家族や友人、パートナーなど、身近な方が統合失調症になり、接し方に悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
「自分の接し方が悪くて、症状を悪化させてしまったらどうしよう」など気遣うことで、本人だけでなく、家族や同僚など周りの方が疲れてしまうことも少なくありません。
今回の記事では、統合失調症の特徴について解説をした後、家族・パートナー・友人・職場の方など、関係性別の接し方のポイントについて解説します。
統合失調症の方との関わり方に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
家族や友人、パートナーなど、身近な方が統合失調症になり、接し方に悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
「自分の接し方が悪くて、症状を悪化させてしまったらどうしよう」など気遣うことで、本人だけでなく、家族や同僚など周りの方が疲れてしまうことも少なくありません。
今回の記事では、統合失調症の特徴について解説をした後、家族・パートナー・友人・職場の方など、関係性別の接し方のポイントについて解説します。
統合失調症の方との関わり方に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
目次
統合失調症の方と接するために、まず病気について正しく理解する必要があります。ここでは、統合失調症の主な症状や治療法、回復までの流れについて解説をします。
統合失調症とは、幻覚、妄想、まとまりのない思考や行動、意欲の減退などの症状が表れる、精神疾患のひとつです。統合失調症は、100人に1人程度の割合で発症するともいわれており、決して珍しい病気ではありません。現在、発症のはっきりとした原因は分かっていません。ですが、ドーパミンなど脳の神経伝達物質のバランスが崩れて混乱することが関係しているのではないかともいわれています。
統合失調症には、本来あるはずのないものが表れる「陽性症状」と、これまでにあった意欲や感情の表出が乏しくなる「陰性症状」の症状があることが特徴です。それぞれの症状について詳しく説明します。
統合失調症の主な陽性症状には、幻覚や妄想などの症状があります。幻覚とは知覚の異常から起こるもので、特に多くみられるものとして「幻聴」があります。統合失調症になるとほかの方には聞こえない声が聞こえ、悪口や噂話を言われているという幻聴に苦しめられることもあります。
妄想も多く表れる症状のひとつであり、周りの人が違うといっても受け入れられないほど、実際にはありえないような出来事を事実だと思い込んでしまう状態をいいます。
ほかにも「考えをまとめることが困難となり会話が支離滅裂となる」などの思考がまとまらなくなるといった症状もあります。
統合失調症の陰性症状は、意欲低下や感情表現の減少などが主にみられます。
「仕事に興味を持てなくなる」「身の回りのことに気を遣えなくなる」「ずっと座ったままでいる」など、自発的な目的に沿った行動が減少します。
顔の感情表出が少なくなったり、視線が合わなくなったり、他人の感情や表情について関心を示さなくなったりします。
「統合失調症は治るのか?」と不安に感じる方もいるかもしれません。適切な治療を継続することで、症状をコントロールし回復させられる病気です。
統合失調症の回復までには、大まかに「急性期」「消耗期(休息期)」「回復期」という3つの過程があります。ただし、それぞれの時期の長さには個人差があり、必ずしも典型的な経過をたどるとは限りません。
幻覚や妄想など、周囲の方から見ても明らかに普段とは違う言動が強くみられる時期。十分に治療に専念できる環境を用意して、薬物療法をしっかりと継続することが重要です。
急性期に心身共に非常に多くのエネルギーを使うため、体力が消耗して活動が鈍化する時期。この時期では「大変疲れやすくなる」「意欲が低下している」などがみられます。回復期に向けて、十分な睡眠をとることが重要です。
症状が落ち着き、少しずつ社会とのつながりを持ちはじめることができる時期。急性期や消耗期のときの症状が残ることもあります。また、陽性症状は次第に和らぎますが、陰性症状が続くことがあります。症状と上手く付き合いながら、ゆっくりと回復を目指していきます。
統合失調症の治療には、医療機関や家族、地域の支援機関など多くの関係機関が連携し、さまざまな治療法などを導入しながら包括的な治療をおこないます。
主な治療法は薬物療法を始め、症状によっては電気けいれん療法が使われたり、社会で生活する力や対人スキルを養う心理社会的な治療などが用いられたりします。
統合失調症の症状や治療について、より詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
ここでは、統合失調症の方への接し方で大切となる、基本的なスタンスについてご紹介します。また、本人が病院に行きたがらない場合の接し方や伝え方について、実際の例を交えながら解説します。
例えば、ほかの方には聞こえない声に苦しんでいると訴えたり、「人から監視されている」など実際には考えにくい現象を恐れていたりする場合には、統合失調症の可能性があるかもしれません。
