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適応障害(適応反応症)とうつ病の違いは?特徴や症状・診断基準について解説

更新日:2024/08/09

なにかしらの強いストレスが原因で「激しい気分の落ち込み」や「不安感」に悩まされている場合、適応障害(適応反応症)(※)を発症している可能性があります。

 

しかし、適応障害(適応反応症)の症状はうつ病と似ているため「どちらの疾患か判断がつきにくい」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そこで、今回は適応障害(適応反応症)とうつ病の特徴や症状、診断基準について解説します。また、適応障害(適応反応症)やうつ病と上手く付き合いながら、仕事を続けるポイントもご紹介します。

 

(※)適応障害は現在、「適応反応症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「適応障害」といわれることが多くあるため、ここでは「適応障害(適応反応症)」と表記します。

適応障害(適応反応症)とうつ病の違いとは?

適応障害(適応反応症)の症状とうつ病の症状は似ている点もありますが、実際は異なる疾患です。

 

この項目では、それぞれの疾患の特徴について解説していきます。

適応障害(適応反応症)の特徴

適応障害(適応反応症)とは、本人にとって耐えがたいストレスが引き金となり「気持ちが落ち込む」「不安感が強くなる」などの症状が現れる障害です。

 

ストレスの原因は仕事、恋愛、家族、学校、病気など人によってさまざまです。

 

うつ病と異なる特徴としては、ストレスとなっている原因や環境から距離を置くことで、うつ病より比較的早く症状が緩和される点が挙げられます。

 

また、適応障害(適応反応症)からうつ病に移行することもあり、「繊細で傷つきやすい」や「切り替えが上手くできない」といった傾向のある方は、適応障害(適応反応症)になりやすいといわれています。

うつ病の特徴

うつ病は、気分が激しく落ち込み「何もする気が起こらない」「身体がだるい」などの状態が続く気分障害のひとつです。

 

日本では100人に6人がうつ病を経験したことがあるという報告もあります。

 

明確な原因は明らかにされていませんが、さまざまな研究よって「うつ病の原因となる要素はひとつではない」ことが分かっています。

 

そのため、辛かったり、悲しかったりする出来事がきっかけとなり、うつ病を発症した場合であっても、背景にはいくつかの原因が潜んでいることがあるといわれています。

 

原因が複数あるため、適応障害(適応反応症)とは異なり「ストレスの元となっている要素から離れても、すぐには良くならない」という特徴があります。

 

といっても、ストレスから離れることはうつ病の回復に非常に大切なことです。

 

また、うつ病になりやすい方の傾向としては「完璧主義」「生真面目」「周囲に気を遣ってしまう」などが挙げられます。

適応障害(適応反応症)とうつ病の症状

適応障害(適応反応症)とうつ病の症状を項目ごとにご紹介します。

適応障害(適応反応症)の症状

適応障害(適応反応症)の症状としては、下記が挙げられます。

  • 寝つきが悪くなる
  • 倦怠感がある
  • 気分が落ち込む
  • 絶望感に苛まされる
  • やる気が起こらない
  • 無断欠勤をする
  • アルコールに依存する
  • 荒い運転をする
  • 遅刻しがちになる など

上記のように、精神面だけでなく身体的、行動面において症状が生じることがあります。

うつ病の症状

うつ病の症状をいくつかご紹介します。

  • 気持ちが沈む
  • イライラしてしまう
  • 元気がでない
  • ネガティブな考えになる
  • 疲れやすくなる
  • 体重が変化する
  • 夜中に起きてしまう
  • 好きなことにも興味がなくなる など

症状の例を見ても分かる通り、うつ病の症状は適応障害(適応反応症)と似ている点があるため「どちらにあてはまるのか?」は個人では判断できません。

 

上記のような症状が見られ、日常生活や仕事などで困難や苦痛を感じる際は、専門の医療機関にて受診を検討するといいでしょう。

 

なお、適応障害(適応反応症)やうつ病の症状が見られる場合には、精神科や心療内科を受診します。

 

