うつ病を経験した方の中で「最近また身体が重い」「気分の落ち込みも出てきた」と感じ、「うつ病が再発するのでは」という不安を抱く方もいるかもしれません。
うつ病は何かのきっかけで再発すると日常生活や仕事へ影響が出ることも考えられます。うつ病の再発を防止するためには、うつ病の再発サインに気づき、休養などの対策を取ることが大事です。
この記事では、うつ病再発の原因やサイン、再発を防止するための対策やうつ病の再発を乗り越えた体験談などを紹介します。
うつ病を経験した方の中で「最近また身体が重い」「気分の落ち込みも出てきた」と感じ、「うつ病が再発するのでは」という不安を抱く方もいるかもしれません。
うつ病は何かのきっかけで再発すると日常生活や仕事へ影響が出ることも考えられます。うつ病の再発を防止するためには、うつ病の再発サインに気づき、休養などの対策を取ることが大事です。
この記事では、うつ病再発の原因やサイン、再発を防止するための対策やうつ病の再発を乗り越えた体験談などを紹介します。
目次
うつ病とは、気分の落ち込みなどの精神症状と、不眠や疲れやすさなどの身体症状があり、生活や仕事などに影響が出る精神疾患のことです。
うつ病は約100人に6人が生涯のうちにかかる可能性があるといわれており、誰にでもかかる可能性のある疾患です。
また、うつ病は再発するとその後の再発率が高くなるといわれており、再発のサインに気づくことや、再発防止の対策を取っておくことが大事になります。
うつ病は一度症状が回復しても約60%が再発すると報告されています。また、再発を繰り返すごとに確率が高まり、2回うつ病にかかった方は約70%、3回かかった方は90%と再発率が高まるといわれています。
そもそも、うつ病の原因は現在では明確には分かっておらず、ストレスなどが関係して脳機能に何かしらの不調が起こっているのではないかと考えられています。そのため、うつ病が再発する原因も特定することは難しいといえます。
ただし、うつ病の発症と同じく、ストレスをためたことで再発にいたることや、生活リズムの乱れ、服薬を自己判断でやめることなどが原因やきっかけとなる可能性があると考えられています。
うつ病は再発を繰り返すことがあると聞くと、「一度うつ病になると治らないのか?」「せっかく回復してきたのに再発はつらい」と不安になる方もいると思います。
まず、うつ病を初めとした精神疾患は完治ではなく「寛解(かんかい)」といって、以前の元気が回復している状態を目指していきます。
うつ病の治療には回復するまでの過程(急性期/回復期/再発予防期)があり、それぞれの期間に必要な休養や服薬、カウンセリングなどを通して時間をかけて寛解するために治療を進めていきます。
そしてうつ病の治療は寛解して終わりではなく、その後も再発を防止、予防するための取り組みをしていくことが大事です。
うつ病の再発を防止するためには、再発のサインをつかみ、予防することが大事です。サインとしては、うつ病の症状と同じく身体面と精神面の不調が考えられますので、チェックしておきましょう。
うつ病再発のサインとして考えられる精神面での症状を紹介します。
精神面でのサイン例
以前と比べてこういった症状が表れてきたら、再発のサインの可能性があります。
次にうつ病再発のサインと考えられる身体面での症状を紹介します。
身体面でのサイン例
身体面でこういった症状が表れている場合は、再発のサインである可能性があります。
うつ病再発の精神面、身体面のサインを紹介しましたが、何がサインとなるかは一人ひとり異なります。また自分自身でサインに気づきにくい場合もありますので、周りの人にサインがみられたら声がけをしてもらうのもサインに気づく一つの方法です。チェックしてみて、いつもより程度が強いとき、あるいは持続期間が長いときなど、気になる症状がある方は主治医に相談をするようにしましょう。
うつ病は適切な対応をすることで再発を予防することが可能です。ここでは、うつ病の再発を防止するための対策を紹介します。
うつ病の再発防止のためには、服薬を続けることが大事です。うつ病は薬物療法といって、抗うつ薬などを使って治療を進めていきます。
うつ病が良くなったといって自身の判断で服薬を中止すると、再度症状がぶり返すことも考えられます。主治医の指示通りの服薬を続けることが再発予防としても非常に大切です。
ただ、抗うつ薬は効き目が表れるまでに時間がかかることや、副作用が気になるなどで、服薬に不安を感じる方もいると思います。そういったときは、主治医にそのことを伝えて納得して治療を続けていくことが大事です。
また、仕事が忙しいなどでどうしても服薬を忘れてしまうという方は、薬の飲み忘れを防ぐためのツールやアプリなどを活用するのもいいでしょう。また薬を1日3回から1日2回へ変更するなど、1日あたりの服薬回数を減らすことが、飲み忘れ防止に有効なこともあります。主治医に相談しながら進めていくといいでしょう。
生活リズムを整えることも、うつ病再発防止のために大事なことです。生活リズムを安定させるためのポイントは以下のようなことがあります。
