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お役立ち仕事コラム

気分障害の方が治療と仕事を両立させるために気をつけることとは?

更新日:2024/06/27

気分障害とは精神疾患の一種で、いくつかの疾患が分類されるカテゴリーの総称です。

理由もなく落ち込んだり、逆に高揚感(ハイ)な状態になるなど、自分ではコントロールできない気分の浮き沈みが症状の特徴です。

 

症状が進むと日常生活や社会活動にも支障が出ることもあります。

適切な治療を受けることで改善するケースは多く、治療と仕事を両立できる人も少なくないのですが、そこにはさまざまな悩みや困りごとも伴います。

 

この記事では、気分障害の方が働く際のよくある悩みと解決策を紹介します。

気分障害の分類について

気分障害は、WHOの策定した「ICD-10」(『国際疾病分類』第10版)で定められている障害カテゴリーで、大きく5つに分類されています。

気分障害1.うつ病

うつ病は、気分の持続的な落ち込みを中心とした症状が表れている状態のことです。

  • 通常なら快楽を感じる活動に対して興味または喜びを感じなくなる
  • 喜怒哀楽などの感情の変化が顕著に無くなってしまう
  • 通常より2時間以上早く起床する
  • 重度の抑うつ気分が午前中に表れる
  • 食欲が激しく低下する
  • 体重の減少
  • さまざまな欲求への著しい減退

「ICD-10」では、うつ病の診断にはこれらの症状のうち4つ以上の症状が2週間以上続くことが条件となります。

気分障害2.躁病

躁病は、爽快感、身体の快調感、幸福感があり、自信に満ちあふれ楽観的な考えに支配される様子が表れている状態のことです。

  • 活動的になる
  • 口数が多くなる
  • 注意不足、集中力低下によるミスが増える
  • 睡眠欲求の低下
  • 性的欲求が高まる
  • リスクを考えない浪費や無謀な運転などの常識をはずれた行動を起こす
  • 社交的になる、または過度に馴れ馴れしくなる

「ICD-10」では、躁病の診断には上記の症状のうち3つの症状が4日以上持続していること、それらの症状によってトラブルが起きてしまっていることが条件となります。

気分障害3.反復性うつ病性障害

文字通りうつ病を繰り返す障害です。

基本的な症状はうつ病と同じで、抑うつ気分、興味と喜びの喪失のほか、活力が減退して疲れやすくなったり、活動性が低下したりします。

通常のうつ病は1回あたり3ヶ月~12ヶ月間は持続(持続期間の中央値は約6ヶ月)します。

しかし、うつ病を比較的短期(2週間以下)で繰り返す場合は、「反復性うつ病性障害」と診断されます。

反復性うつ病性障害は頻繁に気分が変化するため、一定の周期でうつ症状が起きるうつ病に比べ、生活がより乱されたり、無秩序になったりすることがあります。

気分障害4.双極性障害(双極症/躁うつ病)

双極性障害(双極症/躁うつ病)は、精神疾患の中でも気分障害と分類されている疾患のひとつです。

※双極性障害は現在、「双極症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「双極性障害/躁うつ病」といわれることが多くあるため、ここでは「双極性障害(双極症/躁うつ病)」と表記します。

うつ状態だけが起こる病気を「うつ病」といいますが、このうつ病とほとんど同じうつ状態に加え、うつ状態とは対極の躁状態も表れ、これらを繰り返す、慢性の病気です。

 

気分障害5.持続性気分障害

主に気分循環症・気分変調症(持続性抑うつ症)をまとめて指す疾患です。

躁病やうつ病の症状は当てはまらないものの、慢性的に抑うつ気分、食欲減退、イライラ、意欲の低下、集中力の低下などの症状が続く状態を指します。

気分循環症

うつ病と双極性障害の診断基準を満たさない程度で、数日単位で落ち込んでいる状態と気分がいい状態が不規則に反復する期間が2年間以上続きます。

気分変調症(持続性抑うつ症)

うつ病の診断基準を満たさない程度の軽度の抑うつ状態が2年以上持続する疾患です。

※気分変調症は現在、「持続性抑うつ症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「気分変調症」といわれることが多くあるため、ここでは「気分変調症(持続性抑うつ症)」と表記します。