精神科や心療内科の受診が初めてで不安という方は、事前に病院に電話やメールで不安を感じる部分について相談してみるといいでしょう。

適応障害(適応反応症)とうつ病の診断基準

この章では、適応障害(適応反応症)とうつ病の診断基準について分かりやすく解説します。

適応障害(適応反応症)の診断基準

適応障害(適応反応症)では、あるストレス事態を経験したときに、抑うつや不安、いらだち、集中力の低下、不眠、食欲の減退など気分や身体症状の変化などがみられることがあり、社会生活に困難さを感じることがあります。

 

適応障害(適応反応症)は、ストレスの原因から3ヶ月以内に著しい苦痛を伴う症状が出現していること、社会生活で重大な障害となっていること、何らかの精神疾患などの基準を満たさないことを確認したうえで、診断されます。

うつ病の診断基準

うつ病では、1日中、気分が落ち込み何もする気になれなかったり(抑うつ気分)、興味があったものに興味が持てなくなる・喜びを感じていたことを喜べなくなる(興味または喜びの喪失)がほぼ毎日続くことが挙げられます。

 

そのほか、体重の有意な減少(または増加)や食欲減退(または増加)、不眠・過眠、焦燥感、疲労感・気力の減退、自分に価値がないと感じる(無価値感)、思考力の減退、希死念慮などがみられることもあります。

 

これらの症状のうち5つ以上が、1日の大半、ほとんど毎日あり、少なくとも2週間以上続いている場合にうつ病と診断されることがあります。

適応障害(適応反応症)とうつ病の治療方法

適応障害(適応反応症)とうつ病の治療方法について、それぞれに分けて解説します。

適応障害(適応反応症)の治療方法

適応障害(適応反応症)の治療方法としては、環境調整、薬物療法、精神療法の3つが挙げられます。

環境調整

まずは、現実的に可能な範囲でストレスの要因から離れることを試みます。

 

例えば「仕事量や作業内容の調整をする」「(業務調整が難しい場合)休職する」「転職する」「苦手な人と距離を置く」「子育てや家事の分担」などです。

 

また、可能であれば自分の興味のあることをしてリフレッシュすることも大切です。

薬物療法

必要に応じて薬が処方されることがあります。

 

具体的には、症状に応じて抗うつ薬、抗不安薬、睡眠導入薬などが使用されます。

 

しかし、適応障害(適応反応症)において、薬物療法は根本的な治療ではなく、症状を和らげるための補助的な役割であることを覚えておきましょう。

精神療法

ストレスの原因となる環境から離れられない場合に重要となるのが適応力です。

 

例えば、「認知行動療法」などの精神療法が取り入れられることがあります。

 

認知行動療法では、マイナス思考になりがちな思考に働きかけて、バランスのいい考え方ができるように心を整えていきます。

 

精神療法はただ受けるだけではなく、本人が現状を変えようとする姿勢も大切です。

 

ただし、無理をしたり焦ったりする必要はなく、主治医と相談しながら徐々にできる範囲から初めていくといいでしょう。

うつ病の治療方法

つづいて、うつ病の治療方法を見ていきましょう。

薬物療法

うつ病を治療するために、抗うつ薬が主に使用されます。

 

ただし、服用後、すぐに症状が良くなるわけではなく、効果が現れるのに1〜2週間程度かかるといわれています。

 

そのため、焦らず継続的に治療を続けることが大切です。

 

勝手に薬の量を増やしたり減らしたり、服用を止めたりすると、症状が良くならないばかりか、副作用が起こるケースがあるため、自己判断はせず必ず主治医に相談するようにしましょう。

休養・環境調整

心と身体をゆっくりと休めることも、うつ病の治療には欠かせないポイントです。

 

主治医に相談したうえで、会社へ「残業を減らしてもらえないか」「他部署への異動ができないか」など、心身への負荷が強い環境を変えることができないか相談してみましょう。

 

また、場合によっては休職や退職を検討することも選択肢の一つです。

 

