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お役立ち仕事コラム

拒食症(神経性やせ症)とは?原因や症状、治療方法や相談先を解説します

更新日:2023/11/18

「最近、食べることに対してとても罪悪感がある」「体重が少しでも増えることに恐怖を感じる」ということはありませんか。もしかすると拒食症(神経性やせ症)かもしれません。

 

「拒食症(神経性やせ症)かもしれないけど自分が当てはまるのかわからない」「生活に支障が出ているけど誰に相談したらよいのかわからない」など不安な気持ちを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

そのような不安が少しでも解消できるよう、今回は、拒食症(神経性やせ症)とは何か(原因や症状、診断基準など)についてお伝えし、治療方法や相談先も紹介していきます。

拒食症(神経性やせ症)とは?

拒食症の正式名称は「神経性やせ症」といい、食への行動に異常が生じる摂食障害の一つです。痩せていることへのこだわりと肥満への恐怖感が「極端に」強いため、食事量を制限することで体重が著しく低下し、日常生活にも支障が出てしまう病気です。

拒食症(神経性やせ症)とダイエットの違い

やせるために食事の量を減らしたり、運動したりするのは通常のダイエットでもみられますが、ダイエットと拒食症(神経性やせ症)は医学的に全く違います。

 

「体重を減らすということが意識の大部分を占めている(食べてしまったという罪悪感で頭がいっぱいでほかのことが手につかないなど)」「食事制限をやめようと思ってもやめられない」といった場合は拒食症(神経性やせ症)の可能性が高いといえます。

拒食症(神経性やせ症)の特徴とは

拒食症(神経性やせ症)の特徴として次のような行動がみられることがあります。

  • 1日に何回も体重計に乗り、100g増えただけで絶望する
  • 毎食細かくカロリー計算をする
  • 食事のメニューにこだわる…太りやすい食品(揚げ物・炭水化物・甘いものなど)を極端に避け、低カロリーの食品(野菜・こんにゃく・海藻・きのこなど)ばかり食べる
  • 強迫的に運動する(カロリー消費に必死であるため、運動をしないことが不安で苦しくても運動し続ける)

また、拒食症(神経性やせ症)は過食・排出の有無を基準に2つのタイプに分かれます。

  • 摂食制限型
    極端に食事の量や回数を制限します。過度な運動をすることで食べたものを消費しようとし、過食や嘔吐、下剤の大量使用による排出はありません。

  • 過食・排出型
    極端に食事の量や回数を制限します。その反動で過食に走りますが、その後嘔吐や、下剤の大量使用により排出することで食べたことをなかったことにしようとします。

また、これらの行動は決して好きでやっているだけではなく、「やめたくてもやめられない」という難しさがあります。

拒食症(神経性やせ症)の原因について

拒食症(神経性やせ症)の原因は一つではありません。以下のようなさまざまな要因が複雑に絡み合っていると考えられています。

  • 社会風潮:痩せていることを良しとする風潮
  • 過去の経験による影響:親からの虐待によって自己肯定感が下がったり、逆に期待が高いことで完璧主義になったりする など
  • ストレス:人間関係、過度なノルマ、残業が多い、環境変化(転職・部署異動など)
  • 性格傾向:自己肯定感が低い、完璧主義など

これらの要因があり、引き金となる出来事(ダイエット、失敗経験、体形をからかわれる)が重なって拒食症(神経性やせ症)を発症すると言われています。(必ずしも要因と引き金が揃っているわけではありません)

 

例えば、努力家で周りから「いい子」と言われていた人が、人間関係や環境変化により「努力が報われる」「いい子にしていれば好かれる」という状況が通用しなくなったとき、ダイエットをして体重を減るという「努力が報われた」経験をしたことで、一時的な達成感や充実感が得られ、さらに極端な食事制限や偏った食事を追求する悪循環に陥ることがあります。

拒食症(神経性やせ症)を維持している要因

最近は拒食症(神経性やせ症)を「発症」する要因だけでなく、「維持」している要因も注目されています。

 

例えば、痩せていることや栄養不足であること自体が脳の働きに影響してこだわりを強くし、柔軟な考え方をすることを難しくしていることがわかってきました。また、食事制限が空腹感を強め、「過食・排出型」に見られる過食が起きやすくなり、体重増加を恐れて嘔吐やまた食事制限をし、また過食する…という悪循環が続いていきます。

拒食症(神経性やせ症)の症状について

拒食症(神経性やせ症)の症状として次のような症状が出ることがあります。以下のような症状が続く場合は、医療機関を受診してみましょう。

 

