Close
お役立ち仕事コラム

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)とは?種類や診断・接し方について解説

更新日:2024/06/29

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)とは周りの人と違う行動や反応をとってしまうことで、本人の日常生活、もしくは周囲の人との関係がうまくいかない状況を引き起こす場合に診断される障害です。

 

日常生活に支障をきたしてしまう思考や認知(物事のとらえ方)、対人関係が長期的に続いてしまうことがパーソナリティ障害(パーソナリティー症)の特徴の一つです。

 

この記事ではパーソナリティ障害(パーソナリティー症)の種類やそれぞれの特徴、診断方法について解説します。

 

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)のある方で就職に悩んでいらっしゃる方は、当記事、LITALICOワークスの情報を参考にして就労に関する情報を集めてみてください。

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)とは?

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)は日常生活や仕事で、周りの人と違う行動や反応をとってしまうことで、本人が苦しい思いをしたり、周囲の人との関係性がうまくいかない状況を引き起こす障害です。

※パーソナリティ障害は現在、「パーソナリティー症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「パーソナリティ障害」といわれることが多くあるため、ここでは「パーソナリティ障害(パーソナリティー症)」と表記します。

周囲の人と違う行動や反応をしてしまうことで、対人関係が不安定になりやすいことが特徴の一つです。

 

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)は、性格の悪さや素行の問題など、本人の意志によるものではなく、認知機能や感情のコントロールなどがうまく働かないといった精神機能の偏(かたよ)りから生じます。 

 

通常は青年期後期(17歳〜20歳頃)から成人期早期(22歳〜28歳頃)に現れますが、15歳以前の少年期に現れることもあります。障害がいつまで続くのかも個人差があります。

 

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)はいくつかの種類(分類)に別れており、種類によっては歳をとるとともに軽減したり、改善したりする傾向もみられます。

 

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)は、その場の環境や状況によって以下のような症状を引き起こすこともあります。

 

  • 不安症‥不安からくる息切れやめまい、発汗、震えなど
  • 双極性障害(双極症/躁うつ病)※‥長期間、悲しみで気持ちをふさぎ込んでしまうかもしくは気持ちが高揚し過ぎる
  • 身体症状‥身体の不快感や微熱が続くなど
  • 物質使用障害‥アルコールや薬などへの依存
  • 摂食障害‥食べ過ぎ、極端な食欲のなさ

※双極性障害(躁うつ病)は現在、「双極症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「双極性障害」「躁うつ病」といわれることが多くあるため、ここでは「双極性障害(双極症/躁うつ病)」と表記します。

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)の原因

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)は現在も研究段階であり、その発症の原因や仕組みが完全に解明されてはいないのが現状ですが、現在では、本人の気質と日常生活の環境によって引き起こされると考えられています。

 

また、気質には遺伝的な要因があると考えられているため、遺伝的な要素でパーソナリティ障害(パーソナリティー症)になりやすいという説もあります。

 

また、生まれ育った環境やその後の家族との関わり方によってパーソナリティ(人格)の形成に大きな影響を及ぼします。

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)の種類と特徴は?

 

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)は10種類あり、症状によって大きく3つの群(グループ)に分けられています。

 

ここでは、代表的な3種類のパーソナリティ障害(パーソナリティー症)について解説します。あくまでも傾向を分類したものなので、個人によって症状の現れ方は違ってきます。

妄想性(猜疑性)パーソナリティ障害(パーソナリティー症)

妄想性(猜疑性:さいぎせい)パーソナリティ障害(パーソナリティー症)は、以下のような症状が特徴です。

  • 周りの人が自分を騙しているのではないかと疑ってしまう
  • 害を与えられるのではないかと疑ってしまう

証拠がなくても自分の考えや意見を主張しようとする姿勢がみられます。

 

例えば、相手が手助けしようとしているのに対して、自分だと一人でできないからそう言っているのではないかと疑ってしまうなどです。

 

妄想性パーソナリティ障害(パーソナリティー症)の方は以下の症状も同時に起こる場合があります。

  • 統合失調症
  • アルコール依存
  • 不安症
  • ストレスによる日常生活への悪影響
  • 別のパーソナリティ障害(パーソナリティー症)

境界性パーソナリティ障害(パーソナリティー症)

境界性パーソナリティ障害(パーソナリティー症)は、以下のような症状が特徴です。

  • 他人から拒絶されたり、見捨てられてしまうかもしれないと不安になる
  • 自分に対する評価の振り幅が極端になってしまう
  • 不安により衝動的な行動をとる
  • 対人関係の不安から感情のコントロールが難しくなる

一人でいることに耐えられなかったり、一人になることを避けるために苦しさを抱えながら必死に努力したりすることがあります。

 

境界性パーソナリティ障害(パーソナリティー症)は男性よりも女性に多くみられます。

 

以下の症状も同時に起こっていることがあります。

  • うつ病
  • パニック症
  • ストレスによる日常生活への悪影響
  • 極端な食べ過ぎ、もしく食欲がない
  • アルコールや薬への依存

境界性パーソナリティ障害(パーソナリティー症)の一部の人には、生活上のストレスにうまく対応できない遺伝的な部分が原因となっている可能性があります。

 

