難病とは、国が治療や研究を進めている希少な難治性の疾患です。
難病が発症したとき、経済的なものも含め、生活や仕事の不安を感じられる方も多くいるかもしれません。しかし、実際は、医療費助成制度の活用、通院・治療や自己管理をおこなうことによって、通常と変わらず生活を送ることができている方も多くいます。
本記事では、難病・指定難病の定義、医療費助成制度、相談できる窓口や難病のある方の仕事などについて、幅広くご紹介します。
難病とは、国が治療や研究を進めている希少な難治性の疾患です。
難病が発症したとき、経済的なものも含め、生活や仕事の不安を感じられる方も多くいるかもしれません。しかし、実際は、医療費助成制度の活用、通院・治療や自己管理をおこなうことによって、通常と変わらず生活を送ることができている方も多くいます。
本記事では、難病・指定難病の定義、医療費助成制度、相談できる窓口や難病のある方の仕事などについて、幅広くご紹介します。
目次
難病と聞くと「難病があって働けない」「寝たきりの生活」などイメージしてしまう方もおられるかもしれませんが、実は難病があっても治療と両立しながら、普段通りの生活を送ることができる方が多くいます。
その背景として、平成27年1月に「難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)」が施行され、次のような支援が整備されたことがあります。
そのため、難病医療の進歩や就労支援・障害者支援などの取り組みが広がりつつあります。
難病とは、難病法では、次の通り定義とされています。
【難病法に基づく「難病」の定義】
難病の疾患は数多くの種類(後述の「指定難病」は333疾病)があります。
患者数が多いものは、次の通りです。
しかし、難病は患者数の多い疾病だけではなく、患者数の少ない疾病が多数あることが特徴です。
体調が悪化したときには、難病の種類によってさまざまな症状が表れます。
しかし、定期的な治療や体調管理をおこなうことでほぼ症状のない状態を続けることができる患者が増えていることが難病の特徴になっています。
ただし、症状がなく普通に過ごせているような状態であっても病気が完治したわけではないので、過労やストレスなどのきっかけにより体調が崩れやすいことが、難病に共通する主な症状となっています。
日によって症状や体調に変動が生じてしまうことがあり、体調悪化の兆候としては、全身的な疲労や倦怠感、発熱、集中力の低下などがみられます。(同じ難病でも症状の有無や程度は、人によってさまざまです。)
また、一部の難病は現時点では治療によっても症状の進行を止められないことがあり、経過や進行に伴い、難病が多様な身体障害(視覚障害、肢体不自由、内部障害など)の原因疾患となることもあります。
その他、治療による副作用で、顔がむくむ、免疫力が低下する、といったような症状が表れる場合があります。
難病の症状によっては長期間、高度の治療を続ける必要があり、治療にかかる医療費の負担が大きくなってしまうこともあります。そこで医療費の負担を軽減するために定められたものが「指定難病」になります。
指定難病とは分かりやすくいうと「難病法に定められた難病のうち、医療費助成の対象となる難病」のことで、指定難病に該当するためには「難病」の定義に加えて、「指定難病」の要件も満たす必要があります。
指定難病は、研究班及び関係学会が整理した情報に基づき、指定難病検討委員会などの審議結果を踏まえ、厚生労働省が指定していきます。
難病法施行以前では医療費助成がおこなわれる疾病は56疾患に限定されていましたが、難病法により大きく範囲を拡大し、定期的に検討・見直しをおこなうことで、2021年10月時点では333疾患が指定難病とされています。
今後も継続的に指定難病の検討・見直しがおこなわれる予定です。指定難病の疾患を知りたい方は、難病情報センターにてご確認ください。
指定難病と診断された方のうち、厚生労働大臣が定める重症度分類等を基準としたときに、「その方の症状がその基準以上を満たしている方」もしくは「その基準を満たしていないが、高額な医療費が継続的にかかっている方」が対象となります。
指定医療機関とは「公費医療の対象となる疾患に必要な治療ができる」と国に認められた医療機関のことで、医療費助成を受ける難病のある方の受診先として指定されています。
指定医とは、国の定めるいくつかの条件を満たした医師のことです。指定医には、新規・更新申請に必要な診断書の作成できる「難病指定医」と、更新申請のみ必要な診断書の作成ができる「協力難病指定医」があります。
