ひきこもりとは、さまざまな原因で会社や学校などへの社会的な参加ができずに、6ヶ月以上家庭に引きこもっている状態のことで、厚生労働省の調査によると少なくとも100万人以上のひきこもりの方がいるとされています。
ひきこもりが長引くことで心身への影響や、社会復帰が困難になるなどの問題が生じることが多くあります。
この記事ではひきこもりの原因や自立・就労など社会復帰のために活用できる支援制度などを紹介します。
ひきこもりとは、さまざまな原因で会社や学校などへの社会的な参加ができずに、6ヶ月以上家庭に引きこもっている状態のことで、厚生労働省の調査によると少なくとも100万人以上のひきこもりの方がいるとされています。
ひきこもりが長引くことで心身への影響や、社会復帰が困難になるなどの問題が生じることが多くあります。
この記事ではひきこもりの原因や自立・就労など社会復帰のために活用できる支援制度などを紹介します。
目次
ひきこもりの方は厚生労働省の調査では、子どもから成人まで合わせて100万人以上いるとされています。
ひきこもり状態が長期化することで、学校や仕事などの社会生活の再開が困難になり、本人や家族が強い不安を感じるといった場合があります。
厚生労働省でも「ひきこもり支援推進事業」を推進し、ひきこもり地域支援センター設置運営やひきこもりサポート事業を通して、支援活動を続けています。
ひきこもりといっても、さまざまな理由が存在していて、本人家族共に納得してその状態を続けている場合もあります。
ここでは、ひきこもりの状態から社会復帰を考えているが、なかなか思うようにいかないという方向けにひきこもりへの支援や社会復帰した事例などを紹介します。
ひきこもりとは、さまざまな原因により会社や学校などへ行かず、家族以外の人との交流をほとんどせず、6ヶ月以上家庭に引きこもっている状態のことを指します。
ひきこもりといっても、ずっと家にいて全く外に出ない、ということではありません。
コンビニに行くなど積極的に他者と交流を取らない形での外出を伴う場合もあります。
ひきこもりといってもさまざまな事情があり、原因やその心理を一概に決めつけることはできません。
ここではよくいわれているひきこもりの原因や心理について紹介します。すべてのひきこもりの方に当てはまるわけではありませんが、参考としていただければと思います。
ひきこもりの原因は複雑に絡み合っていることが多く、一つに特定することはなかなかできません。
「いじめや対人関係の苦手さ」「家族関係の問題」「病気」「行動面や情緒面の特徴」などの複数の出来事が原因となり、学校や会社などの社会生活を回避するようになり、それが長期化することでひきこもり状態となると考えられています。
ひきこもりの原因となる病気には精神疾患も含まれていて、例えば、強迫性障害を含む不安障害、身体表現性障害、適応障害、パーソナリティ障害、統合失調症などがひきこもりの背景になりうるとされています。
また精神疾患がひきこもりの原因となることもありますが、逆にひきこもりにより心身に不調が生じたことでこれらの精神疾患が二次的に生じることもあります。
社会復帰を難しくさせる要因に上記のようなの精神疾患がある場合は、治療をおこなっていくことも大事です。
のちほど精神疾患のある方への支援機関なども紹介しますので、ご参考にしてください。
ひきこもり状態の時、当事者はどういった心理なのでしょうか。
ひきこもりの原因は複数あることや、そもそも個人個人で考え方の違いもあるので一概にはいえませんが、ここでは傾向という形で段階に分けて紹介します。
厚生労働省の調査ではひきこもりを「準備段階」「開始段階」「ひきこもり段階」「社会との再会段階」と4つの段階に分けているため、それに沿って記載していきます。
ひきこもりの準備段階はまだ社会活動をしている段階です。しかし軽い抑うつ気分が出るなど不調を感じており、社会生活を回避したいという思いと、続けなければという気持ちの葛藤があります。
できれば学校や仕事に行きたくないなと感じる状態で、この段階はおそらく多くの方が経験したことがあると思います。
準備段階で適切な支援などを受けることで、ひきこもり状態に至らないこともあります。
開始段階はひきこもり状態が始まってからしばらくの期間を指します。
引きこもっていることへの焦りや不安感を強く感じており、誰かに過度に頼ることと同時に怒りをあらわにすることもあるなど、不安定になることが多くあります。
