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お役立ち仕事コラム

傷病手当金の金額や支給期間とは?条件やもらえないケースも解説

更新日:2024/06/18

傷病手当金とは、業務以外のことがきっかけで病気やケガの療養のために会社を休み、十分な給与が受け取れない期間の生活を保障するために設けられている公的医療保険(健康保険)の制度の1つです。

 

傷病手当金は、仕事を休んでいる期間も給与の一部にあたる一定額が健康保険組合から支給されるため、生活への不安を和らげてくれる制度ともいえます。

 

一方で、制度が複雑なため「傷病手当金がもらえる期間や金額は?」「傷病手当金がもらえないケースはあるの?」など、疑問に感じている方も多いのではないでしょうか。

 

この記事では、傷病手当金とはどういった制度か、受給に必要な条件や申請方法などを分かりやすく解説します。

傷病手当金とは?金額と支給期間について

傷病手当金とは、業務以外のことがきっかけで病気やケガの療養のために会社を休むことで、月々得られる給与額が今までより低くなる場合に支給されるものです。会社が加入している健康保険の被保険者が対象となります。

傷病手当金の金額

傷病手当金の金額は、「休む前の給与日額のおおよそ3分の2」を目安に支給されます。具体的な計算方法については、後ほどご紹介します。

傷病手当金の支給期間

傷病手当金の支給期間は、健康保険制度の改正(令和4年1月1日~)により「支給開始日から通算して1年6ヶ月まで」となりました。これまでは「支給開始日から起算して1年6ヶ月、それ以降は不支給」という仕組みでしたが、治療と仕事を両立するという観点から、このような改正がなされました。(ただし、支給開始日が令和2年7月1日以前の場合は、従来の制度が適用となります。)

 

傷病手当金は退職後ももらえる?

退職をすると、健康保険の被保険者の資格は喪失することになります。しかし、以下の要件を満たした場合には、退職後でも継続して傷病手当金をもらうことができます。

 

【退職後も引き続き傷病手当金が支給される要件】

  • 資格を喪失した日の前日までに引き続き1年以上被保険者であったこと
  • 資格を喪失した際に傷病手当金の支給を受けていた、または受けられる状態であること

ただし、退職後に再就職し、再び休んだ場合には傷病手当金は支給されません。

雇用保険の傷病手当との違い

傷病手当金と似た名称の制度に「雇用保険の傷病手当」があります。病気やケガをした時期が「在職中」「離職後」によって、どちらを受け取れるのかが変わります。雇用保険の傷病手当は、離職後(ハローワークにて求職の申し込みをした後)に15日以上病気やケガにより働けない場合に受給できるものになります。

 

上記理由により、健康保険の傷病手当金と、雇用保険の傷病手当を同時に支給することはできません。

 

雇用保険の傷病手当について詳しく知りたい方は以下のリンク先をご覧ください。

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傷病手当金支給の4つの条件

傷病手当金が支払われるには、以下4つの条件を満たす必要があります。それぞれの条件についてご説明します。

療養が必要である病気やケガの原因が業務外であること

業務以外での病気やケガの療養のために休んでいる場合に限ります。仕事中や通勤中などの業務内の原因による病気やケガの療養の場合は、傷病手当金ではなく労災保険の休業補償給付(業務災害)や休業給付(通勤災害)などの対象になる可能性があります。

仕事に就くことができない状態であること

傷病手当金を申請するには、仕事に就くことができない状態であることも条件となります。仕事に就くことができない状態とは、今まで携ってきた業務が病気やケガの療養のために従事できない状態を指し、医師の意見などを考慮して判断されます。

連続する3日間を含み、4日以上仕事を休んでいること

傷病手当金の条件として「待期期間」を経過している必要があります。仕事を休んだ日から連続した3日間を「待期期間」と呼びます。傷病手当金は待期期間を除いて、4日目以降の休んだ日に対して支給されます。

 

例えば、連続して仕事を2日間休んだ後、3日目に出勤して仕事をおこなった場合は「連続した3日間」ではなくなるため、待期期間の条件を満たしていません。

 

 

傷病手当金の待期期間には、土日祝日などの公休日や有給休暇も待期期間のカウントに含まれます。そのため、給与の支払いの有無は関係ありませんが、あくまでも連続した3日間であることが条件なので注意しましょう。

休んだ期間に給与の支払いがないこと

傷病手当金は休んでいる期間に給与の支払いがないことも条件となります。業務外の病気やケガの療養のために休業している期間中に生活の保障をおこなう制度であるため、会社から給与が支払われている期間は傷病手当金の対象外になります。ただし、給与の支払いがあっても、傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額が支給されることがあります。

傷病手当金がもらえないケースとは?