・医療費助成費の対象
難病の症状が変動し、入退院を繰り返すなどの特性に配慮し、「外来」「入院」どちらも対象になります。ただし、入院のときの食費に関しては全額自己負担分となります。
・自己負担分について
健康保険組合など加入されている場合、原則として医療費の3割が自己負担となりますが、難病にかかる医療費助成の認定を受けた場合、医療費の2割が自己負担となります。
さらに、1か月にかかった医療費(※)に対する自己負担分について、上限が定められています。
詳細は以下の「医療費助成における自己負担上限額(月額)」の通りになり、世帯の所得に応じて区分されています。
※薬局の保険調剤・医療保険における訪問看護ステーションによる訪問看護も含みます。
・自己負担分に関する考え方
上記の「医療費助成における自己負担上限額(月額)」と「自己負担分(医療費の2割)」を比較したときに「低い方の自己負担分が適用される」という考え方になります。
「高額な治療を長期続いている方」「人工呼吸器装着をされている方」については、さらに自己負担額が軽減されます。
自己負担上限月額の詳細は上記の「医療費助成における自己負担上限額(月額)」の通りになります。
・軽症高額該当について
指定難病と診断され高額な医療の継続により軽症を維持している難病患者を支援するため、厚生労働大臣が定める重症度分類等の基準を満たしていない場合でも、高額な医療費が継続的にかかっている方は「軽症高額該当」になります。
具体的には、1ヶ月に医療費総額が33,330円を超える月が年間3回以上ある場合は医療費の助成の対象となります。
指定難病の医療費助成を受けるためには「指定難病医療受給者証」の交付が必要になります。申請方法は以下の通りになります。
都道府県(指定都市)の窓口へ相談のうえ、申請に手続き・必要な書類を確認します。窓口に関しては難病情報センターでも確認することができます。
「難病指定医」を受診し、診断書(臨床調査個人票)を作成してもらいます。
※更新手続きの場合「協力難病指定医」でも可能です。
診断書(臨床調査個人票)など含めた必要書類を都道府県(指定都市)の窓口へ提出します。
都道府県(指定都市)が支給認定をおこないます。その結果「支給認定」と認められた場合「指定難病医療受給者証」の交付がされます。
なお、申請から指定難病医療受給者証が交付されるまで約3ヶ月程度かかる場合があります。その間に指定医療機関でかかった医療費に関しては、払戻し請求をすることができます。
難病と診断されたとき「これからの生活はどうなるのかな…」「まず何をしたらいいのかな…」など、さまざまな不安や戸惑いを感じてしまう場合があるかもしれません。特に、希少な疾病の場合は、情報もなく孤立した気持ちになることもあります。
地域には難病について相談できる窓口や情報源が整備されていますので、一人で悩むのではなく積極的に活用することが大切です。
相談窓口では、不安な気持ちを受け止めてもらいながら、スタッフによるアドバイスや支援を受けたり、難病のある方と情報交換をしたりすることができます。
難病のある方 もしくは その家族が、日常生活や療養・仕事などのお悩みがあるときに、相談することができる場所です。
難病相談支援センターでは、難病のある方の生活の維持向上を支援することを目的に、都道府県および指定都市に設置されています。
就労相談を含め、難病の患者の療養や日常生活上のさまざまな問題について、ハローワークなどの地域のさまざまな支援機関と連携して支援をおこなっています。
相談のほか、医療従事者が開催する講演会・研修会や難病のある方同士で交流できる「ピア(仲間)活動」などおこなっているところもあります。
公益財団法人難病医学研究財団が運営(厚生労働省補助事業)しているWebサイトで、難病に関する情報がまとめられています。
指定難病の解説や、各種制度の概要および相談窓口などの情報収集をすることができます。
難病のある方やその家族たちが発足した団体のことで、県単位での難病関連団体のものもあれば、疾患別の団体のものもあります。
交流会や講演会などの活動をおこなっています。難病相談支援センターでも紹介してもらえることもあります。
上記に挙げられた難病法とは別の法律で、「障害者総合支援法」というものがあります。
「障害者総合支援法」とは、障害のある方(※)の日常生活や社会生活を総合的に支援するために作られた法律で、障害者手帳がなくても支援が必要と認められた場合に生活介護や自立生活・就職などの支援が受けられます。