このようなポイントを押さえた生活をすることで、生活リズムが安定していきます。
ただ、いきなりすべてのことに取り組むのは難しいと思います。家族など周囲の人の協力も得ながら一つずつ取り入れていくといいでしょう。
うつ病の再発を防止するためには、心身の疲労を回復させることも重要です。そのためには、休息して身体を休めるとともに、リフレッシュするための工夫を取り入れて心の疲労を回復させていくことも大事になります。
リフレッシュ方法としては、親しい人と会って交流をしたり、仕事と関係のない趣味を持ったりといった方法があります。ほかにも、適度な運動や、自然に触れることもリフレッシュに効果的といわれています。
また、悩みがあるときは誰かに相談することや、今の気持ちを紙に書き出すことが心を落ち着ける方法としてあります。
今紹介したような再発防止策を実行することは、仕事をしながらだと難しいと感じるかもしれません。そこで、職場でできる再発を予防するための方法をいくつか紹介します。
職場内でおこなえるリラックス方法を取り入れることは、仕事でうつ病を再発しないためにも大切なポイントです。
職場でのリラックス方法の一例として、以下のようなものがあります。
肩の上げ下げや首まわしなど、仕事の合間にできるストレッチを取り入れていくといいでしょう。また、腹式呼吸も取り入れてみましょう。椅子に座ってお腹に手を当て、吸うときにお腹を膨らませて吐くときはお腹をへこませるように呼吸を繰り返すことで、リラックスができるといわれています。
ほかにも
などの方法もあります。
自分にあったリラックス方法を見つけ、取り入れてみましょう。
合理的配慮とは、職場での困りごとに対して、障害のある方と職場の方で話し合って、企業が過重の負担にならない範囲で必要な配慮をおこなうことです。
合理的配慮の一例としては、
などがあります。
合理的配慮を希望する際は、会社の上司や人事担当者などへ相談をしてみましょう。
うつ病再発防止のためには、休職することも一つの方法です。休職するには診断書が必要な場合があるので、主治医へまず相談してみましょう。休職することでその間に治療と休息の時間が確保でき、うつ病の回復を進めていくことができます。
休職中の生活費が不安な場合は、傷病手当金の申請も検討するといいでしょう。傷病手当金は病気やけがなどで一定期間働けないときに、給与のおおよそ3分の2が支払われる制度です。申請には要件が必要となりますので、詳細は人事担当者や加入している全国健康保険協会へお問い合わせください。
リワークとは、うつ病などの精神疾患で休職した方が、職場復帰する際に活用できるプログラムです。
職場復帰のために、主治医、職場の担当者、本人の希望などを考慮して計画を作成し、自己理解や模擬業務などのプログラムを通して、円滑な職場復帰をサポートしています。
希望する方は、職場の担当者や主治医、リワークを実施している事業所などにお問い合わせください。
障害者雇用促進法では、企業が決まった割合で障害のある方を雇用する(法定雇用率)や合理的配慮の提供義務などが定められています。
一般雇用とは違い、障害者雇用はもともと障害のある方の雇用を想定されているため、障害に対する理解や配慮が得られやすいことがメリットであるといえます。
障害者雇用で働くためには障害者手帳を取得する必要があります。うつ病の方は精神障害者保健福祉手帳の対象となる可能性があります。障害者手帳の取得を検討する方は、主治医や自治体の障害福祉窓口などへご相談ください。
復職や転職など検討される方は、うつ病など精神障害のある方が活用できる支援機関を利用することも方法の一つです。
働くことのサポートをしている支援機関には、
などがあります。
それぞれ特徴が違いますので、どういった支援機関を使ったらいいか迷う場合は、直接支援機関に問い合わせるか、相談支援事業所やお住まいの自治体の障害福祉窓口などでご相談ください。
LITALICOワークスは、就労移行支援事業所といって、障害のある方が自分らしく働くためのさまざまなサポートをしています。
一人ひとりの困りごとや希望する働き方をヒアリングしたうえで計画を作成し、自己分析やコミュニケーション、ビジネススキルの取得などのプログラムを提供しています。
うつ病の再発が不安な方は、自己分析、障害理解、ストレスコントロールなどのプログラムを通じて再発防止のための方法を身につけていくとともに、就労移行支援事業所に通うことで生活リズムの安定を図っていくこともできます。
また、実際の企業で一定期間業務を体験する企業インターンや、就職活動のサポートなど働きやすい職場を見つけるための支援も提供しています。
無料での相談を随時受け付けていますので、「うつ病の症状を繰り返している」「自分に合った職場を知りたい」という方はお気軽にお問い合わせください。また、休職中の方のためのリワーク支援を検討されている方で一定条件を満たせば就労移行支援事業所の利用ができる可能性もありますので、お気軽にお問い合わせください。
ここでは、うつ病の再発を乗り越えた方の体験談を紹介します。
Q:最初にうつ病を発症したときの状況は?
