うつ病など心身が不調な方にとって、家族のサポートや病気への理解は大切です。
一方で「最近元気がないようだけど、もしかしてうつ病のサイン?」「このような関わり方でいいのだろうか」「生活や仕事で不安なことがあるが、どこに相談をすればいいのだろうか」とサポートする側も悩み、疲れ果ててしまうこともあるかもしれません。
この記事では、家族としてどのような接し方や関わり方ができるのかや、うつ病の方本人や家族が利用できる相談先と支援制度について紹介します。
うつ病など心身が不調な方にとって、家族のサポートや病気への理解は大切です。
一方で「最近元気がないようだけど、もしかしてうつ病のサイン?」「このような関わり方でいいのだろうか」「生活や仕事で不安なことがあるが、どこに相談をすればいいのだろうか」とサポートする側も悩み、疲れ果ててしまうこともあるかもしれません。
この記事では、家族としてどのような接し方や関わり方ができるのかや、うつ病の方本人や家族が利用できる相談先と支援制度について紹介します。
目次
「気分の落ち込みが激しい」「食欲がない」「眠れない」などといった状態が続いている場合、もしかするとうつ病を発症しているサインかもしれません。
うつ病は早めの対応が回復のためにも大切になります。そのため、うつ病の特徴や初期症状について知っておくといいでしょう。
うつ病は「一日中気分が落ち込んでいる」「何をしても楽しめない」などといった精神症状と、「疲れやすい」「食欲がない」「眠れない」などの身体症状が表れます。ちょっとした落ち込みや疲れは誰もが経験しますが、うつ病の場合は症状が2週間以上続く点が特徴です。
うつ病が発症する原因は正確には分かっていませんが、脳がうまく機能しなくなっているため起きるものといわれています。
うつ病は、精神的ストレスや身体的ストレスが背景となることも多いですが、ストレスはつらい体験のみがきっかけになるわけではありません。結婚や就職、引越しなどのうれしい出来事がきっかけとなることもあります。
うつ病の初期症状として「ちょっとしたことで涙が出てしまう」「好きだったことに興味が持てなくなる」「人と交流をしようとしなくなる」などの症状がある方もいます。また、うつ病は本人が感じる症状だけではなく、家族などの周囲の方がみて分かるサインもあります。
以下のような「いつもと違う」という変化があれば、本人はうつ状態で悩んでいるかもしれません。
日本では、100人に約6人が生涯のうちにうつ病を経験するといわれており、決して珍しくはありません。一方で「少し疲れているだけ」と無理をしてしまうと、回復が遅くなってしまったり、再発しやすくなったりします。
そのため、少しでも「うつ病かな」と思ったら早めに専門機関や医療機関に相談することをおすすめします。
うつ病になった方にとって、身近な家族の理解やサポートは大きな支えとなるでしょう。この記事を読んでいる方も、きっとうつ病で苦しんでいる本人を支えたいと、自分にできることを探しているのではないでしょうか。
この章では、家族や周りの方ができることを紹介したいと思います。
うつ病について理解しようとすることが第一歩です。うつ病の症状として「疲れやすい」「意欲が湧かない」といったものがありますが、これらは甘えでも怠けでもなく、うつ病の症状であることを理解しましょう。理解することで、本人の言動に寄り添うきっかけにもなります。
身体の病気と同じように、うつ病の場合も休むことが大切です。本人の元気がない様子をみて「気分転換に外に連れ出そう」など考えることがあるかもしれませんが、むしろ疲労感が増してしまったり、症状が悪化してしまったりする可能性もあります。本人が安心して休養できるよう、ゆっくり過ごせる環境を整えましょう。
うつ病は、本人の頑張りや家族の支えだけでは、どうにもならない心の病気です。うつ病の回復のためには休養も重要ですが、本人や家族だけで抱え込まず、早めに専門家に相談しましょう。
気になる症状があるのであれば、うつ病だと自己判断するのではなく、医療機関を受診しましょう。また、生活や仕事のことなど不安があれば、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や保健所、精神保健福祉センターなどの相談窓口を利用することもできます。
