就職のために就労移行支援を利用したいと考えていても、「お金がないから利用が難しい」「貯金がもたないかもしれない」と不安や疑問がある方もいると思います。
就労移行支援の利用期間は人それぞれですが、数ヶ月~2年間通う可能性があります。その間の利用料や生活費が心配になることもあるでしょう。しかし、経済的な公的支援制度を活用することで、就労移行支援に通い続けられている方もいます。
この記事では、就労移行支援にかかる利用料や、就労移行支援利用中の収入源や実際に利用された方の事例などを中心に紹介します。
就職のために就労移行支援を利用したいと考えていても、「お金がないから利用が難しい」「貯金がもたないかもしれない」と不安や疑問がある方もいると思います。
就労移行支援の利用期間は人それぞれですが、数ヶ月~2年間通う可能性があります。その間の利用料や生活費が心配になることもあるでしょう。しかし、経済的な公的支援制度を活用することで、就労移行支援に通い続けられている方もいます。
この記事では、就労移行支援にかかる利用料や、就労移行支援利用中の収入源や実際に利用された方の事例などを中心に紹介します。
目次
就労移行支援は2年間の中で、働くためのスキル取得のプログラムやサポートを受けながら就職活動をしていきます。その間に就労移行支援の利用料や通うための交通費などお金がかかる場面があるのかと気になる方もいるかもしれません。ここでどういった場面でお金がかかるのか、順番に説明していきます。
まず就労移行支援事業所とは、一般企業への就職を目的として障害のある方が、スタッフのサポートを受けながら働くためのスキル取得や体調管理、就職活動などに取り組んでいく事業所のことです。障害のある方への支援を定めた障害者総合支援法の中の、障害福祉サービスのひとつに位置づけられています。
就労移行支援の利用期間は原則2年までと決まりがあり、その中で一人ひとりの状況に合わせた計画を作成し、就職に向けたプログラム受講や企業での実習、就職活動などをおこなっていきます。また、就職した後も長く働き続けるために「就労定着支援(※)」として、定期的な面談や職場と本人の間に入って業務調整などをおこないます。
(※)就労移行支援を含む福祉サービスを利用していた事業所で就職後6ヶ月まで継続してサポートします。就職後7ヶ月~3年6ヶ月の期間についてはご本人の利用意思があれば、就労定着支援を受けることができます。(詳しくは就労定着支援に関するページをご確認ください)
就労移行支援を利用している期間は毎月利用料がかかります。しかし、利用者の世帯所得により支払う金額の上限が決まっており、現在では多くの方が自己負担なく利用しています。
1ヶ月にかかる利用料の負担上限額は以下の表のようになっています。

生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯では負担上限月額が0円、市町村民税課税世帯のうち前年度の収入がおおむね670万円以下の世帯であれば9,300円、670万円以上であれば37,200円です。あくまでも目安ですので、利用料金については自治体の障害福祉窓口などへお問い合わせください。
また、この場合の世帯所得は、利用者本人と配偶者の前年度の所得になります。同居している両親や子どもなどの所得は含まれません。
就労移行支援では上記の利用料以外にも、交通費や食事代などお金がかかる場面があります。
交通費は自宅から就労移行支援事業所へ通う際の費用だけでなく、企業見学や面接先に向かう際の費用も別途かかります。食事代は就労移行支援事業所で午前・午後共にプログラムに参加する場合にかかる昼食代のほか、飲み物や間食の費用がかかることもあります。
ただし、自治体の支援や障害者手帳所持の場合、受けられる障害者割引などを活用して費用を抑えることも可能です。

就労移行支援事業所は就職を目指して通う事業所のため、利用期間中には仕事による収入はない状態です。そのため、貯金を生活費に充てる方も多いですが、そのほかにも収入源となるものもあります。
ここでは、就労移行支援を利用されている方の、仕事以外の収入源について主なものを4つ紹介します。
障害年金は、けがや病気などで生活や仕事に大きな影響が出ている方に支給される年金のことです。
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があり、けがや病気、障害などが生じたときに加入していた年金制度によって受給できる年金の種類が異なります。
障害年金に受け取れる期間は障害の種別などによって異なります。有効期限がある場合は、有効期限が近付くと年金事務所より再度障害の状態を確認するためのお知らせが届きます。障害年金の受給にはいくつか要件がありますので、詳しいことは日本年金機構のWebサイトや年金事務所でご確認ください。