A:新卒で働いていたときに、営業研修を受けていた時期に不安が強くなったり、夜に眠れなくなったりすることが続くようになり、病院にいったら「うつ病」と診断されました。その後は休職をしましたが、復職しても体調が変わらなかったため、退職しました。
Q:うつ病が再発したきっかけはありますか?
A:回復期になり、体調が落ち着いたと思ったタイミングで通院や服薬をやめたことをきっかけにうつ病がぶり返してしまいました。その後も通院や服薬を再開し、回復したタイミングでアルバイトなどで働いてはストレスをためて再発する、ということを繰り返していきました。
Q:うつ病を繰り返さないためにどういった取り組みをしましたか?
A:自分の力だけでは再発防止をすることが難しいと感じ、サポートを受けながら長く働ける場所を探したいと思い、就労移行支援事業所「LITALICOワークス」に通うことにしました。
LITALICOワークスではストレスコントロール方法を学んだり、朝のだるさや寝つきの悪さなど自分にとっての体調悪化のサインを把握する取り組みをしたりしていました。
また、自己分析のプログラムでは自分の考え方の傾向についても把握しました。プログラムやスタッフとの面談を通して、「周囲の人にだめだと思われている」と考えてしまう癖があることに気がついたので、そのときは「本当に周囲の人はそう思っているのか」と立ち止まってスタッフと確認するなど、ストレスをためないような工夫を身につけていきました。
Q:就職してから気を付けたことはありますか?
A:やはり人の目を気にしてしまうことがあるため、不安を感じたらパソコンやメモ帳に書き出して客観的になることを心がけています。また、職場での定期面談の際にメモを見せて「実際周りの人はどう思っているのか」を客観的な意見を聞くようにしています。その結果、気持ちが落ち着いて仕事することができ、それからはうつ病の再発はありません。
Q:今だから分かる、うつ病再発を防ぐために大切なことは?
A:体調が良くなったと思っていても、主治医の指示に従って通院や服薬を続けることがまず前提です。そのうえで、うつ病の再発サインに自分や周りの人が気づいたら休むことを心がけたり、そのサインが来ることがないようにストレスがためない方法を身につけたりすることで、うつ病再発を防ぐことができています。
また自分ひとりだと悩んでしまうため、専門機関を活用してサポートを受けたことも良かったと思います。もし悩んだら、一人で抱え込まずぜひ専門機関のサポートの方も検討してみてください。
うつ病は気分の落ち込みが一日中続いたり、身体にも不調が表れたりする精神障害のひとつです。
うつ病は再発を繰り返すことで、再発率が高まるといわれています。そのため、うつ病の再発防止をしていくことが大事です。
うつ病の再発を防止するためには、うつ病のサインを知る、気づくだけではなく、服薬管理や生活リズム、休息など日常でできることやリフレッシュ方法を身につけることなどが大事なポイントとなります。
また、仕事においては、職場の方へ合理的配慮について相談する、無理のない働き方を検討するなどして、自分にできることからはじめてみましょう。自分ひとりで悩んでしまうという方は、支援機関のサポートを活用することを検討してみましょう。
「無理のない働き方がしたい」「体調が安定して長く働きたい」などがあれば、ぜひLITALICOワークスへご相談ください。
関連ページ
うつ病からの復職や再就職に怖さや不安がある方へ|仕事復帰までの流れやコツを解説
「うつ病が原因で休職していたけれど、そろそろ仕事を再開したい」 「うつ病で退職したけれど、徐々に良くなってきたから新しい仕事について考えたい」 このように復職や再就 … [続きを読む]
うつ病で仕事ができないと悩む方へ|対処法や適職探しのサポートなどを解説
「仕事には行けるが、やる気の出ない日が続いている」「仕事中に急につらくなって泣いてしまう」など、自分でもコントロールのできない症状に悩んでいませんか? 休日も仕事のことが頭から離 … [続きを読む]
うつ病で休職するには?診断書、給料や手当、過ごし方、復帰まで解説
うつ病は決して珍しい病気ではなく、日本人の約16人に1人が一生のうちに一度はかかるといわれています。うつ病では、休養が治療の柱の一つであるとされており、症状によっては休職して療養に専念すること … [続きを読む]
うつ病の人が転職・再就職を考えるときに大事なポイント、支援制度、体験談を紹介
うつ病の方の中には、転職や退職を考えているものの、なかなか次の一歩に踏み切れないというお悩みのある方もいるかもしれません。まず大前提として、転職や退職は大きな決断となるため、うつ病の症状が落ち … [続きを読む]