気分障害の仕事上の悩み・困りごと

躁状態の場合

気分障害の中で躁状態の時には、気持ちが非常に高ぶり、自分には何でもできるように感じます。

そのため、人の意見に耳を貸しづらかったり、計画立てや事前の段取りなく仕事を進めてしまうことがあります。

それによって周囲とのコミュニケーションや関係性がうまくいかなかったり、仕事が思うようにいかず、悩んだりすることが多くあります。

うつ状態の場合

気分障害の中で軽躁状態の時には大きな自信を持ち、勢いのままに実行に移す傾向にありますが、元気と自信に満ちあふれ、仕事がうまくいきやすい人もいます。

うつ状態になると、これまでは関心や意欲があったことに対しても無関心・無気力になります。

それゆえ、仕事が手につかなくなったり、症状が進むと朝起きられなかったり身体が動かなくなることもあります。

職場に行けなくなり、仕事を続けるのが難しくなってしまうこともあるのです。

気分障害と付き合いながら仕事を続けるコツ

気分障害のある方が、障害とうまく付き合いながら働くためのポイントは大きく6つあります。

 

1.食事と睡眠のリズムを整える
2.残業を避ける
3.調子の上下があることを受け入れる
4.薬の服用を怠らない
5.症状を悪化させにくい仕事を探す
6.休む勇気を持つ

 

各ポイントについて説明します。

1.食事と睡眠のリズムを整える

気分障害のある方は、躁状態とうつ状態が不定期に訪れるため、体内時計が乱れやすいといわれています。

体内時計が乱れると、入眠障害や中途覚醒などの睡眠障害を引き起こしたり、症状を悪化させる可能性が高まります。

特に睡眠時間が短くなると「躁状態」を起こしやすくなるといわれています。

そのため、決めた時間に「起床」「食事」「就寝」をおこない、生活のリズムを整えましょう。

日中は適度な運動や外で活動する機会を設けることで、太陽の光を浴びることも効果的です。

2.残業を避ける

気分障害でうつから躁に転じやすいタイミングとして、繁忙期に遅くまで残業をするなど、過剰に仕事に取り組むときが挙げられます。

躁状態のときは疲れを感じにくく、自信にあふれているため、無理をしてでも仕事を進めたくなるのです。

しかし、こうした気分の波をできるだけ減らすことが大切です。

睡眠や食事だけでなく、勤務時間や仕事量も一定の量とリズムを保ちましょう。

3.調子の上下があることを受け入れる

気分障害のある方にとって、心身の調子の波が日によって変わることは避けては通れない道になります。

ただ、その波に振り回されるのではなく、焦らずに一歩ずつ克服していくことが大切になります。

そのためにも、症状が出ている時の状況を振り返り、どのような状況で調子を崩しやすいのか、また同じような状況が起こったときにどのような工夫が可能なのかを検討しておきましょう。

4.薬の服用を怠らない

気分障害で躁状態になって自信を取り戻すと服薬を怠るケースが多く見られます。

しかし、それでは症状が再度悪化し、仕事を続けることが難しくなり、安定的な生活を送ることにも困難が生じます。

そのため、定期的に診察を受けて服薬することが、生活を守るためにも必要です。

もし服薬に関して疑問が生じている場合は、自分の判断で服薬を止めずに、主治医に相談しましょう。

5.症状を悪化させにくい仕事を探す

気分障害のある方は以下のような仕事だと安心して長く働けるといわれています。

  • 業務量が大きく変わらない
  • 勤務時間が大きく変わらない
  • 自分のペースでできる
  • 他者との共同作業が少ない

「仕事量」と「ストレス負荷」の変化をできるだけ抑えられる事務系の業務であれば、体調の波に合わせて仕事の量を調整しやすくなります。

そのような仕事に就職したり、会社と相談して配慮してもらうことが大切です。

6.休む勇気を持つ

気分障害によって心身の調子が優れない時は、休むようにしましょう。

無理をしてしまい、状態が悪化するほど、回復にも時間がかかってしまいます。
安心して長く働き続けていくためにも、調子が悪い時は勇気をもって休むようにしましょう。

いざという時の欠勤や休暇をスムーズに取得するためには、疾患や特性について上司や周囲に事前に伝えておくとよいでしょう。

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気分障害で休職・退職しても大丈夫?