雇用保険の基本手当は、一般的に「失業給付」などとも呼ばれる、再就職に向けて失業中の生活の保障を目的とした手当のことです。障害のある方は「就職困難者」に該当し、離職時の年齢によりますが、基本手当の給付を受ける日数が最大で離職してから約5ヶ月~約1年間受け取ることができる可能性もあります。基本手当の手続きや詳細はハローワークの窓口でご確認ください。
傷病手当金とは、健康保険に加入している方が会社などに所属しているときに、けがや病気などで働けなくなった場合に支給される手当金です。傷病手当金は会社を辞めても支給開始日から通算して1年6ヶ月間支給されるため、就労移行支援を利用しながら受け取ることも可能です。ただし、雇用保険の基本手当(失業保険)との併用はできませんのでご注意ください。
また、傷病手当金は3日以上連続して働けないことや、その間に会社から給与が支払われないことなどいくつかの要件がありますので、詳しいことは健康保険組合のWebサイトなどでご確認ください。
生活保護は生活に困窮している方を対象に、最低限の生活を保障し自立を促進する公的な制度です。生活保護を受給することができると、食費や光熱費、住宅費、医療費などの費用が支給されます。
受給要件には障害の有無ではなく、世帯全員の所得や資産などが基準となります。
申請や問い合わせは自治体の生活保護課などになりますので、詳しいことが知りたい方は問い合わせてみるといいでしょう。
収入源とはまた別ですが、就労移行支援事業所を利用している間は家族などから生活費の援助をしてもらうという場合もあります。
家族などから援助を受けることで、就労移行支援の取り組みに注力できるというメリットがあるため、「就労移行支援の利用中は働くことができない」といったことや期限を説明したうえで、生活費の援助を受けているという方もいます。
障害のある方の医療費を抑えたり、税金の減免されたりする制度があります。ここでは、就労移行支援を利用中の生活費の助けとなる制度や相談先を紹介します。
自立支援医療制度とは、障害の治療にかかる医療費の自己負担が少なくなる制度です。自立支援医療制度は障害種別により分かれており、身体障害の方を対象とした「更生医療」と精神障害の方と発達障害の方を対象とした「精神通院医療」などがあります。
どちらも所得区分に応じて1ヶ月あたりの負担上限額が設定されていますが、多くは医療費にかかる自己負担額が原則3割のところが1割(もしくは、高額療養費(医療保険)の自己負担上限額)になることが多く、医療費を抑える助けとなる制度です。申請は自治体の障害福祉窓口などでおこなうことができます。
障害の種別によって手帳の種類も分かれており、身体障害の方は「身体障害者手帳」、精神障害の方は「精神障害者保健福祉手帳」、知的障害の方は「療育手帳(※)」を申請することができます。また、発達障害の方は精神障害者保健福祉手帳の対象(知的障害を伴う場合は療育手帳の対象)になる可能性があります。
障害者手帳を取得すると、税金の減免、公共交通機関の割引、公的な施設の利用料の割引などを受けることができます。障害者手帳も申請は自治体の障害福祉窓口などでおこないます。
(※)療育手帳は自治体によって「愛の手帳」「愛護手帳」「みどりの手帳」など名称が異なる場合があります。
ほかにも自治体によっては、「更生訓練費」など就労移行支援の利用にかかる費用を助成する制度がある可能性があります。
更生訓練費は、就労移行支援などを利用するのにかかる文房具や参考書などの費用を助成する制度です。ほかにも就労移行支援事業所などに通っている方の交通費を助成する「施設等通所者への交通費補助」制度などがある自治体もあります。
制度は自治体ごとに異なりますので、詳しいことは自治体の障害福祉窓口などでご確認ください。
制度以外にも、「障害者就業・生活支援センター」や「自立相談支援」といった就労移行支援を利用する際の生活費や収入減などお金に関する相談ができる機関もあります。
障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の生活や仕事について相談をすることができる支援機関です。生活費で悩んでいる場合は、利用できる制度や助成について教えてくれることもあります。
ほかにも、自立相談支援といって生活に困っている方を対象に、状況に合わせた各種支援をおこなっている機関があります。相談窓口は全国にあり、生活費についての相談もできますので、就労移行支援を利用したいけどお金がないとお困りの方は一度相談してみるといいでしょう。

ここでは、実際に就労移行支援事業所「LITALICOワークス」を利用して就職した方の事例を2つ紹介します。
Q.当時の状況は?
