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ADHD(注意欠如多動症)と仕事|無理なく続けるコツとは?就職や適職探しも【専門家監修】

更新日:2024/08/07

ADHD(注意欠如多動症)のある方のなかには、仕事で「マルチタスクが苦手」「納期に遅れることが多い」「確認したつもりでも抜け漏れがある」などで困っている方もいるのではないでしょうか?

 

ADHD(注意欠如多動症)には大きく分けて「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特性があり、また同じ診断名でも仕事上での困りごとは一人ひとり異なります。

 

仕事上での困りごとは、本人の特性と職場環境(仕事内容や人間関係など)とのミスマッチによって起きることが多くあります。そのため、本人の特性を把握すること、そのうえで、自分でできる対処法を実践したり職場の方々と相談しながら自分に合うサポートを受けたりすることでその困りごとを軽減させることもできます。

 

この記事ではADHD(注意欠如多動症)の特性や仕事での困りごと、対応方法や相談できる支援機関などを紹介します。

ADHD(注意欠如多動症)のある方の仕事の悩み・困りごと

ADHD(注意欠如多動症)とは「不注意」「多動性」「衝動性」を主な特性とする発達障害のうちのひとつです。

 

以前は、注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、2022年に刊行されたDSM-5-TR(アメリカ精神医学会が作成している精神疾患の診断基準・診断分類)で、「ADHD(注意欠如多動症)」に変更されました。

 

これらの特性と周囲の職場環境のミスマッチによって、さまざまな困りごとが起きることがあります。仕事においては「業務に集中ができない」「ケアレスミスが多い」などが困りごととしてよく見られます。

 

それぞれの特性と困りごとについてもう少し詳しく見てきます。「多動性」と「衝動性」はここでは「多動性・衝動性」としてまとめて紹介します。

「不注意」からくる仕事での困りごと例

ADHD(注意欠如多動症)の「不注意」は「一つのことに注意を持ち続けるのが難しい」ということが挙げられます。

 

「不注意」からくる仕事での困りごと例としては

  • マルチタスク(複数の業務を並行して取り組むこと)が難しい
  • スケジュール管理が苦手
  • 遅刻が多い
  • 落とし物、失くし物、忘れ物が多い(書類、財布、鍵など)
  • ケアレスミスが多い

などがあります。

 

ただし、これらの困りごとは「不注意」ではなく「多動性・衝動性」の特性による場合もあります。

「多動性・衝動性」からくる仕事での困りごと例

ADHD(注意欠如多動症)の多動性は「じっとしていることが苦手」、衝動性は「思いついたことをすぐ言葉や行動に移す傾向がある」ということが挙げられます。

 

多動性・衝動性からくる仕事での困りごと例としては

  • 会議などじっとしている場面で身体が動いてしまうことがある
  • 優先順位をつけて作業することが難しい
  • 場面にかかわらず思ったままを発言することがある

などがあります。

 

こういった困りごとにより、仕事や人間関係で悩んでしまうという場合があります。


ただし、これらの困りごとは「多動性・衝動性」ではなく「不注意」の特性による場合もあります。

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ADHD(注意欠如多動症)が仕事で強みになることもある

ADHD(注意欠如多動症)の特性は、周囲の環境と合わないことで困りごとが起きることがあります。しかし、その反面、強みになる場合もあります。

 

強みになる例としては

  • 興味のあることには集中力を発揮する
  • 好奇心旺盛で行動力がある
  • 物おじしないで発言できる

などがあります。

 

このようにADHDの特性自体にいい・悪いがあるわけではなく、本人の特性や本人を取り巻く環境によって、困りごとにも強みにもなり得ます。

 

本人にどういった特性があり、それがどのような環境において強みとなるのかをを把握しておくことは、働くうえでの助けともなるでしょう。

ADHD(注意欠如多動症)のある方が仕事を無理なく続けるためにできること

仕事での困りごとは、ADHDの特性と周囲の環境とのミスマッチによって生じます。そのため、仕事上の困りごとへの対処法を考えるには、本人の特性や困りごとを把握するだけではなく、自分でできる対処法や職場の方々と相談しながら自分に合うサポートを検討することも大切です。以下のポイントを抑えながら進めていくといいでしょう。

  • 自分の特性や困りごとを把握する
  • その困りごとに対する自己対処を考える
  • 自己対処が難しい場合は職場に配慮を相談する

それぞれを紹介していきます。

自分の特性や困りごとを把握する

まずは自分の特性や、仕事でどのようなことに困っているのかを把握することが大事です。これまでの仕事でうまくいったことやつまづきやすい場面、得意や苦手などを書き出してみると傾向がつかみやすくなります。

 

ほかにも「障害者職業総合センター」などの公的な機関では、ADHD(注意欠如多動症)のある方によくある仕事の困りごとがリスト化されたものがあります。そういった資料も活用しながら、自分の特性や困りごとを把握していくのもいいでしょう。