ここでは、傷病手当金がもらえないケースについていくつか説明をします。以下のようなケースでは、傷病手当金がもらえなかったり、支給額の調整をされたりする場合があります。

障害厚生年金または障害手当金(一時金)を受給している

同じ病気やケガにより、厚生年金保険の障害厚生年金、もしくは障害手当金(一時金)を受給している場合、同時期に傷病手当金をもらうことはできません。しかし、障害厚生年金の受給額(合わせて障害基礎年金も受給している場合にはその合計した額)の360分の1が、傷病手当金の日額よりも低い場合には、その差額分が支給されます。

 

障害厚生年金または障害手当金(一時金)を受給している

 

また、障害手当金を受給する場合も、同時期に傷病手当金をもらうことはできません。障害手当金は一時金として、一回限りの支給となりますが、傷病手当金の合計額が障害手当金の一回の支給額を超えるまで、傷病手当金は支給されないこととなります。

労災保険の休業補償給付を受給している

労災保険の休業補償給付とは、仕事中におきたケガや仕事を原因とする病気によって休業する際に補償をしてくれるものです。健康保険の傷病手当金は、仕事以外のケガや病気が対象であり、そもそも補償対象が異なるため、同時に受給をすることはできません。

 

また、仮に仕事以外のケガや病気で働けなくなった場合にも、別の理由で労災保険の休業補償給付を受給している場合、その期間中は傷病手当金をもらうことはできません。しかし、労災保険の休業補償給付の日額が、傷病手当金の日額よりも低い場合には、その差額分が支給されます。

出産手当金を受給している

出産手当金を受給している場合にも、傷病手当金をもらうことはできません。両方を受給できる期間の場合は、出産手当金の方が優先されます。ただし、傷病手当金の日額の方が出産手当金の日額よりも多くなる場合には、傷病手当金を申請することで、差額分をもらうことができます。

 

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傷病手当金の金額の計算方法や支給日について

傷病手当金の金額は、もともともらっていた給与額により異なります。また、傷病手当金の支給開始日以前の健康保険の加入期間が12ヶ月以上か、未満かによっても変わってきます。そして、金額の計算のベースとなるのが「標準報酬月額」です。標準報酬月額とは、被保険者の給与などの報酬の月額を、一定の範囲で区分したものをいいます。

 

ここでは実際の例を交えながら、傷病手当金の金額や計算方法、支給日についてご紹介していきます。

健康保険の加入期間が12ヶ月以上の場合

健康保険の加入期間が12ヶ月以上の場合の、傷病手当金の金額の計算方法は以下になります。

 

計算方法

1日あたりの金額(支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額) ÷30日(※1)×2/3(※2)

 

※1「30日」で割り、1の位は四捨五入します
※2「2/3」で計算して小数点がある場合は、小数点第1位を四捨五入します

 

計算例

実際に「健康保険の加入期間が1年以上」あり「標準報酬月額が28万円」の場合を計算式に当てはめるとこのようになります。

 

1日あたり金額:280,000円÷30日×2/3=6,220円

健康保険の加入期間が12ヶ月未満の場合

健康保険の加入期間が12ヶ月未満の場合、12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額を出すことができません。そのため、上記計算式の該当部分に、以下いずれかの低い方を採用して計算をします。

  • 支給開始日の属する月以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
  • 標準報酬月額の平均値

傷病手当金の支給日

傷病手当金は申請書を提出後、内容に不備がなく受理された場合、2週間~1ヶ月程度で支給されます。しかし、記入漏れなど内容にミスがあった場合は、それより時間がかかることになるので、申請書は慎重にチェックをしましょう。

 

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傷病手当金の申請方法は?

