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お役立ち仕事コラム

【ADHD(注意欠如多動症)】向いている仕事や職業とは?適職探しに悩んでいる方へ

更新日:2024/08/13

ADHD(注意欠如多動症)の特性からくる困りごとを仕事中に感じたとき、「この仕事は自分に向いていないかもしれない……ほかに向いている仕事があるのではないか」「そもそも本当に自分に向いている仕事があるのだろうか」と悩んだことはありませんか?

 

自分に合う仕事や職業をどのように見つけたらいいのか、適職探しに悩む方も多いかと思います。

 

そこで本記事では、ADHD(注意欠如多動症)のある方が自分に向いている仕事をどのようなステップを踏んで探すといいのかを解説していきます。また、ADHD(注意欠如多動症)のある方の就職事例もご紹介していきます。

ADHD(注意欠如多動症)とは?

ADHD(注意欠如多動症)とは、Attention-Deficit Hyperactivity Disorderの略称で、日本語では「注意欠如多動症」と訳される、発達障害の一つです。

 

特性のあらわれ方によって多動・衝動性の傾向が強いタイプ、不注意の傾向が強いタイプ、多動・衝動性と不注意が混在しているタイプなど主に3つに分けられ、これらの症状が12歳になる前に出現します。特性の多くは幼い子どもにみられる特徴と重なり、それらと区別することが難しいため、幼児期にADHDであると診断することは難しく、就学期以降に診断されることが多いといわれています。また、個人差はありますが、年齢と共に多動性が弱まるなど、特性のあらわれ方が成長に伴って変化することもあります。

 

※以前は「注意欠陥・多動性障害」という診断名でしたが、2022年(日本語版は2023年)発刊の『DSM-5-TR』では「注意欠如多動症」という診断名になりました。この記事では以下、ADHD(注意欠如多動症)と記載しています。

 

ADHD(注意欠如多動症)のある方には、下記のような行動や特性がみられることがあります。

 

  • 不注意:集中できない・物をなくしやすい など
  • 多動性:落ち着きがない・待つことが苦手 など
  • 衝動性:思いついたままに行動してしまう・結果を考えずに行動してしまう など

※上記は一例です。

仕事に活かせるADHD(注意欠如多動症)の特性の強み

ADHD(注意欠如多動症)の行動や特性は、「強み」になることがあります。ここでは仕事にも活かせる特性の強みについて紹介します。

 

これらはあくまで傾向のため、必ずしもADHD(注意欠如多動症)のある方全員が当てはまる訳ではありません。強みになるかどうかは本人の特性と本人を取り巻く環境によって異なります。

好奇心が強い

ADHD(注意欠如多動症)のある方の中には、次々と周囲のものに関心を持ち、周囲のペースよりもエネルギッシュに取り組む方も多いです。仕事においても、さまざまな業務に対して好奇心を抱きやすいため、新たな仕事に臆せずチャレンジしていけることは大きな強みになります。

 

また、興味関心のないことには集中できないが、自分がやりたいことや興味のあることに対しては高い集中力を発揮できるという方もいます。仕事においては、自分が好きな業界や分野で働くことで、高い能力を発揮しやすい場合があります。

行動力がある

ADHD(注意欠如多動症)のある方の中には、あれこれ考えるよりもまず行動できるという特性を活かし、困っている人がいれば誰よりも早く手助けをする方もいます。こういった気配りや行動力は、仕事に限らず、日常生活全般においても強みになります。職種に焦点を絞った場合、積極的に行動できたり、あれこれ考えすぎず自分の意見を臆せず伝えられたりすることは、営業職に活かせる場合もあります。

ADHD(注意欠如多動症)の特性からくる仕事上での困りごと

ここではADHD(注意欠如多動症)の行動や特性からくる仕事上における困りごとを解説していきます。同じ特性があっても困りごととして生じるかどうかは人によりますが、一般的によく生じやすい例を紹介します。