また、幼少期のストレスが境界性パーソナリティ障害(パーソナリティー症)の発症に関わっているとも考えられています。

回避性(不安性)パーソナリティ障害(パーソナリティー症)

回避性(不安性)パーソナリティ障害(パーソナリティー症)は、以下のような症状が特徴です。

  • 自分が批判や拒絶をされたり、恥をかいてしまうことを恐れ、他人との接触を避けようとする
  • 本当は社交的な活動がしたいが、批判や拒絶を恐れてできない

自分の能力が不足しているのではないかと日常的に感じており、自分が評価されるかもしれない状況を避けてしまいます。

 

回避性パーソナリティ障害(パーソナリティー症)の発生に男女差はありません。

 

また、以下の症状が同時に起こることがあります。

  • うつ病
  • パニック症
  • 社交恐怖症
  • 別のパーソナリティ障害(パーソナリティー症)

生まれつき社交的な状況に不安を感じてしまったり、幼少期に、拒絶されてきた経験がある人に回避性パーソナリティ障害(パーソナリティー症)が起こる可能性があります。

 

屈辱を感じたり、批判をされることを回避したい気持ちが強いため、自分のことをあまり話したがらなかったり、できるだけ想定されるリスクは避けられるような行動をとる場合もあります

 

リスクをとることに否定的で、このような状況を避けるために別の問題を利用しようする人もいれば、無意識に回避を続ける人もいます。

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)の診断方法と治療について

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)の診断は、現状の姿だけではわからないことが多いため、複数回の面談によって下されます。

 

ある一定期間で症状の変化を把握します。

 

患者本人から現状と過去の状況を聞き出し、その後、家族や近しい人に当人の状況を聞き、意見の違いを診ていきます。

 

診断にはアメリカの精神医学会で決められた診断基準「DSM-5」が使われています。

 

DSM-5とは精神疾患の診断を統計的に定めたもので、本人の特徴をカテゴリーに分類しながら診断を進めます。

 

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)と診断された場合は、周りの人の協力も得ながら治療を進めていくことになります。

 

治療は、薬物による療法のほか、カウンセリングや精神療法があり、認知行動療法といって物事の見方を変えていくトレーニングなどがよくおこなわれます。

 

患者本人が自身の問題を認識して、それに対処する方法を作り上げます。

地道な努力が必要とされるため時間はかかり、治療の目的を明確に設定して根気強く望む必要があります。

 

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)のある人との接し方

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)のある方に共通してみられる症状は以下の3つといわれています。

  1. 認知(物事のとらえ方)の偏り
  2. 感情・衝動のコントロールが苦手
  3. 安定した人間関係や社会生活が築けない

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)のある方本人もどのように振る舞っていいのか困っていることが多く、それぞれの症状や特徴に合わせて、以下のような理解や接し方を心がけることが大切です。

  • 本人も自身を理解できずに苦しんでいることを理解する
  • 本人に寄り添い、何に苦しんでいるのか理解を示す
  • 冷静に話を聞き、相手の考えや心の問題を指摘しない
  • 身体症状などがある場合は、その状態を心配している旨を伝え、受診を促す
  • 受診を進めたりする場合には、パーソナリティ障害(パーソナリティー症)に対応している医療機関を探して、治療につなげるサポートをおこな

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)のある方が回復していく過程の中で、周りの方のサポートは非常に重要です。

 

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)の症状や特徴を正しく理解し、本人に寄り添い、サポートしていくことが大切です。

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)のある方に向いている仕事とは?

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)とひとえにいっても種類・特徴はさまざまです。

 

例えば、人とコミュニケーションをとることが苦手なタイプの場合、一人で完結できるような仕事はうまくやれるケースも多々あります。

 

無理して仕事に慣れようとすると「続かない」「トラブルを起こしてしまう」「さらに症状を悪化させてしまう」ことにつながります。

 

仕事に合わせるのではなく、仕事を合わせるようにすることでパーソナリティ障害(パーソナリティー症)の方でも無理なく働くことができます。

 

LITALICOワークスではパーソナリティ障害(パーソナリティー症)のある方向けの就労移行支援をおこなっています。

 

専門家の意見を聞いて、適している職業をみつけてみましょう。

 

以下のお申し込みWebフォームから無料相談ができます。

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)についてのまとめ

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)は精神機能の偏(かたよ)りから生じるものであり、決して、本人の性格の悪さや素行の問題によるものではありません。

 

パーソナリティ障害(パーソナリティー症)の方と関わる時には、まず相手の意見を尊重することが大切です。

 

そして、そのうえで相手が解決に向かって行動できるような環境を一緒に作ることが大切です。

 

LITALICOワークスでは「就労移行支援事業所」のサービスを提供しています。

 

そのひとりにあう「働く」をみつけ、そのひとりらしい「やりがい・楽しみ」をみつけられるようサポートします。

 

ぜひいつでもお気軽にご相談ください。

更新日:2024/06/29 公開日:2021/12/21
  • 監修

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

関連ページ

まずはお気軽にご相談ください
障害や就職のこと、LITALICOワークスに相談してみませんか?
ちょっとした質問・相談もお気軽にどうぞ。無料でご相談いただけます。
お電話でのご相談もお待ちしています。
受付時間 平日10:00〜17:00

このページに関連する
おすすめコンテンツ

ページトップへ