統合失調症は、早期治療をすることが早めの回復や症状悪化を防ぐことにつながります。そのため、少しでも可能性が疑われる場合、早めに精神科や心療内科を受診することが大切です。
本人に自覚がなかったり、病院に行くことを拒否したりする場合には「最近疲れているように見えて心配だから受診してみない?」といった本人に寄り添う言葉で、受診を促すといいでしょう。
一方で「統合失調症の症状だから、一回病院に行った方がいいよ」などとダイレクトに伝えると、場合によっては本人の抵抗感を高めてしまうこともあります。
本人の話していることが妄想や幻聴だと思っても、それをすぐに指摘や否定せずに「そのようなことがあったんだね」と受け止めることが大切です。
統合失調症は、実際にはあり得ないことでも、現実に起きているかのような恐怖に襲われるため、本人は切迫した状態になっていることもあります。そのような時には、こころを落ち着かせられるように、「あくまでも私たちは味方である」ということを伝えましょう。
【妄想や幻聴の対応例】
本人「誰かが家を攻めてこようとしている。今、上からやつの声が聞こえた」
家族「上から誰かの声が聞こえたの?それは怖いね」
本人「早くこの家から出ないと危険だよ!」
家族「私たちがついているから大丈夫」
注意点としては、妄想や幻聴によって行動する場合があります。例えば、相手から攻撃されると思いこみ、相手の方に物を投げてしまったり、「川に行け」という幻聴が聞こえ、川の方に行ってしまったりするなどです。そのような場合は、自分や他人を傷つけてしまう前に治療が必要なため、早急に病院などに相談しましょう。
統合失調症は、陽性症状と陰性症状など、時期によって症状に波があることも特徴のひとつです。
周囲の方も状態の変化に戸惑うことがありますが、しっかり休養と治療を継続することで、徐々に回復に向かっていくため、本人のペースを大事にしながら見守ることが大切です。
統合失調症は、症状悪化のサイン(前兆)がみられる場合もあります。状態が落ち着いている時に、事前にサインとなる症状を確認しておくようにしましょう。
症状悪化のサインとして以下のようなものがあります。なお、こうしたサインには個人差があります。自己判断はせず、気になる場合は専門家に相談することが大切です。
また、このようなサインがはっきりと表れる前にも、気分の落ち込みが続いたり、人からの見られ方を過剰に気になったりするなど、うつ病や不安障害のような傾向がみられる場合もあります。
必ずしも統合失調症の前触れとは言えないものの、気になる傾向が続く場合には、早めに専門家に相談してみるのがいいでしょう。
ここでは、統合失調症の家族やパートナーの方と一緒に住んでいる場合の、接し方のポイントについて解説します。
ケガや風邪を引いた時と同じように、統合失調症の場合も、「安心して休息できること」が大切です。普段の様子を知っている家族やパートナーの場合、元気がないと心配になって「たまには外出して気分転換した方がいいのでは」などと考えることがあるかもしれません。
しかし、心身のエネルギーが消耗している時には、普段好きなことや楽しいことをしても疲労感が増し、症状を悪化させてしまうことがあります。本人の中から意欲が湧いてくるまで、本人が安心できる環境づくりや関わり方に徹するようにしましょう。
統合失調症は、症状によっては睡眠の乱れが生じる場合もあるため、できる限り規則正しい生活が送れるように協力しましょう。具体的には毎日決まった時間に日光を浴びるよう促したり、眠る前に本人がリラックスできるようサポートしたりするなどです。
ただし、生活リズムを整えるよりも、まずはまとまった休養を取ることが最優先となる時期もあります。本人のペースを大切にしつつ、あまりにも生活リズムの乱れが気になる場合には、主治医などに相談しましょう。
統合失調症の治療で薬物療法がある場合には、薬の飲み忘れがないように、服薬管理をサポートすることが大切です。決まった時間に声かけをしたり、服薬カレンダーや服薬ケースなどを用いて、飲んだかどうか分かるように工夫したりすることもひとつの手でしょう。
どうしても薬を飲みたくないと訴える場合には「副作用がきつい」「病気ではないから飲む必要がないと考えている」などの理由がある可能性が考えられます。その際は無理に飲ませずに、家族から主治医に相談をしてみましょう。
家族やパートナーの方も、仕事や家事などがあるため、対応に疲れてしまうこともあるかもしれません。そのような時に一番してはいけないことは「無理をし続けること」です。自身の調子を崩してしまったり、場合によっては本人にきつく当たってしまうようなこともあるかもしれません。
余裕がないと感じる時には、物理的に離れてリフレッシュの時間を作ったり、以下の章で紹介する相談窓口や家族会などを活用してみるのもいいでしょう。
ここでは、身近な友人が統合失調症を発症した場合の接し方についてご紹介します。
統合失調症は、時として本人にしか分からない恐怖感に襲われる病気です。友人からすると、普段とは違う様子に戸惑うこともあるかもしれません。ですが、まずは本人の話を否定せず、受け止めることが大切です。
場合によっては、しんどそうに見えても理由を話したがらないこともあるかもしれません。そのような場合には、無理に聞きだしたり、原因を追求したりせずに「話したくなったらいつでも聞くから」というスタンスを伝えるといいでしょう。
