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統合失調症とは?症状や原因・治療方法を解説

更新日:2023/11/18

統合失調症は精神疾患のひとつで、妄想・幻覚など存在しないものをあると感じたり、意欲が減退したり、感情表現がうまくできなくなったりする症状です。

 

統合失調症は約100人に1人がかかる病気と言われており、決してめずらしい病気ではありません。また近年は薬の発展や早期発見・早期治療の取り組みがされています。そのため、治療をしつつ、働く上での自己対処法や働きやすい環境を整えていくことで、自分らしい日常生活や働き方をされている方もいます。

 

そんな統合失調症のくわしい症状や特徴、原因や治療方法、また仕事をするうえでのポイントについて紹介します。

統合失調症とは?

統合失調症とは、妄想・幻覚などさまざまな症状が現れる精神疾患です。そんな統合失調症の詳しい症状や原因・特徴、治療や回復のプロセスなど、わかりやすくご紹介します。

統合失調症の特徴

統合失調症は、通常10代後半〜30代半ばの若年層に出現する病気ですが、段階的に症状が現れるため、中年期(40歳~64歳)で診断されることもあります。日本での統合失調症の患者数は約80万人で、約100人に1人がかかる病気です。

 

統合失調症は「前兆期」「急性期」「消耗期(休息期)」「回復期」「安定・慢性期(寛解期)」の経過をたどり、それぞれの期間の中で「陽性症状」と「陰性症状」が見られることがあるといわれています。

 

【統合失調症の経過】

  • 前兆期」…不安感や焦りの気持ちが強くなり、眠れない、物音などに敏感になるといったような症状が見られるようになる
  • 「急性期」…活発な妄想や幻覚(陽性症状)が出現する
  • 「消耗期(休息期)」…無気力でやる気がでない、引きこもるようになる(陰性症状)
  • 「回復期」…徐々に症状がおさまり、体調が落ち着くようになる
  • 「安定・慢性期(寛解期)」…安定した生活が送れるようになるが、陰性症状が残ることがある

「陽性症状」とは、妄想や幻覚などの症状で存在しないものがあるように感じられる症状のことです。「陰性症状」とは意欲が減退したり、感情表現がうまくできなくなったりする症状のことですが、くわしくは後述します。

 

症状も経過も人によってばらつきがあります。そのため、一概に「統合失調症」といっても、誰もが同じような症状を発症するわけではありません。

統合失調症の症状

統合失調症の基本的な症状は、主に5つあります。

  1. 妄想
  2. 幻覚
  3. 発話の統合不全(例:考えや気持ちがまとまらない など)
  4. 行動の著しい統合不全(例:大声を出すなど興奮が強い など)
  5. 陰性症状(すなわち感情の平板化、意欲欠如)

上記(1)~(4)が「陽性症状(発症する前にはなかった状態が表れる)」、(5)は「陰性症状(これまでにあった意欲や感情の表出が乏しくなる)」といわれています。

 

では、それぞれ各症状の詳細をみていきましょう

妄想

妄想とは「明らかに誤ったことであっても、その人の中で確信を持ってしまう考え」のことです。

 

明らかに事実と矛盾している考えをどの程度信じているかによって、それが「妄想」であるか「強固な考え」であるかを区別します。妄想にはいくつかの種類があります。例えば、自分に関係のない出来事を自己に関連付けて考える「関係妄想」や自分が他人から見られていると考える「注察妄想」なども、そのうちのひとつです。

幻覚

幻覚は、実際にはそこにはないにも関わらず、起きたり、見たり、聞いたりする体験のことを言います。自分の意思によってはコントロールできず、幻覚は鮮明で、現実と同じように見えてしまう特徴があります。なかでも統合失調症においては、「幻聴」が最も多いとされています。

 

例えば、知らない人の声で自分の悪口が言われていたり、「●●をしろ」と命令してくる幻聴もあります。一方で悪いことばかりをいう幻聴に限らず、励ましてくれたり、アドバイスをくれたり、ときには歌をうたう幻聴などもあり、幻聴も多種多様です。

発話の統合不全

対話中に全く別の話題にそれてしまったり、質問に対して関係のない応答をする症状があります。通常の思考は、何かを考えるときに、AからBへと関係することを連想していきますが、統合失調症の症状の場合、考えていることが次々と脈絡なく飛躍し、話のまとまりがなくなっていきます。

 

場合によっては思考だけでなく、発語すらも難しくなり、何を言っているのか、ほかの人が捉えられなくなることもあります。これは効果的なコミュニケーションをはっきり損なうほどの重いもので、例えば「疲れていたり、酔っ払って一時的にコミュニケーションが取れないもの」とは異なります。

行動の著しい統合不全

子どものような行動から、予測できない興奮に至るまで、さまざまな形で表れます。

 