下の章に、うつ病の方本人や家族が利用できる相談先と支援制度をまとめたので、参考にしてください。
うつ病で苦しむ方を見守ったりサポートしたりする中で、家族自身も疲れてしまうこともあるでしょう。うつ病の方を支えようとするとき、支える側のケアも大切です。
「少し疲れたな」「つらいな」というとき、身体を動かしたり、音楽を聞いたり、今の気持ちを書いてみたりするとストレスを軽減できることもあります。また、誰かに悩みを聞いてもらうのも立派なストレス発散法です。
身近な方に相談しづらいときは、身近な相談先や家族会へ参加してみるのもいいでしょう。本人が受診している主治医へ相談に行き、家族自身の体調のこと、本人への接し方などの助言を求めるのもいいでしょう。
うつ病の方をサポートしている中で、「通院してくれない」「薬を飲んでくれない」「お酒の量が増えた」など、心配ごとが出てくるかもしれません。以下、よくある相談事例を紹介しますので、参考にしてください。
うつ病は早期発見、早期治療が回復のポイントですが、うつ病の方本人が医療機関に通院したがらないこともあります。
まずは、本人がなぜ通院したくないのか耳を傾けてみましょう。話を聞いてくれた、理解してくれようとしたと分かると安心し、通院したくない理由を話しやすくなるかもしれません。通院したくない理由は人によりさまざまですが「うつ病なわけがない」とうつ病を認めたくない、通院したときに「イメージしていた診察と違った」「医師とコミュニケーション面で相性がよくないと感じた」などの理由も聞きます。
「最近、よく眠れていないようで心配だ」「気分が落ち込んでいる様子をみていて、私もつらい」など、心配をしているメッセージを伝え、そのために専門家に相談をしてみないかと提案するといいかもしれません。
本人が心療内科や精神科への拒否感が強く「疲れやすい」「食欲がない」などの身体症状を訴える場合は、まず内科への受診を促すのも一つの方法です。血液検査や画像検査をおこない、身体的な異常がみつからなければ、心療内科や精神科への受診に対して前向きになるかもしれません。
うつ病の治療法には薬物療法があり、主に抗うつ薬が治療に使われています。抗うつ薬は、服用を開始してすぐには効果は現れず、しばらく続けて服薬する必要があります。
薬を飲んでくれない理由でよく聞くのは「服薬は必要ないと自己判断をしている」「副作用がつらい」「飲み忘れをしてしまう」などです。
症状が緩和して「もう服薬は必要ない」と自己判断で服薬を中断することはかえって回復を遅らせる可能性もありますので、医師に相談するよう促しましょう。
副作用がつらいという理由のときも、医師に相談すると、薬の種類を変える、副作用止めを処方する、などの対応をしてくれます。
飲み忘れがあるのであれば、家族が声をかける、服薬が必要な日に薬を入れるカレンダーを活用する、服薬のタイミングを知らせてくれるアプリを利用する、などの工夫もできるといいでしょう。
お酒には、気分を高揚させる作用があり、憂うつな気分が紛れるため、お酒の量が増えてしまう人もいるかもしれません。実際に、うつ病とアルコール依存症の合併の頻度は高いという研究データも出ています。
本人は飲酒量が増えていることに自覚がない可能性もあるため、もしも飲酒量が増えて心配であれば、本人へ「体調が心配だから、お酒を控えてみないか」などと伝えてみましょう。
アルコール依存症の場合、自分の意思で飲酒を止めることが難しくなるため、服薬や心理的療法(認知行動療法など)の治療を受けることが必要になる場合もあります。その際には、専門医療機関での治療がいいでしょう。
まず、本人が受診している主治医に飲酒量が増えていることを相談しましょう。主治医がいない場合にはお近くの保健所や精神保健福祉センターの相談窓口を活用しましょう。
うつ病が疑われる症状がある場合や、服薬ができていないなど困りごとがある場合は、医療機関への相談をおすすめします。もしも生活や仕事のことなど不安がある場合は、相談窓口や支援制度の利用を検討してもいいかもしれません。
