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お役立ち仕事コラム

休職とは?欠勤や休業との違い、休職手当について解説

更新日:2023/10/10

体も心も疲れきっている場合、仕事に行きたくなくても「休職するのは甘えなのでは?」と思ってしまう人もいるかもしれません。

 

しかし、うつ病や適応障害などの精神疾患で医師から休職を勧められた場合は「それほど休養が必要な状態なのだ」ということであり、休職は決して甘えではありません。一方で、休職するとなると給与面や手続き、復職などについて不安になることもあるかもしれません。

 

そこでこの記事では、休職制度をはじめ、休職から復職までの流れ、うつ病や適応障害などの精神疾患のある方が利用できる支援などについて説明します。

休職と休業や欠勤の違いとは?

ここではまず、いずれも業務に従事しないことを意味する「休業」「欠勤」「休職」の違いについて説明します。

休職とは?

休職とは、労働者が労務に従事することが不可能、または不適当な事由が発生した場合に、会社がその従業員に対し、労働契約を維持しながら、労務への従事を免除する制度のことです。

 

休職制度は法律で定められてはいないため、休職制度を導入するか否かは会社が自由に決めることができます。

そのため休職制度を導入している会社であっても、導入している休職制度の種類や、 休職中の従業員の待遇などは会社により異なります。

休業とは?

休業とは、労働者が働く意思があるにもかかわらず、会社から働く機会が拒否されたり、本人の事情で働くことが難しかったりする場合のことです。

 

休業には「会社側の事情による休業」と「従業員側の事情による休業」の2種類があります。会社側の事情による休業には、 業務災害による休業や、経営上の事情による操業停止などの業務停止による休業などがあります。

 

一方、労働者側の事情による休業には、 産前産後休業、育児休業、介護休業などがあります。

欠勤とは?

欠勤も法律で定められた制度ではありませんが、一般には所定労働日に対して、労働者の都合で仕事を休むことを指します。

 

「欠勤」の定義は、会社により異なる場合があります。勤務しないことについて会社側の承認を得ない場合(俗に言う「無断欠勤」の場合)を「欠勤」とする場合や、会社側の承認を得て休む場合も「欠勤」とする場合などがあります。

休職の種類は?

休職には、主に以下のような種類があります。※休職の名称や休職制度の有無は会社によって異なります。

  • 傷病休職
    業務外の怪我や病気で長期間休職する場合。「私傷病休職」「病気休職」などと呼ばれる場合もある

  • 事故休職
    傷病以外の私的な事故を理由に休職する場合

  • 起訴休職
    従業員が刑事事件に関し起訴された場合

  • 出向休職
    従業員が他社へ出向する場合

  • 組合専従休職
    労働組合の役員に専従する場合

  • 自己都合休職
    公職への就任や海外留学、家庭の事情などによる休職

うつ病などの疾患で休職する場合は、「傷病休職」制度を利用することになります。この記事では、主に傷病休職の場合について解説します。

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休職中の給与やボーナスは?

休職を検討している場合、休職中の収入が心配でなかなか踏み切れない場合もあるかもしれません。ここでは、休職中の給与やボーナス、社会保険料について説明します。

休職中の給与やボーナス

休職中の給与の支払いの有無は、会社により異なります。一般には、休職期間中は無給となる場合が多いようです。休職期間中の賞与(ボーナス)の支給の有無についても同様で、会社により規定が異なります。このため就業規則を確認するか、人事部に確認するとよいでしょう。

休職中の社会保険料の支払い

休職中も、社会保険料(健康保険・厚生年金・介護保険)は支払う必要があります。休職中も会社に在籍しており、健康保険や厚生年金保険などの社会保険の被保険者の資格は継続するためです。

 

(※)介護保険は40歳以上の方が対象になります。

 

一方で雇用保険については、賃金実績に応じた保険料となるため、給与の支給がない場合は基本的に支払う必要はありません。

休職中の補償となる制度

休職中に給与が支払われない場合には、以下の経済的な支援制度を活用できる場合がありますので確認してみましょう。

傷病手当金

傷病手当金は、病気やケガの療養のために会社を休んでいる間の生活を保障する目的で、会社が加入している健康保険から一定額が支給される制度です。傷病手当金の支給期間は最長で、支給の開始日から通算1年6ヶ月です。

 

以下の4つの条件をすべて満たす人が支給対象となります。

  1. 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業である
  2. 仕事に就くことができない
  3. 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けない
  4. 休業期間中に給与の支払いがない(※)

(※)会社の規定で休職中にも給与が支払われる場合で、その額が傷病手当金の支給額よりも少ない場合は、「休職中の給与額」と「傷病手当金の支給額」との差額が傷病手当金として支給されます。

また、傷病手当金の全額を受給した後は、障害年金を請求し受給される場合も考えられます。障害年金についても、以下の記事にて確認しておくとよいでしょう。

業務の事由による病気やケガの療養で休んだ場合は?