不注意の特性からくる仕事上での困りごとの例

ADHD(注意欠如多動症)のある方の中で、「不注意」の特性がある場合、仕事上でよくある困りごととして下記のようなものがあります。

  • 忘れ物・無くし物が多い
  • スケジュール管理が苦手
  • 整理整頓が難しい など

※上記は一例です。

 

これらの困りごとは「不注意」ではなく「多動性・衝動性」の特性による場合もあります。

 

以下に具体例を解説していきます。

 

忘れ物・無くし物が多い

具体例として下記のようなものがあります。

  • 書類を無くしてしまう
  • 貴重品(財布や鍵など)を落としてしまう
  • 備品を持ってくるのを忘れてしまう など

※上記は一例です。

 

スケジュール管理が苦手

具体例として下記のようなものがあります。

  • 遅刻が多い
  • 優先順位がつけられない
  • 会議の予定があったことを失念する など

※上記は一例です。

 

整理整頓が難しい

具体例として下記のようなものがあります。

  • デスクが散らかってどこに何があるか分からない
  • かばんの中身が多すぎて欲しい物が見つからない
  • 不要かどうか判断できず、捨てられないものがどんどんロッカーに溜まっていく など

※上記は一例です。

 

その他不注意の特性からくる困りごと

具体例として下記のようなものがあります。

  • ケアレスミスが多い
  • マルチタスク(同時に複数の仕事を抱えている状態)が苦手
  • 周囲の物音や人の声が気になり、業務に集中できない
  • 一つの業務に没頭してしまい、話しかけられても気づかない など

※上記は一例です。

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多動性・衝動性の特性からくる仕事上での困りごとの例

ADHD(注意欠如多動症)のある方の中で「多動性・衝動性」の特性がある場合、仕事上でよくある困りごととして下記のようなものがあります。

  • じっとしていられない
  • 思ったまま行動してしまう
  • 感情や理性、声量などのコントロールが苦手 など

※上記は一例です。

 

ただし、これらの困りごとは「多動性・衝動性」ではなく「不注意」の特性による場合もあります。

 

具体例を解説していきます。

 

じっとしていられない

具体例として下記のようなものがあります。

  • 会議中にそわそわ動いてしまったり、ふと気づいたらほかのことをしてしまっていたりする
  • 静かにしなくてはいけない場面でも、落ち着かず、話しはじめてしまう
  • 順番待ちや渋滞・遅延など待つことが苦手

※上記は一例です。

 

思ったまま行動してしまう

具体例として下記のようなものがあります。

  • 思ったことをそのまま伝えてしまい、気づかぬうちに相手を傷つけてしまう
  • 会話中、相手の話を聞くよりも、自分の話したいことばかり一方的に話してしまう
  • 思いついたことを、周囲に相談せずに良かれと思ってしてしまう

※上記は一例です。

 

感情や理性、声量などのコントロールが苦手

具体例として下記のようなものがあります。

  • 感情のコントロールができず、他人と衝突してしまったり、イライラする
  • ついつい衝動買いしてしまう
  • その場面に応じた声の大きさ調整ができない

※上記は一例です。

ADHD(注意欠如多動症)のある方の苦手・不得意は強み・得意になることも

同じADHD(注意欠如多動症)特性であっても、「苦手・不得意」としてだけなく、「強み・得意」になることもあります。例えば、先ほど紹介した仕事においての困りごとは、下記のような強みになることもあります。

 

ADHDの方の苦手と強みの例

 

上記のように、困りごとを強みに変えられる人もいますが、「強み」として発揮できるどうかは、ご自身の特性だけではなく、ご自身を取り巻く職場環境によっても影響されます。

 

そのため、ADHD(注意欠如多動症)のある方が自分らしく働けるよう、まずはご自身の特性をきちんと把握し、ご自身に合った対処法と職場環境を見つけることが大切です。

 

