身体や心の状態によっては「働くことがつらい」と感じるものの、経済的な問題から、休職に踏み切れない方もいるかもしれません。しかし、休職が心身の回復のために必要な場合もあります。休職制度は法律で定められている制度ではないため、会社により規定が異なります。
そこで、この記事では、休職すると給与やボーナスはどうなるのか、休職の手続きの流れや、休職から職場復帰・転職する場合などについて解説します。
条件を満たす場合に休職中に受給できる傷病手当金についても説明していますので、ぜひ参考にしてください。
身体や心の状態によっては「働くことがつらい」と感じるものの、経済的な問題から、休職に踏み切れない方もいるかもしれません。しかし、休職が心身の回復のために必要な場合もあります。休職制度は法律で定められている制度ではないため、会社により規定が異なります。
そこで、この記事では、休職すると給与やボーナスはどうなるのか、休職の手続きの流れや、休職から職場復帰・転職する場合などについて解説します。
条件を満たす場合に休職中に受給できる傷病手当金についても説明していますので、ぜひ参考にしてください。
目次

休職することになったとき、「給与やボーナスはどうなるのか」「お金がなくなってしまうのではないか」と不安になる方もいるかもしれません。休職中には、条件を満たしていれば支給される手当などがあります。
ここでは、休職中の給与やボーナス、手当について説明します。
休職中の給与の支給有無は、会社により異なります。休職は法律で定められているのではなく、会社が独自に設定できる制度であるため、休職制度の内容も会社が自由に設定できるためです。したがって休職中の給与規定については、会社の就業規則などで確認しましょう。
一般的には、休職中には給与が支給されない場合が多いようです。また支給される場合も、休職前の給与額が満額支給されるのではなく、何割かの額になる場合があります。
国家公務員の場合は、連続して90日まで「病気休暇」が認められています。病気休暇の場合は、休職前の給与額が満額支給されます。90日を超えて病気やケガなどにより休職した場合は、休職の期間が満1年に達するまでは、休職前の給与額の80%に相当する額が支払われます。(結核性疾患の場合は休職の期間が満2年に達するまで)
地方公務員についても、上記と同様になる場合もありますが、自治体によって異なる場合があります。休暇・休業等制度などで確認してみましょう。
休職中のボーナスの支給有無や支給条件、休職期間を勤続年数に算入するか否かについても、会社により規定が異なります。そのため、休職中のボーナス支給については、会社の就業規則などで確認しましょう。
社会保険料とは「厚生年金保険」「健康保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つの保険料の総称です。「介護保険」については、40歳以上の方が対象となります。
社会保険料には「労災保険」を除き、4つの保険料については「会社負担分」と「従業員負担分」とがあります。従業員負担分は通常は給与から控除され、会社が会社負担分とあわせてそれぞれの納付先へ支払っています。
休職中にも、社会保険料は支払う必要があります。ただし「雇用保険」については、給与の支給額に労働保険料率を乗じて計算されるため、給与の支給額がなければ雇用保険料は発生しません。
しかし、会社の規定が休職期間中は無給となっている場合は、給与からの控除ができないため、休職期間中の社会保険料の支払い方法について、休職に入る前にあらかじめ会社側に確認しておきましょう。
傷病手当金とは、病気やケガの療養のために会社を休んでいる期間の生活を保障するために設けられている制度です。傷病手当金は、休職期間中に会社から十分な給与を受け取れない場合、条件を満たせば、健康保険から一定の金額が支給されます。
傷病手当金が支給される条件
傷病手当金の支給対象となるのは、健康保険組合に加入している、かつ以下の4つの条件をすべて満たしている場合です。
(※)会社から一部の給与が支払われている場合、その給与支給額が傷病手当金の額よりも低い場合、その差額分が傷病手当金から支給されます。
傷病手当金の支給額
傷病手当金の支給額は、 以下の計算式により算出されます。
(※)支給開始日以前の期間が12ヶ月に満たない場合、「支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均」もしくは「標準報酬月額の平均値」を使用して計算します。
目安としては、休職前の標準報酬月額のおよそ3分の2程度だと考えることができます。
傷病手当金が支給される期間
傷病手当金が支給される期間は「支給を開始した日から、休んだ期間のみを通算して1年6ヶ月」となります。(※)
(※)支給開始日が令和2年7月1日以前の場合は従前の給付要件にもとづき、支給を開始した日から最長1年6ヶ月です。
