うつ病にはいくつかの種類があり、多くの人がイメージする典型的な「うつ病」のほかにも、さまざまなタイプのうつ病があります。
うつ病の種類により、症状の表れ方や治療法が異なります。また、うつ病と似た症状が表れる疾患もあるため、自己判断することなく医療機関で診療を受けることが大切です。
この記事ではうつ病の種類や治療方法、うつ病と似た症状が表れる双極性障害(双極症)との違いについて説明します。
うつ病にはいくつかの種類があり、多くの人がイメージする典型的な「うつ病」のほかにも、さまざまなタイプのうつ病があります。
うつ病の種類により、症状の表れ方や治療法が異なります。また、うつ病と似た症状が表れる疾患もあるため、自己判断することなく医療機関で診療を受けることが大切です。
この記事ではうつ病の種類や治療方法、うつ病と似た症状が表れる双極性障害(双極症)との違いについて説明します。
うつ病とは、「何もする気にもなれない」といった抑うつ気分や「今まで興味を持てたことが持てなくなる」「喜びを感じていたことが喜べなくなる」といった興味または喜びの喪失など、さまざまな症状が続き、それによって日常生活に著しい苦痛や機能障害を引き起こす精神疾患のことです。うつ病の症状の表れ方は人によって異なります。
うつ病の原因はまだ明確になっていませんが、脳内の神経細胞の情報伝達にトラブルが生じているのではないかといわれています。またそれだけではなく、ストレスとなるような出来事やうつ病になりやすい性格などと組み合わせて、うつ病の症状が発症するとも考えられています。
うつ病は、こころの健康についての疫学調査に関する研究によると「日本人の約16人に1人が経験したことがある」という調査結果もあり、めずらしい病気ではありません。
うつ病には、いくつかの種類があります。種類の分け方には重症度別や原因別などのさまざまな方法がありますが、ここでは原因や症状によって分類されたうつ病の種類について主な4つについて紹介します。
従来「うつ病」と考えられてきたタイプの典型的なうつ病で、以下のような症状が表れます。
非定型うつ病は、抑うつ気分があっても、楽しいことやうれしいことに反応して一時的に気分がよくなります。また、他人の何気ないひと事に深く傷つく「拒絶過敏症」もみられます。また、有意の体重増加または食欲増加、過眠、身体のだるさ・重さもともないます。
非定型うつ病は、従来型のうつ病とは違い、対人関係や環境に反応して症状が変化しやすいのが特徴です。そのため、性格や能力の問題として誤解されやすく、病状から来ていることに気が付かないことが多くあります。また非定型うつ病の症状は双極性障害(双極症)に出現することもあります。このような理由から、非定型うつ病については専門医による診察や治療を慎重に進めていく必要があります。
なお、非定型うつ病は「新型うつ病」と俗に呼ばれることもありますが、「新型うつ病」は医学的な用語ではありません。
1年のうちの特定の季節になると抑うつ状態になり、その季節が終わると症状が消えるタイプのうつ病です。どの季節でも起こりえますが、特に多いのが秋から冬にかけてうつ状態となり、春から夏にかけては症状が消える「冬季うつ病」です。
発症時には、気力の減退や過眠、過食、体重増加などの症状がみられることがあります。
季節型うつ病の原因はわかっていませんが、冬季季節型うつ病は高緯度地域で増加することから、日照時間が関係しているのではないかと考えられています。
出産後4週間以内に発症するうつ病のことです。妊娠や出産にともなうホルモンバランスの変化や、出産や育児に対する不安などの要因が関係していると考えられています。抑うつ気分だけでなく、パニック発作や、疲れやすさやだるさ、不眠などの身体症状をともなうこともあります。
うつ病の治療では、「休養」「薬物療法」「精神療法」の3つの方法が柱となります。
また上記に加え「運動療法」が取り入れられることもあります。
しかし、うつ病の種類や症状の表れ方、医師の方針などにより、治療の進め方は異なります。このため「自分はうつ病かもしれない」と思っても自己判断することなく、医療機関の診療を受けることが大切です。
うつ病はまず脳をしっかり休ませることが重要です。心身を共に休ませて、エネルギーが再び蓄えられてくるのを待ちます。休養は、個人の状況に合わせて「仕事量を軽減する」「家事や残業しない」「仕事を休む」など休むレベルはさまざまです。
また、睡眠を十分にとることも重要です。とはいえ、仕事の調整や休職、家事などをお願いすることに心理的抵抗がある人もいるかもしれません。しかし「休養が治療である」と理解し、心身をしっかりと休めるように時間を確保していきましょう。
うつ病の薬物療法では、「抗うつ薬」と呼ばれる薬が主に用いられます。抗うつ薬にはいくつかの種類があり、医師は患者の状態に適した種類の抗うつ薬を選んで処方します。抗うつ薬はすぐに効果が表れるのではなく、2週間程度の時間がかかるとされています。
また、人によっては効果が表れるより前に副作用が表れることがあります。副作用がつらいときは自己判断で服薬を中断するのではなく、医師に相談してください。服用量や抗うつ薬の種類の調整が可能な場合があります。
なお、軽症のうつ病であれば薬物療法はおこなわない場合もあります。