ただし、拒食症(神経性やせ症)と診断された人が必ずしもあてはまるわけではありませんので、ご注意ください。

身体症状

  • 貧血
  • 便秘(低栄養により消化吸収機能が落ち、消化管の動きも悪くなるため)
  • 月経が止まる
  • 血圧・心拍数・骨密度・体温・筋力の低下
  • 皮膚の乾燥
  • 髪の毛が抜ける
  • 体毛が濃くなる
  • 下肢のむくみ

心理的症状

  • 集中力・判断力の低下
  • こだわりが強くなる
  • 睡眠障害
  • イライラしやすい
  • 抑うつ状態、不安
  • 人との交流を避ける
  • アルコールや薬物の乱用
  • 自傷行為

拒食症(神経性やせ症)は心身共に深刻な影響を及ぼします。これらの症状を放っておくと、最悪の場合、死に至ることもあります。

どこからが拒食症(神経性やせ症)か|診断基準について

「ここから拒食症(神経性やせ症)」という明確な判断基準はありません。専門医がさまざまな観点から診察し、判断しています。ここでは目安となる体重についてお伝えします。

BMIが18.5以下

WHO(世界保健機関)の判定基準では、BMI(体格指数)を用いており、痩せすぎの目安については下記のような基準を設けています。

  • 軽 度:17~18.5以下
  • 中等度:16~16.9以下
  • 重 度:15~15.9以下
  • 最重度:15未満

BMIは次のような式で出すことができます。

BMI=体重(kg)÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

 

(例)身長158cm体重45kgの場合:45÷1.58÷1.58≒18…軽度のやせ

 

これらの基準はあくまで目安です。痩せすぎの基準に達していない場合であっても前述した特徴や症状が見られたり、健康に支障が出ている場合は早めに受診してください。

拒食症(神経性やせ症)の治療方法について

拒食症(神経性やせ症)は回復することが可能な病気です。治療には心身両面からの働きかけが重要です。著しい低体重の場合や精神的に不安定な場合は入院治療が必要な場合もあります。

 

ここでは、治療の柱となる栄養療法と心理療法についてお伝えします。

栄養療法

身体面のアプローチとしては、栄養状態を改善して健康的な体重に戻すことが大切です。栄養療法をおこなおうとすると「食べたくない」「食べるのが怖い」「太りたくない」などの気持ちが強くなることがあります。これは病気の症状による気持ちであり、病気の勢いが強いときには気持ちのコントロールが難しくなりやすいものです。しかし、治療が進んで体重が増えると、このような気持ちは徐々に薄らいでいきます。

 

治療方法は以下の通りです。

  • 外来での治療の場合
    1週間で0.5kg程度の体重増加を目安に、管理栄養士が献立を作り、食事量や内容をアドバイスするといった方法があります。

  • 入院での治療の場合
    再栄養に伴う電解質バランスの異常などをこまめに補正することや、口から食べる方法以外の栄養摂取の方法があります。外来より治療の幅が広がるため、早い回復を見込むことができます。

心理療法

栄養療法で一時的に体重を増やすことができても「やせていることへの極端なこだわりや恐怖」が残ったままでは、また拒食症に戻ってしまいます。そのため、心理面のアプローチとしては、「体重が増えることにどう向き合っていくか」気持ちの面から治療していくことが大切です。

 

例えば「やせていないと存在価値がない」という極端な捉え方を和らげていくため、医師やカウンセラーとの対話を通じて認知の偏りを修正する「認知行動療法」という方法があります。

 

なお、心理療法は、上述の栄養療法をおこない、体重がある程度回復してからおこなった場合に効果があると言われています。まずは体重を増やすことで、極端なこだわりや恐怖は和らいでくることも多いです。

治療は早めにおこない、あせらずにゆっくりと

拒食症(神経性やせ症)の治療は、家族など周囲の人の理解や協力があると治療を進めやすくなるため、本人以外にも説明や支援がおこなわれることがあります。拒食症(神経性やせ症)が治るまでの期間は人それぞれです。1年~数年で治る方もいれば、十数年かかる方もいます。

 

早期治療することで症状改善も早く、再発も少ない傾向があります。もし拒食症(神経性やせ症)かな?と思ったら、早めに医療機関を受診することをおすすめします。しかし、長期化した場合にも改善する方はいますので、あきらめず、医療機関に相談していきましょう。

拒食症(神経性やせ症)に関する相談先

拒食症(神経性やせ症)の場合、食べ物の制限だけでなく、不安や強迫観念など気持ちの面の影響が大きいため、精神科や心療内科で診てもらうことをおすすめします。

 

事前にホームページや電話で、拒食症の治療を行っているか確認してから受診すると、よりご自身の状態に合った診察がしやすくなるでしょう。

 

まだ拒食症(神経性やせ症)かどうかはっきりしていない場合は、精神科や心療内科に限らず、ご自身の信頼できる、かかりつけ医に相談してみるのもよいかもしれません。

 