労災保険給付

業務が原因で労働者が負傷したり病気になったりすることを「労働災害」といいます。労働災害により休業した場合は、労災保険給付から給付金が支給されます。

 

この給付金は、病気や怪我の原因が業務である場合は「休業補償給付」、通勤である場合は「休業給付」と呼ばれます。休業補償給付や休業給付は、仕事ができず、賃金を受けられない日が4日以上続く場合に受給できます。休業1日につき、給付基礎日額の60%に相当する額が支払われます。休業の初日から第3日目までの期間については、事業主が労働基準法の規定に基づく休業補償(1日につき平均賃金の60%)を行うこととなっています。

 

うつ病などの精神疾患で仕事を休む場合も、うつ病などの精神疾患が労働災害であると認定された場合は、休業補償給付が給付されます。

 

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休職から復職までの流れ

ここでは、休職を検討している段階から休職中、復職までの一般的な流れを説明します。※会社によって内容が異なる場合があります。

休職したいとき

病院を受診し、主治医から「当面の間休職して、療養に専念した方がよい」という診断があった場合は、まず勤め先の会社に「傷病休職制度」が設けられているかどうかを就業規則などで確認します。不明な場合は、人事担当部署などへ確認しましょう。

 

傷病休職制度が設けられている場合は、休職の対象者や期間、給与規定や手続きなども確認すると同時に、上司や人事部などの担当部署、産業医などと傷病休職制度を利用したい旨の相談をしてください。

 

傷病休職を会社に申請する際には、基本的に診断書の提出が求められることが多いようです。診断書の発行には数日から数週間を要するため、早めに主治医へ相談するとよいでしょう。

休職期間

「休職が必要な期間」については、医師が判断します。うつ病などの精神疾患では、思っているより長めの期間を提示されることがあるかもしれません。一般に精神疾患は回復に時間がかかることが多く、回復しきらないまま仕事に復帰すると再発のリスクもあるためです。医師と相談のうえ、必要な期間のあいだ十分に療養することが大切です。

 

一方、「傷病休職が認められる期間」は会社により異なるため、会社の就業規則や労働契約書を確認しましょう。一般には、勤続期間に応じて傷病休職が認められる期間が定められている場合が多いようです。

 

上司や人事部などの担当部署と、診断書に記載されている休職期間と会社の「傷病休職が認められる期間」を考慮して、休職期間を決めます。

 

休職期間中は定期的に会社と連絡を取り、病状や生活状況などを報告する場合が多いようです。これは会社側にとって、休職の継続の必要性の判断や、復職に向けての人員や業務の調整の必要性を想定するために必要な情報収集であると考えられます。

復職したいとき

症状が回復して生活リズムも整い、継続して仕事ができる体力もつき、医師から「復職可能」との判断が出た場合は、職場復帰支援プラン(※)を経て、事業主が職場復帰の決定をします。決定されたら、職場復帰支援プランにもとづき、職場復帰をすることができます。

 

(※)職場復帰支援プランとは、職場復帰に向けて支援を行うためのプランです。職場復帰支援プランには、職場復帰日や働く上での配慮、産業医等からの意見などの項目があります。

 

会社によっては、「試し出勤制度」を導入している場合があります。「リハビリ出勤制度」と呼ばれることもあるこの制度は、休職している人にとっては職場の状況を確認して不安をやわらげ、通勤や業務に徐々に慣れていく意味を持ちます。また会社側にとっては、休職している人の職場復帰の可否を判断するという目的があります。

休職中に復職をサポートする「リワーク支援」

職場復帰に不安がある方は休職中に「リワーク支援」を利用する方法もあります。「リワーク支援」は、主にうつ病などの精神疾患を原因として休職している方を対象に、職場復帰に向けたリハビリテーションを提供するプログラムのことです。医療機関や公的機関、民間の事業所などで実施されており、通勤訓練や職業能力回復訓練、うつ病などの疾患の再発予防教育プログラムなどが提供されています。

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休職中のよくある質問

ここでは、休職についてよく寄せられる質問に対して回答します。

Q:休職中の過ごし方はどうすればいいですか?

