感覚過敏とは、周りの匂いや音などの刺激にとても敏感な状態のことです。例えば電車に乗っているときに香水や柔軟剤の匂いで体調を崩す、人の話し声が気になって仕事に集中できないなど、感覚過敏によって日常生活や仕事で困っている方もいます。
嗅覚や聴覚だけでなく、視覚や触覚などにも過敏を感じることがあります。
この記事では感覚過敏の種類や、チェックリスト、大人の方が仕事で困ることやその対策を解説していきます。
感覚過敏とは、周りの匂いや音などの刺激にとても敏感な状態のことです。例えば電車に乗っているときに香水や柔軟剤の匂いで体調を崩す、人の話し声が気になって仕事に集中できないなど、感覚過敏によって日常生活や仕事で困っている方もいます。
嗅覚や聴覚だけでなく、視覚や触覚などにも過敏を感じることがあります。
この記事では感覚過敏の種類や、チェックリスト、大人の方が仕事で困ることやその対策を解説していきます。
感覚過敏とは、嗅覚・聴覚・視覚・触覚・味覚といった感覚への刺激が過剰に感じられる状態をいいます。ある一つの感覚に過敏な方もいれば、複数の感覚過敏がある方もいて、その強弱も人によって違ってきます。
感覚過敏には種類があります。この記事では主に嗅覚・聴覚・視覚・触覚・味覚の過敏についてそれぞれ紹介していきます。
嗅覚過敏は匂いに対しての感覚過敏です。例えば石鹸や香水、柔軟剤などの匂いが不快に感じられて、満員電車の中など人混みで多くの匂いを感じると頭痛や吐き気が起こる方もいます。
聴覚過敏は音に対しての感覚過敏です。小さな物音でも大きく聞こえてくる場合もあれば、音が多くある場所では刺されるような感覚になる方もいます。
例えばビルの前でネズミ除けの音波をキャッチしてしまい、頭痛が起こるという方もいます。
視覚過敏は目に対する感覚過敏です。
明るさに対する過敏と色に対する過敏があり、太陽の光が眩しくて目を開けていられない、蛍光灯の光がチカチカして見える、原色など特定の色を直視できないなど目から入る刺激に敏感です。
真っ白い紙を見続けていられないという方もいらっしゃいます。
触覚過敏は皮膚に触れる物に対しての感覚過敏です。洋服を着るときに特定の化学繊維だとごわごわする、チクチクするという感覚があったり、雨や風が皮膚にあたると痛みを覚えることなどがあります。
他人に触られるのが苦痛で握手ができないというような方もいます。
味覚過敏は味に対する感覚過敏です。粘り気や歯切れのよいもの悪いものなど、独特な食感や舌触りの食べ物が苦手だったり、濃い味付けの食べ物、油っこい食べ物が苦手だったりと様々です。
また、食感過敏といってある食べ物がゴムを噛んでいるような感覚に感じる方もいらっしゃいます。
感覚過敏の種類について紹介しましたが、誰しも多かれ少なかれ日常生活で気になる感覚はあると思います。簡単なチェックリストを用意しました、何個当てはまれば感覚過敏とは言い切れませんが、当てはまる項目が多かった感覚が過敏な傾向があるという参考にしていただければと思います。
当てはまる項目はあったでしょうか?あくまでも傾向なので、リストを見て気になった方は受診を検討するなどしていただければと思います。
感覚過敏の原因は明確に判明しているわけではなく、一つだけではなく複数の原因が関係していることもあります。考えられる原因をいくつか紹介します。
匂いや光などの刺激が入ってきたときに、脳はその刺激を適切に調整する働きをしています。何らかの原因で脳の機能に偏りが生じると、刺激に対しても適切に調整することができなくなり、刺激に対して敏感になることがあるといわれています。
自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)などの発達障害のある方も感覚過敏があることが多いといわれています。
ただし感覚過敏があるから必ず発達障害だというわけではありません
身体的な疾患などによって感覚過敏が起こることもあります。例えば突発性難聴やメニエール病などによって、大きな音が過剰に聞こえる状態になることもあります。
嗅覚に関しても鼻を負傷したことで機能に偏りが生じて、特定の匂いに不快感を覚えることもあります。
ある時期から感覚過敏が現れている場合は、不安やストレスなどによって精神状態のバランスが崩れたことにより、これまで気にならなかった音がストレスになるなど感覚過敏のような状態になることがあります。
また元々感覚過敏のある方が、精神的なストレスによってより強く感じるということもあります。
睡眠時間が短くなって眠れない日が続いたり、疲労が蓄積することによって、感覚過敏に影響が出ることがあります。睡眠不足や疲れているときにはそれまであまり気にならなかった感覚が不快に感じられるケースもあります。
そのため普段より感覚が過敏になったと感じたときは、睡眠時間の確保や仕事のペースの調整などを行うことが大事です。
感覚過敏の原因というよりは、その症状が定常的にあることを指す言葉で「HSP」があります。
HSPとはハイリー・センシティブ・パーソン(Highly Sensitive Person)といって、生まれつき刺激に敏感な気質のある方のことです。小さな音にも気づきやすい、光を眩しく感じるなど感覚過敏があることが多いです。また感覚過敏だけでなく、物事を深く考える、共感能力が高いなどの特徴もあります。
感覚過敏によって生活していく中で不快感や頭痛などに悩まされている場合は、症状を和らげるためにどういった対処をするといいのかを紹介していきます。
感覚過敏自体を治療するというよりも、その原因に対して可能な治療法を試していくことになります。
