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【ADHD(注意欠如多動症)の悩み】頭の中がごちゃごちゃする場面と対処法とは?

更新日:2024/06/26

ADHD(注意欠如多動症)のある方の中で、「多くの仕事を振られるとどうしたらいいか、分からない」「焦ると、何をしていいか分からなくなる」といった困りごとがあり、頭の中がごちゃごちゃしてしまう方もいるのではないでしょうか?

 

頭の中がごちゃごちゃする場面は、ADHD(注意欠如多動症)の特性により生じることもあれば、特性と職場などの環境との兼ね合いで生じることもあり、一人ひとり背景が異なります。

 

そのため、自身がどういった理由で困りごとが起きるのかを把握して、それに合った対処法を実行していくことが大切です。

 

本記事では、ADHD(注意欠如多動症)の概要をはじめ、よくある困りごとの例と、場面ごとの対処方法などを紹介します。

ADHD(注意欠如多動症)とは

ADHD(注意欠如多動症)は、不注意、多動性、衝動性などの特性があり、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。特性のあらわれ方によって多動・衝動性の傾向が強いタイプ、不注意の傾向が強いタイプ、多動・衝動性と不注意が混在しているタイプなど主に3つに分けられ、これらの症状が12歳になる前に出現します。特性の多くは幼い子どもにみられる特徴と重なり、それらと区別することが難しいため、幼児期にADHDであると診断することは難しく、就学期以降に診断されることが多いといわれています。また、個人差はありますが、年齢と共に多動性が弱まるなど、特性のあらわれ方が成長に伴って変化することもあります。

 

ADHD(注意欠如多動症)のある方の仕事における困りごととしては、「複数の業務指示を受けると混乱してしまう」「物をよくなくしてしまう」「会社や訪問先に遅刻してしまう」などが挙げられます。

 

※以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事では以下、ADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

ADHD(注意欠如多動症)のある方の頭の中がごちゃごちゃする場面とは

次に、ADHD(注意欠如多動症)のある方の頭の中がごちゃごちゃしやすい場面を紹介します。

 

「ごちゃごちゃ」とは、さまざまなものが入り乱れていて、整理ができていない状態を表して使う言葉です。

 

ここでは、主に仕事においてADHD(注意欠如多動症)のある方が困りやすい例や理由として考えられることを紹介していきます。

スケジュール管理や時間通りに動くことが苦手

ADHD(注意欠如多動症)のある方は、計画をたてて物事を進めていくのが苦手な傾向があるといわれています。

 

そのため、仕事においては「納期を忘れてしまう」「必要な手順を飛ばしてしまう」「一つのことに集中しすぎて適切なペース配分ができない」などの状況になることがあります。

 

例えば、納期間近になって仕事の進捗を聞かれたときに、仕事の抜け漏れがあったことに気づいてパニックになる、といったことが考えられます。

作業の優先順位が分からない

スケジュール管理とも共通する部分はありますが、作業の優先順位が分からない傾向があることも、頭の中がごちゃごちゃしやすい理由の一つといわれています。

 

例えば、上司から同時に3つの業務を頼まれた場合、何から手をつけていいのか分からなくなり、頭がさまざまな考えでいっぱいになってしまうことがあります。

 

また、とりあえず目についた業務から取り組んでみて、上司から進捗を尋ねられたときに初めて優先順位が違っていたことに気づき、「どうしたらいいか分からない」と混乱することもあります。

時間通りに目的地につけない

ADHD(注意欠如多動症)のある方の中には、時間通りに目的地につくのが苦手という方もいます。

 

例えば、下記のような理由で時間通りに行動することが難しく、その結果として遅刻してしまうことがあります。

  • 寝る前にスマートフォンに没頭して就寝が遅くなり、朝起きられない
  • 朝、準備に時間がかかりすぎて家を出るのが遅くなる
  • 目的地や時間を間違えて認識している
  • 途中で忘れ物に気づいて家に帰る
  • 遅れないように目的地には早めに到着したが、時間をつぶしていたら約束の時間に間に合わなかった など