休職する目的は、治療と健康回復に専念することです。まずは医師の指示に従い、病気やケガの治療に専念することが大切です。うつ病などの精神疾患がある場合は、まずは体力の回復を優先します。

 

その後は医師と相談しながら、睡眠と起床や食事などの時間を調整して、生活リズムを立て直していきます。体調が回復してきたら、趣味などの活動を再開して気分転換をはかったり、外出したりして少しずつ体を動かしてみてもよいでしょう。

 

なお、休職制度は「労働能力の回復を待つ」という意味を持つため、休職中の活動はあくまで療養の範囲にとどめる方がよいでしょう。治療を怠ったり、アルバイトを行ったりするなどの行為は休職制度の目的から外れるため、控えるようにします。

Q:休職中に転職活動をしてもいい?

前述のように、休職制度は会社側にとって「労働者の労働能力の回復を待つために、一定期間、解雇を猶予する措置」という意味を持ちます。このため、病気やケガにより「仕事を続けるのがつらい」と感じている場合でも、休職期間中はまず治療に専念しましょう。そのうえで、もし「元の職場への復帰が難しい」と感じる場合は、医師や職場の上司、人事担当者などにその旨を相談してみてください。

 

身近な人に相談することが難しい場合は、以下のような相談先を利用することができます。

 

労働条件相談ほっとライン

厚生労働省の委託事業で、専門知識を持つ相談員が対応する電話相談です。違法な時間外労働や過重労働、賃金不払残業などの問題について無料で相談でき、匿名で相談することも可能です。

総合労働相談コーナー

各都道府県の労働局や労働基準監督署内など、各都道府県に設置されている相談コーナーです。

 

配置転換や賃金の引下げ、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題にまつわる相談に、専門の相談員が面談もしくは電話で、無料で対応します。

 

全国の総合労働相談コーナーの所在地は、以下のリンク先のページで確認することができます。

また、仕事や働き方のお悩みなどについては、就労支援機関で相談してみるのもよいでしょう。例えば、障害者就業・生活支援センターでは在職中の方でも相談することができます。就労支援機関については、後の章で紹介します。

Q:休職することでデメリットはある?

休職することのデメリットとしては、まず金銭面への影響が考えられます。

 

会社の規定によっては休職中は無休である場合があり、傷病手当金の支給額も休職前の給与額の一部である反面、社会保険料の支払いは発生します。また、休職期間中は業務の評価がつかないため、昇進や昇給に影響が及ぶ場合もあります。

 

しかし、うつ病などの精神疾患により医師から休職を勧められるような場合は心身共に疲れきっており、療養が急務であることを意味します。例えばうつ病の場合、働きながらうつ病を治療していくのは簡単なことではないといわれており、一定期間仕事を離れて療養に専念することが必要になる場合もあります。

 

休職期間中にそれまでの自分のあり方を見つめなおしたり、リワーク支援のプログラムを通じてセルフケアの方法を身につけたりするなど、休職期間中の過ごし方によっては、休職をメリットに結びつけることもできるでしょう。

 

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うつ病や適応障害などの精神疾患の方の就職サポート

休職期間中に体調が回復に向かい、復職が視野に入ってきても、以前と同じように働けるかどうか不安になる方もいるかもしれません。また、「復職したけれどもうまくいかなかったらどうしよう」と悩む方もいるかもしれません。

 

このような場合は、精神疾患の方の仕事をサポートする就労専門機関に相談する方法もあります。就労専門機関は以下のようなものがあります。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方が安定して働けるように仕事と生活の両方の分野にわたる一体的な支援を行う機関で、在職中の方も相談することができます。

具体的な内容については、以下のリンク先にて確認することができます。

地域障害者職業センター

障害のある方を対象として、職業評価や職業指導、職業準備訓練、職場適応援助などの「職業リハビリテーション」を実施する機関です。

地域障害者職業センターの支援内容のひとつに、障害のある方に職場適応支援などを行う「ジョブコーチ」によるサポートがあります。利用するには、利用者と企業の双方の同意が必要になります。詳細は以下のリンク先にて確認することができます。

ハローワーク (公共職業安定所)

ハローワークは、仕事を探している方に向けて応募書類や面接のアドバイスや、就職活動に役に立つセミナーなどを提供しています。ハローワークには、障害のある方に向けた窓口もあり、障害についての専門知識を持つ相談員によるきめ細かな支援体制を整えていますこれからの仕事探しに不安があるときはハローワークを活用するとよいでしょう。