怒りを表出することは子どもに多く見られる傾向ですが、成人している方でも内面に同様な感情を抱いていることが多いといわれています。
ひきこもり段階では、開始段階に見られた不安定さは一度落ち着くといわれています。
しかし社会生活への恐れは変わっていないか、より強くなっており、家族などが社会復帰を促すと抵抗感をおぼえることが多くあります。
この時期は、ひきこもりの背景にある強い葛藤などからの回復に取り組んでいる段階だといわれています。この期間を経て少しずつ社会復帰に向けた活動を進めていくことになります。
この段階はひきこもり状態と社会生活の中間的な段階といえます。
社会復帰への気持ちが高まっていると共に、ひきこもり期間の長さなどから不安感もまた高まっていて、実際に行動することへ負担感を抱いています。そのため何か失敗するとまたひきこもり状態へ戻ることも考えられます。
一人で進めることは難しい場合が多く、支援機関などを利用しながら少しずつ社会復帰を進めていくことが大事です。
大まかに段階とその心理状態を分けると以上のようになりますが、もちろんその方によって違いがあります。
後半に事例を紹介するFさんの場合は、大学生の頃にひきこもりとなりましたが、周りの方が卒業、就職、または結婚などしていくたびに自分が置いていかれている気持ちになり、社会復帰したくてもそこまでの道のりを考えて行動に移せなかったと話していました。
この章では大人のひきこもりの方が社会復帰をしていくための方法を紹介していきます。
社会復帰といってもさまざまな考え方がありますが、ここではひきこもり状態から抜け出して仕事を続けることを目的として話を進めていきます。
ひきこもりから社会復帰するためには本人や家族だけでなく、専門機関のサポートを受けることが大事です。
厚生労働省では平成21年度からひきこもり地域支援センターの設置など、ひきこもり支援推進事業をおこなっているので、まずは相談に行くといいでしょう。
はじめのうちは、ご本人は相談に行くことができずご家族のみで行くことも珍しくありませんまずは本人、家族関わらずどこかに相談をすることが社会復帰の第一歩となります。相談先には公的な機関やNPO団体などがあります。
各都道府県にひきこもりに特化した専門的な相談窓口として「ひきこもり地域支援センター」があります。
ひきこもり地域支援センターでは、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士などの資格を持った「ひきこもり支援コーディネーター」が本人やその家族へ相談支援をおこない、本人に合った支援へとつなげていきます。
また地域における関係機関とのネットワークの構築など、地域におけるひきこもり支援の拠点としての役割を担う施設です。
保健所や精神保健福祉センターでは訪問支援などが利用できます。また精神保健福祉センターでは相談だけでなく、個人精神療法や集団精神療法などの専門的な取り組みをおこなっていることもあります。
お住まいの自治体でひきこもりの支援をしている場合があります。例えば東京都ではひきこもりの相談窓口として「東京都ひきこもりサポートネット」があり、電話・メール・訪問などで相談をすることが可能です。
ひきこもり自体は病気ではありませんが、その背景にこころの病気といわれている精神疾患(発達障害も含む)がある場合があります。その場合は精神疾患に対しての治療をおこなっていくことも必要になります。
病院への受診を迷っている場合は、前の章で紹介したひきこもり地域支援センター、保健機関、自治体の担当窓口などへ相談をしてみるといいでしょう。本人の状態を伝えることでアドバイスをもらえることがあります。
本人や家族、または相談した機関の方から精神疾患の可能性があるとなった場合はまず受診するようにしましょう。
受診することによって、その方の症状に合わせた適切な治療を受けることができるようになります。
受診はメンタルクリニックと呼ばれる病院や、精神科、心療内科などで受けることができます。
診察を受けて精神疾患があると分かった場合は治療をおこなっていきます。治療は薬物療法・精神療法といった方法でおこなっていきます。
薬物療法では本人の症状に応じて抗うつ薬などが処方されます。抗うつ薬にもさまざまな種類があり、人によって合う合わないがあるため、主治医と話し合いながら進めていきます。
精神療法ではカウンセリングや認知行動療法、対人関係療などを通して、自身の考え方を整え、人間関係のストレスを減らしていきます。