また、傷病手当金の全額を受給した後は、障害年金を請求し受給される場合も考えられます。障害年金についても、以下の記事にて確認しておくとよいでしょう。
業務が原因となった病気やケガの療養のために休業した場合は、労働者災害補償保険(通称「労災保険」)から給付金が支給される可能性があります。
業務が原因の場合は「休業補償給付」、通勤が原因の場合は「休業給付」と呼ばれます。休業1日につき、給付基礎日額の60%に相当する額が支払われます。

ここでは、休職制度の仕組みについて説明します。
休職制度とは、業務に従事することが不可能、または不適当な理由が生じた場合に、労働契約を維持したまま、働くことを免除される仕組みのことです。
法律に定めはなく、会社が独自に設ける制度であるため、すべての企業が導入しているわけではありません。そのため、休職を検討している方は、勤務している会社が休職制度を導入しているかをまず確認する必要があります。また休職制度が導入されている場合も、休職できる期間や対象となる社員や、休職中の給与については会社により規定が異なります。
休職制度が導入されている場合は、就業規則や労働協約などで規定が定められています。
設けられている休職制度の種類や名称も、会社により異なります。ここでは、代表的な休職制度の種類をご紹介します。
例えば、うつ病などの精神疾患で休職する場合は「病気・傷病休職」にあてはまります。また、自己都合休職とは、その名の通り個人的な都合による休職です。 例えばボランティア活動への参加や、家庭の事情などの理由で休職が適用される場合です。

ここでは、休職する場合の手続きの流れを解説します。ここでは、病気やケガによる休職について解説します。
もし会社に休職制度がない場合は、有給休暇を利用して療養をする方法があります。また体調により仕事をすることが困難な場合、業務量や業務内容の調整をしてもらえる場合があります。まずは上司や人事などに相談をするとよいでしょう。
休職の手続きは会社により異なりますが、多くの場合、医師の診断書を会社に提出する必要があります。
医療機関で診断を受けたうえで、休職について医師に相談しましょう。医師が「休職が必要」と判断した場合は、診断書の発行をしてもらいます。診断書の費用は医療機関や記載する内容などにより異なりますが、2,000円~10,000円が目安となります。
医療機関によっては、診断書の発行に数週間程度の時間を要する場合があります。そこのため休職を検討している場合は、早めに受診するとよいでしょう。
会社の就業規則や労働契約書などを確認して、休職制度の内容を把握しておきましょう。調べても分からない部分については上司や人事部、産業医などに聞いてみるとよいでしょう。
とくに、下記の点はしっかりと確認しましょう。
社内の担当部署で、休職の手続きをおこないます。会社側が休職届の書式を用意している場合は、会社の書式を用いて申請します。また、傷病手当金支給申請書には「事業主記入用」の欄がありますので、会社に記入を依頼する必要があるということを覚えておきましょう。
休職中の過ごし方については、以下のリンク先にてご参考ください。
休職から職場復帰する場合や、転職するときに意識したいポイントをご紹介します。
休職期間を経て復職を決める際の注意点は「自己判断しないこと」です。
休職できる期間は会社により異なり、休職期間における病気の回復レベルも人により異なります。自分では復職できるほど回復したと思っても、心身が適切に回復していない状態で復職すると症状が悪化し、再休職する可能性もあります。
このため、医師の目から見て十分に回復しているのか、復職する場合は元の職場に戻れそうか、あるいは業務内容や職場環境などの調整が必要なのかなどについて、医師とよく相談して計画を立てるようにしましょう。
休職から復職や転職をする際は、以下の支援制度を利用できる場合があります。
リワークとは、うつ病などの疾患により休職している方が利用できる、円滑な職場復帰のためのプログラムのことです。医療機関や公的機関などで実施しており、生活リズムの構築やセルフケア方法の習得、職場復帰に必要な知識の習得などの内容が提供されています。リワークについては以下の記事で詳しく説明していますので、参考にしてください。
就労移行支援は、一般企業などへの就職を目指す障害や難病のある方を対象とする福祉サービスのひとつです。また一定の条件を満たす場合は、休職中の方も利用できる場合があります。利用するには、障害福祉サービス受給者証が必要になります。
「就労移行支援事業所」に通い、就職の準備から求職活動、就職と就職後の職場への定着までの一連の過程について一貫したサポートを受けることができます。
職業プログラムや面接対策などの就職活動のサポートのほか、体調管理や対人スキル、ストレスコントロールの方法なども学ぶことができます。

LITALICOワークスは、全国130拠点以上で就労移行支援事業所を運営しています。15年以上の就労支援の実績にもとづく豊富な経験とノウハウが蓄積されているため、さまざまな障害や困りごとに対して幅広く、的確にサポートできる力があります。また、全国の多数の企業とのつながりがあり、さまざまな就職の希望に合わせたサポートが可能です。
