職場や私生活でコミュニケーションがうまくいかないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
そういったときに活用できる方法の一つにSSTがあります。
SSTとはソーシャルスキルトレーニングの略で、社会で生活するうえで必要な技術という意味です。SSTではその技術を高めるための訓練のことです。
この記事では主に精神障害や発達障害のある方に向けて、SST(ソーシャルスキルトレーニング)
がどういうものか、方法や効果を紹介します。
職場や私生活でコミュニケーションがうまくいかないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか?
そういったときに活用できる方法の一つにSSTがあります。
SSTとはソーシャルスキルトレーニングの略で、社会で生活するうえで必要な技術という意味です。SSTではその技術を高めるための訓練のことです。
この記事では主に精神障害や発達障害のある方に向けて、SST(ソーシャルスキルトレーニング)
がどういうものか、方法や効果を紹介します。
目次
SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは、コミュニケーションなど社会生活で役立つスキルを向上させる訓練のことです。
ソーシャルスキルとは「社会で生活していくためのスキル」という意味があり、主に対人関係を指す場合が多いです。
社会で生活していくうえで人間関係は欠かすことのできないものです。そして環境によって適切な対人関係も変わってきます。例えば学校だと同級生、先輩、先生など接する人によって言葉遣いや態度の使い分けが必要になります。
職場になると同僚、上司、取引先で言葉遣いや接し方も変わってきますし、勤めている会社や取引先の会社の社風によっても対応は違ってくるなど、学生時代よりも複雑なソーシャルスキルが必要になってきます。そういった職場の複雑な対人関係に悩んでいる方も多くいらっしゃいます。
SST(ソーシャルスキルトレーニング)では、対人関係などを中心に社会で生活していくためのスキルを向上させる訓練をおこなっていきます。
認知行動療法という考え方のバランスを整える精神療法から発展したもので、一般社団法人SST普及協会のWebサイトには以下のような説明が載っています。
SST は 1940 年代の行動療法にその原型を求めることができ、その後、認知の要素を取り込みながら発展してきました。複数の理論を背景としてさまざまな技法を含んでいるところは、認知行動療法と重なるところが大きいと考えられます。SST は効果が実証された体系的な方法で、日本でもその効果が認められ、 1994 年 4 月に精神科を標榜している保険医療機関において入院加療者を対象として「入院生活技能訓練療法」が診療報酬化されました。
引用:一般社団法人SST普及協会
上記のように精神疾患や発達障害のある方で、対人関係に困難を感じている方にも効果が高いといわれています。
もちろん対人関係で困ることは誰でも起こりえることなので、SSTは精神疾患や発達障害のある方だけでなくさまざまな方に有用なものとなっています。
対人関係について具体的にどういった場面で困ることが多いでしょうか?ここでは例として大人が職場で困ることをいくつか挙げます。
などがあります。こういった困りごとに当てはまった方もいるのではないでしょうか?
SSTではこういう状況での対応方法などを学んでいきます。詳しくは後ほど紹介します。
SSTはどういった場所で受けることができるのでしょうか?実施場所や受ける方法、実際にどのような訓練をおこなうかを紹介します。
SSTは医療機関・福祉施設・就労支援事業所・職場・学校などで実施しています。
対人関係が中心となる場合が多いですが、実施場所や目的の違いによって服薬管理や金銭管理などを学ぶこともあります。
大人の仕事に関わるSSTは以下のような場所で受けることができます。
SSTは精神科デイケアや就労移行支援事業ではプログラムとして組み込まれていることが多く、利用登録などをして通うことで受講することができます。もちろんすべてのデイケアや事業所で実施しているわけではないので、事前に確認しておくといいでしょう。
また事業所などによって利用するための手続きなどに違いがありますので、そちらもあらかじめ確認しておくことが大事です。
SSTの主な内容はゲーム、ディスカッション、ロールプレイなどがあります。それぞれのやり方を紹介していきますが、いずれもSSTの講師が必要に応じて介入して、目的が逸れた場合の修正やフィードバックなどをおこなうことによって訓練の効果を高めていきます。
ゲーム
ゲームはルールが決まっており、その中で自分やほかの参加者の状況を見て適切な判断をしていくことや、周りとの共同で進めていくこともあり社会生活に必要なスキルを楽しみながら学ぶことができます。
ディスカッション
ディスカッションではテーマを決めて、参加者同士で意見を出していきます。人の話を聞いて、自分の考えを伝えるスキルの練習になります。ディスカッションによっては、あるテーマに対して賛成・反対で分かれるなど条件を設定することもあります。
ロールプレイ
ロールプレイでは状況を設定し参加者同士が特定の役割を演じることで、その状況での適切な受け答えなどの対応を学んでいきます。
具体的には次のように進めていきます。
例えば先ほど挙げた「頼まれると断れなくて仕事を多く抱えてしまう」という困りごとがある方の場合は参加者が「仕事を頼んでくる同僚」と「本当は断りたい本人」の役になり、実際に演じていきます。
その中で同僚が仕事を頼んできたときに「今取り組んでいる業務の納期が今週中なので、それ以降でないと難しいのですが」「上司に確認してから返事をしていいでしょうか?」など返事を実際におこない、周りからよかった点や改良点をもらったうえでもう一度おこなう。という流れで、職場で同じような状況になったときにスムーズに対応ができるように練習していきます。
