主治医に精神科デイケアを勧められたが、精神科デイケアとは何をするところなのか、イメージがつきにくい方も多いのではないでしょうか。
この記事では、精神科デイケアの説明を始め、目的やプログラム、利用料や手続き、利用した方の体験談など幅広くご紹介します。今後の精神科デイケアを検討する際に、ぜひご参考ください。
主治医に精神科デイケアを勧められたが、精神科デイケアとは何をするところなのか、イメージがつきにくい方も多いのではないでしょうか。
この記事では、精神科デイケアの説明を始め、目的やプログラム、利用料や手続き、利用した方の体験談など幅広くご紹介します。今後の精神科デイケアを検討する際に、ぜひご参考ください。
目次
精神科デイケアとは、分かりやすくいうと「精神障害のある方が安定した日常生活や社会復帰を目的とした通所型リハビリテーション」のことです。精神科デイケアでは、精神疾患の再発防止や生活リズム改善、対人関係スキル向上などを目的に、人との交流や各種プログラムへの参加など通じて、リハビリテーションをおこなっていきます。
デイケアと聞くと「高齢者のデイケア」をイメージされる方もおられるかもしれませんが、精神科デイケアと高齢者のデイケアはそもそもの目的が異なり、別物になります。
精神科デイケアを実施している場所は次の通りになります。
精神科デイケアによって目的やプログラムの内容、対象者、雰囲気などが異なります。例えば就労支援や職場復帰(リワーク)に向けたプログラムもあれば、発達障害やアルコール・薬物依存症などの疾患別のプログラム、思春期の方の利用に特化したプログラムもあります。
そのため、精神科デイケアを検討されている方は、利用目的を明確にしたうえ、いくつかの精神科デイケアをみてみるといいかもしれません。
施設や規模によって異なりますが、精神科医師・作業療法士・精神保健福祉士・看護師といったような専門スタッフが在籍しています。症状や生活などで困ったときに専門スタッフに相談できる、精神科デイケアならではのメリットといえるでしょう。
精神科デイケアの主な対象者は、精神障害のある方が本人の希望する生活への実現に向けて、その改善や回復を希望されている方などになります。前章の通り、精神科デイケアによって目的やプログラムなどが異なるため、対象者も異なります。そのため、対象者については精神科デイケアへご確認ください。
精神科デイケアを利用する時間帯は大きく分けて4つあり、精神科デイケアによって利用できる時間帯が異なります。
通所頻度に関しては、短時間の利用(例:週1~)から始められることが多いようです。少しずつ慣れてきたら、体調の状況に合わせながら利用時間や通所頻度を増やしたりすることもできます。主治医やスタッフと相談しながら、無理のない範囲で活動できるといいでしょう。
時間帯によって、過ごし方が変わりますが、ここでは精神科デイ・ケアにおける1日の流れ(例)を紹介します。ただしプログラムや内容は精神科デイケアによって異なりますので、参考にしてください。
精神科デイ・ケアの場合、1日で6時間利用になります。
安定した日常生活や社会復帰に向け、本人の状況に合わせて目標を設定していきます。そのため、人によって精神科デイケアを利用する目的はさまざまです。
平成20年度厚生労働科学研究「精神障害者の生活機能と社会参加促進に関する研究」のデータによると、最も多かった回答は「生活する力を身につけるため」でした。次に「周囲の人たちとうまく付き合うため」「自分の生活を楽しむため」と続き、精神科デイケアに通われている方の目的は多種多様です。
最近では、障害者雇用促進法で精神障害のある方の雇用義務化が定められたり、うつ病リワーク研究会ができたりすることで、就労支援プログラムや職場復帰支援(リワーク)プログラムなど実施する精神科デイケアも増え、中には「就職や復職に向けて準備する」ことを目的に利用されている方もいます。
精神科デイケアにおける効果は大きいといわれていますが、具体的にどのような効果があるのでしょうか?ここでは一例を挙げていきます。
精神科デイケアによって受けることができるプログラムが異なります。また、精神科デイケアを利用される方の疾患や回復段階、家族状況などはさまざまであるため、本人の目標を設定したうえ、それに合わせたプログラムを組み合わせることが多いようです。プログラムでは、グループで受講するものもあれば、個別でおこなうものもあれば、仲間と一緒につくるものもあります。
ここでは、精神科デイケアでよくみられるプログラムの一例をご紹介します。
(例)料理、手工芸、園芸、塗り絵、音楽鑑賞 など
レクリエーションや創作・趣味活動を通じて、集中力や段取りの付け方などの向上を期待できます。またグループで料理をしたりすることでコミュニケーション向上などにもつながります。
(例)ヨガ、卓球、バレーボール、散歩、フットサル など
身体を動かして体力をつけたり、ストレスを発散するだけでなく、仲間と一緒にスポーツをすることで楽しみや悔しさなど共有でき、チームワーク向上などにもつながります。
(例)認知行動療法、ソーシャルスキルトレーニング(SST)、病気や障害への理解 など
病気や障害に対する理解を深めながら対処法を学んでいくことで、自分について理解を深めたり体調管理をしやすくなります。
(例)自身の障害特性を知る、PCスキル向上、応募書類作成・面接準備、就労支援機関の活用 など
就労に向けて必要なスキルの取得や準備をすることができます。
精神科デイケアの施設・規模によって費用が異なります。精神科デイケアは外来治療の位置付けのため、健康保険の適用範囲になります。健康保険が適応されると自己負担分が3割になり、さらに自立支援医療制度も利用すると自己負担分が1割になります。