困りごとに対する自己対処を考える

仕事での困りごとを把握したら、ツールなどをうまく使いながら、自分で対処できる方法がないかを考えてみましょう。

 

ここでは、ADHD(注意欠如多動症)のある方がよくある困りごとと自己対処の一例をあげていきます。

 

タスクの抜け漏れが多い

その困りごとについては、

  • 業務を依頼されたら、やることリストに書く
  • 業務が終わったら、やることリストに横線を引いて消す

といったように、視覚的に分かりやすくする方法があります。さらに、やることリストに納期も書くことで、優先順位を可視化することもできます。

 

やることリストを見ることを忘れてしまう

その困りごとについては、

  • パソコンの横に、やることリストを貼る
  • いつも持ち歩く手帳の該当日のページにやることリストを書く
  • TODOアプリを活用し、時間になったら通知が来るように設定する

などの工夫をすることで、タスクの抜け漏れを減らすことにつながります。

 

ほかにも、よく困りごとやその対処法として以下のようなものがあります。

 

忘れ物や遅刻が多い

前日の夜に、翌日の持ち物などの準備をおこない、家を出発する時間にアラームタイマーをセットする

 

なくしものが多い

  • 仕事道具ごとに箱や引き出しの仕切りを用意し色分けするなど、しまう場所を分かりやすくする
  • 鍵や財布、かばんについて紛失防止のためのスマートタグを活用する

集中が難しい

  • 端の席に移動する
  • イヤーマフをするなどで、目や耳から入る情報を減らす

ケアレスミスが多い

チェック項目をリスト化し、順番に確認する

 

こちらも以下の資料にも対策例が載っていますので、参考にしてみるといいでしょう。

自己対処が難しい場合は職場に配慮を相談する

自己対処が難しい場合には、職場に「合理的配慮」を相談する方法もあります。

 

「合理的配慮」とは障害者雇用促進法に定めているもので、障害のある方から相談があったときに、企業は負担が重くなりすぎない範囲で本人が働きやすくするためのサポートを提供しなければいけない義務です。詳細は以下のリンクをご確認ください。

仕事での困りごとは、自分ひとりだけでは解決が難しい場合も多くあります。先ほど紹介したツール、特にスマートフォンやイヤホンなどの電子機器を使う場合は、職場によっては許可が必要な場合があります。そういったときは、合理的配慮として職場の上司や人事、相談窓口などに相談するようにしましょう。

 

ツール使用のほかにも、職場環境に関することや、同僚や上司に協力してもらう必要がある場合にも、合理的配慮を相談することができます。

 

一例としては、

  • 始業時にその日のタスクや優先順位を上司と一緒に確認する
  • スケジュールやタスクを目に入りやすい場所(例:ホワイトボードなど)におく
  • 指示を出す人や、困ったときに相談する人を明確にしてもらう
  • 席の移動やパーティションの使用などで集中しやすい環境を作る

などがあります。

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ADHD(注意欠如多動症)のある方が休職・退職を検討するときに大切なこと

業務や周囲との関係がうまくいかず、今の状況のままで続けることが難しいと感じたら、ひとりで悩みを抱え込まず、医師や職場、産業医などへ相談することが大切です。

 

休職や退職をするのも一つの手段ですが、大きな決断のため、周りの方々と相談しながら慎重に進めていくことが大切です。職場以外の相談先もありますので、活用してみるのもいいでしょう。後ほど支援機関についてご紹介します。

 

また、休職や退職時に活用できる支援制度を知っておくことで、安心につながるかもしれません。ADHDのある方が活用できる支援制度は以下のようなものがあります。

休職・退職時にも利用できる支援制度

自立支援医療制度(精神通院医療制度)

発達障害などによる通院中の人の医療費の自己負担額を軽減する制度です。自立支援医療制度では通院治療などの医療費が原則1割負担となり、世帯の所得に応じて、1ヶ月当たりの負担の限度額が設定されます。詳しくはお住まいの自治体の障害福祉窓口へご確認ください。

障害者手帳

発達障害のある方は、精神障害者保健福祉手帳を取得することができる場合もあります。申請には各種条件がありますので、まずは主治医へご相談ください。

 

障害者手帳を取得すると、疾患の種類や程度に応じてさまざまな福祉サービスや税金の控除、公共交通機関の運賃や公共施設利用料の割引などを受けることができます。

 

また、障害者雇用といって、障害に対する理解や支援を得られやすい職場で働く選択肢も選ぶことができます。

傷病手当金

疾患や怪我で仕事を長期間休むときに無収入になってしまうことを避け、生活を保障する目的で支給される手当金です。受給には各種条件がありますので、詳しくは会社の人事担当者や所属する健康保険組合の窓口などへご確認ください。