傷病手当金の支給を受けるには、一定の条件を満たした後に会社が加入している健康保険組合に「傷病手当金支給申請書」を提出する必要があります。傷病手当金支給申請書は会社からもらうか、加入している健康保険組合のWebサイトからもダウンロードすることが可能です。

 

具体的な申請の流れは、以下の通りになります。

  1. 会社に傷病手当金を申請したい旨を伝える
  2. 傷病手当金支給申請書を受け取り、必要事項を記入する
  3. 医師に申請書の必要な欄を記入してもらう
  4. 会社に申請書の必要な欄を記入してもらう
  5. 会社が加入している健康保険組合に申請書を提出する

傷病手当金支給申請書を提出した後に、会社が加入している健康保険組合が審査をおこない、条件をクリアしていれば傷病手当金の支給が開始されます。

傷病手当金の申請書の書き方・提出先

傷病手当金支給申請書は大きく分けて「被保険者記入用」「療養担当者記入用」「事業主記入用」があります。

  • 被保険者記入用:本人が記入します
  • 療養担当者記入用:担当の主治医が記入します
  • 事業主記入用:会社が記入します

このため、自分で記入するだけではなく、主治医や会社に依頼をする必要があるため、余裕を持って準備をしましょう。

 

提出は、一般的には会社経由で、会社が加入している健康保険組合へ出すことになります。ただし、直接本人から郵送をする場合もあるため、事前に会社に確認をとっておくといいでしょう。

傷病手当金には申請期限がありますか?

傷病手当金には申請期限(時効)があります。病気やケガにより働けなかった期間の起算日(労務不能期間の初日)の翌日から「2年」が過ぎると請求できなくなります。

 

また、傷病手当金は病気やケガにより働けなかった日に対して支給されるため、日ごとに時効が起算されます。例えば、起算日が4月1日の場合、申請期限は2年後の4月1日まで、起算日が4月2日に対して申請期限は2年後の4月2日まで、となります。

 

このため、退職後に遡って申請をする場合などには早めの対応を心がけましょう。

 

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就労移行支援事業所「LITALICOワークス」

現在休職中の方で復職や再就職について悩んでいる場合には、障害のある方の就職活動全般をサポートしている「就労移行支援事業所」を利用するのも選択肢の一つです。休職中の方でも、一定の条件を満たせばリワーク(※)として利用できる場合もあります。

 

(※)リワークとは、職場復帰に向けて支援をおこなうプログラムのことです。

 

就労移行支援事業所LITALICOワークスでは「自分に合う仕事が分からない」「無理なく働き続けられる環境を探したい」という方が数多く利用されており、これまでに13,000名以上の方が一般企業に就職しました。

 

ストレスとの付き合い方や対処法を学ぶ「ストレスマネジメントプログラム」や、自分にあった職場環境について考える「自己理解プログラム」など、一人ひとりに合わせたカリキュラムを多数用意しており、専門知識の豊富なスタッフがサポートしていきます。また就職準備だけでなく、就職後に長く働き続けるための「定着支援」など、幅広いサービスを提供しています。

 

LITALICOワークスの利用有無にかかわらず、仕事の悩みや今後の働き方について相談したいことがあれば、お気軽にご相談ください。

傷病手当金のまとめ

傷病手当金は、仕事以外のことがきっかけで病気やケガにより働けなくなったときにも、生活を保障するために設けられているありがたい制度です。

 

今後、傷病手当金の申請を考えている方は、まずご自身が条件に該当しているかを早めに確認しておくといいでしょう。傷病手当金が対象外でも、ほかの制度が利用できる可能性もあります。一人で抱え込みすぎず、主治医や産業医・専門の支援機関などに相談してみてください。

 

また、現在働いている・いないにかかわらず、今後の働き方に迷われている場合には、ぜひ就労移行支援事業所「LITALICOワークス」にお気軽にお問い合わせください。

更新日:2024/06/18 公開日:2020/12/04
  • 監修者

    行政書士/親なきあと相談室主宰/社会保険労務士

    渡部 伸

    慶應義塾大学法学部卒後、出版社勤務を経て、行政書士、社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。現在、渡部行政書士社労士事務所代表。自身も知的障害の子どもを持ち、知的障害の子どもをもつ親に向けて「親なきあと」相談室を主宰。著作、講演など幅広く活動中。

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