Close
お役立ち仕事コラム

広汎性発達障害の方が仕事で悩むこと・対処法・ずっと働くために必要なこと

更新日:2024/08/07

広汎性発達障害はPDDと呼ばれ、主に言動・行動の全般において社会生活に影響を及ぼす障害です。

 

以前は対人関係の困難、パターン化した行動や強いこだわりの症状がみられる障害の総称として「広汎性発達障害」が用いられていましたが、アメリカ精神医学会発刊の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉的特徴を持つ疾患は包括され、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「自閉スペクトラム症」という診断名になりました。

 

現在は「広汎性発達障害」の名称で診断されることはなくなりましたが、以前の診断名で情報を探す人もいるため、この記事では「広汎性発達障害」の名称も使いながら説明します。

 

広汎性発達障害は脳の機能障害を原因とする先天性のものですが、大人になってから症状に気づく場合もあります。

  • 見たまま感じたままに理解したり発言したりする
  • 相手の都合を確認せず話しける
  • 複雑な言い回しを好む
  • 興味や関心が極端である
  • 変化より法則性を好む

広汎性発達障害のある方にはこういった特性があり、特にコミュニケーション面で悩むことが多くあるといわれています。

 

そのため就職活動や仕事がうまくいかないケースも多々ありますが、広汎性発達障害だからといってあきらめる必要はありません。実際に広汎性発達障害と上手く付き合いながら仕事で活躍している人は数多くいます。障害の内容と自身の特徴を理解し工夫していけば、安心して長く働き続けることは十分可能です。

広汎性発達障害の種類と仕事の悩み

以前の診断名である「広汎性発達障害」では、以下の5項目が広汎性発達障害として分類されていました。

●自閉症障害
●レット障害
●小児期崩壊性障害
●アスペルガー障害
●特定不能の広汎性発達障害

2013年に改訂された『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では、広汎性発達障害の分類がなくなり、上記のうちレット障害以外の4つは「ASD(自閉スペクトラム症)」という診断名に統合されました。

 

レット障害(レット症候群)は、遺伝的な原因で引き起こされる神経発達障害で、社会的技能とコミュニケーションの面での問題がみられるためASD(自閉スペクトラム症)と似ていますが、これらは別のものとして分類されています。

 

それ以外の4つが統合されたASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係や社会的コミュニケーションの困難」と「特定のものや行動における反復性やこだわり、感覚の過敏さまたは鈍麻さ」などの特性が幼少期からみられ、日常生活に困難を生じる発達障害の一つです。知的障害(知的発達症)を伴うこともあります。幼少期に気づかれることが多いといわれていますが、症状のあらわれ方には個人差があるため就学期以降や成人期になってから社会生活において困難さを感じ、診断を受ける場合もあります。

 

この記事では、以前の診断名で広汎性発達障害、現在のASD(自閉スペクトラム症)に該当するものを「広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)」と表記します。

 

仕事において、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方は、相手の気持ちを想像したり場の雰囲気を読んだりすることが苦手という特性から、同僚や顧客とうまくコミュニケーションが取れず、円滑な人間関係の構築が難しくなることがあります。

 

また、特定の物や場所、スケジュールなどに強いこだわりを示すこともあり、柔軟さや臨機応変な対応を求められることが困難な傾向にあります。

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)と付き合いながら仕事を続ける方法

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方は職場や仕事で悩みを抱えることもありますが、障害と上手く付き合いながら仕事を続けることは可能です。

 

そのためには、以下のようなポイントに気をつけることが大切です。

1つの仕事にのめり込まないようにする

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方は、行動や気持ちの切り替えが苦手な傾向があります。

そのため、ものすごく集中力を発揮する一方で、一つの仕事にのめり込むあまり、ほかの仕事が疎かになり支障が出ることがあります。

そうならないための工夫として、例えば次の仕事に移る15分前にアラームを鳴らすなど、気持ちや行動を切り替えるきっかけをつくることをおすすめします。

予想外の事態では周囲に助けを求める

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方にとって、予想外の事態や予定の変更は大きなストレスとなることがあります。

中には、あらかじめ取り決めていた段取りが急に変わるとパニックになる方もいます

そのような状況下で、自分で冷静に判断・対処するのは難しいときもあります。

そのため、予想外のことが起こったときは、周りに助けを求めることができる環境づくりが必要です。

事前に相手に伝えておく

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方は、相手の気持ちを汲むことが難しい場合があります。

そのため、相手の都合を確認せず話し掛けているときなどは、一声かけてもらえるようにあらかじめ伝えておきましょう。

 

例えば

「仕事に集中しているタイミングで、何度も続けて質問してしまうこともあると思うので、その時は『〇分後にしてほしい』などとおっしゃってください」

と最初に伝えておくことで、こちらが相手の状況を汲み取れずに質問してしまっても、相手との衝突や不和を防ぐことができます。

上司の曖昧な指示は細かく確認する

仕事の現場では「いい感じにやっておいて」「適当に終わらせて」「大体でいいから」といった指示をされることがあります。

 

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方はこのような曖昧な指示に悩む傾向が強いです。

そのような指示を受けた時は、「いつまでに終わらせるのか?」「どういう手順でやるのか?」といった具体的な数字や方法を聞くようにしましょう。

休んでもいい?休職・退職しても大丈夫?

