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お役立ち仕事コラム

気分が落ち込む気分変調症とは?原因や診断基準・仕事との付き合い方について解説

更新日:2022/05/11

気分変調症とは、うつ病よりも比較的軽度な気分の落ち込みなどの症状が、慢性的に続く精神疾患の一つです。

 

日頃から、ネガティブな思考や落ち込みが続き、周囲からも病気による症状ではなく、本人の性格や甘えというふうに、誤解されることもあります。

 

今回は、気分変調症の原因や診断基準、うつ病との違いや治療方法、また、気分変調症のある方が仕事・就職する際の工夫や支援制度について詳しく解説します。

気分変調症とは?

気分変調症とは、「うつ病」の診断基準には満たないが、慢性的な抑うつ・憂うつ症状が、2年以上続く精神疾患です。

持続性抑うつ障害とも呼ばれています。

気分変調症の主な症状

気分変調症の代表的な症状は下記の通りです。

 

気分変調症は、うつ病(大うつ病性障害)と症状が重なる点が多くあります。

  • 睡眠困難
    深い眠りにつけないことがある
    しくは眠りすぎてしまう
  • 集中困難
    作業等に集中することが難しい
    集中力が続かない
  • 食欲不振・過食
    食欲がない
    もしくは食べ過ぎてしまう
  • 絶望感
    将来について望みがないと感じることがある
    あるいは悲観的に感じる
  • 決断困難
    判断力の低下
    物事の決断が難しいと感じる
  • 倦怠感
    身体がだるい
    すぐ疲れる
    物事に対する意欲がわかない
  • 自尊心の低下
    自分に自信がない
    自分に否定的

気分変調症だと気付かないケースもある

気分変調症は、長期的に抑うつの状態が続いているので、病気だと思わず自身の性格によるものと勘違いしてしまう方もいます。

 

その結果、病院で受診せず、家族や友人に相談することもできず、一人で悩みを抱えてしまうというケースが見受けられることもあります。

 

気分変調症は、うつ病等と併存(合わせて発症)してしまうこともありますので、少しでも心身の異変に気が付いたときは、早めにクリニックや診療所を受診することをおすすめします。

気分変調症の原因

気分変調症の原因は、はっきりと解明されているわけではありませんが、複数の要因が重なり合うことで発症や症状の悪化につながると考えられています。

 

気分変調症の原因、発症・悪化するきっかけとして上げられるのは、下記の通りです。

 

  • 遺伝要因と生理学的要因
    親が気分変調症を患っている。脳内のいくつかの部位(前頭前野、前部帯状回、扁桃体、海馬)が気分変調症の発症に関連している可能性もある。
  • 環境要因
    幼少期の家庭環境、親や周囲の身近な人との人間関係など。
  • 気質要因
    ストレスに敏感、不安を感じやすいなど。

 

気分変調症の診断基準

ここでは主に、ICD-10による気分変調症の診断基準について解説していきます。

 

ICD-10とは、世界保健機関(WHO)が作成した病気や障害の分類になります。

 

ICD-10による気分変調症の診断基準は下記の通りです。

  • 慢性的な気分の落ち込みが2年以上続いていること
  • 数日から数週間程度の回復期間があることもある
  • 気分の落ち込みは比較的軽症であること

以下の項目のうち、3項目以上の症状が存在すること

  • エネルギーあるいは活動性の低下
  • 不眠
  • 自信喪失あるいは不全感
  • 集中困難
  • 涙もろさ
  • セックス及び他の快楽をもたらす活動に対する興味あるいは喜びの喪失
  • 望みのない感じ,あるいは絶望感
  • 日常生活上の日課に対処できないという自覚
  • 将来に関する悲観,あるいは過去についての思い煩い
  • 社会からの引きこもり
  • 会話量の減少 

ICD-10による診断基準の他、DSM-5というアメリカ精神医学会による診断基準も存在します。DSM-5では、「持続性抑うつ障害(気分変調症)」という名称が使われており、医療機関によっては、こちらの診断名で診断されることがあります。

気分変調症とうつ病の違いは?