責任感がある方ほど「職場に迷惑がかかる」と考えてしまいますが、無理をすると症状が悪化したり、回復までに時間がかかってしまいます。

 

うつ病を治すためにも、できるだけ心身への負担を減らす工夫をおこなったり、また、栄養バランスのいい食事や規則正しい生活リズムなども意識するといいでしょう。

精神療法

うつ病の治療でも、適応障害(適応反応症)と同じく精神療法をおこなうことがあります。

 

悲観的になりがちな考え方や思考のクセを改善する「認知行動療法」や、対人関係の問題を解消し、ストレスを軽くする「対人関係療法」などが取り入れられています。

適応障害(適応反応症)やうつ病と付き合いながら仕事をするうえで大切なこと

適応障害(適応反応症)やうつ病と上手く付き合いながら仕事を続けるうえで、意識したいポイントをご紹介します。

職場の配慮を得る

適応障害(適応反応症)やうつ病と付き合いながら働く場合、少しでもストレスとなる要因から距離を置くことを考えましょう。

 

そのために、可能な範囲で職場の配慮やサポートを得ることが大切です。

 

例えば、職場に下記のことを依頼するといった方法があります。

  • シフトの調整
  • 業務の量を減らす
  • 外部との窓口業務を回避する
  • 役職から外してもらう
  • 業務内容の変更 など

自身のストレスの要因をふまえたうえで、どのような配慮があると働きやすいか考え、職場に相談してみましょう。

自己判断で薬の服用を止めない

うつ病や適応障害(適応反応症)のある人へは、薬が処方されることがあります。

 

薬を飲むことによって、症状を抑えたり、気持ちを安心させたりすることができるため、必ず医師の指示通りに飲みましょう。

 

「仕事が忙しくて飲み忘れた」「症状が良くなってきたから、自己判断で量を減らす」などの状況にならないようにお気をつけください。

無理をしない

うつ病や適応障害(適応反応症)の症状と付き合いながら仕事を続けるためには「無理をしない」ことが大切です。

 

また、人それぞれ症状が異なるため、「このくらい大丈夫」と自分で考えず、ちょっとしたことでも医師に相談してみるといいでしょう。

 

もしも働くことがつらいと思ったら、休職や退職も視野に入れる必要があります。

就職や職場復帰は専門機関の支援の利用を検討する

一定期間、仕事から離れると復帰をするときに不安を感じるのは自然なことです。

 

また、うつ病や適応障害(適応反応症)があるときは、症状を悪化させないためにも、特性をふまえたうえで仕事選びをおこなうことが大切です。

 

そのため、自分一人で判断がつかないときに、ハローワークや就労支援事業所などの機関を利用すると安心です。

 

例えば、ハローワークには、障害や疾患のある方をサポートする専門援助部門があります。

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適応障害(適応反応症)とうつ病の違いのまとめ

適応障害(適応反応症)とうつ病は、それぞれ異なる疾患ではあるものの、気分の落ち込みや倦怠感、寝つきが悪くなるなど、似た症状が現れることもあります。

 

適応障害(適応反応症)とうつ病は治療方法が異なるところもあるため、精神科や心療内科で正確な診断を受けたうえで、適切な治療をおこなう必要があります。

 

また、うつ病や適応障害(適応反応症)と付き合いながら仕事を続ける場合は、決して無理をせず、一人で判断することが難しい場合は専門医や支援機関のサポートを検討してみましょう。

精神疾患のある方の就職支援について

「働きたい」という気持ちはあっても、適応障害(適応反応症)やうつ病などの精神疾患があって働くことに不安を感じる方も多いでしょう。

そのようなときに活用できる支援の一つに、「就労移行支援」があります。
就労移行支援とは精神疾患をはじめとする障害のある方へ、就職に必要な知識やスキル向上のためのサポートをおこなう福祉機関のひとつです。

LITALICOワークスは、障害特性への理解があるスタッフが、一人ひとりの悩みや気持ちに寄り添い、それぞれに合った目標やペースで、就職までの道のりをサポートします。


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更新日:2024/08/09 公開日:2022/02/07
  • 監修

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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