就労移行支援事業所、就労継続支援A型事業所、就労継続支援B型事業所、就労定着支援事業所といった就労系福祉サービスは、障害者手帳の有無や症状の程度にかかわらず、次項の難病患者は支援対象になります。
※「障害のある方」・・身体障害・精神障害・知的障害・発達障害・難病のある方が含まれています。
障害者総合支援法で対象となる「難病のある方」とは、医療費助成の対象となる指定難病の基準を参考に、要件は以下の通りとなっています。
つまり「治療方法が確立しておらず、長期の療養を必要とされるもの、診断で客観的な指標による一定の基準を満たしているもの」が対象となります。
このように「難病のある方」でも、難病法と障害者総合支援法では定義が少し異なり、後者の方が定義が広いという形になります。
障害者総合支援法の対象となる難病は361疾患(2021年10月時点)で、詳細は厚生労働省のWebサイトより確認することができます。
なお、対象となる難病については今後も定期的に見直し・検討をおこなう予定です。
難病のある方も障害者手帳を取得することはできるのかという疑問を多く耳にすることがあります。
障害者手帳は、原因となる疾患とは関係がなく症状や程度により認定されるため、身体障害でも原因が難病ということもあります。つまり、難病の症状や程度によって、障害者手帳を取得できる場合があります。
例えば
・網膜色素変性症など→視覚障害
・クローン病など→内部障害(小腸や直腸の機能障害)
の場合「身体障害者手帳」が交付されることもあれば、
・もやもや病→高次脳機能障害
の場合、精神障害者保健福祉手帳が交付されることもあります。
一方、進行性の難病の場合、進行初期の身体障害の6級や5級で認定される状態であっても、身体障害者手帳の取得が少ないという調査結果もあります。
障害者手帳の交付がされると、各種の手当や税金の控除、公共料金の減税など(※)受けられます。また就労面でも障害者雇用率制度での企業の障害者雇用義務の対象となるなど、受けられる支援の幅が広がります。
※お住まいの自治体によって受けられるサービスの内容が異なります。
障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを詳しく知りたい場合、まずはお住まいの市区町村の障害福祉窓口へ相談してみてください。
本人の状況に合わせ、活用できる障害福祉サービスや制度、手続方法などについて紹介してもらえます。難病の疾患名や症状などが分かるもの(例:医療受給者証、診断書など)があれば、あわせて持参するとよいでしょう。
難病であっても、最新の治療を継続でき、仕事内容を選び周囲の理解や配慮があれば、仕事で活躍できる人が多くなっています。しかし、治療と仕事の両立の可能性が広がっているのに、現状では、社会の理解・配慮が不足し、適切な支援につながっていないために、苦労している難病のある人が多いのも現実です。
一口に「難病のある人」といっても、全身まひで人工呼吸器を装着しながら支援機器やインターネットを駆使して社会参加をしている人や、難病を原因疾患として障害認定を受けて働いている人、また、障害者手帳の対象でないけれども治療と仕事の両立を課題としている人など多様です。
特に、障害者手帳の対象でない難病のある人の場合は、障害者雇用率制度による企業の障害者雇用義務の対象ではありませんが、企業の障害者差別禁止や合理的配慮提供義務となっており、また多様な障害者就労支援機関の支援の対象になっています。
障害者職業総合センターによると、難病のある方は体調がいいときに就職活動をすると80%が就職ができている一方、就職後10年以内はその半数近くが仕事の内容や職場の配慮が受けられず、退職される方もいるといわれています。
そのため、単に就職することだけを目的とするのではなく、自分がどのような仕事であれば治療と両立して無理なく活躍できるのか、働き続けるために職場にどのような理解や配慮を求める必要があるのか、自己対処できるものはないか、を分析して就職前から検討し準備する必要があります。
「自分に合う仕事や職場環境が分からない」「就職後、治療と両立できるか不安」「就職面接などで病気や必要な配慮についてうまく説明する自信がない」といった不安や戸惑いを感じてしまう場合もあるでしょう。また、障害者手帳がないと失業給付期間が短いこともあって再就職を焦る気持ちがあるかもしれません。
そのようなときは、一人で悩むことなく、支援サービスを活用することを考えましょう。
