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障害者雇用とは?一般の雇用との違いや制度・助成金を解説

更新日:2024/06/20

障害者雇用を促進したいものの「一般の雇用との違いや制度そのものがまだよく分かっていない」という企業の担当者は多いのではないでしょうか。

 

そこで、今回は障害者雇用の概要だけでなく、一般の雇用と異なる点や助成金について分かりやすく解説していきます。

 

また、障害者雇用を検討している企業の担当者へ向けて、一般の雇用との違いや制度・助成金を解説します。

障害者雇用とは?

障害者雇用とは、国が定める「障害者雇用促進法」に基づきおこなわれる雇用のことです。

 

障害のある方の場合、障害のない方と同じように就職活動をしたとしても、上手くいかなかったり、就職後に症状や特性による困難を感じることがあります。

 

もちろん、全員ではありませんが、上記のような状況に悩む方も少なくありません。

 

そういった悩みを解消するため、国では障害のある方の就職における選択肢のひとつとして、企業による障害者雇用の制度を整えています。

 

具体的には、事業主へ「障害のある方を一定以上の比率で雇用すること」「合理的配慮を提供すること」などを義務付けています。

障害者雇用促進法とは?

障害者雇用促進法の正式な名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」です。

 

身体障害者雇用促進法(1960年制定)がもとになり、名称を含め過去に何度も改正された後、今の内容に至りました。

 

障害者雇用促進法の目的は、障害のある方が安定的な職業に就けるようにすることです。

 

この目的を実現するため、障害者雇用促進法ではさまざまな内容を定めています。

障害者雇用と一般の雇用の違い

  • 募集時から障害のあることを開示して就職した
  • 募集時は障害のあることは非開示だったが、入社してから開示した
  • 就職後に障害のあることが分かり障害者手帳を取得した

 

これらはいずれも「障害者雇用」になります。

 

障害者雇用と一般の雇用の違いで分かりやすい例は「採用をするときに就職希望者から障害があることを申告されているか、いないか」です。

 

そもそも、日本では「就職するときに障害があることを企業へ必ず知らせなくてはいけない」という決まりはありません。

 

上記の場合は、障害者雇用制度を活用した就労ではなく一般の雇用となります。

 

しかし、その場合、障害の特性によっては、勤務時間(残業が多い)や職場の環境、業務内容などがつらいと感じてしまうこともあります。

 

その点、障害者雇用では、雇用主と被雇用者で話し合い、あらかじめ合理的配慮の得やすい環境を整えやすいという特徴があります。

障害者雇用の対象となる方は?

障害者雇用促進法の対象者

障害者雇用の基となる、障害者雇用促進法の対象となる方を見ていきましょう。

 

  • 身体障害者(身体障害者手帳を持っている)
  • 重度身体障害者(身体障害者手帳の1級・2級を持っている)
  • 知的障害者(療育手帳、もしくは知的障害者判定機関の判定書を持っている)
  • 重度知的障害者(療育手帳、もしくは知的障害者判定機関の判定書を持っている)
  • 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳を持ち、就労が可能な状態にある人)
  • その他(心身に上記の機能障害があるが、障害者手帳を持っていない)

 

※知的障害者判定機関は自治体によって異なりますが「心身障害者福祉センター」や「障害者職業センター」、「児童相談所」などが挙げられます。

 

「その他」の項目には、精神疾患や高次脳機能障害などがあるものの、障害者手帳を持っていない方などがあてはまります。(医師の診断書や意見書により判断されることが多い)

障害者雇用率制度の対象者

障害者雇用促進法では、対象事業主へ、雇用している人のうち一定の割合以上が障害のある方となるよう義務付けています。(法定雇用率)

 

このとき、雇用義務の対象となる方を「対象障害者」と呼びます。

 

そして、対象障害者にあてはまるのは下記の方です。

 

  • 身体障害者・重度身体障害者(身体障害者手帳を持っている)
  • 知的障害者(療育手帳、もしくは知的障害者判定機関の判定書を持っている)
  • 精神障害者(精神障害者保健福祉手帳を持ち、就労が可能な状態にある人)

 

注意点としては、障害があったとしても、障害者手帳を持たない場合は対象とならないことです。

障害者雇用率制度とは?

障害者雇用率制度とは、事業主(国、地方公共団体、民間企業など)は、障害のある方を、法定雇用率に相当する人数以上雇用しなければならないと定めた制度です。

 

法定雇用率とは、法律上満たすべき、労働者全体に対する障害のある方の割合をあらわしたものです。

現在の法定雇用率は?