雇用保険の基本手当(通称:失業保険や失業給付)

雇用保険の基本手当(通称:失業保険や失業給付)とは(いつでも就職できる能力があるにもかかわらず)失業した方が、安定した生活を送りながら新しい仕事に就くまでの経済的な負担を軽くする制度です。

 

離職しているすべての人がもらえるわけではなく、離職前の会社で雇用保険に加入しており、一定の条件を満たした人のみが受給できます。また、失業手当を受給中に新しい仕事が決まった場合には、「再就職手当」がもらえる場合もあります。詳しくはお近くのハローワークへご確認ください。

障害年金

障害や疾患のために、生活や仕事に支障が出たときに支給される年金です。働いていた場合でも、症状により仕事が制限されていると判断された場合は、生活の一部を支援する額が支給されます。受給には各種条件がありますので、詳しくはお近くの年金機構の窓口へご確認ください。

生活保護

怪我や疾患などにより働くことが難しく、収入が不十分で生活に困った場合に、最低限度の生活を保障するための費用が給付される制度です。受給には各種条件がありますので、まずはお住まいの自治体にてご相談ください。

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ADHD(注意欠如多動症)のある方が就職の際に利用できる支援機関について

まずは今の職場で、ひとりで対処できることを試してみたり、職場の方に合理的配慮の相談をしてみたりするなど、できることから始めてみましょう。それでも難しい場合は、 発達障害のある方の就職について相談できる支援機関を活用してみることも、選択肢のうちのひとつです。

 

支援機関では、自分の特性や仕事での困りごと、その困りごとに対する対処法、職場での配慮内容の検討を、就労支援スタッフと一緒に考えていくというサポートがうけられます。

 

就職の際に利用できる支援機関は以下のようなものがあります。どの支援機関へ相談したらいいか分からない場合は、お住まいのお近くの障害福祉窓口へ相談してみるといいでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方の仕事や生活に関する支援を総合的におこなっている支援機関です。仕事に対しては、職業準備訓練、職場実習のあっせんなどの支援のほか、就職活動や働いた後の職場定着支援などをほかの関係機関と連携しながらおこなっています。

地域障害者職業センター

地域障害者支援センターでは、障害のある方に対し職業リハビリテーションの考えに基づいた専門的な支援などをおこなっている支援機関です。例えば、自分の特性に合った仕事を分析するための「職業評価」という検査を受けたり、ジョブコーチが職場に出向き、本人や職場の上司、同僚に対して障害特性を踏まえたサポートをおこなったりしています。

ハローワーク

ハローワークには、障害や疾患のある人の就労を支援する窓口「専門援助部門」があります。また、仕事に関する相談やカウンセリングの実施のほか、障害や疾患のある人を対象にした求人の紹介などをおこなっています。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、一般企業への就労を目指す障害や疾患のある人の求職から就職までの一連の過程をサポートする事業所です。利用者は事業所に通い、職業訓練や、面接や履歴書対策などの就職活動のサポート、就職後の定着支援などを受けることができます。

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ADHD(注意欠如多動症)のある方の就職サポート

 

LITALICOワークスでは「就労移行支援事業所」を運営しています。これまで、多くのADHD(注意欠如多動症)のある方の就職をサポートしてきました。

 

本人の特性からくる困難さを理解し、自分でできる対処法や自分に合う職場環境を知ることができるようにサポートしています。具体的には、自己理解を深めるプログラムや職場への体験実習(インターンシップ)などをおこなっています。また支援スタッフが職場環境へ働きかけることで合理的配慮を得るためのサポートもしています。

 

障害者手帳をお持ちでいない方でも利用可能な場合がありますので、ぜひ、お気軽にご相談ください。一緒に「自分らしく働く」ことを考えてみませんか?

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ADHD(注意欠如多動症)のある方の仕事まとめ

ADHD(注意欠如多動症)には「不注意」「多動性」「衝動性」という特性があります。

 

ADHD(注意欠如多動症)のある方の仕事での困りごとは、ADHD(注意欠如多動症)のある方の特性だけではなく、職場環境(仕事内容や人間関係など)によっても起こります。また、ADHDという診断名は同じでも具体的な特性や困りごとは人それぞれ異なります。

 

そのため、自分の特性や仕事での困りごとを把握するところから始めましょう。そのうえで、自分でできる対処法を検討したり職場の合理的配慮を得たりすることで、自分に合う職場環境を整えていくことで、働きづらさを小さくできる可能性があります。

 

職場の方に相談しても仕事での困り事が解消されず、ひとりで悩んでいるときは、発達障害のある方の就職をサポートする支援機関も活用してみましょう。

 

そして「就職活動に不安がある」「自分らしく働きたい」など働くことにお悩みがある場合、ぜひLITALICOワークスへご相談ください。

更新日:2024/08/07 公開日:2020/07/13

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