ひきこもりから仕事をするために活用できる支援機関を紹介します。
精神疾患や精神障害のある場合に活用できる期間も併せて掲載します。
・地域若者サポートステーション
15歳~49歳までの方に対し、キャリアコンサルタントなどによる専門的な相談、コミュニケーション訓練、協力企業への就労体験などにより、就職をサポートする支援機関です。
年齢の要件を満たせば障害のあるなし関係なく利用することができます。
・ジョブカフェ
正式名称は「若年者のためのワンストップサービスセンター」といい、一か所で就職までをサポートする支援機関です。カウンセリングや職業訓練、職場体験などのサポートをおこなっています。
現在46都道府県に設置されており、ハローワークを併設している場合もあります。
・障害者就業・生活支援センター
障害のある方の仕事面、生活の面での相談やほかの関係機関との連絡調整などのサポートをおこなっている機関です。生活面では健康管理、金銭管理、生活設計などの相談をおこなっており、仕事面では就職に向けての訓練や職場定着のサポートもしています。
令和3年時点で、全国各地に336か所設置されています。
・公共職業安定所(ハローワーク)
ハローワークには障害者相談窓口があり、障害への専門的な知識がある担当者が相談や就職活動・就職した後のサポートなど幅広く実施しています。
一般求人と障害者求人を併用して就職活動をされている方もいるため、障害を開示して働くかどうか悩んでいる方も、まずは障害者相談窓口で相談してみてもいいかもしれません。
・地域障害者職業センター
障害のある方の就職や復職について職業リハビリテーションを提供している施設です。就職のため訓練や、講習などを受けることができるほか、リハビリテーション計画の作成、職業適性検査など働くための支援を受けることができます。
・就労移行支援事業所
一般企業に就職を目指す障害のある方が、事業所へ通いながら自己分析や就職のためのスキルを学ぶプログラムの受講や、企業インターンといって実際の職場で業務を体験することで自身に合った業務や職場環境を探すことができる支援機関です。
うつ病など精神疾患の診断を受けた場合は、障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)を取得できる可能性があります。障害者手帳を取得することで、税金の控除や各種割引などのサービスを受けることができます。
また、一般求人への応募と共に、障害者求人への応募も可能になります。障害者求人で働く場合は障害のあることを伝えたうえで、合理的配慮など働くうえでのサポートを受けやすくなります。
診断によっても取得できる障害者手帳の種類は違ってきます。発達障害と診断を受けた場合も精神障害者保険福祉手帳を申請できますが、知的障害を伴う場合は療育手帳※を申請できる場合があります。
詳細は各自治体の障害福祉課などの窓口へお問い合わせください。
※療育手帳は自治体によって「愛の手帳」など呼称が異なることがあります。
ひきこもりの方は、人間関係や仕事から離れている期間が長い方もいるため、スムーズに仕事をするために気をつけた方がいい点を紹介します。
ひきこもりから社会復帰しようとしている段階では、意欲が高まっていると共に、「自分にできるのだろうか」と不安が出てくるときでもあります。
そういうときに一人だけで活動していくと不安感が強くなることも考えられます。
そのため、前章までで挙げたような支援機関などサポートを利用しながら進めていくことが大切です。
ひきこもりの方を支援しているスタッフと相談をしながら進めていくことで、不安を軽減することや、アドバイスなどのサポートを受けることもできます。
「働きたい」という気持ちが強いと、ひきこもりからすぐにフルタイム勤務など負荷の高い仕事を選んでしまうこともあります。
しかし、ひきこもりが長期化し仕事へのブランクがある中で急に負荷をかけると体調に悪影響も出てくる可能性があります。
そういったときは「まずは人と話すことから」や「週3日から活動する」といった小さなステップに分けて、一つずつ慣らしていくことが大切です。
ひきこもりから仕事を始めるには、どういったステップを踏んでいけばいいのか分からないという場合も、先に挙げた支援機関などに相談をすることで、一緒に計画を考えてくれるなどのサポートを受けることができます。
ひきこもりから就職をすることができても、人間関係や業務のスキルが合わなくてすぐに辞めてしまうことになるのでは、という不安を抱く方もいらっしゃると思います。