途中で遅れそうなことに気づいても、「正しい道順を調べなければいけない」「連絡するのは職場?訪問先?」などいろいろなことが頭に浮かび、混乱してしまいます。

集中力が続かない

ADHD(注意欠如多動症)のある方の集中力が途切れる理由には、「興味関心によって集中力に差が出やすい」「ほかに気になることがあり集中が途切れる」「音や動きが多い環境では気が散りやすくて集中しづらい」といったことが例としてあります。

 

また、頭の中で多くのことを考えたり、いろいろなことが思い浮かんだりして、目の前のことに集中することが難しくなることもあります。

じっとしたり、我慢したりすることが苦手

ADHD(注意欠如多動症)のある方の中には、じっとしたり、我慢したりすることが苦手な方もいます。

 

例えば、上司との会議の最中に、指示とは関係のない業務のアイデアが浮かんで、早く実行したくなり、スマートフォンやパソコンをいじってしまうといったことが起こりえます。

 

そのような場面では、アイデアが浮かんでいても我慢して会議に参加しなければいけないという思いと、早くアイデアを実行したいという思いが高まって、葛藤してしまうことがあります。

整理整頓が苦手

整理整頓が苦手な傾向も、頭の中がごちゃごちゃになることにつながる場合があります。

 

整理整頓がうまくいかない理由には、「物をどこに置いたか忘れる」「片づけの手順を考えるのが苦手」「片づけの途中でほかのことをはじめてしまう」などが考えられます。

 

例えば、職場のロッカーや自分のデスクが物であふれていると、必要なときに必要な資料などをすぐに見つけることができず、「まず報告する方がいいのか?」「どこに置いたっけ?」など、いろいろなことが頭に浮かんでくるでしょう。

 

上記以外にも、困りごとが生じることがあるので、ほかにも気になることがある方は、主治医や専門機関などに相談してみましょう。

ADHD(注意欠如多動症)のある方の頭の中がごちゃごちゃする原因とは

頭の中がごちゃごちゃすることは、先ほど紹介したADHD(注意欠如多動症)の「不注意」「多動性」「衝動性」という特性によって生じることもありますが、特性と周りの環境とのミスマッチによっても生じることもあります。

 

基本的に困りごとの多くは、「個人因子」と「環境因子」が相互に関係して起きているといわれています。

 

まず、人にはそれぞれ固有の特性があり、それを「個人因子」と呼びます。個人因子には、性別、年齢、価値観、趣味などさまざまなものがあります。その中に、「自分の意志とは関係なくいろいろな考えが頭に浮かぶ」という特徴があり、それが頭がごちゃごちゃする原因となっている方もいます。

 

一方で、仕事をしているときに頻繁に電話が鳴ることで、その都度集中力や注意が切れてしまい「頭の中がごちゃごちゃする」と感じることもあるでしょう。これは「電話が頻繁に鳴る環境」により困りごとが起きていることから、「環境因子」と呼ばれています。

 

頭の中がごちゃごちゃする原因が分かれば、対策を立てることにもつながるため、前の章で紹介した場面の例を参考にしながら、自分に当てはまるものを考えてみてもいいでしょう。

ADHD(注意欠如多動症)のある方の、頭の中がごちゃごちゃするときの対処法

ここでは、先ほど紹介した頭の中がごちゃごちゃしやすい場面への対処法を紹介します。

スケジュール管理ができないときの対処法

スケジュール管理ができない場合には「視覚化する」「アラームをセットする」「声がけをしてもらう」といった対処法があります。

 

視覚化するとは、指示を受けた際に指示内容を紙などに「納期」「やること」と分けて書き出す方法です。その際は日付などを具体的に書くことがポイントです。例えば納期の場合は「納期は●月●日●時」、やること(例:資料作成)の場合は「●日に資料作成をおこなう」といった具合です。

 

書き出すことで頭で考える必要がなくなり、頭の中をスッキリする効果が期待できます。紙だけでなく、スマートフォンやパソコンなどでも代用可能です。

 

また、忘れないようにスマートフォンなどのアプリを使ってアラームをセットしておく方法もあります。ほかにも、上司や同僚に時間を決めて進捗の確認をしてもらうことも方法の一つです。

 