現在の法定雇用率(※)は下記の通りです。(2021年3月1日から適用)

  • 民間企業:2.3%
  • 国・地方公共団体:2.6%
  • 都道府県等の教育委員会:2.5%

つまり、民間企業を例に挙げると、100人の労働者がいる場合、そのうちの2.3人(2.3%)は障害のある方を雇用する義務がある、ということになります。

 

このことから、民間企業の場合、『従業員の数が43.5人以上』の事業主は障害のある方を1人以上雇用しなければなりません。

 

ただし、人数の計算方法は障害の種類や程度によっても異なっています。

 

参考:厚生労働省「障害者法定雇用率制度について」

障害の種類や程度によって計算方法が変わる

基本的には、1人を「1」として計算しますが、場合によっては、1人を「2」や「0.5」「0」で計算することもあります。

 

具体的な例は下記の通りです。

 

  • 重度の身体障害がある方(障害者手帳1・2級):「2」
  • 重度の知的障害がある方(障害者手帳「A」区分等):「2」
  • 短時間労働者(1週間あたり所定労働時間20時間以上、30時間未満):「0.5」
  • 超短時間労働者(1週間あたり所定労働時間20時間未満):「0」

 

条件が2つあてはまる場合は、数字を掛けて計算します。

 

例えば、重度の身体障害のある方が短時間労働者である場合「2×0.5=1」となるため「1」で計算します。

 

ただし、精神障害者の場合、短時間労働の場合であっても下記ふたつの条件を満たす場合は「0.5」ではなく特例措置として「1」として計算します。

 

  • 新規雇い入れから3年以内、または精神障害者保健福祉手帳取得から3年以内
  • 2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保険福祉手帳を取得した場合

 

それでは、上記のルールをふまえたうえで、自分の会社にあてはめて計算してみましょう。

法定雇用率をあてはめて計算すると?

まずは、法定雇用率を満たしているかどうかを確かめてみましょう。

 

実雇用率の計算

 

障害のある方を雇用している割合を「実雇用率」と呼びます。

 

実雇用率を求めたいときは、下記の計算式になります。

 

  • 実雇用率=雇用している障害者数÷常用労働者数

 

障害者雇用率制度上の常用労働者数とは、1週間の所定労働時間が20時間以上あり、継続的(見込みを含めて1年以上)に雇用されている人のことです。

 

なお、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人は0.5人として計算されます。

 

雇用が必要な障害者数の計算

 

法定雇用率を満たすために、必要な雇用している障害数は下記の計算式で求められます。(端数切捨て)

  • 必要な雇用している障害者数=常用労働者数×法定雇用率

例えば、常用労働者数が1000人いる民間企業の場合「1000×2.3%=23」の計算です。

 

つまり、この企業は23人以上の対象障害者を雇う義務があります。

法定雇用率は変動する

法定雇用率は、日本で働いている労働者の数や失業者数と、対象障害者の人数をもとに基準値が決まっています。

 

具体的には、下記の計算式がもとになっています。

  • 法定雇用率=(対象障害者である常用労働者の数+失業している対象障害者の数)÷(常用労働者数+失業者数)

※短時間労働者は1人を0.5人として計算

※重度身体障害者、重度知的障害者は1人を2人として計算(短時間重度身体障害者、重度知的障害者は1人として計算)

 

ずっと一定ではなく、社会の変化によって法定雇用率は変動することがあります。

 

少なくとも5年に一度は見直しがされています。

障害者雇用納付金制度とは?

障害者雇用納付金制度は障害者雇用促進法に基づき、設けられている制度です。

障害者雇用納付金制度の目的

障害者を雇用する場合、施設設備の改善や職場環境の調整などにおいて、費用が発生することがあります。(例:手すりの設置や車いすの方が使いやすいお手洗いの設置など)

 

そのため、障害者の雇用義務を果たしている事業主と、そうでない事業主とでは、経済的負担に差が生まれてしまいます。

 

障害者雇用納付金制度の目的は、上記のような経済的負担のバランスをとることです。

障害者雇用納付金の金額

常用労働者数が100人を超えている事業主が、障害のある方の法定雇用率を未達成の場合、不足している人数×月額5万円の障害者雇用納付金を納める必要があります。

 

(常用労働者が100人以下の中小企業には納付金の支払い義務はありません)

 

法定雇用率未達成の事業主が納めた納付金は、法定雇用率を達成している企業へ支給する「障害者雇用調整金」や「報奨金」、その他の助成金として活用されます。

 

例えば、常用労働者が100人以上の事業主で、法定雇用率以上の対象障害者を雇用している場合「障害者雇用調整金」として、1人につき月額27,000円が支給されます。

 

【企業向け】障害者雇用制度について相談したい方はこちらをクリック

障害者雇用の助成金は?