就労移行支援事業所

就労移行支援とは、一般企業等への就職を目指す65歳未満の障害のある方を対象に、就職に必要なスキルを身につけるためのプログラムを実施し、就職活動から就職のサポート、就職後の職場への定着支援を一貫して行う障害福祉サービスです。障害のある方が一定期間通い、就職に必要なサポートを受けることができます。事業所によっては休職中の方でも一定の条件を満たせばリワーク支援として利用できる可能性があります。

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就労移行支援事業所「LITALICOワークス」

LITALICOワークスは、全国で就労移行支援事業所を運営しています。15年以上の長い実績と全国120拠点以上展開している強みを活かし、長年築き上げてきたLITALICOワークスならではのさまざまな企業とのつながりがあります。また、さまざまな障害のある方のサポートのために、各分野の専門家が支援プログラムの監修に携わっています。

 

うつ病などの精神疾患のある方に対しては、体調管理の方法やストレスマネジメントを実践し理解を深めたり、企業インターンに参加し自分に合う職場環境を見つけたりするなど、一人ひとりの状況に合わせたサポートを提供しています。また就職だけではなく、働き続けられるように就職後のサポートも行っています。

 

以下、実際にLITALICOワークスを利用し、再就職した事例をご紹介します。下記は退職後に利用した事例ですが、休職中の方を支援される場合もあります。

うつ病から立ち直るのは難しいと思っていたけれど、再スタートできた

Sさんは、入社から3ヶ月経った頃にうつ病との診断を受けました。休職したのち転職し9年勤めますが、再度体調を崩したことから退職。

 

次の就職に際し体調面に不安があったことから、LITALICOワークスを利用しました。緊張をときほぐす方法を学ぶプログラムなどを受講し、就職活動のサポートも受けてSさんは会社に就職し、現在はテクニカルサポート業務をおこなっています。

 

いままでのキャリアの中で何度も体調を崩し、「もう立ち直れるのは難しいんじゃないか」と思ったこともあるそうですが、「主治医やLITALICOワークスのスタッフのサポートがあったからこそ、自暴自棄にならずにいられた」と感じているそうです。

私らしさを大切に働き続けています(適応障害)

福祉大学を卒業したMさんは、人と関わるのが好きだったため介護の仕事に就きます。しかし1年経った頃から新しい業務がなかなか覚えられなくなり、悩むうちに体調を崩してしまいます。

 

受診すると適応障害と診断され、入院ののち退職。療養後、再就職に向けてLITALICOワークスに通いはじめました。

 

自分の得意・不得意の理解や、軽作業を通してのルーティンワークのプログラム、「自己理解プログラム」などを通じて自分の人間性や障害についての理解を深めていきます。その後体調を崩して入院したため、一度LITALICOワークスを辞めましたが、回復後に再利用。

 

自己分析や4社での企業インターンを通して「やはり人と関わる仕事がしたい」という思いを抱いた頃、ある病院の求人を見て応募し、職場実習(※)を経て就職しました。

 

※職場実習とは、採用前に双方が働き続けられるかどうかを確認するために行う企業インターンのことです。

 

Mさんの考える「自分らしさ」とは、「積極的に人と関わって、明るくはっきりと発言するという軸を持つこと」だといいます。

 

LITALICOワークスでは障害に関係なく、自分らしく過ごせた場所だったと感じているMさん。就職活動では、自己理解を大切にしながらチャレンジしていった結果、自分らしく働ける職場に出会うことができたのだそうです。

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休職のまとめ

休職とは、労働者が働くことが不可能、または不適当な理由が発生した場合に、労働契約を維持しながら一定期間、仕事を免除する制度のことです。

 

休職を検討している方は、会社の休職に関する規定を確認したうえで医師や職場の上司などとよく相談し、十分な療養を行うことのできる環境を整えていきましょう。

 

また、LITALICOワークスが提供している就労移行支援は一定の条件を満たせば休職中の方も利用できる場合があります。無料相談もおこなっていますので、休職からの復職に際し働き方を見直したい方は、お気軽にLITALICOワークスへご相談ください。

更新日:2023/10/10 公開日:2023/08/17
  • 監修者

    行政書士/親なきあと相談室主宰/社会保険労務士

    渡部 伸

    慶應義塾大学法学部卒後、出版社勤務を経て、行政書士、社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。現在、渡部行政書士社労士事務所代表。自身も知的障害の子どもを持ち、知的障害の子どもをもつ親に向けて「親なきあと」相談室を主宰。著作、講演など幅広く活動中。

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