「就労継続支援B型」とは、障害や難病のある人が利用できる障害福祉サービスのひとつです。障害や年齢、体力などの理由から、一般企業などで雇用契約を結んで働くことが難しい方に対して、就労の機会や生産活動の場を提供しています。就労継続支援B型に通うと、働くために必要な知識や能力向上のための訓練を受けることができるほか、生産活動に対する対価として「工賃」を受け取ることができます。
この記事では、就労継続支援B型の詳細に加えて、就労継続支援A型や就労移行支援との違いについても解説します。
「就労継続支援B型」とは、障害や難病のある人が利用できる障害福祉サービスのひとつです。障害や年齢、体力などの理由から、一般企業などで雇用契約を結んで働くことが難しい方に対して、就労の機会や生産活動の場を提供しています。就労継続支援B型に通うと、働くために必要な知識や能力向上のための訓練を受けることができるほか、生産活動に対する対価として「工賃」を受け取ることができます。
この記事では、就労継続支援B型の詳細に加えて、就労継続支援A型や就労移行支援との違いについても解説します。
目次
就労継続支援とは、障害者総合支援法に基づいた障害福祉サービスにおける福祉的就労(※)のうちのひとつです。就労継続支援には「A型」と「B型」の二種類があります。
※福祉的就労とは、就労支援施設などで障害福祉サービスを受けながら働くことを指します。
就労継続支援B型は、一般企業などで雇用契約を結んで働くことが難しい方に対して、就労の機会や生産活動の場を提供するサービスです。働くために必要な知識やスキルを身につけられるよう訓練をしたり、支援を受けたりすることができます。
就労継続支援B型事業所では「生産活動」をおこない、その対価として「工賃」を受け取ることができます。生産活動の内容は事業所によって異なりますが、農作業や部品加工などの軽作業が多く、同じ就労継続支援でもA型と比べてより細分化された作業をおこなう場合が多いです。
就労継続支援B型の大きなメリットの一つは、「障害による困りごとの状況や症状などに合わせて、無理のないペースで働くことができる」ということです。事業所ごとに決まりはありますが、働く時間や日数についても相談できる場合が多く、働くことに徐々に慣れていくことができます。
また、スタッフが身近にいる環境の中で、障害についての理解を得ながら働くことができるので、安心して継続的に働きやすいというメリットもあります。
厚生労働省の調査によると、令和3年現在、28万人以上の方が就労継続支援B型を利用しています。
就労継続支援A型とは、一般企業などで働くことが困難であるものの、一定の支援があれば雇用契約に基づいて働ける方を対象にしたサービスです。就労継続支援B型と同様に、障害者総合支援法に基づいた障害福祉サービスにおける福祉的就労です。
働くために必要なスキルを身につけたり、支援を受けたりできる点は就労継続支援B型と同じですが、大きな違いは「雇用契約を結ぶかどうか」という点です。就労継続支援A型の場合は事業所と雇用契約を結ぶため、最低賃金が保障されています。
就労継続支援B型は、障害福祉サービス受給者証が支給されており、希望する事業所に空きがあれば利用することができます。一方で、就労継続支援A型を利用するためには、上記に加えて書類選考や面接もあります。対象年齢は原則18歳以上65歳未満です。
就労継続支援B型を利用できる対象者は、障害や難病のある方で、下記のいずれかに当てはまる方です。
特別支援学校に通う学生が、卒業後すぐに就労継続支援B型の利用を検討している場合には、在学中に就労移行支援事業者などによるアセスメントを受ける必要があります。
また、障害者手帳を取得していない方の場合でも、主治医の診断書などがあることで障害福祉サービス受給者証が支給され、就労継続支援B型を利用できることもあります。
利用条件については、お住まいの自治体によって異なるため、自分が対象になるかどうかは相談窓口(障害福祉窓口など)に相談するようにしましょう。
なお、2025年10月から新たに「就労選択支援」という制度の運用が開始されます。就労選択支援とは、障害のある人が就労先や働き方についてよりよい選択ができるよう、就労アセスメントを通して、希望や能力、適性に合った仕事探しや支援機関選びができるように支援するサービスです。就労選択支援の運用が開始されると、就労アセスメントをおこなったうえで、就労継続支援B型の利用が決定されることになります。
就労継続支援B型ではどのような作業をおこなうのか、どのぐらいの工賃がもらえるのかについてご紹介します。
就労継続支援B型での仕事は「生産活動」と呼ばれます。生産活動の作業内容は事業所によって異なり、同じ就労継続支援でもA型と比べてより細分化された作業が多くあります。よくある例としては、以下のようなものがあります。
事業所の方針や本人の希望により、勤務日数や1日あたりの作業時間は柔軟に調整することができます。
週あたりの勤務時間は「20~25時間」の割合が高くなっていますが、1日3時間×週3日で働いている方もいれば、1日5時間×週5日で働いている方もいます。事業所によっては「週1回、短時間の利用からでも可能」というところもあります。慣れてきてから徐々に勤務時間を増やすこともできます。