障害者雇用と関係のある助成金には複数の種類があります。

 

この項目ではいくつかの助成金をピックアップして種類をご紹介します。

 

各助成金には対象となる労働者や支給条件などがあるため、詳しい内容は厚生労働省の公式サイトをご覧ください。

 

参考:厚生労働省「障害者を雇い入れた場合などの助成」

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

 

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)は、ハローワークや民間の職業紹介事業者からの紹介で対象労働者を雇い入れ、継続的に雇用する場合に支給されます。

 

この対象労働者のなかに、障害のある方も含まれています。

 

具体的な支給額や助成対象期間は下記の通りです。

 

※()内の数字は中小企業以外の企業に対する支給額や助成対象期間です。

 

障害者雇用の助成金

 

特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)

ハローワークや民間の職業紹介事業者からの紹介で、発達障害や難治性疾患のある方を雇用保険一般被保険者として雇い入れる事業主が対象となる助成金です。

 

支給額は短時間労働者に該当するかどうかや、企業規模によって異なります。

 

障害者雇用の助成金

 

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)は、ハローワークや民間の職業紹介事業者からの紹介により、就職が困難な障害のある方を一定期間雇い入れた場合に支給されます。

 

目的は、障害のある方の適性や業務遂行可能性を見極め、求職者と求人者の相互理解の促進などを通し、早期就職の実現や雇用機会を作り出すことです。

 

支給額は1人につき、下記の通りです。

 

  1. 対象労働者が精神障害者の場合、月額最大8万円を3ヶ月、月額最大4万円を3ヶ月(最大6ヶ月間)
  2. 1.以外の場合、月額最大4万円(最長3ヶ月間)

トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)

障害者短時間トライアルコースは、障害者トライアルコースと名前が似ていますが、こちらは継続雇用することを目的としています。

 

障害のある方を一定期間、試行的に雇用するもので、雇い入れ時の週の所定労働時間(10時間以上20時間未満)を、本人の体調や職場への適応状況を見つつ、同期間中に20時間以上にすることを目指します。

 

支給額は1人につき、月額最大4万円(最長12ヶ月)です。

障害者雇用納付金制度に基づく助成金

障害者雇用納付金制度に基づく助成金の種類としては「障害者作業施設設置等助成金」や「障害者介助等助成金」などが挙げられます。

 

具体的には、障害のある方を雇い入れるために、職場の環境整備や、必要な介助などの措置をとった場合、その費用の一部が助成金として支給される仕組みです。

 

また、障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、遠隔手話サービスや音声回線など、情報通信技術を使った事例でも支給対象となります。

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)

キャリアアップ助成金(障害者正社員化コース)は、下記いずれかに該当する措置を継続的におこなった場合に支給されます。

 

  • 有期雇用労働者を正規雇用労働者(多様な正社員を含む)または無期雇用労働者に転換すること
  • 無期雇用労働者を正規雇用労働者に転換すること

 

障害のある方の雇用を促進し、職場に定着して働けるようにすることを目的としています。

 

支給される額は、1人につき下記の通りです。

 

障害者雇用の助成金

 

キャリアアップ助成金に関しては、分かりやすいパンフレットも用意されています。

参考:都道府県労働局「キャリアアップ助成金のご案内」

障害者雇用のまとめ

障害者雇用を取り巻く環境は、法定雇用率の引き上げや合理的配慮の義務化など、ここ数年で大きく変化しています。

 

そのため、企業側も常に最新の情報を把握しておくことが大切と言えるでしょう。

就労移行支援事業所LITALICOワークス

LITALICOワークスは、障害のある方の就労を支援している「就労移行支援事業所」です。

当事者向けだけでなく、企業へ向けたサポートもしています。

  • 各企業にマッチした人材探し
  • 応募者の障害特性に関する説明
  • 就労者の特性に応じた合理的配慮のすり合わせ
  • 障害を理解するための勉強会の実施
  • 就労後の定期的なフォロー など

上記のように、企業のニーズをふまえたうえで、障害のある方が働きやすい職場を作るサポートをおこなっています。

 

企業からの障害者雇用に関する相談も受け付けております。

ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

【企業向け】障害者雇用の相談はこちら

参考文献・URL

更新日:2024/06/20 公開日:2022/06/01

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