仕事に行きたくないのはうつ病が原因?診断の目安や対処法を紹介
朝起きたときに「仕事に行きたくないな」と思うことはありませんか? 仕事に行きたくないと感じる理由には仕事のプレッシャーや人間関係などさまざまありますが、そのうちの一つとしてうつ病 … [続きを読む]
うつ病の方が退職前に確認するポイントや退職の流れ・退職後の手当も紹介
うつ病により仕事を続けることが困難に感じる場合、退職することも選択肢のひとつです。 しかし、うつ病で仕事を辞めたいと思っていても「再就職がうまくいくか不安」「収入がなくなったら生 … [続きを読む]
うつ病の人との接し方で大切なこと|かける言葉の例も
家族やパートナー、友人、同僚など身近な人がうつ病と診断されて「どう接したらいいのだろう」「かけてはいけない言葉はあるのだろうか?」といった疑問を持つ方もいるかもしれません。 うつ … [続きを読む]
うつ病の初期症状とは?自分で気づくサインや仕事での対処法を解説
うつ病はおよそ100人に6人が一生のうちに経験しているといわれ、 だれもが発症する可能性があり、決して珍しいものではありません。 例えば、夜一人で過ごしているなどストレスがない場 … [続きを読む]
うつ病の特徴や原因とは?治療法や仕事のサポートを解説
うつ病とは、気分の落ち込みがひどい、ぼーっとして頭が回らないといった精神症状や、身体がだるい、眠れないといった身体症状が現れるという特徴があり、日常生活や社会生活に困難が生じる精神疾患の一種で … [続きを読む]
うつ病の相談先|家族の関わり方や事例も解説
うつ病など心身が不調な方にとって、家族のサポートや病気への理解は大切です。 一方で「最近元気がないようだけど、もしかしてうつ病のサイン?」「このような関わり方でいいのだろうか」「 … [続きを読む]
【うつ病】人と関わらない仕事を探す方へ仕事探しの方法や、うつ病の特性にあった仕事選びを解説
うつ病の方の中で、人と関わらない仕事や関わりが少ない仕事がしたいという考えている方もいると思います。特に人間関係でうつ病になるなど苦労した経験がある方は、長く働くためにも次は一人でできる仕事や … [続きを読む]
双極性障害(躁うつ病/双極症)とADHD(注意欠如多動症)の違いを解説|それぞれの原因とは?
双極性障害(双極症)(※1)とADHD(注意欠如多動症)(※2)は、症状や特性による困りごとで似ている点がありますが、診断としては別のもののため、対処法も異なります。 今回は双極 … [続きを読む]
双極性障害(双極症/躁うつ病)とは?原因や診断、症状などを分かりやすく解説します
双極性障害とは、躁(気分が激しく高揚した状態)と抑うつ(気分が著しく落ち込んだ状態)の両極端な状態を、振り子のように行ったり来たりする特徴を持つ、脳の病気です。躁とうつを繰り返すということで、 … [続きを読む]
双極性障害(双極症)の方が仕事を続けるポイントや適職の見つけ方を解説
自分でもコントロールできないほどの気分の波によって、仕事の成果にムラが出てしまったり、人間関係がうまくいかないことが多かったりする場合、その背景に双極性障害(双極症)の影響があるかもしれません … [続きを読む]
抑うつ状態とは?症状や治療方法・仕事を続ける際のポイントについて解説
憂うつな気分が続いたり、ずっとやる気が起きなかったりする方は「抑うつ状態」になっている可能性が考えられます。 抑うつ状態は、放置すると症状が悪化してうつ病になるケースもあるため、 … [続きを読む]
うつ病の人がとる行動とは?これはうつ病のサイン?家族にできることは?
うつ病では症状が影響して、身だしなみや行動などに変化があらわれる場合があります。家族や身近な人にそのような変化があり「うつ病のサインかもしれない」と思う場合があるかもしれません。 うつ病になる … [続きを読む]
適応障害(適応反応症)とうつ病の違いは?特徴や症状・診断基準について解説
なにかしらの強いストレスが原因で「激しい気分の落ち込み」や「不安感」に悩まされている場合、適応障害(適応反応症)(※)を発症している可能性があります。 しかし、適応障害(適応反応 … [続きを読む]
非定型うつ病とは?診断や症状、なりやすい人、治療法など解説
「好きなことには元気に取り組めるのに、嫌なことはやる気が出ない」 「気分の浮き沈みが激しい」「いくら寝ても眠い」などの症状に悩むことはありませんか。 このような症状が日常生活の妨 … [続きを読む]