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ADHD(注意欠如多動症)のある方の働き方

ADHD(注意欠如多動症)のある方が自分らしく働けるようになるためには、どのような働き方(雇用形態や環境など)があるか紹介します。

一般雇用

文字通り企業の応募条件さえ満たせば、障害の有無に関係なく誰でも応募できる求人です。

  • メリット:選べる職種や求人数が多い
  • デメリット:障害のある方の採用を前提としたものではないため、障害に対する理解や配慮を十分に受けられない可能性がある

一般求人に応募する場合、障害があることを開示することもできますが、非開示で働く場合(クローズ就労)には、得意や苦手、どういう仕事の進め方がやりやすいか、やりにくいかというニュアンスで伝えてみるのも1つの方法です。

障害者雇用

障害のある方が一人ひとりの特性に合わせた働き方ができるように、企業や自治体などが障害のある方を雇用する制度のことです。

 

「障害者雇用促進法」では、決まった割合で障害のある方を雇用すること(法定雇用率)や障害による差別の禁止、雇用主による合理的配慮の提供義務などが定められています。

一般雇用との違いは、障害者手帳を持っている方のみ応募できるという点です。

  • メリット:
    もともと障害のある方の雇用を想定されているため、障害に対する理解や配慮が得られやすい
  • デメリット:
    障害者手帳がないと応募できない・一般雇用に比べて求人数が少ない

特例子会社への就職

特例子会社とは、障害のある方の雇用促進および安定を図るために設立され、 厚生労働大臣の認可を受けた会社のことです。

 

特例子会社に在籍している障害のある社員数は親会社やその他のグループ会社に雇用されているものとみなし、障害のある方の雇用率を算定することができる仕組みとなっています。

  • メリット:
    一般企業の障害者雇用と比べて、障害のある方に合わせた人事制度や環境設備が整っていることが多い障害のある方が多く働いているため、お互いが苦手を補完し合うという風土が醸成されている職場が多い
  • デメリット:
    仕事内容が限定的であることも多く、職域を広げにくかったり昇給が難しかったりする場合がある

就労継続支援事業所への福祉的就労

就労継続支援とは、「障害者総合支援法」に基づく福祉サービスの一つです。企業などで働くことが困難な場合に、障害や体調に合わせて自分のペースで働く準備をしたり、就労訓練や仕事をおこなったりすることができます。

 

就労継続支援には雇用契約を結び利用する「A型」と、雇用契約を結ばないで利用する「B型」の2種類があります。

 

就労継続支援A型

就労継続支援A型とは、一般企業への就職が困難であり、雇用契約を結んだうえで仕事をすることができる障害のある方を対象に、一定の支援がある職場で働いたり生産活動をおこなったりすることが可能な福祉サービスです。

 

一般企業で働くよりも手厚いサポートを受けやすいのが特徴ですが、1日の勤務時間が比較的短いことが多い傾向もあります。

 

仕事内容の一例として以下のようなものがあります。

  • パソコンによるデータ入力
  • カフェなどのホールスタッフ
  • ビルなどの清掃 など

給料については、厚生労働省の調査結果によると、2021年度の就労継続支援A型事業所の月額平均給料は「8万1645円」となっています。2020年度の平均給料では「7万9525円」で、ここ数年は上昇傾向がみられます。

就労継続支援B型

就労継続支援B型とは、一般企業への就職が困難、あるいは雇用契約に基づく就労が困難な場合に、雇用契約を結ばずに軽作業などの就労や生産活動をおこなうことが可能な福祉サービスです。

 

就労継続支援A型と違い、雇用契約を結んでいないため、働いた時間や日数による「給料」ではなく、作ったものや作業に対する成果報酬として「工賃」が支払われます。そのため、自分の障害や症状に合わせて、無理をしない範囲で比較的簡単な軽作業を少しずつ自分のペースでこなしていくことができます。

 