気分変調症は、持続性抑うつ障害とも呼ばれ、「うつ病」と症状が重なる点も多くあります。

 

しかし、気分変調症とうつ病は、それぞれ別の疾患として分類されています。

 

気分変調症とうつ病の大きく異なる点は以下の2つです。

①症状が持続する期間

気分変調症とうつ病では、症状が持続する期間に違いがあります。

 

無気力感や不活発などの代表的な症状が2週間以上続くと「うつ病」と診断されるのに対し、気分変調症は先述の通り、抑うつ状態が2年以上続くことで診断されます。

 

また、うつ病と診断された後、診断名が変わる(気分変調症と診断される)こともあります。

②症状の度合い

気分変調症は、慢性的に症状が出るものの、その症状はうつ病よりも比較的軽症とされることが多いです。

 

また、うつ病の診断基準に満たないと判断された場合に気分変調症と診断される場合もあります。

気分変調症の治療方法

気分変調症には画一的な治療法がなく、その人の状況・環境・性格などに合わせて対応する必要があります。

 

精神科や心療内科などの専門機関を受診し、適切な治療方法を取り入れることが大切です。

主な気分変調症の治療方法

  • 精神療法:通院やカウンセリングを通して、ネガティブで否定的な思考を徐々に修正していくことを目指します。
    ・認知療法:物事のとらえ方のくせを認識して、新しい思考へと変化させる方法です。
    ・行動療法:楽しい経験や活動性の機会を多く積み、またリラックス法を試しながら、前向きな思考にしていくことを目指します。
  • 薬物療法:うつ病に準じた治療方法が有用とされており、SSRIなどの抗うつ薬を投与し、抑うつ的な気分への治療を試みます。

組み合わせての治療が効果的

以前は、薬による治療が行われることは少なく、精神療法のみを施すことが多かったのですが、最近は、副作用が少なく有効性の高い抗うつ剤も開発されてきたこともあり、薬物治療を採用するところも徐々に増えてきました。

 

そして、この薬物治療も単体で行うよりも、精神療法(認知療法や行動療法など)と組み合わせて治療することで、より高い治療効果が期待できるということが分かってきています。

気分変調症のある方が仕事をする際にできる工夫とは

気分変調症のある方が仕事をする際にできる工夫についてご紹介します。

 

職場を働きやすい環境にすることも大切ですが、場合によっては、一旦無理せず休職して療養するのも選択肢の一つになります。

周囲のサポートを受ける

気分変調症の治療をしながら仕事を続けていくためには、本人の努力だけでなく、周囲の人の協力・理解が必要不可欠です。

 

職場の上司や同僚に自身の症状について相談し、仕事を分担してもらい、少しずつ作業を進めていくことで、心身への負担を減らすことができます。

 

身体的・精神的ストレス(仕事量や残業、疲れなど)を少しでも減らすために、周囲のサポートを受けながら仕事を進めていきましょう。

「続けられる仕事」を行う

気分変調症の方は、気分が落ち込んだ状態が続き、さらに集中困難・決断困難という症状もあらわれるため、複雑な作業などは心身への負担が大きくなる可能性が高くなります。

 

心身への負担が少なく、無理せず続けられる仕事を選ぶということも大切です。

 

無理せず休職することも大切

気分変調症が原因で、いままで通り仕事を続けることが難しいと感じたら、休職することも一つの選択肢として考えましょう。

 

休職する場合は

休職する場合は、医師からの診断書が必要になる場合があります。

 

診断書には、症状・病名や、休業の必要性の有無、どの程度の休業期間を要するのかなどについて記載してもらいます。

 

また、職場に産業医や保健師がいる場合は、一度自身の症状や休職について相談してみるのも良いでしょう。

傷病手当金について

 