就労継続支援B型では、生産活動に対する対価として「工賃」が支払われます。雇用契約を結ばないため、賃金ではなく工賃と呼ばれており、就労継続支援A型のように最低賃金を保障されているわけではありません。
厚生労働省の調査によると、就労継続支援B型の平均月額工賃は「16,507円」、時間給にすると「233円」となります。(令和3年度時点)
参考までに、地域別の平均工賃は以下のようになっています。
ただし、作業内容や働く時間、日数などにより工賃は異なるため、上記はあくまでも目安となります。
就労継続支援B型の利用期間と利用料についてご説明します。
就労継続支援B型には、利用期限や年齢制限は設けられていません。そのため、ゆっくりと時間をかけながら就労経験を積み、訓練を重ねることができます。
就労継続支援B型での勤務は「福祉的就労」のため、働く場であるとともに、「障害福祉サービス」を受ける場でもあります。そのため、世帯所得(※)により、障害福祉サービスの利用料が発生する場合があります。
利用料は世帯所得に応じて月の上限額が定められており、これを「負担上限月額」と呼んでいます。利用したサービス量にかかわらず、上限額を超えた利用料が発生することはありません。
(※)世帯の範囲は、障害のある方とその配偶者です。
就労継続支援B型事業所を探すときは、自分に合った事業所を選ぶことが大切です。そのために押さえておきたいポイントについてご紹介します。
就労継続支援B型事業所によって、作業内容はさまざまです。パソコンを使う作業もあれば、お菓子作りや箱詰め作業、シール貼りのような軽作業もあります。清掃業務や農作業のように身体を動かすことが多いケースもあります。
そのため、自分に合った作業内容か?無理なく続けることはできそうか?などを考えることが大切です。実際に事業所の利用を開始する前に、見学や体験ができる場合も多くあります。
一言で就労継続支援B型といっても、事業所により支援方針や雰囲気が異なります。
例えば、より難易度の高い作業ができるようにスキルアップに重きを置いている事業所もあれば、心身共に無理なく働き続けることに重きを置いている事業所もあります。
サポート体制なども異なるため、「自分が就労継続支援B型に通う目的と合っているのか?」という視点で判断してみるといいでしょう。
また、事業所やスタッフの雰囲気もさまざまです。作業以外のアクティビティを多く取り入れており、明るく元気な雰囲気の事業所もあれば、落ち着いて作業をおこなう方針の事業所もあります。見学や体験時に確認してみるといいでしょう。
工賃は事業所により異なりますが、厚生労働省が公表した令和3年度の全国平均工賃は「月16,507円」です。経済的な支援としては、自立支援医療や障害年金、生活保護もあります。自分が該当するかどうか確認しておくといいでしょう。
自立支援医療、障害年金、生活保護については以下の記事をご参照ください。
最後に、事業所までのアクセスも大切なポイントです。
作業内容や雰囲気を気に入っていても、あまりに遠すぎる事業所だと、体力的にも時間的にも負担が大きくなってしまいます。
また、交通費などの金銭面での負担についても確認しておくことが大切です。
自治体によっては、交通費の一部を助成してくれる場合もあるため、合わせて確認するようにしましょう。
就労継続支援B型の利用を検討する際は、まず主治医に相談をしてみてもいいでしょう。利用に向けてのアドバイスや、自分に向いている仕事などについてアドバイスをもらえるかもしれません。
就労継続支援B型を利用するときの流れは、下記の通りです。
就労継続支援B型を探すには、インターネットを使って自分で調べる方法、お住いの地区町村の障害福祉窓口で紹介してもらう方法、地域の相談支援事業所と相談しながら探す方法があります。見学や体験を実施している事業所もあるので、もし気になる事業所を見つけた場合には、事前に問い合わせをしてみましょう。
また、就労継続支援B型は利用できる人数(定員)が決まっているため、「定員に空きがない」などの理由で利用ができない場合もあります。見学や体験について問い合わせる際、空き状況についても確認しておくといいでしょう。
利用したい就労継続支援B型が決まったら、お住いの自治体の障害福祉窓口などで利用申請をします。利用申請をすると、担当者から現在の状況やサービス利用の意向について簡単な聞き取り調査があります。
利用を開始するためには「サービス等利用計画案」の提出が必要です。
サービス等利用計画案は専門の相談支援員に作成を依頼する場合が多いですが、依頼をしても利用者側に費用負担がかかることはありません。「セルフプラン」としてご自身やご家族で作成することができます。
必要書類を提出し、障害福祉サービスの利用が認められたら、自治体より「受給者証(障害福祉サービス受給者証)」が発行されます。
受給者証が交付されると、就労継続支援B型の利用が開始できるようになります。
就労支援には、就労継続支援のほかにも「就労移行支援」や「就労定着支援」があります。