仕事内容の一例として以下のようなものがあります。

  • パンやお菓子などの製造
  • 製品の梱包・発送作業
  • 農作業 など

給料については、厚生労働省の調査によると2021年度の平均月額工賃は「1万6507円」となっています。

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ADHD(注意欠如多動症)のある方が適職を見つけるためのポイントとは

ADHD(注意欠如多動症)のある方の中には、特性からくる困りごとが続いていて「自分に向いている仕事ってあるのだろうか……」といったような悩みを持たれる方もいるかもしれません。

 

適職と聞くと「自分の強みを活かす仕事」を連想される方もいれば「自分の好き・価値観に合った仕事」や「自分が無理なく働ける仕事」と連想される方もいるかもしれません。どれも正解で「自分にとっての適職」というものは、人によって異なります。

 

そのため、適職を探すには、以下のような方法などが考えられます。

  • 特性を活かせる(特性が強みとなる)仕事を選ぶ
  • 特性による困難さに配慮してもらえる仕事を選ぶ
  • 特性による困難さが生じづらい職場環境を選ぶ など

※上記は一例です。

 

上記のいずれかによって適職を見つけることができる人もいれば、やりたい仕事を特性上の困難さで諦めざるを得ないかと思っていたけれど、その困難さへの対処法についても同時に考えることで可能性が広がるという人もいるでしょう。

 

この章では、下記のポイントを踏まえながら紹介します。適職を考える際にぜひご参考ください。

  • 自分が働くうえで大切にしたい条件を知る
  • 自分の強みを知る
  • ADHD(注意欠如多動症)の特性からくる職場での困りごとを把握する
  • 自分の特性を理解し、自分でできる対処法を考える
  • 職場に合理的配慮について相談する
  • 支援機関やサービスを活用する

※上記は一例です。

自分が働くうえで大切にしたい条件を知る

自分が働くうえで大切にしたい条件を知るには、仕事・会社・環境の3つの軸で、自身にとって重要だと感じるものを書き出してみるのも1つの方法です。

 

例えば、以下のようなものがあります。

  • 仕事:自分の強みや経験を活かせる、仕事を通じて成長できる など
  • 会社:評価や育成の制度が整っている、事業内容の価値やビジョンに共感できる など
  • 環境:仕事を楽しんでいる社員が多い、ワークライフバランスを保ちやすい など

※上記は一例です。

 

さらに、なぜこれらを重視したいのかについて考えを深めてみるといいでしょう。例えば「自分の強みを活かせるところがいい」について考えを深めると「新しいことへ挑戦が好きだから」「人を喜ばせるのが好きだから、人を喜ばせる仕事がしたい」といったように、考えを深めていくことで自分が働くうえで大切にしたい条件がみえるようになります。

 

自分が働くうえで大切にしたい条件や価値観について理解を深めることで、求人を選ぶ基準や企業研究の視点が明確になります。

働くうえでの強みを知る

どのような仕事や職場環境であれば自分の強みを発揮できるかを把握することも大切です。自身の強みを知るには、これまでの経験を振り返り、どういうときに何が得意だと感じたのか、うまくいったと感じたのか、頼られたのかなどを整理してみてもいいでしょう。例えば、以下のような視点で振り返ってみましょう。

  • さまざまな意見が出たときに、それぞれの意見に耳を傾けてまとめていく役割を任されることが多かった
  • 仕事の効率化を考える場などで、次々と新しいアイデアを出すことができた
  • リーダーシップを取るよりも、サポート側にまわることでチームに貢献してきた
  • 周りの人が苦手な細かな確認作業などを任されることが多く、コツコツ正確に仕事をするのが得意
  • 知らないことを調べるのが好きで、没頭できる など

※上記は一例です。

 

1人で書き出すことが難しい場合、自身を知っている身近な人に聞いてみたりインターネットで強みのチェックリストを参考にしてみたりするのもいいかもしれません。

ADHD(注意欠如多動症)の特性からくる職場での困りごとを把握する

ADHD(注意欠如多動症)の特性からくる職場での困りごとは、ご自身の特性だけでなく、職場環境(※)との相互作用によって生じています。

 