気分障害によって業務や周囲との関係がうまくいかず、今の状況のまま続けることが難しいと思ったら、医師や職場に相談しましょう。

もし、心身が疲弊している場合は、勇気を持って休むことも大切です。

休職・退職時の経済的な不安がある方は、下記の制度の利用を検討してみてください。

気分障害で休職・退職時にも利用できる経済的な支援制度

ここでは、休職や退職した際に活用できる支援制度をご紹介します。

自立支援医療制度(精神通院医療制度)

精神疾患の治療のために通院中の人や、治療により症状が安定し再発の予防目的で通院中の人の医療費の自己負担額を軽減する制度です。

疾患の種類や所得に応じて、1ヶ月当たりの負担の限度額が設定されます。

障害者手帳

気分障害のある方は、精神障害者保健福祉手帳を取得することができる場合もあります。申請には各種条件がありますので、まずは主治医へご相談ください。

障害者手帳を取得すると、疾患の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスや税金の控除、公共交通機関の運賃や公共施設利用料の割引などを受けることができます。

また、障害者雇用という枠で、症状に対する理解や支援を得られやすい職場で働く選択肢も選ぶことができます。

生活保護

怪我や疾患などにより働くことが難しく、収入が不十分で生活に困った場合に、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための費用が給付される制度です。

受給には各種条件がありますので、まずはお住まいの市区町村にてご相談ください。

傷病手当金

疾患や怪我で仕事を長期間休むときに無収入になってしまうことを避け、生活を保障する目的で支給される手当金です。

ただし、労災保険の給付対象とはならない、業務外の理由による休職に限られます。

保険組合の加入期間によって、その人の平均収入額の3分の2の額、または月額28~30万円のいずれかが、最長1年6ヶ月まで支給されます。

気分障害の就職や職場復帰は専門機関の支援を利用する

気分障害をきっかけに療養が必要となり、休職・退職に至った場合は、医師から復職の許可が出たのちに就職先を探すことになります。

 

前職で自分に適していなかった要素を分析し、それらの要素を含まない仕事を選ぶといいでしょう。その際には、疾患や障害のある人の就職活動を支援する機関を利用することをおすすめします。

 

障害福祉や就労について、幅広い知識と経験を持つスタッフのサポートを受けながら仕事探しをおこなう方法もあります。

ハローワーク

ハローワークには、障害や疾患のある人の就労を支援する窓口「専門援助部門」があります。

また、就職に関する相談やカウンセリングの実施のほか、障害や疾患のある人を対象にした求人の紹介などをおこなっています。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就労を目指す障害や疾患のある方の求職から就職までの一連の過程をサポートする事業所です。

利用者は事業所に通い、職業訓練や、面接や履歴書対策などの就職活動のサポート、就職後の定着支援などを受けることができます。

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気分障害のまとめ

気分障害は、躁状態とうつ状態を引き起こしたり繰り返したりすることで、仕事や社会的生活に支障をきたすこともあります。

症状が重い場合は療養のために休職・退職せざるを得ないこともありますが、ある程度回復すれば、疾患と付き合いながら安心して長く働き続けることは可能です。

もし、退職後に療養を経て復帰を目指す場合は、ぜひ専門の支援機関をご利用ください。

気分障害のある方の就職サポート

気分障害などで働くことにお悩みのある方への支援として「就労移行支援」があります。

「働きたい」という気持ちはあっても、気分障害などで働くことに不安を感じる方も多いでしょう。

 

LITALICOワークスは、各地で就労移行支援事業所を運営しております。
障害特性への理解があるスタッフが、一人ひとりの悩みや気持ちに寄り添い、それぞれに合った目標やペースで、就職までの道のりをサポートします。

「自分に合う仕事が分からない」「ブランクが長くあり働くことが不安」「仕事が長続きしない」など、就労に関するお悩みをぜひ、お気軽にご相談ください。

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更新日:2024/06/27 公開日:2020/07/22

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