A.学生時代に双極性障害を発症して、そのまま数年家にひきこもっていました。その間は障害年金を受給しながら生活をしていました。
Q.利用した目的は?
A.体調が安定してきて就職を考えたときに、経験がないのでまずは就労移行支援で働く準備をしたいと考えて利用しました。
Q.どのくらいの期間利用しましたか?
A.約8ヶ月利用しました。それまで働いた経験がなかったので、ビジネスマナーやパソコンの基礎、上司や同僚とのコミュニケーションの練習などを重点的に学んでいきました。
Q.お金の面で苦労したことは?
A.障害年金を受給していましたが、利用期間が長くなるにつれて「もうこんなにお金がない」と焦る気持ちも出てきました。そのため、スタッフに相談して、いつまでに就職をするのか明確な目標を立てることで心を落ち着かせてプログラムに取り組むことができました。
Q.就労移行支援に通ってよかったことは?
A.自己コントロールができるようになったことです。それまではお金の面も含めて不安があると無茶なことをしてしまい、後悔することが多くありました。就労移行支援でじっくりと自分と向き合う時間があったおかげで、今はお仕事でも日常生活でも落ち着いた行動ができるようになったと感じています。
Q.当時の状況は?
A.うつ病の症状が悪化して契約社員として勤めていた会社を辞めて、雇用保険の基本手当(失業給付)をもらいながらこの先どうしようかと悩んでいた時に、就労移行支援の存在を知って利用を開始しました。
Q.利用した目的は?
A.前職では上司とコミュニケーションがうまくいかず、ストレスをためたことで体調を崩しました。そのため、職場でのコミュニケーション、特に言いづらいことでも自分から発信するスキルをつけたいと考えていました。
Q.どのくらいの期間利用しましたか?
A.利用期間はおよそ10ヶ月くらいでした。コミュニケーションでは、話すタイミングや言葉の選び方などをプログラムで学んでいき、事業所内でもスタッフを上司と見立てて練習していきました。
Q.お金の面で苦労したことは?
A.失業保険の期限が迫ってくると不安になることもありました。しかし、今焦って就職をしてもまた辞めることになると考え、一度じっくり自分の課題と向き合う時間が必要だと思いなおして利用を続けました。おかげで就職先ではコミュニケーションに困る場面もほとんどなく、楽しく働くことができるようになりました。
Q.就労移行支援に通ってよかったことは?
A.自分のストレスの原因と、その対策が明確になったことです。これまではコミュニケーションがうまくいかないのは分かっていても、対策を考えることが難しいと感じていました。就労移行支援では、ストレスコントロールのプログラムやスタッフとの面談といったサポートがあったので、原因を深く考えることができ、具体的な対策を作ることもできました。
ここでは、就労移行支援を利用しているときに生活費やお金に関してよくある質問に答えていきます。
就労移行支援を利用している最中にアルバイトは基本的に認められていません。というのも、就労移行支援は就職のための準備や就職活動をする場所なので、短時間のアルバイトであっても認められないということが多いようです。
ただ、自治体により判断は異なり、状況によっては認められる場合もあります。詳しいことはお住まいの自治体の障害福祉窓口へお問い合わせください。
就労移行支援を利用する中で工賃などの収入を得ることは基本的にできません。
同じ障害福祉サービスの中にある、就労継続支援では生産活動に応じて工賃や給料が支払われますが、基本的に就労移行支援ではそういった生産活動はしていません。
就労移行支援の利用中は働いて収入を得ることは基本的にできません。そのため、「お金がないから続けられるか心配」「貯金がもつか不安」といった方もいると思います。
就労移行支援の利用中にも、雇用保険の基本手当や傷病手当金、障害年金など生活費をサポートするための制度があります。また、自立支援医療や障害者手帳、更生訓練費など就労移行支援の利用の助けとなる助成制度もあります。このような助成制度を活用しながら就労移行支援事業所へ通所している方もいます。
就労移行支援の利用をしたいけれど、金銭面で不安という方は、一度お近くの「障害者就業・生活支援センター」や「自立相談支援」などへ相談してみましょう。

LITALICOワークスでは、各地で就労移行支援事業所を運営し、累計11,000名以上の方の就職をサポートしてきました。個人の特性を理解し、自分でできる対処法や自分に合う仕事環境を知ることができるようなサポートをしながら、一緒に適職や働きやすい職場や企業を探していきます。
LITALICOワークスでは随時見学・体験をしていますので、就労移行支援を検討している方は、ぜひ一度お問い合わせください。
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