そのため、仕事での困りごとの原因がいつも自分にある訳ではありません。自分の特性と職場環境の両方から、仕事上での困りごとを把握することが大切です。

 

(※)ここでいう「環境」とは、バリアフリーなどの物理的な環境面だけでなく、仕事内容や仕事の進め方、人間関係や職場のルールなどさまざまな意味を含んでいます。

 

ADHD(注意欠如多動症)の特性によって自分の可能性に蓋をするのではなく、職場での困難さが生じづらい職場や、対処法・配慮で解決できる方法を探していきましょう。そのうえで自分の強みを活かせそうな仕事や、自分のやりたいこと、やっていて楽しいと思える仕事を探すといいでしょう。

 

困りごとを把握する方法をいくつか紹介します。

 

これまでの仕事経験を振り返る

過去に働いた経験のある方は、これまでの仕事で「どのような職場環境だとうまくいっていたのか」「どのような職場環境で困りごとが起きていたのか」を書き出してみると傾向がつかみやすくなります。一人で自己理解を進めるのが難しいと感じる場合は、理解者や協力者、もしくは専門機関と一緒に取り組み、自分の強みや困りごとに対する客観的なアドバイスをもらう方法もあります。

 

書き出したあと、項目(オフィス環境やコミュニケーションなど)ごとに表にしてまとめてみると分かりやすくなります。複数箇所で働いた経験のある方は、同じ項目で比較してみたり共通している困りごとはないか探してみたりすると、理解が深まります。

 

よくある仕事の困りごとのリストを活用する

公的な機関によって、ADHD(注意欠如多動症)のある方によくある仕事の困りごとがリスト化されたものがつくられています。そのような資料を活用しながら、自分の特性や困りごとを把握するのも方法の一つです。

 

例えば、障害者職業総合センターが発行している「発達障害者のワークシステム・サポートプログラム〜発達障害者のアセスメント」の52〜53ページには、ADHD(注意欠如多動症)の特性に関する困りごとのチェックリストがあります。

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ご自身の特性を理解し、自分でできる対処法を考える

職場での困りごとが把握できたら、次は自分でできる対処法を考えてみましょう。

 

例えば、作業における困りごとへの対処法を考える場合には、作業工程や手順をすべて書き出すことからはじめる方法がよく取られます。手順を書き出してみることで、どこでつまづいているのか、どうすると良さそうかなどが考えやすくなります。

 

ここでは、「優先順位をつけるのが苦手」「面倒な仕事を先延ばしにしてしまう」ことによって、「仕事が遅いと言われる」「納期に間に合わない」といった困りごとを抱えた方を例に具体的にみていきましょう。

 

やるべきことを書き出す(納期や所要時間も)

なるべく分けて細かく書き出すことがポイントです。

 

例えば「今日の会議の、続きの会議を設定する」ことを頼まれた場合、「次回の日程を決めて参加者と会議室の予定を押さえる」というタスクが発生します。

 

そのタスクを細かく整理すると、

  1. 次回の日程がいつ頃が望ましいのかを確認する(早すぎたり遅すぎたりしないように)
  2. その日程の中で、参加者が参加できる日程を確認する
  3. 空いている会議室を押さえる
  4. 空いていなければ、ほかの会議で部屋を譲ってもらえるものはないかなどを確認・相談する
  5. スケジュールが確定したら、参加者に連絡を入れる

という手順に切り分けられます。

 

優先順位を付けて取り掛かる順に番号を入れる

優先順位の判断に迷うときは、上司や先輩に確認を取りましょう。優先順位をつけるうえでの基準や考え方を学べたら、メモを取って次に活かそうとすることも大切です。

 