周囲から見て、目的が理解できないような行動を取ることがあります。場にそぐわないような、同じ行動や同じ姿勢を繰り返したり、逆にぼーっとして一点を見つめたりと、日常生活の活動を遂行することさえ困難になる場合もあります。

 

ほかにも、指示に抵抗したり、突然硬直し不適切だったり不自然な姿勢を続けたり、発語や体動の反応がまったくなくなる、などもあります。

 

場にそぐわないタイミングでしかめっ面をしたり、オウム返しをするなどもあげられますが、これらは統合失調症だけでなく、他の精神疾患や医学的疾患でも起こり得ます。

陰性症状

脳の障害によって、それまでなかった行動が生じることを「陽性症状」とするならば、「陰性症状」は今までの能力が減じることと言えます。

 

陰性症状は、急性の陽性症状がおさまり安定した後に中心となる症状で、慢性期に見られる症状です。長期にわたり付き合い続けていく症状で、「情動表出の減少」と「意欲の欠如」の2つの点が目立つ症状です。

 

情動表出の減少

例えば、視線をあわせたり、発語の抑揚が低下したり、会話の中で感情を強調するような手や首、顔の表情筋の動きといったようなものです。それらが減少し、ずっと同じ表情でいたりぼーっとしているようになる方もいます。

 

意欲低下

自発的な目的に沿った行動が減少することです。長時間じっと座ったままであったり、仕事や社会活動への参加に興味を示さなかったりします。このほかにも喜びを感じる能力の低下や、過去に体験した喜びを思い出す力が低下したり、社会的な交流に対しての関心がなくなったり限られたりすることを言います。

統合失調症の原因

統合失調症の発症原因は多数の遺伝子が関与している因子のほか、環境の因子が重なって起こるという仮説があります。しかし、現在のところ確かなことはわかっていません。

統合失調症の治療方法

統合失調症の治療方法は大きく「薬物療法」と「心理社会学的療法」があります。

統合失調症の治療の第一選択は「薬物療法」です。「抗精神薬」と呼ばれるもので、精神症状を減らす報告がされていますが、一部症状が残る方も少なくはありません。また、妄想や幻覚は薬物療法によって改善しやすいですが、陰性症状は薬物療法では改善が見られにくいといわれています。

 

統合失調症の「心理社会学的療法」には、さまざまな種類があります。その一例をご紹介します。

 

生活技能訓練(SST:ソーシャルスキルトレーニング)

社会生活を円滑にしていくことを目標としたトレーニングです。具体的には、コミュニケーションを中心にロールプレイングなどを通して、対処方法を身につけていきます。

 

精神科作業療法(OT)

生活に関連した作業をおこない、課題を克服しながら自信を回復させ、日常生活の基本的な技術を身につけていきます。

 

デイケア

社会生活を促進するため、日中6時間程度で定期的に通所し、レクリエーション活動や心理教育(認知行動療法など)のプログラムに参加します。デイケアは、医療機関(病院・クリニック)、保健所、精神保健福祉センターなどでおこなわれています。

 

職業リハビリテーション

一般就労に入る前に、障害者職業センターや作業所(就労継続支援A型・B型)などを利用して、段階的な就労を目指していきます。

統合失調症と仕事について

統合失調症の方が仕事を続ける上で大切なこと

統合失調症の症状があることで「仕事を長く続けられるかな…」といった不安もあるかもしれません。しかし、実際には、統合失調症の症状がありながらも、自分らしく働いている方も多くいます。

 

統合失調症の症状は人によって異なります。また、仕事や働く環境によって生じる困難さも異なります。そのため、ご自身の統合失調症の症状について理解を深めること、そして自分が働きやすい環境とはなにかを理解することが大切になります。

統合失調症の方がよくある仕事の困りごとと対処法

統合失調症の方が仕事をするうえでの困難さ・その対処法について解説します。

 

仕事をするうえでの困難さを解決するためには「(自分でできる)自己対処法」と「(自分ひとりでは難しい場合)どんな配慮があると働きやすいか」の2つの視点をあわせて考えてみるといいでしょう。ここで事例をあげていきます。

 

【困りごと】

仕事中に体調が悪化しやすく、休みがちになってしまう

 

【自己対処法】

日々の体調やストレス度を記録することで、体調悪化しやすいサインを把握してみましょう。そして、体調悪化しやすいサインがみられたときの自己対処法をまとめると良いでしょう。

 

(例)新しい環境のたびに、人の発言がいつもより気になって眠れなくなり、体調が崩れやすい傾向がある。体調悪化しやすいサインがあるときは、主治医へ相談したり、睡眠をしっかりとったりする など

 

【配慮があると働きやすいこと】

体調悪化しやすいサインがきたときに、どんな配慮があると働きやすくなるか、職場の方々と相談すると良いでしょう。

 