長く働き続けるためには自分に合った仕事を見つけることが大事になります。しかし、どういった仕事が自分に合うのか分からないという方も多いのではないでしょうか。
自分に合う仕事を見つけるためには、就労移行支援事業所など就職のサポートをおこなうサービスを利用するという方法があります。
そういった場所では、スタッフとの面談、自己分析や職場体験などを通して自分に合った仕事を見つけていくことができます。
このようにひきこもりから仕事を続けるためには、一人でおこなうだけでなくさまざまな支援などを活用していくことが大事になります。
Fさんは大学生3年生のときに人間関係で悩みを抱え、次第に通学することが負担となってきました。好きだったサークルも部室のドアの前に立った時に、中から笑い声が聞こえて来た際に急に疎外感を感じ、段々と遠ざかっていきました。
授業も出ることができなくなり自宅でひきこもり状態になりました。周りが就職活動をおこなっているのに自分が何も行動できないことに罪悪感を感じ、同期が就職を決める頃には誰とも連絡を取らなくなりました。
単位は取得していたので卒業はしましたが、ひきこもり状態はその後も3年続きました。その間に姉から若者サポートステーションを勧められましたが、いまさら恥ずかしいという気持ちが強く、行くことができませんでした。
また大学の同期が出世や結婚をしたという報告を受けるのが苦痛で、連絡先をすべて消去するなど人間関係を断ちました。
ひきこもりの期間は家でインターネットを長時間続けていましたが、あるときうつ病のチェックをおこなっているWebサイトがあり、試してみたところ多くが当てはまったため精神科を受診しました。そこでうつ病と診断を受け、治療をおこなっていきました。Fさんは「それまでは罪悪感が強かったが、診断名がついたことで何をするか明確になって一歩進めた」と話しています。
うつ病の治療を進めて体調も安定してきたところで、ひきこもり状態を抜け出して就職したいと思うようになりました。しかしいきなり仕事をするのは負担が大きいとも感じていました。そのときに主治医から就労移行支援事業所の利用を勧められ、インターネットで調べてLITALICOワークスを利用することにしました。
LITALICOワークスではまずは週3日通うことを目標としました。ひきこもりの状態からすぐに週5日外で活動するのは難しいから、徐々に慣れていこうとスタッフと相談した結果でした。
活動に慣れた後は、就職経験がないことからパソコンの基本操作からビジネスマナーの基礎などを学び、企業インターンで実際の企業で職場体験をおこない働くイメージをつけていきました。
ひきこもりの時は家族以外と話す機会がなかったFさんですが、スタッフやほかの利用者と話をするうちに人と関わる仕事がしたいと思うようになりました。
現在は障害福祉の会社でひきこもりの経験のある方のサポートなどの業務をしています。
※プライバシーの観点から事実を編集・再構成しております
ひきこもりから社会復帰をするためには、さまざまな困難もあると思います。本人や家族だけで進めていくのではなく支援機関を利用していくことが大事です。
ひきこもりの原因は一つだけでなく複雑に絡み合っています。その中に精神疾患がある場合は、障害者雇用を検討することや支援機関を活用していくことで、自分に合った社会復帰へ向けて取り組んでいくことができます。
就労移行支援は一般企業に就職を希望する障害のある方へ、働くためのさまざまなサポートをおこなう福祉サービスです。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万人以上の方の就職をサポートしてきました。
障害のある方が自分らしく働くために、ストレスコントロール・PC訓練・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。
「働くことに悩んでいる」「体調が不安定で働けるか分からない」「一人で就職活動がうまくいかない」などお悩みのある方は、まずは就職支援のプロに相談してみませんか?
監修者
帝京科学大学 医療科学部 医療福祉学科 准教授
中里 哲也
EBP(Evidence Based Practice)に基づいたソーシャルワーク支援展開を目指し活動中。
専門は「医療福祉」「教育福祉」「地域福祉」「人材育成」など多岐に渡る。
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