うつ病は、ストレスを溜めやすい性格や環境要因などの複数の要因が関係して起こると考えられています。性格の傾向や環境要因は休養や薬物療法では改善できないため、精神療法がおこなわれます。
精神療法とは、うつ病の原因となったストレスや環境、自分の性格の傾向や考え方などを見直し、新しい考え方や行動を身につけるための治療法です。
精神療法には、さまざまな種類があります。うつ病の治療に用いられることの多い精神療法には、カウンセリングや認知行動療法などがあります。
カウンセリングとは、医師やカウンセラーが患者の訴えを聞き、こころの専門家としての視点から指導や援助をおこなう治療のことです。医師やカウンセラーは患者の訴えに対して理解や共感を示し、具体的な助言をおこなうこともあります。患者は気持ちが楽になる、考え方を整理しやすくなるといった効果が期待できます。
認知行動療法は、悲観的になりやすい考え方などのパターンに気づき、考え方を変えることで、バランスのとれた考え方と前向きな行動を身につけていくための治療法です。考え方を変えることで、柔軟な物事の見方や対応ができるようになることを目的としています。
薬物療法や精神療法との併用療法として「運動療法」がおこなわれることがあります。運動療法は、中等度までのうつ病であれば有効であるという研究報告もあります。
休養と矛盾する点もありますが、個人の状況を踏まえたうえで、休養するとともに身体を動かした方が効果が出る場合もあります。具体的には、週3日、1回30分程度のウォーキングで十分といわれています。
うつ病の場合、夕方以降に意欲が若干回復する場合が多いため、安全に注意しながら、夕食後に30分程度のウォーキングをおこなうとよいでしょう。リズミカルなウォーキングはそれ自体が脳を適度に活性化させ、かつリラックス効果と身体の疲労により、良質な睡眠が得られることになります。
うつ病との鑑別が難しい疾患に、双極性障害(双極症)があります。双極性障害(双極症)には「双極性障害Ⅰ型」「双極性障害Ⅱ型」があります。前者はハイテンションで活動的な「躁状態」と気分が落ち込みやる気になれない「うつ状態」が交互に表れることが特徴で、後者は「躁状態」の程度が低く(軽躁状態)、「うつ状態」が長いことが特徴です。
※双極性障害は現在、「双極症」という診断名となっていますが、最新版『DSM-5-TR』以前の診断名である「双極性障害」といわれることが多くあるため、ここでは「双極性障害(双極症)」と表記します。
うつ病と双極性障害(双極症)の違いは、躁状態の有無です。長い経過の中で1度でも躁状態が認められれば、双極性障害(双極症)として治療をする必要があります。
双極性障害(双極症)のうつ状態はうつ病の抑うつ症状とほぼ同じであるため、見極めが重要となります。しかし、双極性障害(双極症)は、躁状態のときは調子がよいため受診に至ることは少なく、うつ状態のときに受診することが多いといわれています。
そのため、治療する医師の側も、双極性障害(双極症)を単なるうつ病と誤診しやすいと言えます。双極性障害(双極症)を見落としてうつ病の治療だけをおこなうとその症状が改善されにくくなったり、抗うつ薬によって躁状態が誘発されたりすることがあります。
うつ病と双極性障害(双極症)では治療法が異なるため、現在の状態に加え、過去の経緯についてもメモをつくって受診の際に持参すると、医師が判断する際の参考になるでしょう。
うつ病には、いくつかの種類があります。
抑うつ気分、有意の食欲低下や不眠などの症状がみられる「メランコリアの特徴をともなううつ病(メランコリー型うつ病)」は、いわゆる従来型の典型的なうつ病です。
一方、楽しいことやうれしいことがあると気分がよくなる「非定型うつ病」、特定の季節に発症する「季節性うつ病」や、出産後に発症する「周産期うつ病(産後うつ病)」などの種類もあります。
うつ病は、症状の程度や種類などによって治療内容が異なります。「うつ病かもしれない」と思っても自己判断せず、医療機関を受診して専門家の治療を受けることが大切です。
就労移行支援とは、障害者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつです。一般企業などへの就職を目指す65歳未満の障害のある方を対象に、就職に必要なスキルの習得や就職活動のサポート、就職後の職場への定着支援までを一貫しておこないます。
LITALICOワークスは、全国で就労移行支援事業所を運営しており、うつ病の方が安心して長く働けるようサポートをおこなっています。例えば、体調管理やストレスマネジメントを身につけたり、企業インターンを通して自分に合う職場を見つけたりします。就職のサポートだけではなく、就職した後に本人が安心して働くことができるよう、企業と本人との3者面談などを通して職場定着のサポートもしています。
また休職中の方でも一定の条件を満たせば、就労移行支援を利用できる可能性があります。「うつ病と診断され、これからの働き方について悩んでいる」「復職や就職活動に不安がある」などの悩みのある方は、お気軽にご相談ください。
監修者
中央大学文学部教授
山科 満
精神科医から文系の大学教員となって、発達障害傾向ゆえに不適応に陥っている若者の多さに驚き、発達障害と本腰を入れて向き合うようになった。
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