就労継続支援とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。一般企業などで働くことが困難な場合に、障害や体調にあわせて自分のペースで働く準備をしたり、就労訓練を行ったりすることができます。
今回の記事では、就労継続支援A型・B型の違いや、名称が似ていて混同しやすい「就労移行支援」「就労定着支援」との違いについて、分かりやすくご説明します。
就労継続支援とは、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの一つです。一般企業などで働くことが困難な場合に、障害や体調にあわせて自分のペースで働く準備をしたり、就労訓練を行ったりすることができます。
今回の記事では、就労継続支援A型・B型の違いや、名称が似ていて混同しやすい「就労移行支援」「就労定着支援」との違いについて、分かりやすくご説明します。
目次
障害総合支援法における障害福祉サービスの就労支援には「就労継続支援」「就労移行支援」「就労定着支援」があり、それぞれ目的や内容が異なります。
いずれも障害種別(身体障害・知的障害・精神障害・発達障害)を問わず、障害のある方が必要とするサービスを利用できるような仕組みになっています。
その中の「就労継続支援」とは、一般企業などで働くことが困難な方が、福祉的就労(※)の中で障害や体調にあわせて働く準備をしたり、働くための能力を向上したりするためのサポートを指します。
(※)福祉的就労:就労支援施設などで障害福祉サービスを受けながら働くことです。
就労継続支援には「就労継続支援A型」と「就労継続支援B型」の2種類があります。
就労継続支援A型とB型は「障害のある方が働く場所」という意味では同じになりますが、それぞれ目的や対象者、収入などの面で大きな違いがあります。
就労継続支援A型は、一般企業などで働くことが困難なものの、雇用契約に基づいて働くことができる方が、事業所と雇用契約を結んだうえで働くことができるサービスです。一方、就労継続支援B型は雇用契約を結ばずに、障害や体調にあわせて自分のペースで利用できます。
このように、一番大きな違いとしては「雇用契約を結ぶか結ばないか」という点になります。
具体的な対象者や収入の違いについても、以下で説明していきます。
就労継続支援A型とは、障害のある方が一般企業などでの就職が困難な場合に、一定の支援がある職場で雇用契約を結んだうえで働くことができる障害福祉サービスのことです。
働く時間は事業所によりさまざまなパターンがあります。基本的に4時間以上〜6時間未満の事業所が多くなっています。働く日数は「週3~5日程度」という事業所がほとんどで、週の出勤日数を相談しながら決められる事業所もあります。
就労継続支援A型の対象者は、以下のような方が挙げられます。
※これまでは65歳未満の方が対象となっていましたが、平成30年以降、年齢制限が変更されました。「65歳になる前の5年間に障害福祉サービスの支給決定を受けており、65歳になる前日の時点で就労継続支援A型の支給決定を受けていた方」の場合は、継続してサービスを利用できることになりました。
就労継続支援A型の仕事内容は各事業所によって異なりますが、一例としては以下のようなものが挙げられます。
雇用契約を結ぶ就労継続支援A型では、最低賃金以上の給料が保障されています。
厚生労働省の調査によると、ここ数年は上昇傾向が見られます。
参考までに、令和3年時点の一人当たりの月額平均給料は「81,645円」、時間給にすると「926円」となっています。ただし、働く日数・時間、事業所などによって月額給料や時間給が変わります。あくまでも目安としてみてください。
また、就労継続支援A型は雇用契約を結ぶため、一定の条件を満たす場合には雇用保険料や健康保険料などが差し引かれた分を手取りとして受け取ることになることも理解しておきましょう。
就労継続支援A型には、利用期間や利用期限の定めはなく、事業所との雇用関係が続く以上は働き続けることが可能です。しかし、雇用契約を結ぶときに契約期間の記載がある場合も考えられるため、事前に契約内容は確認をしておくようにしましょう。
就労継続支援B型とは、障害のある方が一般企業などでの就職、また雇用契約に基づく就労が困難である場合に、雇用契約を結ばずに働くことができる障害福祉サービスです。
就労継続支援B型では、福祉的就労の中で障害や体調にあわせて自分のペースで働きながら、就労に必要なスキルなどを習得することも可能です。
就労継続支援B型では、年齢制限がありません。障害のある方が対象で、具体的には次のような方が例として挙げられます。