上記の例の場合、「全員がそろう日程が『望ましい期日(タイミング)』よりもずいぶん先になってしまう」場合には「タイミング」を優先するのか「全員がそろう」ことを優先するのかの判断に迷うこともあるでしょう。その判断は、会議の重要度や緊急度などによっても変わることもあります。

 

そのため、

  • 日程が先になっても全員がそろう日程で組むべきか
  • 数人であれば参加できない人がいてもいいので、期日を優先するべきか
  • その理由

などを相談、確認するといいでしょう。

 

番号順に業務に取り掛かり、終わったらチェックを入れる

チェックを入れることで、視覚的にも「終わった」という達成感や安心感を得ることができ、作業漏れを防ぐこともできます。

職場に合理的配慮について相談する

自分ひとりで対処が難しいものについては、「合理的配慮」を得る方法もあります。合理的配慮とは、障害のある方が日常生活や社会生活をおくるうえでの困難さを、周りからのサポートや環境の調整によって軽減するための配慮のことをいいます。

例えば、「周囲の物音や人の声が気になり、業務に集中できない」という困りごとがある場合、以下のような合理的配慮を相談する方もいます。

  • 耳栓やイヤーマフを使用する
  • 出入口を避けた人通りの少ない席に移動する など

合理的配慮の事例は内閣府や厚生労働省のWebサイトにもさまざま掲載されているので、ぜひ参考にしてみてください。

職場に合理的配慮を相談するときは、これまで紹介した「困りごとの把握」「自身で対処できることを考える」「対処できないことは相談する」というステップを、一枚のシートにした「合理的配慮に関する相互検討資料」を活用するとスムーズにいきます。職場に相談するときは苦手だけれど自己対処できるものと、それでも配慮をお願いしたいもの、そしてその理由などを伝えられるといいでしょう。

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支援機関やサービスを活用する

自分の働くうえで重視したい条件や強みを整理したり、困りごとを把握し自分でできる対処法を考えたり、どのような配慮を得られると働きやすくなるのかを理解して企業に相談したりすることは、一人ではなかなか難しいこともあるでしょう。その場合は、支援機関やサービスを頼るのも選択肢の一つです。

 

ここでは、障害特性からくる仕事の困りごとを相談できる支援機関やサービスを4つ紹介します。

 

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センター(通称:なかぽつ、しゅうぽつ)とは、障害のある方の自立と、安定した職業生活の実現を目的として全国に配置されている支援機関です。生活面と仕事面の一体的な相談・支援をおこなっているのが特徴です。

 

例えば、生活面では健康・金銭・住まいなどに関する支援を、仕事面では、就職に向けた訓練や職場実習のあっせん・就職活動・職場定着などに関する支援をおこなっています。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターとは、発達障害のある方への支援を総合的におこなうことを目的として、全国に配置されている支援機関です。

 

障害者就業・生活支援センターと同じく、生活面・仕事面などさまざまな相談窓口となっていますが、発達障害のある方に特化しているのが特徴です。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターとは、障害のある方に対する専門的な職業リハビリテーションサービス、事業主に対して雇用管理に関する相談・援助などの実施を目的として全国に配置されている支援機関です。

 

上記の2つと異なり、仕事面に特化しているのが特徴です。

 

具体的におこなっている支援の一部を紹介します。

  • 職業評価
    地域障害者職業センターで適切な支援を受けるために、利用者の就職の希望などをヒアリングしながら検査や作業をおこないます。現状の職業能力を分析し、それらをもとに職業リハビリテーション計画の方針を決めていきます。

  • 職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業
    障害のある方が円滑に就職したり職場に適応できたりするように、職場にジョブコーチを派遣し、ご本人や事業主に対して障害特性をふまえた支援をおこないます。

  • リワーク支援
    休職中の利用者に対して、職業カウンセラーが事業雇用主や主治医と連携しながら、職場復帰に向けた支援をおこないます。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所とは、「障害者総合支援法」に基づく福祉サービスの一つです。