(例)新しい環境のたびに人の発言がいつもより気になって眠れなくなり、体調が崩れやすい傾向がある。そのため、新しい環境になれるまでは時短勤務からスタートし少しずつ慣らしたり、日々職場と体調を共有しながら、必要に応じて、定期面談を設定する など

 

このように自己対処はしつつ、周囲の配慮や理解が得られることで、安定して働き続けることにつながります。ただし、仕事における悩みをひとりで解決することが難しい場合もあるかもしれません。その場合は、専門機関へ相談してみるのもいいでしょう。くわしくは次の章でご紹介します。

 

働くことをサポートしているLITALICOワークス(就労移行支援事業所)では、これまで統合失調症の方の就職をサポートしてきました。詳しくは以下の関連ページよりご参照ください。

統合失調症に関する相談先

「これってもしかして統合失調症?」「これからの生活や仕事どうなるのかな?」といったように、不安な気持ちがあるかもしれません。そのようなときは、ひとりで抱え込まず、まずはお近くのところでご相談できるといいでしょう。

 

ここでは「統合失調症かもしれない?」と思ったときや、統合失調症の症状によって働きづらさを感じているときに利用できる相談先をいくつかご紹介します。選択肢のひとつとして知っておくといいでしょう。

統合失調症に関する相談先

医療機関(精神科や精神神経科など)

統合失調症かまだわからないけど、似たような症状がある場合は、まずお近くの医療機関への相談をしてみましょう。精神科や精神神経科などに受診するといいでしょう。また、通院には自己負担が一定発生してきます。その自己負担を軽減するための「自立支援医療制度(精神通院医療)」を活用できるといいでしょう。その制度を利用するためには、申請が必要になります。くわしくはお住まいの自治体の障害福祉課などの窓口へお問い合わせください。

お住まいの自治体

「病院で受診するには、なかなか勇気がいる…」「気軽に相談したい」といったような方については、ケースワーカーや保健師などへ相談してみるのもひとつです。

  • 市区町村の障害福祉窓口
  • 保健所、保健センター
  • 精神保健福祉センター など

統合失調症による働きづらさに関する相談先

職場の人たち(上司や人事部、産業医など)

統合失調症によって働きづらさがある場合、まずは職場の上司や人事、産業医などへ相談できるといいでしょう。また、休職した場合、復職をサポートするための「リワーク支援」や「精神科デイケア」などもあります。

地域障害職業センター

地域障害者職業センターとは、障害のある方に対して専門的な職業リハビリテーションをおこなっている場所です。その中のひとつとして「ジョブコーチ支援」というものがあります。ジョブコーチ支援とは、統合失調症の方が長く働き続けられるよう、企業との橋渡しをおこないます。それだけではなく、就職に向けたサポートもあります。

ハローワーク

ハローワークは「一般窓口」だけではなく、障害のある方のための「障害者相談窓口」もあります。障害のある方の就職・転職活動に対するサポート(例:求人探しや履歴書添削など)などがあります。これから就職活動を検討しているときは相談してもいいでしょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、一般企業の就職に向けたサポートがうけられる、通所型の障害福祉サービス(※)です。自己理解を深めるプログラムや職場への体験実習(インターンシップ)などを通じて、働き続けるために必要な自己対処法を身につけたり、職場に求める配慮を整理したりしていきます。

 

※「障害福祉サービス」…障害のある方の支援などについて定めた法律である、「障害者総合支援法」に基づいて提供されるサービスのことです

【無料】就労移行支援事業所とは?詳しく分かる資料をダウンロード

LITALICOワークスは「就労移行支援事業所」を運営しています。統合失調症の方が仕事をするうえでの困難さ・その対処法を考えるためのプログラムや企業実習(インターン)など実施し「自分らしく働く」ことをサポートしています。各地で見学会や体験会を実施していますので、働くことにお悩みがある場合、ぜひお気軽にご相談ください。

 

【無料】働くことのお悩みをLITALICOワークスへ相談してみる

統合失調症のまとめ

統合失調症は約100人に1人がかかる病気と言われており、決してめずらしい病気ではありません。統合失調症は抗精神薬の発展により早期発見・早期治療をすることで、寛解する(症状が落ち着く)場合も増えてきている精神疾患でもあります。統合失調症の症状が安定すると、服薬を継続し症状と上手に付き合いながら、自立した生活を送り、自分で生計を立てられている方も多くいます。

 

そのため、統合失調症の症状のようなものがみられたら、医療機関で十分な治療をおこなったり、お住まいの自治体へ統合失調症に関する相談をしたりするといいでしょう。

 

そして「自分らしく働きたい」「就職活動に不安」などのお悩みがあれば、ぜひLITALICOワークスへご相談ください。

更新日:2023/11/18 公開日:2022/12/13
  • 監修者

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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