感覚過敏かもしれないと感じても、その過敏性が脳機能か、何らかの疾患からきているかの判断は個人では難しく、何科を受診すればいいのか迷うことがあると思います。
基本的には主に感覚過敏が現れている器官を専門に扱う病院に行くといいでしょう。
視覚過敏がある場合は眼科、聴覚過敏や嗅覚過敏がある場合は耳鼻科で検査をすることで感覚過敏の原因や対処法・治療法がわかることがあります。
また、それでも原因が特定できず診断が出ないようであれば、心療内科や精神科などを受診してみるのも良いでしょう。
感覚過敏の原因が特定できない場合や、気分が落ち込むことや強い不安を感じるなどの症状が現れている場合は心療内科や精神科、メンタルクリニックの受診も検討してみてもいいでしょう。
感覚過敏の原因が精神的なストレスなどからきている場合は、その原因に合った治療法を行っていくことで感覚過敏の症状も治まることがあります。
感覚過敏のある方が大人の場合は、職場において困難が生じることがあります。ここではよくある困りごととその解消法の例を紹介します。
いずれも職場の方に感覚過敏があることを伝えて、対策を行っていいか相談をしてから実行するようにしましょう。
近くの席の方の香水や汗の匂い、席でご飯を食べる場合は料理の匂いに気分が悪くなる、食品売り場や化粧品売り場など就業場所自体が匂いが強いと気分が悪くなるなどがあります。
嗅覚をふさぐことはなかなかできないため、対処法としては席を離してもらうことや、昼休みは外に出るなど匂いのもとと距離を取ることが大事になります。
職場自体の匂いが気になるときは、マスクをする、そのマスクに自分の好きな香りを付けておくなどの対処法があります。
周りの人の会話が耳に入ってきてしまい集中できないことや、電話の音などに過剰に反応してストレスとなるなどがあります。
イヤーマフやノイズキャンセリングイヤホンという周囲の音を遮断する器具を耳につける対策をしている方が多くいます。
職場によっては付けることが難しいことがあるので、そういったときは音の出る場所から離れるなどして耳を休ませる時間を取ることが大事です。
また、会議室が空いているときにはその部屋を使わせてもらう、または在宅勤務を取り入れるなどの配慮を得ながら働いている人もいます。
オフィスや作業場所の照明の明るさによっては眩しく感じられることや、パソコン画面を見続けることで頭痛やめまいを起こすことや、強い疲労を感じることがあります。
遮光レンズのある薄いサングラスをかけることや、パソコンの画面にブルーライトをカットするシートやフィルムを付ける、ブルーライトカットメガネをかけるなど、目から入る刺激を減らす対策を取ることが大事です。
それでも疲労を感じることがあると思いますので、目薬を差す、休み時間は目をつむって過ごすなど目の疲労を回復させるようにするといいでしょう。
会社の制服やマスクの素材に不快感があり着ることができない、人から触られることが苦手で物の受け渡しができない。特定の機械などの操作ができないなどがあります。
会社の制服にもよりますが、皮膚にあたるタグを取り外す、ワンサイズ大きい制服を着ることで皮膚に当たる刺激を少なくする。着心地のいい肌着を下に着ることで直接制服の素材が皮膚に触れないようにするなどがあります。
また人や機械と直接触らないように、物の受け渡しは直接ではなく一度机に置いてからにすることや、機会を触るときは手袋を付けるなどの対策があります。
同僚とランチに行く場合や飲み会など、複数の人と食事に行くときに特定の料理を食べることができずに参加することが負担となることがあります。
あらかじめ行く店を決めるようにすることや、飲み会などでは予約する際にどのような食材を使っているかを確認してから参加するなど事前に情報を収集しておくことが大事です。幹事の方にも先に苦手なものと食べられるものを伝えておくといいでしょう。
こういった対策は一例ですが、いずれにしても職場の方に協力してもらうためにも自分にどのような感覚過敏があるかを伝えておくようにしましょう。
感覚過敏は体調によっても過敏の度合いが変わってきます。
特に季節の変わり目や仕事の変化(異動や業務の変更など)があるタイミングは、心身に疲れをためやすく感覚過敏にも影響が出ることが考えられます。
日頃から体調を整える、仕事を整理しておくなどの対策を取っておくことで予防することもできます。
刺激に対して感覚が敏感なのが感覚過敏ですが、その逆に感覚が鈍いことを感覚鈍麻といいます。
例えばお湯に触れても熱さを感じにくかったり、切り傷がついても痛みを感じにくいということがあります。
こちらも日常生活や仕事に影響が出る場合は病院の受診を検討するといいでしょう。
感覚過敏にはたくさんの種類があり、その強弱も人によって違いがあります。他の人は「たいしたことない」と思うようなちょっとした刺激でも本人は苦しんでいるということが多くあります。
苦しさをそのままにしておくと、精神的なストレスとなるなど他にも影響が出てきます。そのため感覚過敏を感じている場合は一人で抱え込まずに、病院を受診することを検討してみるといいでしょう。原因や治療法・対処法が分かれば日常生活や職場で過ごしやすくなるかもしれません。
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監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。
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