあります。就職を考え始めたときはぜひ一度ご見学・ご相談ください。

更新日:2023/10/10 公開日:2022/12/13
  • 監修者

    帝京科学大学 医療科学部 医療福祉学科 准教授

    中里 哲也

    EBP(Evidence Based Practice)に基づいたソーシャルワーク支援展開を目指し活動中。
    専門は「医療福祉」「教育福祉」「地域福祉」「人材育成」など多岐に渡る。

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