睡眠障害は、夜になかなか寝付けない「不眠症」や、十分な睡眠をとっても日中に眠気を感じてしまう「過眠症」などを総称する名称です。
したがって、睡眠に関することでお困りの場合は、なにかしらの「睡眠障害」が生じている可能性があるかもしれません。
しかし、睡眠障害という名前は聞いたことがあっても「具体的にはどんな症状がある?」や「何科の病院に行けばいい?」など、疑問点をお持ちの方もいらっしゃるはずです。
そこで、今回は睡眠障害の種類や症状、治療方法について、まとめてご紹介します。
睡眠障害は、夜になかなか寝付けない「不眠症」や、十分な睡眠をとっても日中に眠気を感じてしまう「過眠症」などを総称する名称です。
したがって、睡眠に関することでお困りの場合は、なにかしらの「睡眠障害」が生じている可能性があるかもしれません。
しかし、睡眠障害という名前は聞いたことがあっても「具体的にはどんな症状がある?」や「何科の病院に行けばいい?」など、疑問点をお持ちの方もいらっしゃるはずです。
そこで、今回は睡眠障害の種類や症状、治療方法について、まとめてご紹介します。
睡眠障害とは、その名の通り「睡眠に関する疾患をまとめた呼び方」です。
よく聞くのは「不眠症」ですが「睡眠障害=不眠症のみ」ではありません。
しっかりと睡眠をとっているのに、日中に眠くなる「過眠症」や、体内時計のずれによって起こる「概日(がいじつ)リズム睡眠障害」など、さまざまな種類があります。
睡眠障害の分類について書かれている「睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)」には、64種類もの診断名が記載されています。
具体的な種類と症状については、次の項目で解説していきます。
睡眠障害の種類と症状を6つに分けてご紹介します。
不眠症とは、睡眠の問題(入眠障害・中途覚醒・早朝覚醒・熟眠障害)が1ヶ月以上続き、日中に疲れを感じたり、食欲が低下したりする疾患のことです。
具体的な例としては「就寝時間にベッドの上にいるのにもかかわらず、充分に眠れず、日中身体がだるい状況が続いている」などが挙げられます。
20~30歳頃に始まり、年齢を重ねるごとに発症する人数が増えると言われています。
不眠症のタイプは入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害の4つです。
上記いずれかの症状が週に2回以上現れる状態が1ヶ月以上続いており、不眠症状に苦痛を感じ、日中の活動に支障をきたしている場合「不眠症」と診断される可能性があります。
不眠はよくある疾患?
厚生労働省のWebサイトには、日本人のおおよそ5人に1人が「充分に眠れていない」「何らかの不眠症状がある」と回答していると記載があります。
60歳以上の方の場合、約3人に1人が睡眠に関する問題を抱えているとも言われています。
このように、不眠に関する症状は決して珍しいものではありません。
しかし、だからといって放置していると、症状が悪化するだけでなく、ほかの疾患に繋がってしまう可能性があるため、専門医へ相談することも検討しましょう。
過眠症とは、夜にしっかり眠っているのにもかかわらず、日中に強い眠気を感じる状態のことです。
本人が置かれている状況に関係なく眠り込んでしまうケースもあるため、仕事や車の運転など日中の活動に支障をきたす恐れが考えられます。
過眠症は主に、「ナルコレプシー」「特発性過眠症」「反復性過眠症」の3つに分かれます。
ナルコレプシーの代表的な症状は「日中、唐突に強い眠気が現れ、眠り込んでしまう」です。
症状が重い方の場合「眠気を感じる前に眠ってしまい、数秒後に起きて気づく」という睡眠発作の状態が生じる可能性もあります。
また、大笑いしたりびっくりすると全身、もしくは身体の一部の力が抜けてしまうカタプレキシー(情動脱力発作)などが現れることがあるのも特徴です。
世界では2000人に1人の割合で存在しており、主に10代で発症することが多いと言われています。
特発性過眠症の症状としては「日中に過度な眠気に襲われ、眠り込んでしまう」などが挙げられます。
日中に唐突に強い眠気に襲われ、眠り込んでしまうが、ナルコレプシーで見られるカタプレキシー(情動脱力発作)といった特徴的な症状が確認できない場合は、特発性過眠症と診断されることがあります。
居眠りをした場合は、1時間以上続き、目が覚めた後もすっきりとしない点が特徴です。
また、夜の睡眠時間が10時間以上と、著しく長い方もいらっしゃいます。
発症は主に10代〜20代の方が多く、有病率は、ナルコレプシーよりもやや少ないと推測されています。
反復性過眠症は非常にまれな疾患です。
強い眠気が3日〜3週間の間持続し、毎日15時間以上、時間帯にかかわらず眠り続けます。
一定機関経過すると、長時間睡眠の状態は治りますが、また不定期に同様の時期(傾眠期)が出現します。
