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解離性同一性障害(解離性同一症)とは?症状・原因は?診断や治療・接し方も解説

更新日:2024/08/11

解離性同一性障害(解離性同一症)(※)は、つらい経験やストレスが原因となり、本来の人格とは異なる複数の人格が代わるという症状が表れます。

 

それによって、日常生活や仕事に困難や支障があり、つらさを抱える人たちがいます。

 

今回は、解離性同一性障害(解離性同一症)とは何なのか?というところから、その原因や診断、治療方法について解説していきます。

 

(※)解離性同一性障害は現在、「解離性同一症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「解離性同一性障害」といわれることが多くあるため、ここでは「解離性同一性障害(解離性同一症)」と表記します。

解離性同一性障害(解離性同一症)とは?

解離性同一性障害(解離性同一症)とは、強いストレスやトラウマなどから自分を守ろうとした結果、一人の中に2つ以上の別人格が入れ替わり表れるようになり、自己同一性(自分はこういう存在であるという感覚)が損なわれてしまう精神疾患です。

 

少し前までは「多重人格障害」や「二重人格」とも呼ばれていたので、こちらの言葉の方がイメージしやすいかもしれません。

解離性障害について

解離性同一性障害(解離性同一症)は、解離性障害の中の一つです。

 

解離性障害とは、自己同一性が弱くなったり、失われたりしてしまう障害のことです。

 

私たちの意識や記憶、思考、感情といったものは、本来1つにまとまっています。

 

しかし、何らかの原因により、それらのまとまりがなくなることで、記憶の一部がなくなったり、自分が自分でないような感覚に陥ったりと、自分自身を統制できなくなってしまうことがあります。

 

このように意識や記憶などの機能が低下し、「自己同一性」が失われている状態のことを「解離」(かいり)といいます。

 

解離性障害は以下の種類に分けられ、種類によって解離の間に起きる症状が少しだけ異なります。

  • 解離性同一性障害(解離性同一症)
  • 離人症性障害(離人感・現実感消失障害)
  • 解離性健忘
  • 解離性遁走
  • 特定不能の解離性障害

それぞれの特徴や症状については、次の章で解説します。

 

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解離性同一性障害(解離性同一症)の症状は?

解離性同一性障害(解離性同一症)の症状は、一人の中に、まったく異なる性格や性別・記憶・趣味嗜好を持った複数の人格が交代して表れます(交代人格)。

 

交代人格は、2~10人程度であることが多いようですが、100人以上の人格が存在するという症例も報告されています。

 

人格が交代している間の記憶は覚えていないことが多く、日常生活や仕事に影響が出ることもあります。

その他の解離性障害(解離性同一症)の症状

解離性障害には、解離性同一性障害(解離性同一症)のほかに、「離人症性障害 / 解離性健忘 / 解離性遁走 / 特定不能の解離性障害」があります。

 

離人症性障害(離人感・現実感消失障害)

自分の身体が自分のものではないように感じ、自分を外から眺めているように感じます。

 

自分が感じている現実が、現実であるのかどうかが分からなくなってしまうことがあります。

 

これらの症状は、数時間で消えることもあれば、数年にわたって続くこともあるなど、人によって違いがあります。

 

解離性健忘

解離が起きている間や前後の記憶が空白、または喪失した状態になります。

 

いわゆる記憶喪失の状態となり、記憶の失い方によって種類が分けられています。

  • 限局性健忘:限られた期間の出来事が思い出せなくなる
  • 選択制健忘:限られた期間の出来事のうち、一部が思い出せなくなる
  • 全般性健忘:自分が誰でどこにいるのか分からない、過去の経験も忘れてしまうことがある

これらの症状が、いくつか重なって表れることもあります。

 

解離性遁走

解離が起きている間に、突然縁もゆかりもない場所や遠く離れた場所に移動したりします。

 

解離中の記憶を思い出すことが困難なため、遁走(とんそう)が終わった後、恐怖や不安を感じたり、混乱したりすることがあります。

 

特定不能の解離性障害

上記のどれにも当てはまらない解離の症状を指します。

 

解離性障害の中では、この特定不能の解離性障害が一番多く、全体の半数以上を占めているともいわれています。

解離性同一性障害(解離性同一症)の原因は?