統合失調症は症状に波があるため、すべてに対応していると、周囲の方が負担を感じてしまうことも少なくありません。大切な友人だとしても、「今は話を聞くのは難しいな」と感じる場合には、少し距離をとることも必要です。
対応ができる時とできない時を伝えたり、以下の章で紹介するような専門の相談窓口を共有し別の相談先を作ったりすることもひとつの方法です。
ここでは、職場の同僚や部下などに、統合失調症の方がいる場合の接し方について説明します。また、職場で取り入れられる合理的配慮の活用方法についてもご紹介します。
統合失調症の症状は一人ひとり異なります。そのため、症状が悪化した場合のサインや対処法、周囲の方ができることなどについて職場内で確認をしておくといいでしょう。
例えば、普段とは違う様子がみられたら「声をかける」「早退を促し、休養や受診をするように伝える」などの対応方法があります。
障害者手帳の有無に関係なく、障害のある誰もが働きやすい環境を整えるために、合理的配慮というものがあります。合理的配慮は一言でいうと「統合失調症の症状など、それぞれの困りごとに合わせて、企業側が過重な負担のかからない範囲で配慮を提供すること」をいいます。例えば「本人の体調に合わせて業務量や勤務時間の調整をする」などがあります。
障害者雇用で入社した場合、大抵は入社時に企業側と合理的配慮の内容についてすり合わせますが、その時の体調や周囲環境の変化などによって合理的配慮の内容の見直しが必要となる場合が出てきます。
定期的に合理的配慮の内容について確認をしたり、直接確認ができない場合には人事部などに相談をしてみたりするといいでしょう。
ここでは、統合失調症の方が身近にいる場合の相談窓口を紹介します。
本人の通院先とつながっている場合には、主治医に相談する方法があります。しかし、原則主治医には守秘義務があるため、できる限り本人の通院時に同席をしたり、本人の同意が取れたうえで相談をしたりするようにしましょう。
病院によっては、本人以外からの相談は保険診療の対象外となり、自費診療であれば家族による相談を受け付けているところもあります。家族相談を希望する場合または主治医に相談したいことがある場合には、事前に通院先に確認しましょう。
各自治体にある保健センターや精神保健福祉センターでは、統合失調症の方のご家族などが本人との接し方や対応について相談できます。
こころの専門家に無料で相談できるため、まずどこに相談したらいいか分からない場合には、活用してみることをおすすめします。
『働く人の「こころの耳相談」』という相談窓口では、電話やメール、SNSなどでも相談できることが特徴です。
メールの場合は24時間、電話やSNSの場合でも、曜日によっては22時まで(受付は21時半まで)相談できます。平日の昼間に働いており、相談の時間がなかなか取れないような方でも、気軽に活用できる相談窓口です。
家族会とは、統合失調症などの精神疾患がある方の家族が「同じ悩みを持つもの同士、支え合う会」です。ほかの方の体験談が聞けたり、本人との接し方や対応などについても相談できたりします。
精神障害の方の家族が結成した「公益社団法人 全国精神保健福祉会連合会(みんなねっと)」では、各都道府県の家族会について一覧で確認することができます。上記以外にも家族会は全国で活動をしています。お住まいの地域の家族会に連絡を取ってみてもいいでしょう。
統合失調症は、本人に病気の自覚がない場合も多くあります。そのため、周囲の方が本人とのコミュニケーションの仕方や接し方に悩むことも少なくありません。
症状や価値観、物事の捉え方などは一人ひとり違います。今回紹介した方法が必ずしも正解とは限りませんが、ひとつの例として参考にしてみてください。
また、本人の治療を優先し、周囲の方が我慢していることも多いかもしれません。しかし、専門家の力を借りることで負担が軽減され、結果として本人の治療を前進させることにもつながります。
今回ご紹介したような専門の支援機関や家族会などを活用しながら、無理のない形でサポートしていきましょう。
就労移行支援事業所「LITALICOワークス」では、精神疾患など障害のある方の、一般企業などへの就職活動をサポートしています。統合失調症の方も多く利用されており、医療機関や地域の支援機関と連携をしながら、働くために必要な知識やスキルを身につけていきます。また企業インターンの機会などを通して、本人が安心して働けるような職場を一緒に考えていきます。
まずはご家族やパートナーの方だけで相談に来ていただくことも可能です。
もし統合失調症の方の就職活動に悩んでいる場合には、ぜひお気軽にご相談ください。
監修者
産業医科大学 特命講師
佐々木規夫
【資格】医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/社会医学系指導医 / 労働衛生コンサルタント
【経歴】産業医科大学医学部卒業、大手企業の専属産業医および精神科病院での勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。
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