最初の発症はほぼ10代で、女性に比べて男性の発症率が高いと言われています。
概日リズム睡眠障害は、体内時計とまわりの環境のサイクル(24時間周期)のリズムが合わなくなる症状です。
上記のことから、社会生活上必要な時間帯に睡眠がとれず、日々の活動に影響をきたします。
主に4つのタイプに分かれます。
また、上記のほか、夜間を含むシフト勤務や時差のために睡眠時間をずらした結果、起きる不眠は「交代勤務型」や「時差型」と呼ばれています。
睡眠時随伴症とは、入眠時や睡眠中、睡眠から覚醒する際に望ましくない行動をとってしまう状態のことをさします。
脳が発達したり、退行したりする段階に起こりやすいため、子どもや高齢者に多いと言われています。
例えば、睡眠中に突然起き上がり、歩き出す「睡眠時遊行症(夢遊病とも呼ばれる)」や、眠っているときに、いきなり悲鳴や泣き声を上げる「睡眠時驚愕症・夜驚症」などがあります。
また、一般的に金縛りと言われる「睡眠麻痺」の症状も睡眠時随伴症にあたります。
睡眠時呼吸障害は、眠っているときに異常な呼吸をしてしまう疾患の総称です。
代表的なものとしては、睡眠中に舌が気道を塞ぐことからいびきを繰り返し、呼吸が何度も止まったり浅くなったりする「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」が挙げられます。
本人があまり自覚していないパターンも多いと言われています。
睡眠時呼吸障害があると、睡眠が浅くなってしまうため、日中に眠気がやってきたり、活動に集中できなくなったりする恐れがあります。
睡眠関連運動症候群は、眠っているときに手や足を動かしたいという強い欲求が起こる状態です。
夕方から夜間にかけて、足がむずむずとし、常に動かしたくなる「レストレスレッグス(むずむず足)症候群」が代表的な症状です。
また、睡眠中に手や足が意図せず動いてしまう「周期性四肢運動障害」などもあります。
上記のような睡眠関連運動症候群があると、なかなか寝付けなかったり、睡眠中に目が覚めてしまったりする状況が起こります。
睡眠障害の多くは、はっきりとした原因が分かっていないのが現状です。
睡眠や覚醒を起こす脳の機能に不調が起こると睡眠障害が発症すると言われており、その要因として考えられているのは、生活習慣や環境、薬物の副作用などです。
また、「レストレスレッグス(むずむず足)症候群」の場合は、遺伝的なことも原因のひとつではないかと報告されています。
さらに、下記で解説する通り、精神疾患に伴い発症するケースもあります。
睡眠障害は、うつ病や統合失調症などの精神疾患に伴い起こることが分かっています。
その理由としては、睡眠からの覚醒を促す神経伝達物質には、さまざまな感情を作る働きがあり、分泌量の変動が精神疾患とも関連するからと言われています。
例えば、統合失調症の場合「ドパミン(ドーパミン)」と呼ばれる神経伝達物質の作用が高まり過ぎているあまりに、睡眠が妨げられてしまうと考えられています。
うつ病などの精神疾患に伴って現れることがある睡眠障害ですが、反対に、睡眠障害がほかの疾患の原因になる可能性もあります。
理由は「質の良くない睡眠が、心臓疾患や高血圧、糖尿病などの発症や悪化に繋がるリスクがあるから」です。
また、眠れない状態が続くことで、うつ病になる可能性が高まることも報告されています。
睡眠障害の治療方法は、一人ひとりの症状に合わせておこないますが、多くの方は「睡眠習慣の見直し」から始めることになるでしょう。
睡眠障害は、正しい知識を知り、実施することで改善に繋がるケースもあります。
睡眠習慣の見直しの例としては、下記が挙げられます。
上記のほか、症状や状況に合わせた生活指導がおこなわれます。
また、自分で情報を調べて睡眠を見直したい場合は、厚生労働省が作成した睡眠対策の資料も参考になります。
科学的な根拠に基づき分かりやすく記されているため、ぜひ一度ご覧ください。
不眠症の治療には、認知行動療法が用いられることがあります。
不眠症の認知行動療法は「眠りに関する考え方や思い込みを正す治療法」です。
例えば、不眠症がある方のなかには、布団の中で「眠ること」にとらわれていまい、寝床はつらい場所だと無意識に思ってしまっている方もいらっしゃいます。
そうすると、自分で自分を追い込んで焦りを感じて頭がさえてしまい、かえって寝つきを悪くしてしまいまうことがあります。
眠れないときは無理に寝床で過ごさないようにしたり、「せっかく眠気がこないのだから寝るまでの時間を有意義に過ごそう」と気持ちを切り替えるなどをすることで、「眠らないといけない」という不安や焦りの気持ちを和らげていきます。
睡眠障害の治療には、薬が使われることもあります。
睡眠障害の症状や原因によって処方される薬が異なり、薬ごとに服用のルールがあるため、医師の指示に従って服用しましょう。
「睡眠薬を人から分けてもらって飲む」などは避けるようにしてください。