 

一般企業への就職を目指す障害のある方(65歳未満)が、就職するために必要なスキルを身につけることを目的としています。

 

利用者は、就職に向けて体調管理やビジネスマナー向上などの訓練から、書類作成や面接などの就職活動、就職後の職場定着に関するサポートまで受けることができます。

 

地域障害者職業センターと同じく「仕事」に特化していますが、下記のような違いもあります。

  • 運営元・施設数の違い
    地域障害者就業センターは「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」が運営しており、全国に52ヶ所(各都道府県ごとに最低1つ以上)あります。就労移行支援事業所は全国に3,000ヶ所以上あり、事業所運営元も民間企業やNPO法人、社会福祉法人などさまざまです。

  • 利用料の違い
    地域障害者職業センターは無料です。就労移行支援事業所も多くの人は無料ですが、前年度の所得に応じて料金が発生することもあります。

  • 利用期間の違い
    地域障害者職業センターは利用期間の制限はありません。利用期間は平均で2〜3ヶ月です。一方で、就労移行支援事業所は利用期間が原則2年と決まっており、平均利用期間は1年4ヶ月です。

また、「就労継続支援」との違いについては、下記の記事で詳しくまとめています。

【無料】就労移行支援で受けられるサポートについて詳しく聞きたい

LITALICOワークスでADHD(注意欠如多動症)のある方の仕事選びをサポート

 

LITALICOワークスでは「就労移行支援事業所」を全国に130事業所以上運営しています。これまで、多くの発達障害の方の就職をサポートしてきました。

 

個人の特性から生じる困難さを理解し、自分でできる対処法や自分に合う職場環境を知ることができるようにサポートしています。

 

ADHD(注意欠如多動症)のある方がLITALICOワークスを利用して就職された具体的な事例については、次の章で紹介します。

 

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【就職事例】ADHD(注意欠如多動症)のある方が自分に向いている仕事を見つけるまで

ここではADHD(注意欠如多動症)のある方が、自分に向いている仕事を見つけることができた事例をご紹介します。

「早く」「あれもこれも」ではなく「じっくり」「できること」を見つけるまで

高校卒業後は大学に行って好きなことを研究したいという夢がありましたが、さまざまな事情で実現できず、コンビニや工場などでアルバイトしていたTさん。

 

コンビニでは、マルチタスクな作業や臨機応変な接客が苦手で、工場では、単純作業の繰り返しで集中力が続かずミスが多いことなどが原因でいずれも長続きしませんでした。

 

そういった経緯もあり、保護者さまのすすめで病院に行ったところ、ADHD(注意欠如多動症)との診断を受けました。家庭の事情もあり、長く続けられる職場に就職したいという思いからLITALICOワークスを利用することになりました。

 

Tさんは、利用開始時から週5日、休むことなく体調を安定しながら通所しました。さまざまなプログラムに参加し、コミュニケーションやチームワークスキルを向上させるプログラムでは自らリーダーを務め、強みを多く発揮されていたそうです。

 

一方で、「自分が決める」という自己主張が強く、思い通りにいかないと周囲に(本人にその気はなくても)強い口調であたってしまうことが多々見受けられました。

 

また、好奇心が強いがゆえに、あれもこれもやってみた結果疲弊してしまい、自己嫌悪に陥ってしまうこともありました。

 

そこで、LITALICOワークスのスタッフとトレーニング後の振り返りや、定期的な面談をおこない、以下のようなことを習得していきました。

  • チームで作業するときには、自分ひとりで何でもやろうとせず人に頼ること
  • イライラした気持ちをそのままぶつけられたら自分であればどう思うか(相手の立場に立って考えること)
  • 「やりたいこと=できること」ではないので、体調が優れないときは無理しないこと