障害者手帳がなくても利用できる場合がありますので、まずは相談から始めてもよいでしょう。ここでは支援サービスの一部をご紹介します。
各都道府県にある地域障害者職業センターでは、障害者(難病のある人を含む)に対する職業評価や職業相談をおこなうとともに、職業準備支援(就職または職場適応に必要な職業上の課題の把握とその改善を図るための支援、職業に関する知識の習得のための支援、社会生活技能などの向上を図るための支援)、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援などを実施します。
また、事業主に対しても障害者雇用の相談や情報提供をおこなうほか、雇用管理に関する専門的な助言・援助を実施します。
就業およびそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害のある方に対し、就業に関する相談支援と生活習慣や健康管理などの生活面での支援を一体的におこなうとともに、事業主に対する雇用管理に関する助言をおこなっています。
本人が希望する職業生活を送ることができるよう、体調管理に関する相談や就職活動、就職後の定着支援など幅広いサポートをおこなっています。
ハローワークでは、就職を希望する障害者(難病のある人を含む)に対して、障害に応じたきめ細やかな職業相談や職業紹介、就職後のアフターケアなどを実施しています。
また、ハローワークに配置されている難病患者就職サポーターは、難病相談支援センターと連携しながら、就職を希望する難病のある人に対して、その症状の特性を踏まえたきめ細やかな就労支援や、在職中に難病を発症した人の雇用継続などの総合的な支援をおこなっています。
都道府県の産業保健総合支援センター(産保センター)において、治療と仕事の両立支援のための専門の相談員(両立支援促進員)を配置し、両立支援に取り組む事業場への個別訪問支援や、患者(労働者)本人の同意のもとにおこなう、患者(労働者)と事業者の間の個別調整支援などをおこなっています。
就労移行支援事業所は一般企業への就職に向けてサポートをおこなう通所型の障害福祉サービスです。
利用者は事業所に通い、職業トレーニングや自己分析、企業インターン、面接や履歴書対策などの就職活動のサポート、就職後の定着支援などを受けることができます。また障害のある方の就職や定着にノウハウを持っていることも特徴です。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営し、障害のある方の「働きたい」をサポートしています。
LITALICOワークスでは一人ひとりの症状や得意不得意、希望する就職などを伺い、計画を立てたうえで支援をおこないます。
例えば以下のようなサポートをおこなっています。
難病を開示するかどうかで悩んでいる場合でも、上記のような取り組みを通して自分に合う働き方を就労支援のスタッフと一緒に検討することもできます。その結果、難病を開示せず働くこととなった場合でも長く働き続けられるようサポートをおこないます。
LITALICOワークスは無料で相談を随時受け付けています。「体調優先で働きたい」「長く働き続けたい「自分に合う職場を見つけたい」などの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
難病は完治が難しく長期的な療養を必要とする病気ですが、継続的な治療や自己管理をおこなうことで、通常と変わらない生活を送ることができる方も多くいらっしゃいます。
難病が発症したとき、病気や生活、仕事などで悩むことも多くあるかもしれません。しかし、そのような方をサポートするための相談窓口や支援機関、ピア(仲間)会などもあります。自分ひとりで頑張るだけでは得られない、さまざまな知見が得られ、よりよい選択肢を増やせる場合もあります。ひとりで抱え込まず、周りを積極的に頼りながら、ぜひ自分らしい人生を見つけてください。
LITALICOワークスではいつでも難病のある方の働くことに関して、相談を承っています。難病があり、働くことに困っている、就職活動がうまくいかない、転職しようか悩んでいるなどの仕事に関するお悩みがありましたらまずは以下の無料相談にお申し込みください。
監修
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター 副統括研究員 博士(保健学)
春名 由一郎
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