睡眠障害がある場合に、何科で受診するのかは症状によって異なります。
症状が「眠れない」などの不眠のみであれば、睡眠外来(スリープクリニック)に行ってみましょう。高血圧症や糖尿病など内科疾患で通院中の方は、内科主治医に相談してみるのもよいでしょう。
もしも、不眠だけでなく、気持ちが落ち込んだり、精神的なストレスを感じたりしている場合は、精神科や心療内科の受診を検討する必要があります。
また、「ナルコレプシー」や「特発性過眠症」の可能性がある場合は、脳神経内科や精神科へ相談しましょう。
上記のほか、睡眠時無呼吸症候群など呼吸に関する症状が見られる場合は、呼吸器科や耳鼻咽喉科への受診が一般的です。
おそらく、多くの方が「なかなか寝付けない」や「お昼に眠気が止まらない」などの症状を一時的に経験したことがあるのではないでしょうか。
そのため、病院を受診する目安について、気になっている方も多いはずです。
一般的には「睡眠に関する不調が1ヶ月以上続き、改善しようと試みているのにもかかわらず解消されない」場合は、受診を検討してみるとよいと言われています。
ただし、日常生活や社会生活に何かしらの支障が出ている場合は、1ヶ月経っていない段階であっても、早めに病院へ相談した方がよいでしょう。
睡眠障害の影響でうつ病などの精神疾患を発症した場合や、睡眠障害の背景に実はもとから精神疾患があった場合などは、睡眠障害だけでなく精神疾患へのアプローチが必要となることがあります。
そのアプローチには医療的なアプローチだけでなく、精神疾患を引き起こしているストレスを軽減する方法や、精神疾患と付き合いながら日常生活や社会生活を営む方法などを身につけていくことなどが挙げられます。
病院を受診するだけでなく、睡眠障害や精神疾患を抱えつつも日常生活を送るためのすべを身につけるためにさまざまな支援機関を活用するのもひとつの方法です。
この項目では、主に精神疾患に伴う睡眠障害がある方へ向けて、利用できる支援制度について解説します。
睡眠障害の原因が精神疾患の場合、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)が取得できる可能性があります。
障害者手帳を取得すると「障害者雇用への応募」「公共交通機関の運賃割引」など、さまざまな支援やサービスを受けられます。
障害者雇用とは、事業主側にあらかじめ「障害がある」と伝えたうえで採用される求人方法のことです。
一般での採用に比べて、職場での配慮が受けやすいという利点があります。
この障害者雇用の利用は、原則、障害者手帳を持っている方が対象です。
もしも、障害者手帳の取得を希望する場合は、医療機関への相談や、市区町村の障害福祉窓口に問い合わせて、自身が対象になるかなど詳しい内容を聞いてみましょう。
就労移行支援事業所では、睡眠障害をはじめとする障害のある方への就職をサポートしています。
例えば、ストレスコントロールや体調管理の方法を学べたり、職場実習(企業インターン)に参加して自分にあった働き方を考えることができたり、就職後のフォローを受けられたりします。
また、定期的に事業所へ通うことは、生活リズムを整え「毎日、職場に通えるか不安」という悩みを和らげることにも繋がります。
就労移行支援事業所は、障害者手帳を持っていなくても利用できる場合があるため、障害のある方で就職のお悩みがある場合、一度お近くの事業所へ問い合わせてみましょう。
不眠症や過眠症などの睡眠障害があると、質のいい睡眠がとれないため、心身にさまざまな影響を及ぼすことが考えられます。
もしも「最近、満足のいく睡眠がとれていない」と感じたら、まずは睡眠に詳しい病院で、症状にあった改善法などの助言をもらいながら、睡眠習慣の見直しをおこないましょう。
そのうえで、1ヶ月以上症状が治らなかったり、日々の生活に影響が出たりしている場合は、早めに医療機関へ相談することが大切です。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万人以上の方の就職をサポートしてきました。
障害のある方が自分らしく働くために、ストレスコントロール・PC訓練・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。
「働くことに悩んでいる」「体調が不安定で働けるか分からない」「一人で就職活動がうまくいかない」などお悩みのある方は、まずは就職支援のプロに相談してみませんか?
監修者
医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント
染村 宏法
大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。
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