休職中の方は一定の条件を満たせば、リワークとして利用することができる場合があります。もし「無理のない働き方がしたい」「症状があって働くことが不安」などのお悩みがあればぜひお気軽にご相談ください。
以下、実際にLITALICOワークスを利用し、再就職した事例をご紹介します。下記は退職後に利用した事例ですが、休職中の方を支援される場合もあります。
Sさん(30代男性)は入社後3ヶ月くらいに無気力などの症状がみられるようになり、受診の結果「うつ病」との診断が出ました。
半年間の休職ののち同じ職場に戻り、2年ほど働いた末に携帯電話関係の仕事に転職。9年間働きましたが、再度体調を崩してしまい、退職することになりました。
復職の際に体調面に不安を感じたことから、SさんはLITALICOワークスを利用することにしました。Excelやスプレッドシートを使った作業などの実践的な業務に近いプログラムや、緊張をときほぐす方法を学ぶプログラムなどを受講したことは、現在も非常に役立っているといいます。
就職活動のサポートも受けて会社に就職し、Sさんは現在、テクニカルサポートの業務をおこなっています。
キャリアの中で大きく体調を崩したのは2回ですが、小さく崩すことも何度もあり、「もう立ち直るのは難しいんじゃないか」と思ったことがあるそうです。そのようなときでも、「主治医やLITALICOワークスのスタッフのサポートがあったからこそ、自暴自棄にならずにいられて今がある」と感じているそうです。
ここでは、休職について寄せられることの多い質問についてお答えします。
休職期間満了時に体調が十分に回復しておらず退職する場合、以下の2つの要件を満たしていれば、退職後も引き続き残りの期間について傷病手当金を受給できます。
雇用保険の基本手当とは、被保険者であった方が離職した場合で、働く意思と能力があり、求職活動をおこなっているにもかかわらず就職できない場合に支給される手当のことです。ただし、傷病手当金と同時に受給することはできません。
雇用保険の基本手当は、次の2つの要件の両方を満たす場合に支給されます。
したがって、もし退職が「休職期間満了時に業務遂行が可能なレベルまで体調が回復しておらず、引き続き療養が必要である」という理由による場合は、上記1の要件を満たしていないため、基本手当の支給対象とはなりません。
受給資格者が離職後にハローワークにて求職の申込みをおこなった後、15日以上にわたり病気やケガのために就職することができない場合は、雇用保険の「傷病手当」の支給対象となります。雇用保険の傷病手当については、以下の記事を参考にしてください。
「試し出勤」とは、休職中の社員が職場復帰をする前に、職場復帰が可能かどうかを判断する目的で、職場などに一定期間出勤する制度です。「リハビリ出勤」と呼ばれることもあります。
試し出勤制度は、導入の有無や制度の内容、実施期間中の賃金規程など会社により異なります。とくに規定がなく、休職中の扱いに準ずることとなっている場合もあります。休職期間中が無給となっている場合は、試し出勤制度期間中も無給となることになります。
ただし試し出勤において、業務遂行が可能かどうかの判断のために業務を命じられた場合は、労働基準法に準じて賃金が発生します。この場合は、傷病手当金の支給要件から外れることになります。
このため試し出勤制度を利用する場合は、どのような目的でどのような内容の「出勤」をおこなうのか、賃金の発生の有無などを会社に確認しておくとよいでしょう。
休職中の給与については会社により規定が異なり、休職前の給与の一部が支給される場合もあれば、無給となる場合もあります。休職中は給与の支給がない場合でも、条件を満たせば傷病手当金などの制度を利用できる場合があります。
休職を検討している方は、まずは会社が休職制度を導入しているか、導入している場合は制度の対象者や給与の有無などを調べてみましょう。
体調がよくない場合に無理をして働き続けると、症状が悪化してしまうケースもあります。仕事を続けるのがつらい場合は、早めに医療機関の受診や専門機関への相談を検討してみてください。
LITALICOワークスでも、無料相談をおこなっています。仕事について悩みがある場合は、お気軽にご相談ください。
監修者
行政書士/親なきあと相談室主宰/社会保険労務士
渡部 伸
慶應義塾大学法学部卒後、出版社勤務を経て、行政書士、社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。現在、渡部行政書士社労士事務所代表。自身も知的障害の子どもを持ち、知的障害の子どもをもつ親に向けて「親なきあと」相談室を主宰。著作、講演など幅広く活動中。
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