相談窓口には、うつ病の方本人だけではなく、家族自身の相談にのってくれるところもあります。この章では、うつ病の方本人や家族が利用できる相談先と支援制度を紹介します。
うつ病などのこころの病気かなと思ったら、心療内科や精神科、もしくはメンタルクリニックを受診します。専門とする分野や治療プログラムの内容、予約制かどうかなど、医療機関によって異なるため事前にWebサイトなどで確認したり、窓口に電話をして問い合わせてみるといいでしょう。
心療内科や精神科、メンタルクリニックでは、以下のようなことをおこないます。
医療機関の中には「精神科デイケア」をおこなっているところもあります。精神科デイケアとは、安定した日常生活や社会復帰に向けて、リハビリテーションをおこなっているところです。
以下の相談窓口への相談は、基本的には無料であることが多く、ご本人だけではなくご家族からの相談もできます。また電話での相談もすることができます。
お住まいの近くの相談窓口について調べるときは「地域名+相談窓口名」で調べるといいでしょう。
各都道府県、政令指定都市に設置されている公的機関です。相談は電話・窓口いずれでも相談することができ、医師、保健師、精神保健福祉士などの専門家が対応します。
各都道府県、政令指定都市に設置されている公的機関です。相談は電話・窓口いずれでも相談することができます。センターによっては、医師、看護師、保健師、精神保健福祉士、公認心理士、作業療法士などの専門家がいます。また、センターによって家族会を開催していることもあります。
家族会とは、うつ病などのこころの病気がある本人の家族が、お互いの思いや悩みを共有し、互いに支え合う会です。
本人はもちろん、家族も相談が電話でできます。通話料はかかりますが、相談は無料です。
相談に対応する曜日や時間帯は都道府県・政令指定都市によって異なるため、以下のリンクを確認ください。
うつ病の方本人が働いていて、会社に産業医や相談窓口が設けられている場合、相談を促してみることも一つです。会社への相談が躊躇われる、会社に相談窓口がない場合は、以下の相談窓口に相談することを検討してみてもいいでしょう。また家族自身の相談もできることが多いです。
仕事に関することや、こころの健康に関することについて相談できます。電話、SNS、メールで相談ができます。通話料や通信料はかかりますが、相談は無料です
都道府県に設置されている公的機関です。専門的な職業リハビリテーションに特化した機関で、ジョブコーチ派遣や復職プログラム(リワーク支援)などを提供しています。
全国に設置されている機関です。障害がある方の働くことや生活についてサポートしてくれます。
うつ病などのこころの病気がある方の中には、就労移行支援事業所などの障害福祉サービスの対象になる方もいます。就労移行支援事業所とは、一般企業などへの就職を目指す障害がある方を対象とし、就職するために役立つプログラムの提供、企業インターンや就職活動、就職後も定着できるようにサポートする事業所です。
うつ病の症状が続くと、金銭的なことや生活について心配になるかもしれません。うつ病の人が活用できる支援制度には、以下のようなものがあります。以下の支援制度には受給条件があるため、詳しくはそれぞれの窓口へご確認ください。
傷病手当金とは、病気やけがなどによって会社を休み、会社からの給与が支給されないときに、生活を保障するために支給される手当のことです。詳しくは会社や所属する健康保険組合の窓口へご確認ください。
雇用保険の基本手当とは、失業中の生活を保障し、再就職に向けて支援するための手当です。通称、失業手当や失業給付ともよばれます。詳しくはお近くのハローワークへご確認ください。
障害年金とは、病気やけがなどによって障害のある方が申請できる公的な年金です。詳しくはお近くの自治体の年金窓口や年金事務所へご確認ください。
自立支援医療制度とは、障害の治療にかかる医療費の自己負担を原則1割に軽減する制度です。詳しくはお近くの自治体の障害福祉窓口へご確認ください。