早く就職したいという焦りもありましたが、結果的に長く働くためには、自分の特性を理解して対処法をじっくり身につけることが何よりの近道だと気づくことができました。

企業インターンで確かめられた「自分らしく働ける環境」

自己理解も深まり、いよいよ就職活動に向けて、企業インターン(職場体験)に3社参加しました。

 

Tさんはさまざまなものに興味があったため、「接客」「事務」「軽作業」と、異なる業種を経験することで、自分らしく働ける環境の条件を見つけていきました。

 

企業インターンに参加した結果、以下のような業務内容や環境が自分に合っているのではないかと、支援スタッフと見立てを立てることができました。

  • 社内のサポート体制が整っていること
  • ゆくゆくはいろいろな仕事を任せてもらえること
  • ある程度自分のペースで仕事をすすめられる事務系の仕事

今までの準備を振り返り、すべてを伝えた就職活動

就職活動では、面接で自分の将来の夢や自分の強みをはっきり伝える強みを活かし、早々に内定をもらうなど順調に進んでいきました。

 

しかし、第一志望の会社の面接では「障害のある同僚たちとどうコミュニケーションをとっていくか」「仕事の優先順位をどうやって立てるのか」と実際に働く場面を想定した質問になるとうまく答えられませんでした。人事担当者からも「そこが整理できたらまた応募して」と言われ、結果は保留となりました。

 

そこで、LITALICOワークスのスタッフと一緒に今までおこなってきたトレーニングの振り返りをおこないました。その会社で働く場面を想定し改めて自己対処できることと合理的配慮としてお願いすることを整理しました。

 

自己対処できること

  • 思ったことをそのまま伝えてしまうことで相手を傷つけることがあるかもしれないが、そのときはきちんと謝る
  • 相手からも同様に傷つけられることがあるかもしれないが、気持ちが落ち着いたときにその相手ときちんと話す場を設ける
  • 優先順位をつけるうえでの基準や考え方を学べたら、メモを取って次に活かそうと努力する

合理的配慮としてお願いすること

  • コミュニケーションで整理できないことの相談や、業務において会社が求めていることと本人がやりたいことをすり合わせができるよう、定期面談の機会を設ける
  • 業務に慣れるまでは優先順位の確認やミスがないかタブルチェックする
  • 業務に集中できるようイヤーマフの使用を認めてもらう

これらの準備を整えたうえで、再度応募し、その結果、第一志望の会社から無事に内定をもらうことができました。

 

今はチームリーダーを目指しており、仕事の幅も広がってきているなど、順調に仕事を続けています。「最近は共通の趣味を通じて新しい友人ができた」「ゆくゆくは、お金を貯めて大学に入り研究をしたいという目標もできた」と笑顔で教えてくれるなど、仕事だけでなくプライベートも充実していることが伝わってきます。

 

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ADHD(注意欠如多動症)のある方の仕事についてまとめ

ADHD(注意欠如多動症)の特性からくる職場での困りごとはご自身だけではなく、職場環境によって起きています。そのため、まずは対処できることを見つけること、またそのうえで配慮を得ることも大切です。「自分に合った仕事を探したい」「適職を見つけたい」という方には、「もっと打ち込める仕事はないか」「自分が楽しいと思える仕事は何か」と探している方もいれば、「今の仕事がうまくいかない」という理由から仕事を変えることを検討されている方もいると思います。

 

異動や転職を考える前に、まずは今の職場や仕事で、自分でできる対処法を試してみたり、配慮の相談を職場の方にしてみたりするなど、できることからはじめてもいいかもしれません。それでも難しい場合は、本記事で紹介したような就労支援機関を活用してみることも、選択肢のうちの一つです。

 

もし、今の職場で働くことの難しさや、自分に向いている仕事を考えたいときは、ぜひLITALICOワークスへご相談ください。一緒に「自分らしく」働ける環境を見つけていきましょう。

更新日:2024/08/13 公開日:2023/05/01
  • 監修者

    鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 客員研究員

    井上 雅彦

    応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

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