TODOリストを書き忘れたり、アラームをセットし忘れたりすることが不安な場合は検討してみるといいでしょう。

作業の優先順位が分からないときの対処法

作業の優先順位が分からない場合の対処法として、「指示を受けたら優先順位を確認する」ことや「指示(人や内容)を一本化する」ことなどが挙げられます。

 

指示を受けたら優先順位を確認するということは、指示を受けた際にほかの指示との優先順位の兼ね合いを確認し、TODOリストなどに反映していくやり方です。その場で確認してメモするので、優先順位を間違える可能性を低くすることができます。

 

指示(人)を一本化するということは、指示を出す人を誰か一人に決めることで、優先順位の確認をしやすくする方法です。複数の人から指示を受ける場合、人によって優先順位が変わることもありえるため、指示者を一人にすることで混乱を避けることができます。また分からなくなったときに誰に確認すればいいか明確になるメリットもあります。

 

また、指示を出す人が複数いても「一つの作業が終わったら次の作業を指示してもらう」という形で指示(内容)を一本化することで、混乱を避ける方法もあります。

時間通りに目的地につけないときの対処法

時間通りに目的地につけない場合の対処法もいくつかあります。

 

まず、寝る前にスマートフォンなどに没頭して起きられなくなるという方は、スマートフォンを寝床から離れた場所に置くなど、熱中する可能性がある物を遠ざけるという方法があります。

 

次に、朝慌てて準備することが多い方は、前日に持っていくものをかばんに入れたり、着る服を用意しておいたり、電車の経路を調べておいたりといった準備を済ませておくことで、朝慌てる可能性を下げることにつながります。

集中力が続かないときの対処法

集中力が続かない場合も、理由によっていくつか対処法があります。

 

周りの音や動きが気になってしまうという方は、「耳栓やイヤーマフの使用許可をもらう」「人の動きの少ない奥の席に変える」「パーティションを使う」などがあります。

 

ほかにも、そもそも集中力を持続させるのが難しい場合は、TODOや時間を細かく分けて、終わったら休憩するなどメリハリをつけていくことも方法の一つです。

じっとしたり、我慢したりすることが苦手

じっとしていたり我慢したりすることが苦手な場合も、メリハリをつけることが大切です。

 

例えば、30分や1時間など時間を決めてアラームをセットし、鳴ったら簡単なストレッチをするなど「動いていい時間」を決めておくことで、我慢しているという感覚を減らしやすくなります。

 

また、業務を細かくTODOに分けて書き、完了したら自分にご褒美をあげるという方法もあります。例えば「TODOを3つこなしたら次の休憩時間にお菓子を食べる」と決めておくと、やることとご褒美が明確になり、業務に取り組みやすくなるでしょう。

 

そのほかにも、業務自体を接客や作業系など、動きのあるものに変えてもらうという方法もあります。

整理整頓ができないときの対処法

整理整頓ができないことにより頭の中がごちゃごちゃする場合は、ロッカーや自身のデスクに箱や仕切りなどを用意し、「発注書」「マウス」などしまうものの名称を書いたシールを貼るなどして、何をしまう場所かを明確にする方法があります。

 

名称だけではなく、色で分けておく方法もあります。職場環境や自身の見分けやすさで工夫していくといいでしょう。

ここまで、ADHD(注意欠如多動症)のある方がよくある困りごとに対する対処法を紹介しました。対処法の中には、一人では難しいものや職場によっては許可が必要なものもあるかと思います。

 

そういった対処法を取り入れたいときは、職場と合理的配慮について相談するようにするといいでしょう。合理的配慮とは障害のある方の困りごとに対し、職場が過重な負担とならない範囲でサポートをおこなうことをいいます。

 

詳しくはリンク先をご確認ください。

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ADHD(注意欠如多動症)の治療方法について

上記の対処法を試しても難しい場合は、医療機関や専門機関に行って相談してみるのも選択肢の一つです。

 

ADHD(注意欠如多動症)の治療は、ADHD(注意欠如多動症)の特性からくる困りごとを減らすことを目的に「環境調整」「認知行動療法」「薬物療法」などを組み合わせておこなうことが一般的になります。

環境調整

環境調整とは、ご本人の周囲の環境を変えることで、困りごとを減らしていく方法です。

 