精神障害者保健福祉手帳とは、うつ病などの精神障害がある方を対象とした手帳です。精神障害者保健福祉手帳を取得することで、障害福祉サービスを利用できるようになったり、公共料金の割引や税金の免除・減免の対象となることもあります。また障害者雇用の求人へ応募できるようになります。詳しくはお近くの自治体の障害福祉窓口へご確認ください。
うつ病は誰もがかかりうるこころの病気です。早期に発見し、治療をすれば回復しやすくなります。
うつ病で苦しんでいる本人を支えるために家族ができることは、本人を理解しようとし、必要な支援につなげることです。
相談先には、医療機関や公的な相談窓口などさまざまあります。困りごとに合わせて活用してみましょう。
どこに相談をしていいか迷う場合は、まずはお住まいの障害福祉窓口や精神保健福祉センターなどへ相談をするといいでしょう。
就労移行支援事業所は、一般企業への就職を希望される方へ、働くためのサポートをする障害福祉サービスです。就労移行支援事業所を利用し、体調に無理なく働いている方は多くいます。LITALICOワークスは各地で就労移行支援事業所を運営しており、これまで1万人以上の方のサポートをしてきました。相談は家族だけでも可能です。「本人の体調が不安定」「本人が働くことに不安がある」などの心配ごとをお気軽にご相談ください。
監修者
医学博士/精神科専門医/精神保健指定医/日本産業衛生学会指導医/労働衛生コンサルタント
染村 宏法
大手企業の専属産業医、大学病院での精神科勤務を経て、現在は精神科外来診療と複数企業の産業医活動を行っている。また北里大学大学院産業精神保健学教室において、職場のコミュニケーション、認知行動療法、睡眠衛生に関する研究や教育に携わった。
関連ページ
うつ病で仕事ができないと悩む方へ|対処法や適職探しのサポートなどを解説
「仕事には行けるが、やる気の出ない日が続いている」「仕事中に急につらくなって泣いてしまう」など、自分でもコントロールのできない症状に悩んでいませんか? 休日も仕事のことが頭から離 … [続きを読む]
適応障害(適応反応症)とうつ病の違いは?特徴や症状・診断基準について解説
なにかしらの強いストレスが原因で「激しい気分の落ち込み」や「不安感」に悩まされている場合、適応障害(適応反応症)(※)を発症している可能性があります。 しかし、適応障害(適応反応 … [続きを読む]
うつ病で休職するには?診断書、給料や手当、過ごし方、復帰まで解説
うつ病は決して珍しい病気ではなく、日本人の約16人に1人が一生のうちに一度はかかるといわれています。うつ病では、休養が治療の柱の一つであるとされており、症状によっては休職して療養に専念すること … [続きを読む]
うつ病の方が退職前に確認するポイントや退職の流れ・退職後の手当も紹介
うつ病により仕事を続けることが困難に感じる場合、退職することも選択肢のひとつです。 しかし、うつ病で仕事を辞めたいと思っていても「再就職がうまくいくか不安」「収入がなくなったら生 … [続きを読む]
うつ病の人が転職・再就職を考えるときに大事なポイント、支援制度、体験談を紹介
うつ病の方の中には、転職や退職を考えているものの、なかなか次の一歩に踏み切れないというお悩みのある方もいるかもしれません。まず大前提として、転職や退職は大きな決断となるため、うつ病の症状が落ち … [続きを読む]
【うつ病】人と関わらない仕事を探す方へ仕事探しの方法や、うつ病の特性にあった仕事選びを解説
うつ病の方の中で、人と関わらない仕事や関わりが少ない仕事がしたいという考えている方もいると思います。特に人間関係でうつ病になるなど苦労した経験がある方は、長く働くためにも次は一人でできる仕事や … [続きを読む]
うつ病からの復職や再就職に怖さや不安がある方へ|仕事復帰までの流れやコツを解説
「うつ病が原因で休職していたけれど、そろそろ仕事を再開したい」 「うつ病で退職したけれど、徐々に良くなってきたから新しい仕事について考えたい」 このように復職や再就 … [続きを読む]
仕事に行きたくないのはうつ病が原因?診断の目安や対処法を紹介
朝起きたときに「仕事に行きたくないな」と思うことはありませんか? 仕事に行きたくないと感じる理由には仕事のプレッシャーや人間関係などさまざまありますが、そのうちの一つとしてうつ病 … [続きを読む]