女性の場合、月経が止まっていたら婦人科を受診することで拒食症の症状に気がつくこともあります。一般的には標準体重の85%〜90%になると月経は回復するとされています。

 

標準体重に回復したのに月経がない場合、婦人科での治療が必要なこともありますが、低体重時の拒食症(神経性やせ症)治療に関しては、月経を回復させるための内服よりも前述したような栄養療法・心理療法を取り入れるのがいいでしょう。

 

受診の目安については下記のフローチャートも参考にしてみてください。

受診にあたって準備しておくとよいこと

初めて受診される際は、何を話せばよいか不安な方もいらっしゃるのではないでしょうか。

以下の点をあらかじめ整理しておくと、安心して受診できるかと思います。

  • いままでの経過:体重の変化・身体症状や心理的症状の有無(あれば)受診した病院や治療など
  • 体型に対する価値観や治療することでなりたい自分の姿
  • 治療法の希望
  • 質問したいこと など

拒食症(神経性やせ症)により困ったときに相談できる場所

「拒食症(神経性やせ症)かも?」と思ったら、次のような機関に相談することができます。

 

産業医・カウンセラー

会社員の方は、職場の産業医やカウンセラーへの相談が身近にできる方法の一つです。産業医とは、社員の健康管理のため、専門的な立場から指導や助言をおこなう医師のことです。従業員が50名以上いる職場の場合、産業医の導入が法律で定められています。

 

拒食症(神経性やせ症)の自覚がないときや、どの程度段階か自分では判断しにくいこともあるので、まずは産業医やカウンセラーに相談してから必要な機関につないでもらうのもいいかもしれません。治療にあたって休職が必要な場合も相談しやすいというメリットもあります。

精神保健福祉センター

地域住民の精神保健活動(心の病気に関する困りごとの相談に対するアドバイス、医療機関や支援機関についての情報提供、精神科デイケアなどのプログラム)をおこなう施設です。都道府県・政令指定都市に一つ以上設置されています。

 

拒食症(神経性やせ症)の症状を、どこの病院で診てもらったらいいかわからないときには、お住まいの地域の精神保健福祉センターや保健所などで受診先相談に応じている場合があります。

 

摂食障害支援拠点病院

摂食障害に関する支援(正しい知識の普及啓発、摂食障害の相談・治療・支援、地域の医療連携)を専門におこなう施設です。都道府県が主体となり、現在は下記5県に設置されています。

  • 宮城県
  • 千葉県
  • 石川県
  • 静岡県
  • 福岡県

摂食障害全国支援センター「相談ほっとライン」

拠点病院がない県にお住まいの方にも、現在の状況や適切な医療機関への受診を電話で相談できる窓口です。(受診先の相談は地域の状況をより把握している「精神保健福祉センター」の方がスムーズな場合があります)

 

摂食障害当事者だけでなく、家族や医療福祉専門職の方の相談にも対応しています。

拒食症(神経性やせ症)についてまとめ

拒食症(神経性やせ症)は痩せていることへのこだわりが極端に強く、食事を制限することで体重が低下する病気です。

 

原因は人それぞれで、複数のさまざまな要因が絡み合っています。

 

初めのうちは痩せていることで達成感や満足感など得られるものもあるかもしれませんが、拒食症(神経性やせ症)により心身共に日常生活に支障を来たす症状があらわれ、最悪の場合、命の危険もあります。ですが、拒食症(神経性やせ症)は治すことが可能な病気です。

 

少しでも「拒食症(神経性やせ症)かも?」と思ったら、今回ご紹介した機関を参考に早めに相談してみてください。

拒食症(神経性やせ症)のある方の就職サポート

拒食症(神経性やせ症)などの摂食障害によって、働くことに困りごとやお悩みを抱えてはいませんか。

 

そのようなときに活用できるサービスとして「就労移行支援事業所」があります。就労移行支援事業所とは障害のある方の就職をサポートする福祉機関の一つです。

 

LITALICOワークスでは各地で就労移行支援事業所を展開しています。体調安定やストレスコントロールなどのプログラムや職場への体験実習(インターンシップ)などを通じて、今まで11,000名以上の就職をサポートしてきました。

 

ご自身の特性やそれによって生じる困難さを理解し、自分に合った働き方を見つけたいなという方は、ぜひ一度LITALICOワークスにご相談ください。

更新日:2023/11/18 公開日:2023/01/19
  • 監修者

    滋賀医科大学精神医学講座 助教

    増田 史

    医療法人杏嶺会 上林記念病院 こども発達センターあおむし
    著書に『10代から知っておきたいメンタルケア しんどい時の自分の守り方』(2021年8月 ナツメ社)
    https://www.natsume.co.jp/books/15323

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