健康保険に加入している場合は休職中に「傷病手当金」を受け取ることができます。

 

傷病手当金とは、病気やけがのために働けなくなった時に、生活のためにもらえる手当のことです。

 

いくつか条件はありますが、基本的に病気が原因で4日以上休んだ場合に、最長1年6か月の間、給与額の約3分の2にあたる金額が、支給されることになっています。

気分変調症のある方が利用できる支援やサービス

最後に、気分変調症と診断された方が利用できる行政支援や就労支援などについて解説します。

自立支援医療(精神通院医療)制度について

自立支援医療(精神通院医療)とは、気分変調症を含む精神疾患のある方が「通院による精神医療を継続的に要する病状にある者に対し、その通院医療に係る自立支援医療費の支給を行うもの」です。

 

入院して受けた治療については、治療費助成の対象外ですが、通院の医療費は、原則1割負担に軽減されます。

 

また、世帯所得や治療内容に応じて、月ごとの自己負担上限額も設定されています。

 

自治体の障害福祉課にて申請書を提出し、受理されれば1年間制度が適用され、状況によって継続申請を行うことも可能です。

 

精神疾患の治療は、長期に及ぶこともあります。

 

自立支援医療制度を利用することで、医療費による経済的負担を減らし、治療に専念できる環境を整えることができます。

精神障害者保健福祉手帳について

精神障害者保健福祉手帳とは、精神疾患のある人に交付される障害者手帳で、症状や日常生活に及ぼす支障の程度によって障害等級(1級、2級、3級)に分けられています。

 

この精神障害者保健福祉手帳を持つと、様々な支援・サポートを受けることができるようになっています。

 

受けられる支援やサポートは下記のようなものがあります。

 

  • 障害者雇用制度が利用できる
  • 税金(所得税・相続税・贈与税など)の控除・軽減
  • 各種公共料金などの割引が受けられる

 

主治医の診断書と必要書類があれば、市区町村の障害福祉窓口で申請でき、2年単位で更新していくことになります。

 

しかし、必ず申請が通るというわけではないので、取得の際は、はじめに主治医と相談してみると良いでしょう。

就労移行支援について

気分変調症のある方は、気分の落ち込みが慢性的に続くだけでなく、集中力が続かない、決断困難などの症状が原因で、仕事を続けることに困難に感じる場合があります。

 

このような方が、企業に就職して働くことをサポートする障害福祉サービスの一つが、就労移行支援制度です。

 

全国にある就労移行支援事業所で、原則2年間、知識やスキルの向上をサポートしてくれます。

 

LITALICOワークスの就労移行支援

就労移行支援事業所の一つである、LITALICOワークスは、2008年から累計10,000名以上の就職をサポートし、定着率90.0%(2020年実績)の実績、日本全国100か所以上に展開しています。

 

LITALICOワークスでは、精神疾患をはじめとする、障害のある方の「働きたい」「就職したい」という気持ちを全力でサポートしています。

 

就職準備やトレーニングの他、企業インターン、就職活動の相談やサポート(面接対策や履歴書・自己推薦文の添削指導など)や就職定着支援まで、利用する方に寄り添って最適な支援を行っています。※支援内容は事業所によって異なります。

【無料】LITALICOワークスのことがよくわかる資料をダウンロードする

気分変調症のまとめ

気分変調症は、2年以上慢性的に症状が続き、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。

 

まずは、一人で抱え込まずに、専門の医療機関を受診し、症状・性格・環境にあった治療を受けられるように行動しましょう。

 

また、就労移行支援制度を使うことで、治療を行いながら、企業への就職・復職を目指すことも可能です。

就労移行支援事業所LITALICOワークスでは、一般企業への就職を希望する障害のある方が自分らしく働くための支援を行っています。就職に関する相談はいつでも受け付けています。

お気軽にお問い合わせください。

更新日:2022/05/11 公開日:2022/01/06
  • 監修

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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