解離性同一性障害(解離性同一症)は、いくつかの要因が相互に関わり合って、症状を引き起こしていると考えられ、中でも「ストレスや心的外傷」が関係していると考えられています。

 

私たち人間は、繰り返し心的外傷や強いストレスを受け続けると、自己の意識や思考を切り離して(解離して)、自分の身を守ろうとします。

 

解離は元々、ストレスなどから自分の身を守るための自然な防衛反応ですが、ストレスが強くかかる環境などで解離が習慣化することで、次第に解離性障害に発展していくと考えられています。

解離性同一性障害(解離性同一症)の診断

実際の診断の際には精神科医との面談により、症状を丁寧に調べていきます。

 

解離性同一症では、一人の人に2つ以上のパーソナリティ(人格)が生じている状態です。

 

その人の生活において、自己の感覚や意思の作用が不連続となり、感情、行動、意識、記憶、知覚、認知、感覚運動機能の変容が見られ、社会生活などにも影響されるかどうかも確認されます。

 

また、症状に合わせて、心理検査も必要に応じておこないます。

 

MRI検査や脳波検査など、症状が身体が原因で起こるものではないか調べることもあります。

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解離性同一性障害(解離性同一症)の治療方法

解離性同一性障害(解離性同一症)の治療方法は、下記の通りです。

  • カウンセリング
  • 環境調整
  • 薬物治療

症状に応じて、複数の治療を組み合わせて進めることもあります。

 

それぞれの治療方法について解説していきます。

カウンセリング

どのような治療が最適なのか、症状や今の状況を正しく知るために、まずは、対話(カウンセリング)をおこないます。

 

解離した心の部分は、信頼関係が築かれた間柄にしか姿を見せないこともあります。

 

対話(カウンセリング)を重ねることで主治医・セラピストとの信頼関係を築き、「人格を分けなくても大丈夫」ということを徐々に理解し、「人格の統合」を目指していくことになります。

環境調整

強いストレスやトラウマの原因になっている環境(家庭、学校、職場など)がある場合は、その環境から離れることも大切です。

 

環境調整は本人だけでは難しいことも多いため、周囲の配慮や協力を得ながら落ち着いて治療に専念できる環境を作り上げていくといいでしょう。

薬物療法

解離性同一性障害(解離性同一症)と合わせて、抑うつ状態や不安症状が出ている場合は、その症状に対して抗うつ薬や抗不安薬などが使われることがあります。

解離性同一性障害(解離性同一症)|周囲の接し方は?

解離性同一性障害(解離性同一症)の治療を進めるうえで、周囲の方の協力は大切です。

 

本人の症状や話を否定したりせず、しっかり話を聞いたうえで、適度に寄り添い安心してもらうこと、また、極端に突き放したり、深く入り込みすぎないようにしたりすることも大切です。

 

まずは、解離性同一性障害(解離性同一症)の治療には時間がかかるということを理解し、焦らず継続的に治療が進められる環境作りを進めていくといいでしょう。

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解離性同一性障害(解離性同一症)のまとめ

解離性同一性障害(解離性同一症)の原因は、過去の心的外傷や慢性的なストレスなどであると考えられています。

 

解離性同一性障害(解離性同一症)はしっかりと治療に取り組むことで、良くなったり、症状はありながらも日常生活を送るすべを見つけていくことができます。

 

もし、解離性同一性障害(解離性同一症)に心当たりのある場合や、解離による症状で困難や苦痛を感じている場合は、専門の医療機関の受診を検討してみましょう。

 

仕事のお悩みがあれば、ぜひお気軽にLITALICOワークスまでお問い合わせください。いつでもお待ちしています。

更新日:2024/08/11 公開日:2022/04/27
  • 監修者

    医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント

    染村 宏法

    大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。

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