ここでいう「環境」とは階段にスロープを付けるといった「バリアフリー」などの物理的な環境だけでなく、仕事内容や指示の伝え方、人間関係や職場のルールなど、さまざまな意味が含まれています。

 

例えば「周りの音が気になって集中できない場合、耳栓をする許可をもらう」「口頭の指示だと理解が難しいため、メールなど文字で指示をしてもらう」といった職場内の困りごとへ原因に働きかけます。

認知行動療法

認知行動療法とはカウンセリングなどを通して、その方の「認知(人それぞれの考え方や価値観のこと)」のゆがみに働きかける方法です。

 

例えば、認知行動療法の一つに「コラム法」という、不安や緊張した場面を紙に書き出す方法があります。書き出すことで客観的に自分の認知の傾向をつかむことができ、今後同じ場面があってもストレスを減らす方法を考えやすくなります。

 

認知がゆがんでいる箇所を整えていくことで、その方が置かれたシチュエーションに沿った言動が取れるように改善していくことを目的としています。

 

この認知行動療法で、日頃の精神的負担を減らしたり、ストレスコントロール方法を身につけたりすることで、日常生活や社会生活を過ごしやすくしていきます。

薬物療法

ADHD(注意欠如多動症)は脳の機能になんらかの偏りがあることで、特性が生じていると考えられています。

 

薬物療法では、主にその脳の機能に働きかける薬を服薬することで、脳内のバランスを整えていく治療方法です。

 

薬は人によって合う合わないが大きく、副作用も考えられることから、主治医と一緒に慎重に進めていきます。

 

【無料】「無理のない働き方がしたい」就労支援機関で相談する

ADHD(注意欠如多動症)のある方で就職や仕事でお悩みの方へ

ここまで対処法について紹介しました。しかし、対処法を試みてもうまくいかなかったり職場の方に相談しても合理的配慮が得られなかったりして、働くうえでのお悩みが続いている場合はADHD(注意欠如多動症)のある方の就職や仕事について相談できる支援機関を活用してみましょう。

 

相談できる支援機関には「障害者就業・生活支援センター」や「ハローワーク(公共職業安定所)」「就労移行支援事業所」などがあります。各支援機関の詳細については、リンク先をご参照ください。

就労移行支援事業所「LITALICOワークス」

 

LITALICOワークスは「就労移行支援事業所」を各地で運営し、これまで多くの発達障害のある方の就職をサポートしてきました。

 

発達障害といっても、その人によって特性や困りごと、適職などが異なります。LITALICOワークスでは、一人ひとりと面談をしたうえでその人にとって最適なサポートを提供しています。

 

例えば、自分の特性について理解を深めたい方は、自己理解を深めるためのプログラムを重点的におこないます。また対人関係で課題を抱えている方には、グループワークを通した対人スキル取得のサポートなどをしています。

 

また「自分に合った職場環境が分からない」という方には、企業インターンを通して、自分に合う職場環境を明確にするサポートもしています。

 

働いた後も就労定着支援として、仕事をする中で困ったことがあったときに、本人と職場の間に入って解決方法を一緒に考えるなど長く働くためのサポートをしています。

 

障害者手帳をお持ちでいない方でも利用可能な場合がありますので、ぜひお気軽にご相談ください。

【無料】自分に合う仕事についてLITALICOワークスで相談する

まとめ

ADHD(注意欠如多動症)のある方の中には、仕事中に「頭の中がごちゃごちゃする」ことが多く悩んでいる方もいると思います。

 

頭の中がごちゃごちゃする理由としては、ADHD(注意欠如多動症)の特性や、特性と職場環境のミスマッチなどさまざまなことが考えられます。

 

特性のあらわれ方や苦手な環境は一人ひとり異なるため、自身の特性や困りごとに合わせて対処法を考えていくことが重要です。

 

対処方法を一人で考えるのが難しいと感じる場合は、医療機関や専門機関に相談したり、ADHD(注意欠如多動症)のある方の就職をサポートする支援機関を活用したりすることも検討してみるといいでしょう。

更新日:2024/06/26 公開日:2023/04/03
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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