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)と付き合いながら仕事をすることは可能ですが、特性による仕事上の困りごとに悩んで体調を崩し、働き続けることが難しいと感じる場合もあります。その際は、医師や職場に相談したうえで休職や退職を検討することもひとつの選択肢です。

 

LITALICOワークスを利用された方々の中には、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方で休職・退職したものの、そこから仕事に復帰した方が数多くいらっしゃいます。

休職・退職時の経済的な不安がある方は、下記の制度の利用を検討してみてください。

休職・退職時にも利用できる経済的な支援制度

自立支援医療制度(精神通院医療制度)

精神疾患の治療のために通院中の人や、治療により症状が安定し再発の予防目的で通院中の人の医療費の自己負担額を軽減する制度です。

疾患の種類や所得に応じて、1ヶ月当たりの負担の限度額が設定されます。

 

障害者手帳

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方は、精神障害者保健福祉手帳を取得できる場合もあります。申請には各種条件がありますので、まずは主治医へご相談ください。

障害者手帳を取得すると、疾患の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスや税金の控除、公共交通機関の運賃や公共施設利用料の割引などを受けることができます。

また、障害者雇用という枠で、症状に対する理解や支援を得られやすい職場で働く選択肢も選ぶことができます。

 

障害年金

障害や疾患のために、生活や仕事に支障が出たときに支給される年金です。

働いていた場合でも、症状により仕事が制限されていると判断された場合は、生活の一部を支援する額が支給されます。

 

生活保護

怪我や疾患などにより働くことが難しく、収入が不十分で生活に困った場合に、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための費用が給付される制度です。

受給には各種条件がありますので、まずはお住まいの市区町村にてご相談ください。

 

傷病手当金

疾患や怪我で仕事を長期間休むときに無収入になってしまうことを避け、生活を保障する目的で支給される手当金です。

ただし、労災保険の給付対象とはならない、業務外の理由による休職に限られます。

保険組合の加入期間によって、その人の平均収入額の3分の2の額、または月額28~30万円のいずれかが、最長1年6ヶ月まで支給されます。

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)の方の就職や職場復帰は専門機関の支援を利用する

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)をきっかけに療養が必要となり、休職や退職をした場合は、医師から復職の許可が出たのちにもとの職場に復職したり、別の就職先を探したりすることになります。

 

その際には、障害のある人の就職活動を支援する機関を利用することをおすすめします。

 

障害福祉や就労について、幅広い知識と経験を持つスタッフのサポートを受けながら、復帰に向けた準備や仕事探しをしてはいかがでしょうか。

リワーク

リワークとは、うつ病など精神の不調によって休職した方がスムーズに職場復帰できるようにするためのプログラムのことです。医療機関や公的機関、その他民間の事業所などで受けられます。

 

生活リズムや模擬業務、ストレスコントロールなどのプログラムを通してスムーズな職場復帰を目指します。リワーク支援、職場復帰プログラム、復職支援プログラムなどの名称で呼ばれることもあります。

ハローワーク

ハローワークには、障害や疾患のある人の就労を支援する窓口「専門援助部門」があります。

また、就職に関する相談やカウンセリングの実施のほか、障害や疾患のある人を対象にした求人の紹介などをおこなっています。

障害者就業・生活支援センター

障害のある方の仕事面、生活の面での相談やほかの関係機関との連絡調整などのサポートをおこなっている機関です。生活面では健康管理、金銭管理、生活設計などの相談をおこなっており、仕事面では就職に向けての訓練や職場定着のサポートもしています。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就労を目指す障害や疾患のある人の求職から就職までの一連の過程をサポートする事業所です。

 

利用者は事業所に通い、職業訓練や、面接や履歴書対策などの就職活動のサポート、就職後の定着支援などを受けることができます。

 

LITALICOワークスは、「企業に就職したい」「働きたい」という思いを持っている方に対して、ビジネススキル向上のためのワークショップ、ご本人にマッチした求人開拓、就職後の対人関係サポートまで、一人ひとりの自分らしい働き方の実現に向けて、一貫したサービスを提供しています。

 

障害特性への理解があるスタッフにより、精神障害・身体障害・知的障害のある方に限らず、発達障害や難病のある方など幅広い方に利用いただける環境を整えています。
また、自分に合った働き方を見つけるために数多くの企業で実習できる機会を提供しています。

 

障害者手帳をお持ちでいない方でも利用可能な場合がありますので、ぜひ、お気軽にご相談ください。

 

【無料】発達障害のある方の就職サポートをLITALICOワークスに相談する

まとめ

広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)のある方は、仕事において、周囲とのコミュニケーションや柔軟な対応などを苦手とする傾向にあります。

しかし、特性を理解したうえでコミュニケーションの取り方や仕事の進め方などに工夫することで、安心して長く働き続けることは十分可能です。必要に応じて支援機関のサポートも受けながら、無理なく仕事に取り組んでください。

 

発達障害のある方の就職サポート

「働きたい」という気持ちはあっても、広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)などの発達障害があって働くことに不安を感じる方も多いでしょう。

そのようなときに活用できる支援のひとつに、「就労移行支援」があります。
就労移行支援とは広汎性発達障害(ASD/自閉スペクトラム症)をはじめとする障害のある方へ、就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートをおこなう福祉機関のひとつです。

LITALICOワークスは、障害特性への理解があるスタッフが、一人ひとりの悩みや気持ちに寄り添い、それぞれに合った目標やペースで、就職までの道のりをサポートします。
「自分に合う仕事が分からない」「ブランクが長くあり働くことが不安」「仕事が長続きしない」など、就労に関するお悩みをぜひ、お気軽にご相談ください。

 

【無料】LITALICOワークスがよくわかる資料をダウンロードする
更新日:2024/08/07 公開日:2020/07/03

関連ページ

まずはお気軽にご相談ください
障害や就職のこと、LITALICOワークスに相談してみませんか?
ちょっとした質問・相談もお気軽にどうぞ。無料でご相談いただけます。
お電話でのご相談もお待ちしています。
受付時間 平日10:00〜17:00

このページに関連する
おすすめコンテンツ

ページトップへ