また保健センターなどの公的機関では無料で利用できる場合や、お住まいの市区町村によっては障害者手帳の提示などにより、さらに自己負担費用が軽減される場合もあるようです。そのため、詳しくは精神科デイケアへ確認するといいでしょう。
治療にかかる医療費の自己負担分を少なくするための制度です。通常の医療費が原則3割負担なのに対して、自立支援医療制度を利用すると原則1割負担となります。
詳細や手続きはお住まいの自治体の障害福祉課などの窓口でご確認ください。
多くの精神デイケアでは、利用期間は定められておらず、基本的に本人の意思によって利用終了のタイミングを判断される場合が多いようです。ただし、精神科デイケアによっては、より効果を出すために、利用期間を定められているところもあります。
精神科デイケアを使いたいと思ったときの流れについてご紹介します。
※精神科デイケアによって見学・体験の有無や流れなどが異なりますので、詳しくは利用を検討している精神科デイケアにご確認ください。
主治医へ精神科デイケアを使いたい旨を相談します。
候補の精神科デイケアが決まったら、見学の予約を取ります。
どの精神科デイケアにするか迷っている場合、主治医や病院のソーシャルワーカーなどへ相談するといいでしょう。予約を取る際に、利用する場合に必要な手続き(紹介状など)も確認しておくとその後がスムーズかもしれません。
精神科デイケアへ見学をし、スタッフから説明を受けながら、プログラムの内容や雰囲気を確認していきます。
本人の情報把握のため、精神科デイケアのスタッフとの面談を実施します。
その後、体験を実施する場合もあります。
精神科デイケアの担当医師の診察を受け、精神科デイケアの利用ができる状況かどうかを判断します。
利用に関する手続きを経て、本利用となります。
実際に精神科デイケアを利用したことがあるAさんの体験談をご紹介します。
【Aさんのプロフィール】
・5年間入退院を繰り返していた
・昼夜が逆転し、生活リズムが崩れていた
・人との交流や外出の機会がなく、社会復帰への不安が強かった
【Aさんの体験談】
Q.精神科デイケアを利用したきっかけは?
主治医の先生に精神科デイケアを勧められたことがきっかけでした。
Q.精神科デイケアをどのように選んだか?
「通いやすさ」と「雰囲気」で選択しました。
Q.精神科デイケアを利用する目的は?
「居場所」「生活リズムの安定」「対人関係スキルの向上」を目的に利用しました。まずは小さなことからできることを少しずつ増やし、最終的には就職というゴールをぼんやりと考えていましたね。
Q.精神科デイケアでの取り組み
知らない人が多くいる場所への恐怖心があったため、最初は週0~1で通所、精神科デイケアの雰囲気に慣れることから始めました。絵画や音楽など興味のあるプログラムを中心に参加することで、少しずつ人と関わるようになり、コミュニケーションへの恐怖も徐々に減少しました。
また通所頻度も週5の通所までできるようになりました。その頃は働いてみたいという気持ちがでるようになり、就労に向けてパソコンのスキルを高めたり、喫茶店の運営手伝いや自己分析などしていきました。
そのときに就労移行支援事業所があることを知り、就労移行支援事業所と精神科デイケアを併用しながら就職を目指しました。その後、無事に企業へ就職することができ、現在は働けています。
Q.精神科デイケアで得られたこと
生活リズムが整ったこと、人と話せるようになったこと、さらに就労への意識も高まり、少しずつ社会復帰への恐怖心を減少させることができました。特に人との関わり方で自分が大きく成長することができました。入退院生活後の社会復帰はハードルが高いため、精神科デイケアで社会復帰に向けて自分のペースで準備ができてよかったと思っています。
入退院の生活などを経てすぐに社会復帰をすることは、不安の気持ちが大きくハードルが高く感じられるかもしれません。そのようなときは、社会復帰に向けて第一歩となる精神科デイケアを活用してみることを検討してもいいでしょう。
精神科デイケアは、無理のない範囲で自分のペースで始められます。そこで少しずつ生活リズムを整えたり人と交流したりすることで、少しずつ自分に自信が持てるようになり、社会復帰に対する恐怖心の減少にもつながります。精神科デイケアが気になったら、主治医へ相談してみましょう。
精神科デイケアを利用し、そろそろ働きたいなと思われたタイミングで、ぜひ就労支援機関も活用ください。
就労移行支援は一般企業に就職を希望する方々へ、働くためのさまざまなサポートをおこなう福祉サービスです。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万人以上の方の就職をサポートしてきました。
障害のある方が自分らしく働くために、ストレスコントロール・PC訓練・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。
「働くことに悩んでいる」「体調が不安定で働けるか分からない」「一人で就職活動がうまくいかない」などお悩みのある方は、まずは就職支援のプロに相談してみませんか?
監修者
医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント
染村 宏法
大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。
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