なお、特別支援学校を卒業した後に就労継続支援B型を利用したい場合は、自治体により異なりますが「就労移行支援を利用してアセスメントをおこなうことが必須」など、対象となる条件が決められている場合もあります。
利用を検討している方は、まずお住まいの市区町村窓口に問い合わせてみるといいでしょう。
就労継続支援B型の作業内容は事業所によってさまざまですが、例を挙げると以下のようなものがあります。
就労継続支援B型では、事業所と雇用契約を結ばないため、賃金ではなく「工賃」として生産活動に対する対価が支払われます。また、工賃は最低賃金を保障しなければいけないという決まりはありません。
厚生労働省の調査によると令和3年度の平均月額工賃は「16,507円」、時間給にすると「233円」となります。ただし、働く日数・時間、事業所などによって月額工賃や時間給が変わります。あくまでも目安としてみてください。
各都道府県で工賃向上に向けて取り組みがされていることもあり、就労継続支援B型の平均工賃は全体的に上昇傾向(※)にあります。
※令和2年度のみ、新型コロナウイルスの影響により減少した可能性があります。
利用期間については、就労継続支援A型と同様に、とくに制限はありません。1日1時間や、週1日の利用が可能な事業所など、障害や体調にあわせて自分のペースで働くことができます。
この章では、就労継続支援を利用する際の手続きや利用料について解説します。
就労継続支援事業所を利用する場合には、以下の流れで手続きをしていきます。
それぞれの手続きのポイントや詳細については、以下をご参照ください。
まずは、お住まいの地域にどのような就労継続支援事業所があるのかを調べてみましょう。市区町村の障害福祉窓口やインターネットでの検索などで調べることができます。
そのうえで、気になる事業所を見つけた場合には、見学や体験実習の有無を確認してみましょう。見学や体験実習を通して、仕事内容や事業所の雰囲気、スタッフによるサポートの内容や方法などが自分に合っている事業所か事前に把握できます。
就労継続支援事業所によっては「定員に空きがない」などの理由によって利用ができない場合もあります。事前に就労継続支援事業所に確認しておくといいでしょう。
事業所選びのポイントは別の記事にて解説しているので、詳しくは以下のリンクからご覧ください。
就労継続支援A型は雇用契約を結ぶため、選考があります。一方で就労継続支援B型は雇用契約を結ばないため、選考はありません。
就労継続支援A型の利用を希望していて、気になる事業所を見つけたら、選考を受けます。一般的な就職活動と同じように、基本的には履歴書の提出や面接を実施することになります。選考の方法や流れは、各事業所によって異なるため、事前に確認をしておくといいでしょう。
選考した結果、採用が決まった場合は、次に自治体の窓口で利用申請をおこないます。
就労継続支援事業所A型・B型は障害福祉サービスであり、利用するには「受給者証(障害福祉サービス受給者証)」の発行が必要となります。お住まいの自治体の障害福祉窓口で、利用申請をおこないましょう。そのうえで、自治体による支給決定が決まったら、受給者証(障害福祉サービス受給者証)が交付されます。受給者証(障害福祉サービス受給者証)が交付され、就労継続支援の利用ができるようになります。
各自治体によって、多少前後する可能性はありますが、基本的な流れは以下の通りです。
就労継続支援事業所は、働く場所であると共に、障害福祉サービスとして位置づけられています。そのため、前年の世帯所得次第では障害福祉サービスの利用料が発生する場合もあります。
利用料は、世帯の収入状況(※)に応じて月額の上限が定められており、月にどれだけ利用しても上限を上回って支払うことはありません。
(※)世帯の範囲は、本人とその配偶者です。
「就労移行支援」と「就労定着支援」は、就労継続支援と名称が似ていることから、違いが分かりにくいという声をよく聞きますが、それぞれ目的が異なります。
就労継続支援は「福祉的就労の中で働く場所」であることに対して、就労移行支援は「一般企業などへの就職に向けて準備をする場所」です。また、就労定着支援は「就労継続支援、就労移行支援などを経て一般企業などに就職した方が長く働き続けるためのサポート」を指しています。
そのため、福祉的就労の中で働いて給料(もしくは工賃)が発生するのは「就労継続支援」のみとなります。また、就労継続支援は利用期限が定められていませんが、就労移行支援は原則として2年・就労定着支援は3年と利用期限が定められています。
就労継続支援で働くことに慣れたら、次のステップとして就労移行支援を利用したり一般企業などで働いたりすることも可能です。
参考として、各障害福祉サービスを利用して一般企業などに就職した率(移行率)は以下のようになっています。