就労継続支援A型・B型は福祉的就労の中で働くのに対して、就労移行支援は「一般企業などで働くための準備をする場所」であり、就労定着支援は「一般企業などで長く働き続けるためのサポート」を指します。
それぞれの目的が異なるため、自分がどのように働きたいかを考えたうえで選択できるといいでしょう。
就労移行支援とは、障害や難病のある人が一般企業などへの就職を目指す際、自分にあった就職先を見つけるための自己分析をしたり、就職に必要な知識やスキルを身につけるために利用するサービス場所です。「訓練をする場所」であり、「働く場所」ではないため、給料や工賃の支払いはありません。
また、就労移行支援は利用期限が「原則2年」と定められていることも、就労継続支援との大きな違いです。
就労定着支援とは、就労継続支援や就労移行支援などの障害福祉サービスを利用して、一般企業などに就職した方が利用できるサービスです。就職してから6か月を経過した方が対象となり、長く働き続けるために必要なサポートを受けることができます。利用期限は「3年」です。
主な違いを図にまとめると、以下のようになります。
就労継続支援B型で働くことに慣れたら、就労継続支援A型や就労移行支援にステップアップしたり、一般企業での就職を目指したりすることも可能です。
それぞれの就労福祉サービスを経て一般企業に就職した方の割合は以下の通りです(令和元年時点)。
大切なのは「自分が生涯を通じてどのような生活や働き方を実現したいのか?」ということです。家族や主治医、自治体の相談窓口などとも相談しながら検討しましょう。
就労移行支援所であるLITALICOワークスでは、障害のある方が自分らしく働くために、一人ひとりにあったサポートを提供しています。
例えば「体調がなかなか安定しない」という方には、体調管理やストレスコントロールなどのプログラムの中で、ストレスの原因を見つけストレスとうまく付き合っていく方法を一緒に考えていきます。「自分に合った仕事が分からない」という方には企業インターンの実施などを通して、自分にあった仕事内容や環境を一緒に整理しています。
就労継続支援(福祉的就労)を使うか、一般企業への就職を目指すか迷われていた方で、実際にLITALICOワークスを使って一般企業に入社した方もいます。
「就労継続支援と就労移行支援、どちらがいいのか分からない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。
LITALICOワークスに通い始めた当初は、まずは体調を整えることを目標に週3日・1日3時間で利用を開始したAさん。
ストレスマネジメントなどのプログラムを受けながら、「どういうときに体調が悪くなるのか」などの変化を記録し、スタッフと一緒に日々の振り返りをおこないました。症状が悪化する前にできる対処法を試行錯誤しながら、徐々に体調のコントロールができるようになっていきます。
就職後は、時短勤務から始めて、現在はフルタイムでも安定して働き続けられています。
LITALICOワークスに通うまでは、短期離職を繰り返しており、一歩踏み出すことがこわくなってしまっていたBさん。そのため、まずは自分に合った職場環境を探すために、自己分析プログラムなどを通して自己理解を深め、企業インターンへの参加などを積極的におこないました。
しかし、気になる企業があっても「働いたらまた長続きしないかもしれない」と不安が出てきてしまいます。そこで、スタッフに相談をし、選考の一環として企業インターンの機会を設けてもらえないか企業側に相談しました。
インターンを通して、その企業で働くことのイメージが持てたBさんは、選考の結果、無事に入社をすることになりました。今ではその企業で長く働き続けることができています。
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに、無理のないペースで働くことのできる障害福祉サービスです。
各事業所により、仕事内容や雰囲気などは異なるため、事前に見学や体験などを通じて働くイメージが持てるかどうかを確認してみることが大切です。
また、障害のある方が働くための支援には、就労継続支援B型に加えて、「就労継続支援A型」「就労移行支援」などさまざまなサービスがあります。それぞれ目的が異なるため、まずはどのような生活や働き方を目指したいかを整理したうえで、自分にあったサービスを考えていきましょう。
「それぞれのサービスのメリットやデメリットが知りたい」「自分に合うサービスが分からない」などという方は、お気軽にLITALICOワークスにご相談ください。
監修者
社会保険労務士 行政書士
高橋 悠
行政書士事務所にて約8年間、介護・障害福祉サービス事業所の立ち上げ・運営支援に携わった後、2016年10月に独立開業。顧問先のうち7割以上は介護・障害福祉サービス事業所介護・障害福祉サービス事業所であり、別会社「合同会社サニープレイス」にて小規模保育所B型及び企業主導型保育所を経営している。
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