SSTではそのほかにもワークシートや絵カードなどのツールを使ったものや、うつ病などの精神疾患のある方に向けて服薬管理方法、症状管理方法を学ぶ内容もあります。
SSTの効果としてこれまで困っていた場面での対応方法が学べることで、対人関係に自信が持てるようになったり、コミュニケーションが円滑になることでストレスが軽減されるなどの効果が期待できます。
例えば
などの効果があります。もう少し具体的に見ていきましょう。
仕事面での効果として、先ほど挙げたように「頼まれたら断れなくて仕事を抱える」という困りごとを解消することで対人関係や業務の負担を軽減する効果があります。
ほかにも上司に相談するための声のかけ方、タイミングなどを学ぶことで職場での負担を減らす効果があります。
ロールプレイやディスカッションを通して、相手の立場に立って考える力も身につきます。
相手の気持ちをくめるようになると、どういった声かけをしたらいいのかなどの見当がつくようになり、コミュニケーションを円滑に進めるための手助けとなります。
SST以外でも職場での対人関係などの負担を減らすための方法があります。そのいくつかを紹介していきます。
SSTも認知行動療法の一種ですが、ここではSST以外のものを紹介します。
認知行動療法とは人それぞれの認知(物事のとらえ方)のバランスを整えていく療法です。
認知は人によって異なっており、同じ出来事を経験しても認知によってネガティブに受け取ってしまうとストレスがたまり、それによって精神的に落ち込んでしまうことがあります。
認知行動療法ではコラム法や暴露療法などの手法によって、不安に対する耐性をつけるとともに、認知のバランスを整えてストレスを軽減していく効果があります。うつ病やパニック障害のある方に効果があるといわれています。
マインドフルネスとは東洋の「禅」をもとに作成され、「今この瞬間」に意識を向ける不安を軽減する手法です。マインドフルネスでは不安や悩みのほとんどは過去や未来の心配ごとからきているとしています。
マインドフルネスでは「今この瞬間」に集中することで不安を手放せるという考えのもと、マインドフルネス瞑想などの取り組みをおこなっていきます。うつ病や不安障害のある方に効果があるといわれています。
アンガーマネジメントとは、怒りの感情をコントロールするための方法の事です。怒りが思うようにコントロールできないと本人にとってもストレスとなり、また人や物にあたるなど日常生活や職場でも悪影響が出る可能性があります。
アンガーマネジメントでは怒りをなくす方法ではなく、怒りを知って適切に管理ができるようにすることを目指します。
怒りについて知る、自分の怒りを可視化して客観的に把握できるようにする、リラックス方法を学ぶなどの方法によって、怒りの感情を自分で管理できるようにしていきます。
職場の対人関係などで悩んでいる方は環境を変えることで、働きやすくなることもあります。ここでは主に障害のある方が仕事を探すために活用できる支援機関を紹介します。中にはSSTを受講できる機関もありますので参考にしてください。
障害のある方の仕事面、生活の面での相談やほかの関係機関との連絡調整などのサポートをおこなっている機関です。生活面では健康管理、金銭管理、生活設計などの相談をおこなっており、仕事面では就職に向けての訓練や職場定着のサポートもしています。
ハローワークには障害者相談窓口があり、障害への専門的な知識がある担当者が相談や就職活動・就職した後のサポートなど幅広く実施しています。
一般求人と障害者求人を併用して就職活動をされている方もいるため、障害を開示して働くかどうか悩んでいる方も、まずは障害者相談窓口で相談してみてもいいかもしれません。
障害のある方の就職や復職について職業リハビリテーションを提供している施設です。就職のため訓練や、講習などを受けることができるほか、リハビリテーション計画の作成、職業適性検査など働くための支援を受けることができます。
就労移行支援は一般企業に就職を希望する方々へ、働くためのさまざまなサポートをおこなう福祉サービスです。
LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万人以上の方の就職をサポートしてきました。
障害のある方が自分らしく働くために、ストレスコントロール・PC訓練・企業インターン・面接練習など一人ひとりに合わせたサポートを提供しています。
「働くことに悩んでいる」「体調が不安定で働けるか分からない」「一人で就職活動がうまくいかない」などお悩みのある方は、まずは無料の資料請求をしてみませんか?
SST(ソーシャルスキルトレーニング)は、対人関係などの社会生活で重要となるスキルを身につけることができる訓練です。
ソーシャルスキルを学ぶことで仕事やコミュニケーションの負担を減らすことができるため、精神障害や発達障害のある方で職場での対人関係などに悩んでいる方は受講を検討してみてもいいでしょう。
そのほかにも支援機関を活用していくと、仕事についての悩みを解消する手助けとなります。LITALICOワークスでは就労移行支援といって障害のある方の就職をサポートする事業所を運営しております。相談は随時受け付けていますので、気になった方はお気軽にお問い合わせください。
監修者
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員
井上 雅彦
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
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