同じ就労継続支援事業所であっても、一般就労への移行(一般企業などに就職すること)に向けた支援に重きを置いている事業所もあります。一方で、就労継続支援事業所を利用して収入を得ながら、安定して働き続けることに重きを置いている事業所もあります。そのため、事業所が重視している方針や、サポートの体制なども含めて確認しておくといいでしょう。
また、自分に合った選択をするためにも、自分が生涯を通してどのような働き方や生活をしていきたいか考えておくことも大切です。
LITALICOワークスは全国に120拠点以上展開しており、これまで13,000人以上の方の就職支援実績があります。
全国の事業所によるネットワークを活用して、多数の企業とも連携をしながら、障害のある方の一般就労に向けたサポートをおこなっています。
具体的には、ストレスコントロールや自己分析などのプログラムをはじめ、パソコンプログラム・企業インターン・面接練習など、一人ひとりにあわせた幅広いカリキュラムを用意しています。
また、就労移行支援だけではなく、各拠点で就労定着支援も実施しているため、一般企業などに就職した後も長く働き続けるために一貫したサポートが受けられます。
「働くことに悩んでいる」「体調が不安定で働けるか分からない」「一般企業で働くのにハードルを感じる」などお悩みのある方は、まずはLITALICOワークスまで相談してみませんか?
次の章では、実際にLITALICOワークスを利用した事例についてご紹介します。
LITALICOワークスでは、体調安定に向けて週3日・1日3時間で通うことからスタートしたAさん。
まずはストレスマネジメントなどのプログラムを受けながら、体調の変化を記録し、スタッフと一緒に日々の振り返りをおこないました。体調悪化を防ぐための対処法を試行錯誤することで、自分の体調変化の予兆に気づき、徐々に体調のコントロールができるようになっていきます。
就職後は、時短勤務から少しずつ始めて、現在はフルタイムで働き続けられるようになりました。
LITALICOワークスでは、自分に合う職場環境を探すために、自己理解を深めたり周囲のサポートを整理したりしていきました。実際に企業インターンにも参加し、さまざまな企業での職場実習を通して、自分に合った仕事や環境が分かるようになっていきます。
しかし、気になる企業があったものの「働いてもまた長続きしないのでは」と不安が出てきたため、スタッフに相談をしたBさん。スタッフから企業に交渉をしてもらい、選考の一環として企業インターンの機会を設けてもらいました。その結果、Bさんも企業も双方にとって働きやすいことが分かり、入社をすることに。
今では安定して長く働き続けることができています。
障害を開示して働いていたが、困ったときになかなか周囲の人へ相談できず、体調を崩して退職をしたCさん。その後、就職した後もサポートしてもらえる「就労定着支援」というサービスがあることを知り、LITALICOワークスの利用を開始します。
LITALICOワークスでは、コミュニケーションのプログラムやグループワークなどを通して、自分の苦手なことへの対処法を身につけていき一般企業へ就職をします。
就職後は就労定着支援を利用して、環境の変化(上司の異動など)や人間関係などで困ったことがあっても、LITALICOワークスに相談ができており、企業との間に入ってサポートしてくれるおかげで、安心して働き続けることができています。
LITALICOワークスでは、さまざまな悩みに応じて、その方にあったサポートを提供しています。このほかにも、LITALICOワークスを利用して就職した方の事例を以下に用意しているので、気になる方はぜひご覧ください。
「就労継続支援」「就労移行支援」「就労定着支援」は、障害のある方が「サポートを受けながら働きたい」と思ったときに活用できるサービスという点では同じですが、それぞれ目的や対象者が異なります。
自分がどのような働き方や生活を望んでいるのかを考えたうえで、自分にあったサポート内容を選択できるといいでしょう。
「就労継続支援と就労移行支援で迷っている」「一般企業で働きたいけど不安がある」などのお悩みがある方は、LITALICOワークスでも相談を受け付けているので、お気軽にお問い合わせください。
監修者
社会保険労務士 行政書士
高橋 悠
行政書士事務所にて約8年間、介護・障害福祉サービス事業所の立ち上げ・運営支援に携わった後、2016年10月に独立開業。顧問先のうち7割以上は介護・障害福祉サービス事業所介護・障害福祉サービス事業所であり、別会社「合同会社サニープレイス」にて小規模保育所B型及び企業主導型保育所を経営している。
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